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Lịch sử và so sánh quốc tế về quy định xây dựng dựa trên nghiên cứu mới nhất
はじめに
建築法規は各国でどのように異なっているでしょうか。AIによるコンプライアンスチェックの導入が進む中、AIが法の解釈のルールを正しく理解しないと、適切・安定したAIによる判断は進みません。ここでは、各国の建築法規がどのような仕組みとなっているかを理解するにあたって、G20などの主要国に着目し、建築法規を含めた全ての法体系の歴史、由来、構造など網羅的な整理を踏まえ、国別の特徴を整理します。
本稿の対象と新規性は次の通りです。
- 法体系と建築法規を一つの枠組みで分類する:比較法学の法系論・継受論と建築規制の国際比較研究は、それぞれ蓄積を持ちながら接続されてきませんでした。本稿は、各国の法体系を13の要素、建築法規を15の要素で分類し、建築法規の各要素がどの法体系の要素から生じるかを一対多の対応として示します。これにより、ある国の建築法規の形(誰が基準を作り、どう書き、誰が審査するか)を、その国の法体系の性格から説明できるようにしました。
- 20の国・地域を同じ物差しで並べる:分類は各要素の「説明→カテゴリー→採用する国・地域」の順で統一し、最後に国・地域ごとに法体系と建築法規の特徴を同じ8項目で列挙しました。個別の国の解説にとどまらず、任意の2か国を同じ項目で比べられることを目指しています。
- 「法系」と「技術系」の系統を可視化する:一般法・建築法規・都市計画・国土開発の4領域について、主要国(G20)への継受の流れを系統図として整理しました。
ここでは、法体系(全体・建築)の歴史や、構成要素を可視化しています。以下から閲覧できます。
法の継受(世界地図と系統図:どの国からどの国へ、いつ・どのような背景で法が伝わったか)
法の構成要素(カテゴリー→要素→選択肢の分岐図:国を選ぶと該当する選択肢が強調されます)
法の歴史
先史時代〜紀元前3千年紀 法はなぜ生まれたのか
法は人類史の最初からあったものではなく、社会の構造変化が生んだ需要に応えて、政府の機能の一部として発達してきました。
- 狩猟採集社会(〜約1万年前):成文法は存在せず、秩序は慣習・評判・仲間内の制裁で保たれていました。移動生活では蓄えられる財産がほとんどなく、守るべき「所有」も紛争も限られていたためです。
- 農耕・定住(約1万年前〜):貯蔵可能な余剰が生まれ、土地・穀物・家畜という「守るべき財産」と、それをめぐる紛争、格差、相続が発生しました。所有権を確定し紛争を裁くルールへの需要が生まれます。
- 初期国家(約5,000年前〜):文字が発明されます。文字はまず徴税と倉庫の記録のために使われ、穀物のような計測・徴収しやすい作物が育つ場所で最初の国家が生まれたと論じられています(Scott, 2017)。文字を得た国家は、口承だった慣習を成文法典として公示するようになります。つまり、成文法の誕生は国家の誕生とセットでした。
法は社会の中で、政府が使える4つの資源のうち「権威」の中核に位置づけられます(Hood, 1983)。
- 権威:ルールを作り、守らせる。立法、規制、免許、司法。法とその執行はここに属し、所有権の保護と契約の執行を通じて市場経済の土台を提供します。
- 組織:サービスを直接供給する。警察、学校、病院、インフラ。
- 財源:お金を集め、配る。課税、補助金、給付。
- 情報:情報を整え、調整する。統計、基準、標準設定、広報。
国家が「権威」を恣意的にではなく、あらかじめ定めたルールに従って行使する状態が「法の支配」であり、国家の能力と社会の力の均衡の中でそれが成立する条件は、近年の政治経済学の中心的テーマです(Acemoglu & Robinson, 2019)。
紀元前21世紀〜紀元前18世紀 最古の法典
記録に残る最古級の法典は、メソポタミアで生まれました。楔形文字の発明によって、口承や慣習だったルールを「書き残す」ことが可能になったためです。
ウル・ナンム法典(紀元前2100年頃)
- 成立:ウル第三王朝の王ウル・ナンム(またはその子シュルギ)がシュメール語で制定した、現存する最古の法典です。原本は失われ、後代の写しの粘土板の断片から序文と約40条の条文が復元されています(Roth, 1995)。
- 構成:序文と条文からなり、後文は残っていません。序文では王が神々から統治を委ねられたことを述べ、「孤児を富者に、寡婦を権力者に引き渡さない」という正義の宣言と、度量衡(1シラの升、1ミナの分銅)を定めたことを記します。条文は殺人・強盗・強姦・離婚・奴隷・偽証・傷害・農地の順におおよそ主題別に並びます(Roth, 1995)。
- 特徴:殺人・強盗・強姦には死刑を定める一方で、傷害には銀による賠償金を定めています(例:他人の足を切断した場合は銀10シェケル、鼻を切った場合は3分の2ミナ)。後のハンムラビ法典より約350年古いにもかかわらず、身体刑ではなく金銭賠償が原則で、身分による処遇の差もハンムラビ法典ほど体系的ではありません。法の最初の役割が「私人間の紛争を、報復ではなく定められた対価で解決する」ことにあったことを示しています。
- 建築法規との関わり:建物そのものに関する条文はありません。ただし序文の度量衡の統一は、寸法と重量を国家が定めるという、後の技術基準の前提をなす行為でした。
ハンムラビ法典(紀元前1755年頃)
- 成立:バビロン第1王朝の王ハンムラビがアッカド語で制定しました。高さ約2.25mの閃緑岩の石柱に刻まれ、ルーヴル美術館に現存します。写しの粘土板も多数あり、古代オリエントで最も広く筆写された法典です(Roth, 1995; Avalon Project, n.d.)。
- 構成:序文・282条の条文・後文からなります。序文は神々による王権の授与と正義の宣言、後文は法典の永続を願い改変者を呪う文言です。条文は主題別におおよそ次のように並んでいます。
- 第1〜5条:裁判手続と偽証・誣告の罰
- 第6〜25条:窃盗・強盗・財産犯
- 第26〜65条:土地の保有・小作・灌漑・農業
- 第100〜126条:商業、貸付、利息、寄託
- 第127〜194条:婚姻、離婚、持参金、相続、養子
- 第195〜214条:身体傷害と同害報復
- 第215〜277条:職業上の責任と報酬(医師、建築者、船大工、農夫、職人の賃金)
- 第278〜282条:奴隷
- 特徴:「目には目を」(第196条)の同害報復で知られますが、報復が適用されるのは同じ身分の間だけで、被害者が下位身分なら金銭賠償に置き換わります。自由人・半自由人・奴隷という3身分で処遇が体系的に異なる点がウル・ナンム法典との違いです。また医師(第215〜223条)、建築者(第228〜233条)、船大工(第234〜240条)について、仕事の失敗に対する責任と成功した場合の報酬額を定めており、専門職の責任を法で定めた最古の例です。
- 建築法規との関わり:第228条が「建築者が家を完成させたら、施主は面積1サル(約36㎡)につき銀2シェケルを報酬として支払う」と報酬を定め、続く第229〜233条が、倒壊して施主やその家族・奴隷を死なせた場合の責任(建築者の死刑、建築者の子の死刑、奴隷の弁償)と、欠陥部分を自費で建て直す義務を定めます。技術基準(どう造るか)は書かず、結果責任だけを書く「結果責任の法」の原型です。
- 法文の例(ハンムラビ法典 第229条、King訳) "If a builder build a house for some one, and does not construct it properly, and the house which he built fall in and kill its owner, then that builder shall be put to death." (建築者がある人のために家を建て、それを適切に造らず、建てた家が崩れて施主が死んだ場合、その建築者は死刑に処される)
- 第230条:施主の息子が死んだ場合は、建築者の息子を死刑にする。
- 第231条:施主の奴隷が死んだ場合は、建築者は同等の奴隷を施主に与える。
- 第232条:財産が失われた場合は全額を賠償し、自らの費用で家を建て直す。
- 第233条:壁が崩れそうになった場合は、自らの費用で補強する。
ここで注目すべきは、この法典が壁の厚さ、材料、工法を一切定めていないことです。何をどう造るかは問わず、悪い結果が起きたときの責任だけを定めている。つまりこの時代の法は、行為のルールを事前に定めるのではなく、結果に対する責任を事後に問う体系でした。国家がまだ事前規制を行う行政機構を持たなかった時代、法とはまず民事責任と刑罰の体系だったと考えられます。
紀元前5世紀〜6世紀 公法と私法の区別
次の画期は古代ローマです。
- 十二表法(紀元前450年頃):平民の要求を受けて公示された最初の成文法。建築に関わる規定もあり、「建物の周囲には隣地との間に2フィート半(約74cm)の空地を残す」と伝えられています(第7表、通説的復元による大意)。今日の各国の民法にある相隣関係規定の遠い祖先です。
- 法学者の時代(紀元前1世紀〜3世紀):ガイウス、パピニアヌス、ウルピアヌスらの法学者が、事案ごとの解答を積み重ねて精緻な法学体系を築きました。
- 『ローマ法大全』(529〜534年):東ローマ帝国のユスティニアヌス帝が、法学者の学説を集めた『学説彙纂』、皇帝の勅法を集めた『勅法彙纂』、教科書である『法学提要』などに集大成しました。
- 都市規制:アウグストゥス帝は街路に面する建物の高さを70ローマフィート(約21m)に制限したと伝えられます。人口100万人と推計されるローマでは、賃貸集合住宅の倒壊や火災が社会問題であり、「高密都市の住宅問題が建築規制を生む」という構図は19世紀のロンドンやニューヨークと同じです。
ローマ法が後世に残した最大の遺産の一つが、公法と私法の区別です。法学者ウルピアヌスは「公法とはローマ国家のあり方に関する法、私法とは個人の利益に関する法」という趣旨の定義を残しています(『学説彙纂』1巻1章、大意)。
- 私法:契約、所有権、家族、相続、不法行為など、個人と個人の間の関係を規律するルール。紛争は当事者が裁判所に持ち込むことで解決されます。
- 公法:憲法、行政法、刑法など、国家と個人の関係を規律するルール。国家が個人の行為を事前に拘束したり、処罰したりします。
この区別は、現代の大陸法系の国々では法学教育や裁判所の構成(民事裁判所と行政裁判所の分離)にまで及んでいます。
11世紀〜12世紀 大陸法と英米法の分岐
11世紀以降、大陸法と英米法の分岐し、世界の大半の国家の法体系の基礎を築きます。
成立の経緯
- 『ローマ法大全』は中世西欧でいったん忘れられますが、11世紀末以降のボローニャ大学での研究復興を経て、ヨーロッパ大陸の共通法学(ユス・コムーネ)の基盤となりました。ここから大陸法(civil law)の系譜が始まります。
- 英国では、12世紀のヘンリー2世の司法改革以降、国王裁判所が全国を巡回し、その判例の集積としてコモンロー(common law)が形成されました。ローマ法の体系的な継受は起きませんでした。
- こうして、世界の法地図を二分する二大法系が生まれました(Zweigert & Kötz, 1998; Merryman & Pérez-Perdomo, 2007)。
「法典か判例か」という図式では捉えきれない
この二つの違いは、しばしば「大陸法は法典、英米法は判例」と説明されますが、それは正確ではありません。
- 英米法の国にも膨大な制定法があります(米国の連邦法典や各州法、英国の議会制定法)。
- 大陸法の国の裁判官も、判例を参照します。
- 違いは法源の「有無」ではなく、法源の位置づけと運用の仕方にあります。
主な相違点
- 判例の法的地位:英米法では、上級裁判所の判決は下級裁判所を法的に拘束します(先例拘束の原理)。判例そのものが「法」です。大陸法では、判例は原則として当該事件だけを拘束し、他の裁判所には説得的な参考資料にとどまります。実際には最高裁判所の確立した判例には従いますが、それは「法だから」ではなく「覆される可能性が低いから」という位置づけです。
- 制定法の読み方と欠缺の埋め方:大陸法の法典は、ある法領域を体系的・網羅的にカバーするよう設計されており、明文のない事案は法典の原則や類似条文からの類推で解決します。英米法では、制定法は判例法という「海」に浮かぶ「島」のように捉えられ、明文のない部分は判例法で埋めます。
- 判決文のスタイル:大陸法の判決は短く、条文から結論を導く三段論法的な文体です。英米法の判決は長く、事実を詳細に検討し、過去の判例を一つひとつ区別・適用しながら論じ、裁判官ごとの個別意見や反対意見が付されます。
- 裁判官のキャリア:大陸法では、法学部卒業後に試験を経て若くして任官するキャリア官僚型です。英米法では、経験を積んだ弁護士の中から任命される実務家型です。
- 手続:大陸法は裁判官が主導して事実を調べる職権主義、英米法は当事者(弁護士)が証拠と主張を競わせる当事者主義で、刑事事件では市民による陪審が事実認定を担います。
- 法学者の役割:大陸法では大学の法学者による体系的な学説が法典の解釈に大きな影響力を持ちます。英米法では、法を作り解釈する主役は裁判官です。
運用プロセスの具体例:大陸法
大陸法の国で、ある問題が「法」になり、適用されるプロセスを、建築に関わる例で追ってみます。
- 例1:フランスで建物に欠陥が見つかった場合
- 被害者(建物の取得者)は、民法典第1792条(建設者の10年責任)という条文を根拠に訴えを起こします。
- 裁判官は、事実が条文の要件(「建築物の堅固性を損なう損害」か)に当てはまるかを判断します。三段論法です。
- 破毀院(最高裁)の過去の判決は「堅固性を損なう」の解釈の参考にされますが、判決文で引用されるのは条文であり、判例ではありません。
- 責任が認められれば、Spinetta法で義務化された保険が支払います。
- 例2:ドイツで建築許可の可否が争われた場合
- 建築主は州建築法の条文に基づいて許可を申請し、建築監督官庁が条文への適合を判断します。
- 不許可に不服なら行政裁判所(民事裁判所とは別系統)に訴え、裁判所は条文の解釈として判断します。
- 条文自体を変えたければ、州議会が州建築法を改正するか、州建設大臣会議がモデル建築法を改訂します。
- 例3:法を大きく変える場合
- ドイツは2002年の債務法現代化法で、民法典の債務法を一括して書き換えました。フランスは2016年に契約法をオルドナンス(政府の委任立法)で全面改正しました。
- つまり大陸法では、立法者が法典を書き換えることで法が変わり、裁判所はそれを適用します。
運用プロセスの具体例:英米法
- 例1:英国で建築確認を行った自治体の責任が争われた場合
- 1978年、貴族院(当時の最高裁)はAnns v Merton事件で、自治体が欠陥建築物の検査を怠った場合に所有者への賠償責任を負うと判断しました。この判決が「法」になり、以後の下級裁判所を拘束しました。
- 1991年、貴族院はMurphy v Brentwood事件で、Anns判決を自ら覆し、純粋な経済的損失については責任を否定しました。判決文は数十ページにわたり、過去の判例を一つずつ検討しています。
- 議会は別途、Defective Premises Act 1972のような制定法で住宅の欠陥責任を定めていますが、判例法との関係は裁判所が解釈します。
- つまり英米法では、裁判所が事件を通じて法を作り、変えます。
- 例2:米国でゾーニング(用途地域制)の合憲性が争われた場合
- 1926年、連邦最高裁はEuclid v. Ambler事件で、オハイオ州ユークリッド村のゾーニング条例が財産権を侵害しないと判断しました。
- この一つの判決が、全米の自治体がゾーニングを導入する法的基盤になりました。制定法(各州のゾーニング授権法)は存在しましたが、それが「合憲である」と確定したのは判例です。
- 例3:法を大きく変える場合
- 英国はグレンフェル火災後、Building Safety Act 2022という制定法で規制体系を書き換えました。英米法でも大改革は立法で行います。
- ただし、その制定法の意味は、以後の裁判で判例として確定していきます。
大陸法の長所と短所
- 長所
- 予見可能性:ルールが法典に書かれているため、市民や企業は事前に自分の権利義務を知ることができます。
- 体系性と一貫性:法典全体が一つの体系として設計されているため、矛盾が少なく、法学教育も体系的に行えます。
- 法へのアクセス:「一冊の法典」を読めばよく、膨大な判例を調査する必要がありません。ナポレオン法典はこの理想の体現でした。
- 一括改革のしやすさ:立法者が法典を書き換えれば、法は一斉に変わります。近代化を急ぐ国々が大陸法を継受した理由の一つです。
- 裁判の均一性と低コスト:キャリア裁判官が条文を適用するため判断がばらつきにくく、訴訟の結果が予測しやすい分、和解も進みます。
- 短所
- 硬直性:社会の変化に法典の改正が追いつかないことがあります。条文がない新しい事案では、裁判官は類推や一般条項に頼らざるを得ません。
- 抽象性と学説依存:体系的な法典は抽象度が高く、その解釈に大学の学説が必要になります。市民が条文を読めても、意味が分かるとは限りません。
- 行政優位・規制過多の傾向:公法と行政法の体系が厚いため、国家が事前規制に踏み込みやすく、実証研究では大陸法系の国の方が参入規制や労働規制が重い傾向が示されています(La Porta et al., 2008)。
- 判例の透明性の低さ:判例が形式上「法」でないため、実際に裁判所がどう判断しているかが法典を読むだけでは見えません。
英米法の長所と短所
- 長所
- 柔軟性と適応力:新しい事案に対して、裁判所が事件ごとに法を発展させられます。法典の改正を待つ必要がありません。
- 事案への適合:判決は具体的な事実に基づいて理由づけられるため、現実の紛争に密着したルールになります。
- 漸進的な進化:先例を積み重ね、必要なら覆すことで、法は急激な断絶なく進化します。
- 司法の独立と国家からの距離:裁判所が国家(立法・行政)とは独立に法を作るため、国家権力への歯止めになりやすいという理論があります(Glaeser & Shleifer, 2002)。
- 市場・イノベーションとの親和性:実証研究では、英米法系の国は投資家保護が厚く、金融市場が発達しやすいことが示されています(La Porta et al., 2008)。
- 短所
- 不確実性:判例は事件の事実に依存し、いつ覆されるかも分からないため、事前に結果を予測しにくい面があります。
- 法へのアクセスの困難:法を知るには膨大な判例を調査する必要があり、専門家(弁護士)への依存度が高くなります。
- 訴訟コストの高さ:当事者主義の手続、陪審、ディスカバリー(証拠開示)は時間と費用がかかり、訴訟が社会的コストになります。
- 裁判官への依存:法の内容が個々の裁判官の判断に左右され、裁判官の質と独立性が制度全体の前提になります。
- 地域差:米国のように州ごとに判例法が異なると、国内でも法の統一性が損なわれます。
両法系の接近
現代では両法系は接近しています。
- 英米法の国でも商法・会社法などの法典化が進み、米国の統一商事法典(UCC)はその代表です。
- 大陸法の国でも憲法裁判所や欧州司法裁判所の判例が事実上の法源として機能し、判例の重みは増しています(Merryman & Pérez-Perdomo, 2007)。
- それでも、法律家の思考様式や制度設計の初期設定としての違いは根強く残り、それが建築法規の形にも反映されている、というのが本稿の見立てです。
19世紀〜20世紀 法典化とその広がり
大陸法の側は、近代に入って法典化(codification)という決定的な一歩を踏み出しました。
法典化の前はどうだったのか
法典化の前にも、法は本に書かれていました。ただし「一冊」ではなく、由来の異なる多数の法源が積み重なっていました(Stein, 1999; Bellomo, 1995)。
- ローマ法:6世紀の『ローマ法大全』自体が、過去の法学者の見解と皇帝の勅法を編纂した集成です。11世紀以降、大学の注釈学派(グロッサトーレス)と後期注釈学派(バルトルスら)がこれに膨大な注釈と学説を加え、ヨーロッパ大陸の共通法(ユス・コムーネ)を形成しました。ドイツでは1900年の民法典施行まで、この学説化したローマ法が「普通法(gemeines Recht)」として補充的に適用されていました。
- 教会法:1140年頃の『グラティアヌス教令集』、1234年の『グレゴリウス9世教令集』など、婚姻・相続・契約に及ぶ体系的な法典群が並行して存在しました。
- 慣習法の文字化:各地の慣習は13世紀以降、書き留められていきます。ドイツの『ザクセンシュピーゲル』(1220〜35年頃)、フランスでは国王の命令で16世紀に各地方の慣習が公式に編纂され(パリ慣習法1510年、改訂1580年)、フランス革命前には約60の一般慣習法と約300の地方慣習法が併存していました。ヴォルテールが「馬を替えるごとに法が変わる」と皮肉った状態です。
- 国王の立法:フランスではヴィレル・コトレの王令(1539年、公文書のフランス語使用)、コルベールの民事訴訟王令(1667年)、海事王令(1681年)など、分野ごとの王令が積み重なりました。ドイツの各領邦にも領邦法(Landrecht)や都市法がありました。
つまり法典化以前の大陸法は、「ローマ法+教会法+慣習法+国王法+学説」という多層の法源を、裁判官と学者が事案ごとに組み合わせる体系でした。これに対して近代の法典化は、一つの法分野の全体を、主権者が制定した一つの体系的・網羅的な法典に書き直し、それ以前の法源をすべて廃止することを意味します。フランス民法典を施行した1804年3月21日の法律第7条は、「ローマ法、王令、一般慣習法・地方慣習法、規則は、本法典が扱う事項について法律としての効力を失う」と定めました(Merryman & Pérez-Perdomo, 2007)。単なる編纂・集成(compilation)と法典化(codification)を区別するのは、この「網羅性」と「旧法源の廃止」です(Weiss, 2000)。先行例として、デンマーク法(1683年)、スウェーデン法(1734年)、バイエルン民法典(1756年)、約1万9,000条で完全性を目指したプロイセン一般ラント法(1794年)、オーストリア一般民法典(1811年)があり、フランス民法典はこれらの試みを、簡潔さと市民への読みやすさで凌駕したものでした(Zweigert & Kötz, 1998)。
- フランス民法典(1804年):「すべての市民が読める一冊の法」という啓蒙主義の理想を体現。所有権の定義(第544条)は「所有権とは、法令が禁止する使用をしない限り、最も絶対的な仕方で物を使用し、収益し、処分する権利である」(大意)という簡潔な一文です。
- ドイツ民法典(1900年施行):約1世紀遅れて、より体系的・概念的な法典として登場しました。
フランス民法典は、3つの経路で世界に広がりました(Zweigert & Kötz, 1998; Merryman & Pérez-Perdomo, 2007)。
- 征服・併合による直接導入(1804〜1815年):ナポレオン戦争でフランスが支配したベルギー、オランダ、ルクセンブルク、ライン左岸、イタリア諸国、ワルシャワ公国(ポーランド)に施行されました。ナポレオン失脚後もベルギーやオランダはこれを維持し、あるいは土台に自国の法典を作りました。
- 独立後の自発的な採用(19世紀):スペイン・ポルトガルから独立したラテンアメリカ諸国は、当時最も先進的とみなされたフランス民法典をモデルに選びました。チリ(1855年、法学者ベリョの起草)を経て南米各国へ、アルゼンチン(1869年)、メキシコ(1870年)と続きます。米国のルイジアナ州(1808年)やカナダのケベック州(1866年)もフランス法系の民法典を持ち続けています。
- 植民地支配と近代化改革(19〜20世紀):フランスの植民地となった西アフリカ・北アフリカ・インドシナには植民地法制として導入されました。他方、植民地化を免れた国々は、西欧列強との不平等条約を改正するために自発的に近代法典を導入しました。エジプト、オスマン帝国、日本(旧民法、1890年)がその例です。
ドイツ民法典の影響は、ギリシャ、スイス(独自の法典を経て)、トルコ(1926年にスイス民法典を採用)、そして東アジア(日本→韓国・台湾・中華民国)に及びました。フランス民法典が軍事的征服と植民地支配で広がったのに対し、ドイツ民法典は学問と自発的な近代化改革を主な経路として広がりました。その経緯は次の通りです(Zweigert & Kötz, 1998; Merryman & Pérez-Perdomo, 2007)。
- ギリシャ(学説による継受):1830年の独立後、ギリシャは1835年の勅令でビザンツ時代のローマ法(14世紀の『ヘクサビブロス』)を暫定的に民法として適用し、その解釈のためにドイツの大学で学んだ法学者がパンデクテン法学を持ち帰りました。約1世紀の準備を経て1940年に制定され1946年に施行されたギリシャ民法典は、ドイツ民法典を最も忠実に範とした法典の一つです。
- スイス(同じ法学の共有):1907年制定・1912年施行のスイス民法典は、オイゲン・フーバーが各カントンの法を統合して起草した独自の法典で、ドイツ民法典の「翻訳」ではありません。ただし、フーバーもドイツの歴史法学・パンデクテン法学の中で育ち、体系や概念を共有しているため、比較法学はスイスをドイツ法系に分類します。ドイツ民法典より短く平明な文章と、裁判官に判断を委ねる一般条項の多さが特徴で、この「読みやすさ」が次のトルコの選択につながりました。
- トルコ(世俗化と不平等条約の撤廃):オスマン帝国は1869〜76年にイスラム法を法典化した『メジェッレ』を持っていましたが、1923年のローザンヌ条約で列強の治外法権(カピチュレーション)を撤廃する代わりに司法の近代化を約束しました。ケマル・アタテュルクの政府は1926年、スイス民法典と債務法典を翻訳して一挙に採用しました。選ばれた理由は、法文が簡潔でフランス語版が入手できたこと、当時最新の法典であったこと、そして法務大臣ボズクルトがスイスで法学を学んでいたことです。宗教法から世俗の大陸法への転換を一つの立法で実現した、最も急進的な継受の例です。
- 日本(条約改正のための法典編纂):明治政府は、幕末の不平等条約(領事裁判権)を改正する条件として西欧型の法典整備を求められ、まずフランス人ボアソナードにフランス法系の旧民法(1890年公布)を起草させました。しかし「民法出でて忠孝亡ぶ」に象徴される法典論争で施行が延期され、穂積陳重・富井政章・梅謙次郎の3人が起草した明治民法(1896・98年)は、当時公表されていたドイツ民法典の第一草案(1888年)・第二草案(1895年)を主な参照元とし、総則・物権・債権・親族・相続というパンデクテン体系を採用しました。1889年の明治憲法がプロイセン憲法を範としていたことも、ドイツ法への傾斜を後押ししました(Röhl, 2005)。
- 韓国・台湾(日本の植民地支配を経由):1910年の韓国併合後、1912年の朝鮮民事令により日本民法が朝鮮に依用され(親族・相続は慣習による例外付き)、台湾でも1923年から日本民法が施行されました。独立後の韓国は1958年に自国の民法典を制定しますが、その構造は日本民法とドイツ民法典を基礎とし、物権変動の要件など一部ではドイツ法をより直接に採用しました(Kim, 2012)。
- 中華民国・中国(日本を経由した間接継受):清朝は1907年から日本人法学者・松岡義正らを招いて大清民律草案(1911年)を作成し、これを土台に中華民国は1929〜31年に民法典を制定しました。日本で学んだ法学者がドイツ民法典・スイス民法典・日本民法を参照したため、パンデクテン体系と概念はドイツ法系です。この法典は1945年以降の台湾で現行法として続き、中華人民共和国でも、1986年の民法通則から2020年の民法典に至る概念体系の基層になっています(Chen, 2008)。
- タイ・ブラジル(部分的な学説継受):タイの民商法典(1925〜35年)は当初のフランス法モデルを日本民法・ドイツ民法典型に改め、ブラジルの1916年民法典はフランス法の伝統の上にドイツのパンデクテン法学の体系を取り入れました。
まとめると、ドイツ民法典の伝播経路は、留学した法学者による学説の持ち帰り(ギリシャ・ブラジル)、不平等条約の撤廃と国家近代化を目的とする自発的採用(日本・トルコ)、近代化に成功した日本を経由する間接継受(中華民国・韓国・タイ)、そして植民地支配による依用(朝鮮・台湾)の4つに整理できます。フランス法の伝播が19世紀前半に軍事力で完了したのに対し、ドイツ法の伝播は19世紀末から20世紀前半に、各国の「選択」として進んだ点が対照的です。
法典化とその輸出がもたらした重要な帰結は、世界の大部分の国が「自国で発明した法」ではなく「移植された法」の上に近代国家を築いたという事実です。この点は次章で系統図として整理します。
19世紀〜20世紀 規制国家の登場
現代の法規を理解するうえで欠かせないのが、19世紀の「規制国家」の登場です。
- 背景:産業革命による都市への人口集中は、コレラの流行、スラム、大火といった都市問題を生みました。これらは「被害が出てから裁判で賠償させる」という事後的な私法の手法では防げません。
- 手法:国家は、事前の許可、基準の設定、立入検査という手法を持つ行政法の領域に踏み込みました。
- 英国:公衆衛生法(Public Health Act 1875)に基づき、各自治体がモデル建築条例を採用する方式で、住宅の構造・衛生・防火の基準が全国に広がりました(Ley, 2000)。
- ドイツ(プロイセン):「警察」を公共の安全・秩序を守る国家作用一般と捉える伝統の下で、建築警察(Baupolizei)をはじめとする各分野の警察法が発達しました。ドイツの建築法規が今日でも「建築秩序法」と呼ばれ、州の権限に属するのはこの名残です(Maiworm, Hammann, & Schleich, 2023)。
- 米国:連邦憲法上、市民の健康・安全・福祉のための規制権限(ポリスパワー)は州に属し、19世紀後半以降、州と自治体が住宅法や建築条例を整備しました。
政府の役割の4分類でいえば、規制国家化とは、「権威」としての法が、検査官や規制庁という「組織」と、技術基準・標準という「情報」の機能を取り込みながら拡張していく過程でした。この延長線上に現代の建築法規があります。
建築法規の歴史
年代ごとに、建築法規の歴史を振り返ります。本章の内容を簡易的に可視化したものを以下から閲覧できます。
file:///Users/masahirotaima/Downloads/legal-transplants-map_6.html#building
建築法規の法体系上の位置づけ
建築に関するルールは、公法と私法の両方にまたがっています。
- 私法上のルール:隣地との相隣関係(境界からの離隔、日照)、施工者・設計者の契約責任や瑕疵責任、欠陥建築による損害賠償。各国の民法典や判例法が定めます。ハンムラビ法典の建築条文はこの系譜です。
- 公法上のルール:国家が建築行為を事前に拘束するルールで、これが狭義の「建築法規」です。多くの国で、さらに2つに分かれます。
- 建築物そのものの安全に関する規制:構造、防火、避難、衛生、設備。英語ではbuilding code(building regulations)と呼ばれます。
- 建築物と都市の関係に関する規制:用途地域(ゾーニング)、建蔽率・容積率、高さ制限、道路との関係。英語ではzoning、planning lawと呼ばれます。
この2つを一つの法律に収めるか、別の法律にするかは国によって異なり、その違いは19世紀に2つの規制がどこから生まれたかで説明できます。
- 一つの法律に収める型(ドイツ起源):19世紀のドイツでは、建物の安全も、街路からの後退線も、地区ごとの高さ・密度の制限も、すべて建築警察(Baupolizei)という一つの行政権限の下にあり、フランクフルトの段階建築条例(1891年)のような世界最初期のゾーニングも、都市計画の法ではなく建築警察令の一部として生まれました(Sutcliffe, 1981; Logan, 1976)。この枠組みをそのまま継受した国では、建物単体の基準と都市との関係の基準が一つの法律に同居します。日本の市街地建築物法(1919年)は、同時に公布された都市計画法が用途地域を「指定」し、地域内で何を建ててよいかという実体的な制限は市街地建築物法に置くという分担で、地域制を建築警察の一部として設計しました(Sorensen, 2002; 石田, 1987)。1950年の建築基準法もこの構成(単体規定と集団規定)を引き継ぎ、日本法を継受した韓国の建築法(1962年)、また建築許可と都市計画を一つの法律(İmar Kanunu、1985年)で扱うトルコも同じ型です。興味深いのは、この型の発祥地であるドイツ自身が、1954年の連邦憲法裁判所の鑑定で「都市計画法は連邦、建築秩序法は州」と権限が分けられたことを機に、連邦建設法(1960年)と州建築法という二本立てに移行したことです(Bauministerkonferenz, 2002/2023)。
- 別々の法律にする型(英・米・仏):英国では建物の安全規制が1848年・1875年の公衆衛生法に基づく自治体の建築細則から育ち、都市計画は住宅改良運動と田園都市運動を背景に1909年の住宅・都市計画法という別の法律として生まれました(Ley, 2000; Sutcliffe, 1981)。米国では建築コードが大火と火災保険業界から、ゾーニングが1916年のニューヨーク市条例と州のポリスパワーから、それぞれ別の系譜で発達し、担当部局も分かれています(Hirt, 2013)。フランスは建設・住宅法典(1978年)と都市計画法典(1954年)という2つの法典を持ちます。2つの規制が別々の社会運動・別々の法源から生まれた国では、法律も別々のままになりました。
つまり「一つの法律か、二つの法律か」は制度設計の優劣ではなく、19世紀に「都市の形の規制」が建築警察の延長として生まれたか、公衆衛生・住宅改良・都市美化という別の運動から生まれたかの違いの反映です。本稿で「建築法規」というときは、主に建築物そのものの安全に関する公法上の規制(building code)を指し、都市計画法と国土開発は本章の中で「関連する制度」として同じ時代区分の下に位置づけます。
紀元前18世紀〜紀元前5世紀 古代の建築ルール
背景:最初の建築ルールは、都市国家で建物が密集し、他人に建物を造らせる(請負)関係が生まれたときに現れました。国家にはまだ建物を事前に検査する行政機構がなく、規律できるのは「事故が起きた後に誰が責任を負うか」だけでした。
何が変わったか。建築に関する紛争が、当事者の私的な報復から、国家が定めた結果責任のルールによる裁定に置き換わりました。工法や材料を指定する発想はまだなく、ルールは「達成すべき結果」と「失敗したときの制裁」だけを定めています。
具体例:
- ハンムラビ法典第228〜233条(紀元前18世紀)は、家が崩れて施主が死ねば建築者を死刑、施主の子が死ねば建築者の子を死刑、財産が失われれば建築者が賠償し自費で建て直す、と定めています。工法・材料の指定は一切ありません。性能規定化の研究では、この条文が「結果だけを定め手段を問わない」性能規定の原型として繰り返し引用されています(Meacham, 2010)。
- ローマの十二表法(紀元前450年頃)は、建物の間に約2.5フィート(約75cm)の空地(アンビトゥス)を空けることを定めたとされ、隣地との関係を規律する相隣関係のルールが公法規制に先立って現れたことを示しています(Robinson, 1992)。
限界:結果責任だけでは、事故が起きるまで欠陥が放置されます。都市が高密化し、一軒の火事が街全体を焼く時代になると、事後責任では足りなくなりました。
1世紀〜18世紀 都市を守る公法規制
背景:
- 大火と再建:古代ローマから近世ヨーロッパ・江戸まで、都市は木造・密集・裸火の生活で、大火が周期的に都市を焼きました。大火の直後は、被災者の再建を急ぎつつ「二度と燃えない街」を作る政治的機会でもありました。
何が変わったか:
- 検査官:国家(皇帝・国王・都市当局)が、建てる前に材料・構造・配置を指定するようになり、それを執行する検査官を置きました。「大火→仕様の強制+検査官」という組み合わせは、その後の建築確認行政の原型です。
- 都市全体の規制:同時に、街路幅や高さ制限のように、建物単体ではなく都市全体の形を規制するルールも同じ法令の中に登場します。
具体例:
- ローマ大火(紀元64年)。市内14区のうち3区が全焼、7区が損傷。ネロ帝の再建規制は、街路幅員を広く取り建物の配列を測量に基づいて規制する、高さを制限する、一定部分を木材ではなく耐火性の石材で造る、共有の界壁ではなく自前の壁で囲う、各戸に消火設備を備える、というものでした(タキトゥス『年代記』15巻43章)。
- 中世ロンドン。1189年の「建築に関する裁定」は、隣家との間の界壁を厚さ3フィート・高さ16フィートの石造とすることを定め、1212年の大火後には茅葺屋根を禁止して瓦・石板・鉛板の屋根を義務づけました(Knowles & Pitt, 1972)。ヨーロッパの中世都市の多くが、同様の都市条例を持っていました。
- 江戸の明暦の大火(1657年)。延焼遮断帯(火除地・広小路)の設定と瓦葺きの奨励が行われ、都市の形を防火のために作り替える政策が東アジアでも独立に現れました(内閣府中央防災会議, 2004)。
- ロンドン大火(1666年)。市域の約8割、約13,200戸を焼失。翌1667年のロンドン再建法は、外壁を煉瓦造または石造とし、建物を街路の格に応じて4つの類型に分け、裏通りは2階建て、通常の街路は3階建て、主要街路は4階建てまで、と類型ごとに階数と壁厚を指定し、執行のために測量士(Surveyor)を任命して違反建築の取り壊し権限を与えました(Ley, 2000)。街路の格で建物を分ける発想は、後の用途地域の遠い先祖です。
- リスボン大地震(1755年)。ポンバル侯の再建計画は、格子状街路と標準化されたファサードに加え、木造の格子を石壁に埋め込んで地震に耐える「ガイオラ・ポンバリーナ」構法を義務づけました。地震を想定した構造仕様を国家が指定した最初期の例です(Cardoso, Lopes, & Bento, 2005)。
この時代のルールはすべて仕様規定で、対象は火災と(まれに)地震でした。まだ「全国に一律に適用される建築法」はなく、都市ごとの条例の時代です。
19世紀 近代建築法規と都市計画の誕生
背景:
- 人口集中:産業革命で人口が都市に集中し、ロンドン・パリ・ベルリン・ニューヨークの労働者街は過密な借家(バックトゥバック住宅、テネメント)で埋まりました。コレラの流行(英国では1831〜32年、1848〜49年)は、貧困街の劣悪な住環境が都市全体の脅威であることを示し、チャドウィックの『労働人口の衛生状態に関する報告』(1842年)は、下水・給水・住宅の規制を国家の責務として提起しました(Chadwick, 1842)。
- 無秩序な開発:他方で、鉄道・工場・投機的な宅地開発が都市を無秩序に拡張させ、街路・上下水道の計画的な整備が必要になりました。
何が変わったか:
- 第一に、建築規制の目的が防火から公衆衛生(採光、通風、排水、居室の最低面積)へ広がりました。
- 第二に、都市ごとの条例だった規制が、国の法律に基づく全国的な枠組み(英国のモデル建築細則、プロイセンの建築線法)に組み込まれました。
- 第三に、街路の配置、用途の分離、地区ごとの密度制限という都市計画が、建築警察の中から独立した専門分野として現れました。ただし、この分離の仕方が国によって異なり、それが今日の「一つの法律か二つの法律か」の違いになっています。
具体例:
- 英国:公衆衛生法とモデル建築細則。1848年公衆衛生法で保健総局が置かれ、1875年公衆衛生法に基づいて地方自治体庁が1877年にモデル建築細則を示しました。街路幅、建物の後退、居室の窓面積、便所と排水、壁厚を定めた細則を各自治体が採用する方式で、いわゆる「細則住宅(byelaw housing)」の整然とした街並みが全国に広がりました(Gaskell, 1983; Ley, 2000)。ロンドンでは1844年・1855年のメトロポリタン建築法が地区測量士(district surveyor)による審査制度を確立しました(Knowles & Pitt, 1972)。
- フランス:パリ改造と建築規制。オスマンのパリ改造(1853〜70年)は、大通りの開設と上下水道の整備を、街路に面する建物の高さ・ファサードの統一規制と一体で進めました。1852年の勅令はパリの街路整備と建築許可を結びつけ、1884年の規制はコーニス高さと屋根勾配を街路幅に応じて定めました(Sutcliffe, 1981)。「街路幅に応じた高さ」という発想は、日本の道路斜線制限を含め各国に広がりました。
- ドイツ:建築警察と段階建築条例。プロイセンの建築線法(1875年)は、市町村が街路の建築線(Fluchtlinie)を計画として定め、その内側での建築を禁じる仕組みを作りました(Sutcliffe, 1981)。バウマイスターの『都市拡張』(1876年)とシュテュッベンの『都市建設』(1890年)で都市計画が学問になり、フランクフルト市長アディッケスの段階建築条例(1891年)は、市域を内側から外側へ複数の地区に分け、地区ごとに階数・建蔽率・用途を段階的に緩めるという、世界最初期の包括的ゾーニングを建築警察令の形で実現しました(Logan, 1976; Sutcliffe, 1981)。
- 米国:テネメント法と大火後の防火規制。ニューヨーク市は1867年・1879年・1901年のテネメント住宅法で、窓のない部屋の禁止、光庭の義務、敷地に対する建築面積の上限(1901年法で70%)を定め、住宅の最低基準を法にしました(Plunz, 1990)。シカゴ大火(1871年)後には市が耐火造を義務づける「防火地区(fire limits)」を設けるなど、大火→防火規制の型が各都市で繰り返されました。
- ドイツから英国・米国・日本へ:ドイツの都市拡張計画とゾーニングは、英国の都市計画運動(1909年の住宅・都市計画法)、米国のゾーニング(ニューヨーク市条例1916年)、日本の都市計画法・市街地建築物法(1919年)の共通の参照元になりました(Ward, 2010; Hirt, 2013; 石田, 1987)。ハワードの『明日の田園都市』(1898年)とレッチワース(1903年)は、過密都市の外に計画的な新都市を作るという発想を世界に広げました(Hall, 2014)。
建築規制は「都市を火から守る」ものから「住民の健康を守る」ものへ、都市ごとの条例から国の法律の下の全国制度へと変わり、その中から都市計画が分かれ始めました。同時に、規制を執行する専門職(測量士、地区検査官、建築警察官)と、規制の内容を書く技術者の役割が確立しました。
20世紀前半 技術基準の国家化
背景:
- 鉄骨・鉄筋コンクリート・エレベーターが高層建築を可能にし、建物の安全は経験則ではなく構造計算で確かめるものになりました。サンフランシスコ(1906年)、メッシーナ(1908年)、関東(1923年)、ロングビーチ(1933年)の大地震は、地震という新しい荷重を法規に取り込む契機になりました。
- 他方、自動車と郊外化が都市を広げ、大都市の用途混在と高層化が「都市全体の秩序」を法で定める必要を生みました。
- 第一次大戦後の住宅不足と1930年代の大恐慌は、国家が住宅供給と地域経済に直接介入する時代を開きました。
何が変わったか:
- 第一に、建築法規の中身が工学的な技術基準(許容応力度、設計荷重、耐震係数)になり、それを書く主体として技術者団体・標準化機関・保険業界が登場しました。
- 第二に、規制の単位が都市から国(または州)に上がり、全国モデルの文書が現れました。
- 第三に、ゾーニングが都市計画の標準手法として法制化され、建築法規と都市計画法が別の法律として整えられ始めました。
- 第四に、国家が河川流域や国土全体を計画的に開発する国土計画という第三の領域が、大恐慌と総動員体制の中で生まれました。
具体例:
- 耐震規定の誕生:1908年のメッシーナ地震(死者約8万人)を受けたイタリアの1909年勅令は、建物の高さを制限し、水平力を建物重量の一定比率(1/8など)として設計することを命じた、近代的な耐震規定の最初の例です(Fajfar, 2018)。日本は関東大震災の翌1924年、市街地建築物法施行規則の改正で設計用水平震度0.1以上を義務化し、国の法規として耐震設計を義務づけた世界初の例とされています(小山, 2021)。米国では1906年サンフランシスコ地震の被害が「火災」として整理されたため耐震規定は生まれず、1925年サンタバーバラ地震後の1927年UBC付録が最初、州レベルの義務化は1933年ロングビーチ地震後のカリフォルニア州法(Field Act・Riley Act)からです(Rossberg & Leon, 2013)。
- 米国の保険業界と民間団体のモデルコード:連邦の建築法はなく、規制権限は州に属します。1871年シカゴ大火、1904年ボルチモア大火を経て、火災の損害を負担する火災保険業界(NBFU)が1905年に最初の全国モデルコードを刊行し、BOCA(1915年)、ICBO(1922年、Uniform Building Code 1927年)、SBCCI(1940年代)の3団体が地域ごとに発達しました(Rossberg & Leon, 2013)。モデルコードは民間団体の出版物で、州議会や市議会が「採用(adoption)」して初めて法になります。
- 英米法の国でも制定法は法である:ここで「英米法は判例の法なのに、議会が採用した文書が法になるのか」という疑問が生まれるかもしれません。英米法系でも、議会や市議会が制定した法律・条例は判例と並ぶ正式な法源で、むしろ現代の法文の大部分は制定法です(「法の歴史」の章の「法典か判例か」を参照)。モデルコードの採用は、州法や市条例が「本州は国際建築コード2021年版を、次の修正を加えて採用する」と定める立法行為であり、これによって民間文書の本文が法の一部になります。この手法を参照による取り込み(incorporation by reference)と呼びます(Congressional Research Service, 2025)。採用時に地域修正が加わるため、厳密には法域の数だけコードが存在します。
- ドイツのプロイセン統一建築令:都市ごとの建築警察令は1919年のプロイセン統一建築令で州単位に統一され、建築線法の系譜は1920年代のワイマール期の住宅・都市計画に引き継がれました(Sutcliffe, 1981)。
- ゾーニングの制度化:ニューヨーク市は1916年、摩天楼による日照遮断と商業の住宅地侵入を背景に、ドイツのゾーニングを参照しつつ、用途・高さ・面積の3種の地区を全市に指定する包括的ゾーニング条例を制定しました(Hirt, 2013)。商務省の標準州ゾーニング授権法(1924〜26年)と連邦最高裁のユークリッド判決(1926年)により、ゾーニングは1920年代末までに全米に広がりました。英国は1909年法に続いて1932年都市農村計画法、フランスは1919年のコルニュデ法で都市計画を法制化し、日本は1919年に都市計画法と市街地建築物法を同時公布して用途地域と建築線制度を導入しました(石田, 1987)。
- 国土計画の誕生:大恐慌下の米国は1933年にテネシー川流域開発公社(TVA)を設立し、多目的ダムによる流域一体の開発というモデルを作りました。ナチス期ドイツは1935年に帝国国土整備庁を置いて国土整備(Raumordnung)を制度化し、日本の内務技師はこれを「国土計画」と訳して学び、1940年の国土計画設定要綱に至りました(石田, 1987)。英国では1940年のバーロウ報告が産業と人口の地理的分布を国家の課題として提起し、戦後の計画体系の設計図になりました(Hall, 2014)。
この時代に確立した「技術者が書き、国(州)が採用し、行政が審査する」という構造が、現在の建築法規の基本形です。
20世紀後半 戦後の全国法・国土計画・地域標準の体系化
背景:
- 第二次大戦後の復興と住宅不足、福祉国家の成立、高度成長と郊外化、そして冷戦と欧州統合が、法制度を国のレベルで体系化する圧力になりました。戦前に都市や州ごとに積み上がった規制を、全国で一つの法律・一つの技術基準に整理する時代です。
何が変わったか:
- 第一に、多くの国で全国的な建築法または全国モデルが整いました。
- 第二に、都市計画法が「開発を許可制で統制する」体系に成熟し、国土計画が法律に基づく制度になりました。
- 第三に、欧州では国境を越えた地域標準(ユーロコード)の構想が始まり、品質担保を保険と責任で行うフランス型の体系も確立しました。
具体例:
- 英国の条例の集積から全国規則へ:1875年公衆衛生法系の建築細則は1936年に全自治体への採用が義務化され、1965年に初の全国統一規則Building Regulations 1965に置き換えられました(Ley, 2000)。都市計画では1947年都市農村計画法が開発の権利を事実上国有化し、すべての開発を計画許可の対象とする裁量型の体系を作り、1946年ニュータウン法と大ロンドン計画(1944年、グリーンベルトと衛星都市)が戦後の都市政策のモデルになりました(Hall, 2014)。
- 米国の3団体の並立から統合へ:BOCA・ICBO・SBCCIの3つのモデルコードが地域ごとに並立し、耐震規定はSEAOC(1959年)→ATC 3-06(1978年)→NEHRP規定(1985年〜)と工学的に高度化しました。3団体は1994年にICCに統合され、2000年にIBCを刊行、現在は全50州で採用されています(Rossberg & Leon, 2013)。
- ドイツの16州の建築法とモデル建築法:1954年の連邦憲法裁判所の鑑定で建築秩序法は州の専属的権限とされ、統一性のために州建設大臣会議がモデル建築法(MBO、初版1960年)を作成し、各州が参照する方式になりました(Maiworm et al., 2023)。都市計画は連邦建設法(1960年)から建設法典BauGB(1986年)へ、国土計画は連邦国土整備法(1965年)へと連邦法で整えられました。
- フランスの法典化と「保険で守る」発想:1954年の都市計画法典、1978年の建設・住宅法典(CCH)と法典化が進み、同年のSpinetta法が民法典以来の10年責任に保険加入義務と民間技術検査機関の検査義務を組み合わせました(DHUP, 2021)。行政の建築許可が審査するのは主に都市計画への適合です。国土計画では1955年のペルーの「成長の極」理論と1963年のDATAR(国土整備・地域活動庁)が、地方の拠点都市に投資を集中させる政策の理論と組織を提供しました。
- 日本の単一法への統合:1950年に市街地建築物法を全面改正して建築基準法を制定し、単体規定と集団規定を一つの法律に収める構成を維持しました。目的規定の「最低の基準」という文言は、建築法規が下限を定める公法であり、それを超える品質は契約(私法)に委ねられるという、各国共通の考え方を示しています。同じ1950年に国土総合開発法が、占領下で「TVA方式の河川総合開発推進」を明記して制定され、1962年の全国総合開発計画、1968年の新都市計画法(開発許可制と区域区分)へと続きました(国土交通省, n.d.; 石田, 1987)。
- 開発モデルの世界的伝播:TVAは日本の国土総合開発法のほか、インドのダモダル渓谷公社(1948年)、オーストラリアのスノーウィーマウンテンズ計画(1949年)、ブラジルのCHESF(1945年)の範になりました(Klingensmith, 2007)。英国のグリーンベルトはオーストラリアのカンバーランド県計画(1948年)や韓国ソウルの開発制限区域(1971年)に、ニュータウンは日本の千里(1962年〜)やシンガポールのHDBニュータウンに広がりました(Bae, 1998)。社会主義陣営ではソ連の五カ年計画とミクロラヨン(近隣住区単位)が中国・東欧の都市・国土計画のモデルになり、欧州では1975年の欧州地域開発基金が後の欧州空間開発展望(ESDP、1999年)に至る超国家的な空間計画の起点になりました(Faludi & Waterhout, 2002)。
- ユーロコードの構想:欧州共同体は1975年、加盟国間の構造設計基準の違いが貿易障壁になっているとして、共通の構造設計規格を作る行動計画を採択しました。作業は1990年に欧州標準化委員会(CEN)に移管され、2002〜07年に全58部が完成、2010年に加盟国は競合する国内規格を撤回しました。
この時代の帰結は、建築法規・都市計画法・国土計画法という3つの領域が、それぞれ全国レベルの法律として分立したことです。20世紀前半までは同じ建築警察や都市条例の中にあった規制が、別々の法律・別々の官庁・別々の専門職に分かれ、今日の「別々の法体系」の姿が定まりました。
1980年代〜現在 性能規定化・規制改革・デジタル化
20世紀末、建築法規は仕様規定から性能規定への転換(「どう造るか」から「何を達成すべきか」へ)という世界的潮流を経験しました(Meacham, Bowen, Traw, & Moore, 2005)。
転換の背景
- 仕様規定が技術革新を阻んだ:戦後に増え続けた仕様規定は、規定作成時に想定していない材料・工法(大スパン構造、新しい防火材料、後には木造高層)を、安全であっても認められませんでした。仕様の集積は法規を肥大化させ、「安全のために何を達成すべきか」という目的が条文から見えなくなっていました(Meacham et al., 2005)。
- 火災安全工学と構造信頼性理論の成熟:1970年代に、火災の成長・煙の流動・避難時間を計算する火災安全工学と、荷重と耐力の確率分布から安全率を導く信頼性設計法が実用段階に入り、「性能を計算で証明する」ことが可能になりました。北欧建築規制委員会は1978年、目標→機能要求→運用要求→検証方法→仕様例という5階層モデルを提案し、性能規定型法規の設計図になりました(NKB, 1978)。
- 規制改革と貿易自由化:1980年代の英国(サッチャー政権)、1990年代のニュージーランド・オーストラリアの規制改革は、「政府は結果を定め、手段は市場と専門家に委ねる」という思想で建築法規を書き直しました。英国の1984年建築法・1985年建築規則は、300ページを超える仕様規定を数十の機能要求に置き換える規制緩和として立案されました(Imrie & Street, 2011)。同時期、GATT東京ラウンドの規格協定(1979年)を継ぐWTO/TBT協定(1995年)第2条8項が「適当な場合には、加盟国は技術規則を設計や記述的特性ではなく性能の観点から定める」と求め、貿易障壁の除去という国際的な圧力が性能規定化を後押ししました(WTO, 1994)。日本の1998年改正がWTO/TBT協定への対応を動機の一つとしたのはこの文脈です。
- 欧州の市場統合:欧州共同体の建設製品指令(1989年)は、建築物の6つの「基本要求」(機械的抵抗と安定性、火災安全、衛生・健康・環境、使用上の安全、騒音防止、省エネと保温)を性能の言葉で定め、加盟国に製品規格と建築法規をこの枠組みに合わせることを求めました(Council Directive 89/106/EEC, 1989)。
何が変わったか:
- 法文の例:(性能規定:英国 Building Regulations 2010 Schedule 1、Requirement B1・原文) "The building shall be designed and constructed so that there are appropriate provisions for the early warning of fire, and appropriate means of escape in case of fire from the building to a place of safety outside the building capable of being safely and effectively used at all material times." (建築物は、火災の早期警報のための適切な措置と、火災時に建物から安全な場所へ、常時安全かつ有効に使用できる適切な避難手段が確保されるよう、設計・建設されなければならない)
- 機能要求:英国型では、数値は法規本体に登場しません。「安全に」「適切な」という機能要求だけを規則に書き、具体的な寸法や工法は法的拘束力のないガイダンス(Approved Documents)に移します。ガイダンス通りなら適合とみなされ、革新的な設計も性能を証明できれば認められます。
具体例(Meacham et al., 2005; ABCB, 2017):
- 英国(1985年):機能要求+Approved Documents方式へ。国家レベルで世界最初期。
- ニュージーランド(1992年):1991年建築法に基づくBuilding Codeで性能規定型へ。ただし2000年代に外壁の雨水浸入による「漏水住宅」問題が広がり、性能規定と民間認証の組み合わせが検証不足を招いた例として研究されています(May, 2003)。
- 豪州(1996年):BCA96で全面転換。性能要求を最上位に置き、従来の仕様は「みなし適合」、代替設計は「Performance Solution」として検証可能に。
- 日本(1998年改正):単体規定を「要求性能+検証方法」に再編。
- フランス(2018〜2020年):ESSOC法に基づく改革で「手段の義務から結果の目標へ」全面書き換え(DHUP, 2021)。
これは「事前の仕様強制」から「結果への責任」への部分的な回帰、いわばハンムラビ法典への先祖返りと読めます。約3800年をかけて、建築法規は「結果だけを問う」→「手段を細かく指定する」→「再び結果(性能)を中心に据える」という循環を描いたことになります。ただし2017年のグレンフェル・タワー火災後の英国のように、性能規定を維持しつつ高リスク建物には仕様的な禁止(可燃性外装材の全面禁止)と公的審査を再導入する動きもあり、循環は単純な一方向ではありません(Hackitt, 2018)。
都市計画・国土計画の統合
- 同じ時期、都市計画と国土計画にも「国家が形を決める」体系からの転換が起きました。英国では1990年代以降、計画許可の裁量を「計画主導」で枠づける方向へ(2004年計画・強制収用法)、フランスでは2000年のSRU法が都市計画を社会的連帯と持続可能性の目標で書き換え、日本では2005年に国土総合開発法が国土形成計画法へ改められて開発から成熟社会の管理へと目的を変えました(国土交通省, n.d.)。欧州では1999年の欧州空間開発展望(ESDP)が、独・仏・蘭の計画伝統を折衷した超国家的な空間計画の枠組みを示しました(Faludi & Waterhout, 2002)。中国は2019年、土地利用計画と都市計画を統合した国土空間規画へ移行しています。分立した3領域を再び統合しようとする動きが、21世紀の共通の方向です。
法典のデジタル化:
- シンガポール:1995年開始のCORENETが全国規模の電子建築申請を世界最初期に実現。e-PlanCheckはBIMを入力して法規適合を自動チェックする世界的先駆(Khemlani, 2005; Eastman, Lee, Jeong, & Lee, 2009)。2023年に後継のCORENET Xが稼働し、2025年以降は大規模プロジェクトでBIM提出が義務化。
- 韓国:電子建築行政システムが2008年から全国運用。建築法規の機械可読化(KBimCode)研究でも先行。
- 日本:2026年から建築確認の「BIM図面審査」が開始(国土交通省, 2024)。
- 英国:グレンフェル後の「ゴールデンスレッド」(安全情報のデジタル記録)要求と結びついて、Approved Documentsの機械可読化が進行。
- 研究動向:自動適合チェック研究の一貫した知見は、ボトルネックが技術ではなく法規テキストの側(曖昧さ、裁量、複雑な参照構造)にあることです(Amor & Dimyadi, 2021)。だからこそ、規則の人間可読版と機械実行版を同時に起草するRules as Codeが国際的に提唱されています(Mohun & Roberts, 2020)。
性能規定化は設計者の裁量を広げる改革でしたが、自動チェックにとっては裁量のない仕様規定の方が扱いやすいという、逆向きのベクトルの緊張があります。
主要国の法体系の継受元と継受先
各国の見出しの下にその国の法の歴史の概観を置き、続けて「継受元(この国が受け継いだもの)」「継受先(この国から広がったもの)」を、一般法・建築法規・都市計画法・国土開発・地域開発・その他の5区分で、古いものから順に列挙しています。
大陸法系(フランス法系)
フランス
革命後の1804年民法典(ナポレオン法典)は「市民が読める一冊の法典」として19世紀の世界標準モデルとなり、征服・独立後の自発的採用・植民地化の3経路で世界に広がりました。建築分野では民法典の10年責任が1978年のSpinetta法で保険制度と結びつき、行政審査より保険で品質を担保する独自の型を作りました。都市計画では1919年のCornudet法以来の法典化と、成長の極理論(1955年)による地域政策で影響を与えています。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1804年 共通法学→フランス民法典(革命後の法典化)。ローマ法・慣習法・革命の理念を統合した「市民が読める一冊の法典」が成立し、19世紀の世界標準モデルになりました。
- 1957年〜 EU→加盟国(上位法)。EU法は加盟国の国内法に優位する超国家的な層を形成し、契約法・消費者法・建設製品規制などで加盟国法を接近させています(継受とは性質が異なるため系統図では破線)。
建築法規
- 特にない(民法典の10年責任(建築物の建設や大規模改修に関わった業者(建築家、工事業者、技術者、職人など)に対し、工事の引き渡しから10年間にわたり厳格な無過失責任を課す法定制度)はローマ法に由来する国内の伝統であり、1978年のSpinetta法も国内で発達しました)
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 20世紀後半 米国→世界(会社法・証券規制・競争法)(市場のグローバル化、部分的影響)。米国法は英語圏を越えて、証券規制・競争法・契約実務(英文契約書)・規制手法(費用便益分析)の第二の発信源となりました。
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 1865年 フランス→イタリア(統一直後の自発的採用)。統一イタリアはフランス民法典を範に民法典を制定し、1942年の再法典化で民法と商法を統合しました。この民商統一の構成は、後にブラジル(2002年)が参照しています(部分的影響)。
- 1866年 フランス→ケベック(英征服後も存続・法典化)。1774年のケベック法で保障されたフランス私法が、フランス民法典の構成をモデルに法典化されました。1994年の新民法典に至るまで、北米で唯一の大陸法系の私法を維持しています。
- 1869年 フランス→アルゼンチン(独立後の法典化)。ベレス・サルスフィエルドの民法典は、フランス民法典と注釈学派に加え、チリ民法典やブラジルのフレイタス草案も参照して起草されました。2015年の民商法典まで約150年間、私法の基礎であり続けました。
- 1870年/1928年 フランス→メキシコ(独立後の法典化・革命後改革)。1870年民法典はフランス民法典・ポルトガル法典・スペインの草案を典拠とし、1928年の連邦民法典もその条文の過半を継承しています。
- 1890年 フランス→日本(近代化改革、旧民法・未施行)。ボアソナードの起草した旧民法は「民法典論争」で施行が延期され、廃止されました(部分的影響)。ただし刑法(1880年)などにはフランス法の影響が残り、後のドイツ法継受への橋渡しとなりました。
- 1916年 フランス・ドイツ→ブラジル(独立後の法典化)。ベヴィラクア草案はフランス民法典の伝統の上にドイツのパンデクテン法学を取り込み、2002年民法典に更新されました。
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 1853〜70年 フランス(オスマン)→米国(自発的参照、1909年)。パリ改造はシカゴ計画(1909年)がオスマンを「真の英雄」と呼ぶなど、シティ・ビューティフル運動の直接の参照点になりました。
- 1909年 フランス→アルゼンチン(専門家招聘)。フランスの計画家ブーヴァールがブエノスアイレス計画を作成し、ラテンアメリカの首都計画にフランス流の都市美化が導入されました。
- 1911〜30年 フランス・ドイツ→ブラジル・サンパウロ(専門家招聘)。ブーヴァール、エナール、シュテュッベンらの参照により、サンパウロの大通り計画(1930年)が作成されました。
- 1957年 CIAM→ブラジリア(新首都建設)。ルシオ・コスタの計画はアテネ憲章の機能都市の思想を新首都に適用した代表例です。
国土開発・地域開発
- 1955年→1959年 フランス(ペルー)・イタリア・米国→ブラジル・SUDENE(後進地域開発)。北東部開発庁SUDENEは、イタリアの南部開発公庫(1950年)とTVAを参照し、成長の極理論(部分的影響)も背景に設立されました。
- 1962年 フランス(ペルー)→日本(拠点開発方式、部分的影響)。全国総合開発計画の拠点開発方式・新産業都市は、成長の極理論との関連が論じられますが、直接継受の一次資料は限定的です。
- 1972年 フランス(ペルー)→韓国(成長拠点戦略、部分的影響)。第1次国土総合開発計画の成長拠点戦略は、途上国に広く拡散した成長の極理論の系譜にあります。
- 1975〜99年 ドイツ・フランス・オランダ→EU(欧州統合)。欧州地域開発基金(1975年)を経て、独のRaumordnung、仏のaménagement du territoire、蘭の計画伝統を折衷した欧州空間開発展望ESDP(1999年)が成立し、領域アジェンダへと続いています。
その他
- 1950年 独→EU(欧州石炭鉄鋼共同体〜EU法秩序)(欧州統合、部分的影響)。EU法の基本概念(比例原則・法的安定性など)にはドイツ行政法・憲法学の影響が指摘され、加盟国法との相互作用の中で形成されました。
イタリア
ローマ法の発祥地であり、11世紀のボローニャ大学による『ローマ法大全』の再発見がヨーロッパ大陸の共通法学を生みました。近代法典としては1865年にフランス民法典を範とした民法典を制定し、1942年に民法と商法を統合した独自の法典に移行しました。耐震規定では1909年以降の規定がトルコの初期規定に影響しています。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1865年 フランス→イタリア(統一直後の自発的採用)。統一イタリアはフランス民法典を範に民法典を制定し、1942年の再法典化で民法と商法を統合しました。この民商統一の構成は、後にブラジル(2002年)が参照しています(部分的影響)。
- 1957年〜 EU→加盟国(上位法)。EU法は加盟国の国内法に優位する超国家的な層を形成し、契約法・消費者法・建設製品規制などで加盟国法を接近させています(継受とは性質が異なるため系統図では破線)。
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 17世紀 共通法学→オランダ(ローマ・オランダ法)。ローマ法にオランダの慣習法を融合した独自の体系が形成され、後に南アフリカとインドネシアへ運ばれる「輸出用の法」になりました。
- 1804年 共通法学→フランス民法典(革命後の法典化)。ローマ法・慣習法・革命の理念を統合した「市民が読める一冊の法典」が成立し、19世紀の世界標準モデルになりました。
- 1900年 共通法学→ドイツ民法典(統一後の法典化)。フランス民法典から約1世紀遅れて、体系性と概念の精密さを重視した法典が成立し、東アジアとヨーロッパ南東部への第二の輸出源となりました。
建築法規
- 1909年〜 イタリア→トルコ(1939年エルジンジャン地震後、1940年)。トルコ最初の耐震規定(一律の地震係数0.10)はイタリアの規定に類似していました。以後トルコは米国規定を参照する系譜に移ります。
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 1955年→1959年 フランス(ペルー)・イタリア・米国→ブラジル・SUDENE(後進地域開発)。北東部開発庁SUDENEは、イタリアの南部開発公庫(1950年)とTVAを参照し、成長の極理論(部分的影響)も背景に設立されました。
その他
- 特にない
ブラジル
ポルトガル法を経てフランス民法典の伝統を受け継ぎ、1916年民法典ではドイツのパンデクテン法学を、2002年民法典ではイタリア型の民商統一を参照した、複数の大陸法系の合流点です。耐震規定は2006年に米国系(ASCE 7)を採用し、地域開発ではTVAとイタリアの南部開発公庫を参照したSUDENE(1959年)が知られます。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1916年 フランス・ドイツ→ブラジル(独立後の法典化)。ベヴィラクア草案はフランス民法典の伝統の上にドイツのパンデクテン法学を取り込み、2002年民法典に更新されました。
建築法規
- 2006年 米国→ブラジル(自発的採用)。ブラジル初の耐震規準NBR 15421はASCE 7-05を基礎としています。地震の少ない国が、国際整合のために米国系を選んだ例です。
都市計画法
- 1911〜30年 フランス・ドイツ→ブラジル・サンパウロ(専門家招聘)。ブーヴァール、エナール、シュテュッベンらの参照により、サンパウロの大通り計画(1930年)が作成されました。
- 1929年→1972年 米国→ブラジル・サンパウロ(資料の翻訳・参照)。米国のゾーニング資料が翻訳・参照され、1972年の包括的ゾーニング法に至りました。
- 1957年 CIAM→ブラジリア(新首都建設)。ルシオ・コスタの計画はアテネ憲章の機能都市の思想を新首都に適用した代表例です。
国土開発・地域開発
- 1945〜48年 米国(TVA)→ブラジル(戦時米州協力)。サンフランシスコ川電力会社CHESF(1945年)と流域委員会(1948年)がTVAを参照して設立されました。
- 1955年→1959年 フランス(ペルー)・イタリア・米国→ブラジル・SUDENE(後進地域開発)。北東部開発庁SUDENEは、イタリアの南部開発公庫(1950年)とTVAを参照し、成長の極理論(部分的影響)も背景に設立されました。
その他
- 20世紀後半 米国→世界(会社法・証券規制・競争法)(市場のグローバル化、部分的影響)。米国法は英語圏を越えて、証券規制・競争法・契約実務(英文契約書)・規制手法(費用便益分析)の第二の発信源となりました。
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 特にない
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
メキシコ
独立後の1870年民法典はフランス民法典・ポルトガル法典・スペインの草案を典拠とし、革命後の1928年連邦民法典もその条文の過半を継承しています。建築法規では1942年の重要度係数、1957年の世界初の義務的マイクロゾーニングなど独自性が強く、他国への輸出元とみなされる点で、米国系規定を採用した他のラテンアメリカ諸国と異なります。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1870年/1928年 フランス→メキシコ(独立後の法典化・革命後改革)。1870年民法典はフランス民法典・ポルトガル法典・スペインの草案を典拠とし、1928年の連邦民法典もその条文の過半を継承しています。
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 特にない
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
アルゼンチン
1869年のベレス・サルスフィエルド民法典はフランス民法典と注釈学派を主源としつつ、チリ民法典とブラジルのフレイタス草案も参照した、ラテンアメリカ法典化の代表例です。2015年に民商統一法典へ移行しました。都市計画ではフランスの専門家招聘(1909年)の影響を受けています。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1869年 フランス→アルゼンチン(独立後の法典化)。ベレス・サルスフィエルドの民法典は、フランス民法典と注釈学派に加え、チリ民法典やブラジルのフレイタス草案も参照して起草されました。2015年の民商法典まで約150年間、私法の基礎であり続けました。
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 1909年 フランス→アルゼンチン(専門家招聘)。フランスの計画家ブーヴァールがブエノスアイレス計画を作成し、ラテンアメリカの首都計画にフランス流の都市美化が導入されました。
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 特にない
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
大陸法系(ドイツ法系)
ドイツ
プロイセン以来の警察法の伝統と、1900年施行のドイツ民法典に代表される体系的・概念的な法典化が特徴です。ドイツ民法典はスイス・ギリシャ・トルコ(スイス経由)・日本・中華民国・韓国・中国へと広がる第二の輸出源となりました。建築法規は州権限の建築秩序法とモデル建築法(1960年)、都市計画では1875年の建築線法と1891年のゾーニングが米国・英国・日本のゾーニングと計画法の源流になり、国土計画ではRaumordnungの概念が日本とEUに影響しています。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1900年 共通法学→ドイツ民法典(統一後の法典化)。フランス民法典から約1世紀遅れて、体系性と概念の精密さを重視した法典が成立し、東アジアとヨーロッパ南東部への第二の輸出源となりました。
- 1957年〜 EU→加盟国(上位法)。EU法は加盟国の国内法に優位する超国家的な層を形成し、契約法・消費者法・建設製品規制などで加盟国法を接近させています(継受とは性質が異なるため系統図では破線)。
建築法規
- 特にない(プロイセンの建築警察令に由来する国内の伝統です)
都市計画法
- 1898年 英国(ハワード)→ドイツ・ヘレラウ(1909年)(自発的採用)。ドイツ田園都市協会(1902年)を経て、ドイツ最初の田園都市が建設されました。田園都市は制度ではなく「概念」として国境を越えた代表例です。
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 20世紀後半 米国→世界(会社法・証券規制・競争法)(市場のグローバル化、部分的影響)。米国法は英語圏を越えて、証券規制・競争法・契約実務(英文契約書)・規制手法(費用便益分析)の第二の発信源となりました。
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 1898年 ドイツ→日本(近代化改革、明治民法)。ドイツ民法典草案を主要な参照元とする明治民法が施行され、日本はドイツ法系に位置づけられました。パンデクテン体系(総則・物権・債権・親族・相続)は現在の民法にも維持されています。
- 1907年 ドイツ→スイス(法学の影響、部分的)。スイス民法典はドイツ法学の影響下で起草された独自の法典で、より簡潔で市民向けの文体を持ちます。これがトルコと中華民国への再輸出元になりました。
- 1916年 フランス・ドイツ→ブラジル(独立後の法典化)。ベヴィラクア草案はフランス民法典の伝統の上にドイツのパンデクテン法学を取り込み、2002年民法典に更新されました。
- 1929〜31年 ドイツ→中華民国(近代化改革)。ドイツ民法典を主とし、スイス・フランス・日本の法を参照した民法典が成立し、1949年以降は台湾で施行され続けています。
- 1986〜2020年 ドイツ・日本・台湾→中国(改革開放後の再導入)。民法通則(1986年)、契約法(1999年)、物権法(2007年)を経て民法典(2020年)が成立しました。ドイツ法系の概念体系に、国際規範(CISG)や東ドイツ民法の要素を取り込んだ、社会主義体制下の大陸法典です。
建築法規
- 1886〜1919年 プロイセン→日本(建築線法の部分的継受)。プロイセンの建築線法(1875年)が内務省で全訳され、1919年市街地建築物法の建築線制度に取り込まれました。ただし収用・補償規定を欠くなど、都市計画的機能より建築警察的側面を重視した受容でした。
都市計画法
- 1875年/1891年 ドイツ→日本(部分的継受、1886〜1919年)。プロイセンの建築線法とドイツのゾーニングが、1919年の都市計画法・市街地建築物法の建築線・用途地域制度に取り込まれました。
- 1904〜09年 ドイツ→英国(ドイツ学習)。ホースフォールらの著作を通じてドイツの都市拡張計画が紹介され、英国最初の計画法である住宅・都市計画法(1909年)の成立を後押ししました。
- 1909〜16年 ドイツ→米国(参照+独自の変形)。マーシュやウィリアムズがドイツのゾーニングを参照してニューヨーク市ゾーニング条例(1916年)が成立しましたが、専用住居地区・一戸建専用地区という米国独自の変形が早期に加えられました。
- 1911〜30年 フランス・ドイツ→ブラジル・サンパウロ(専門家招聘)。ブーヴァール、エナール、シュテュッベンらの参照により、サンパウロの大通り計画(1930年)が作成されました。
- 1928〜32年 英国(ハワード)・ドイツ→トルコ・アンカラ(建国期の専門家招聘)。ドイツ人計画家ヤンセンが田園都市と独計画原理に基づくアンカラ計画を作成し、以後8都市を計画しました。
国土開発・地域開発
- 1934〜40年 ドイツ→日本(戦時総動員体制)。内務技師がナチス期ドイツのRaumordnungを「国土計画」と訳して学習し、1940年の国土計画設定要綱に結実しました。米英ソの計画も併せて参照されており、ドイツ一辺倒ではありません。
- 1975〜99年 ドイツ・フランス・オランダ→EU(欧州統合)。欧州地域開発基金(1975年)を経て、独のRaumordnung、仏のaménagement du territoire、蘭の計画伝統を折衷した欧州空間開発展望ESDP(1999年)が成立し、領域アジェンダへと続いています。
その他
- 1889年 プロイセン→日本(大日本帝国憲法)(近代化改革)。伊藤博文らはプロイセン憲法を主要モデルとして明治憲法を起草し、君主権の強い立憲制と官僚制を整備しました。日本の公法がドイツ法系に位置づけられる起点です。
- 1950年 独→EU(欧州石炭鉄鋼共同体〜EU法秩序)(欧州統合、部分的影響)。EU法の基本概念(比例原則・法的安定性など)にはドイツ行政法・憲法学の影響が指摘され、加盟国法との相互作用の中で形成されました。
日本
明治期にフランス法(旧民法、未施行)を経てドイツ法を継受し(明治憲法1889年、明治民法1898年)、戦後の占領改革で憲法・経済法・刑事手続に米国法が重層しました。建築法規では1924年に世界初の法定耐震規定を導入し、1998年に性能規定化、1999年に建築確認の民間開放、2007年にピアチェックの再強化を経験しています。韓国・台湾・中華民国への継受元でもあり、中国の民法典と国土計画にも間接的影響を与えました。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1890年 フランス→日本(近代化改革、旧民法・未施行)。ボアソナードの起草した旧民法は「民法典論争」で施行が延期され、廃止されました(部分的影響)。ただし刑法(1880年)などにはフランス法の影響が残り、後のドイツ法継受への橋渡しとなりました。
- 1898年 ドイツ→日本(近代化改革、明治民法)。ドイツ民法典草案を主要な参照元とする明治民法が施行され、日本はドイツ法系に位置づけられました。パンデクテン体系(総則・物権・債権・親族・相続)は現在の民法にも維持されています。
- 1946〜48年 米国→日本(占領改革、部分的影響)。日本国憲法、家族法・相続法の改正、刑事訴訟法に米国法の影響が入りました。私法の骨格はドイツ法系のまま、公法と手続法に英米法的要素が重層する構造が生まれました。
建築法規
- 1886〜1919年 プロイセン→日本(建築線法の部分的継受)。プロイセンの建築線法(1875年)が内務省で全訳され、1919年市街地建築物法の建築線制度に取り込まれました。ただし収用・補償規定を欠くなど、都市計画的機能より建築警察的側面を重視した受容でした。
都市計画法
- 1875年/1891年 ドイツ→日本(部分的継受、1886〜1919年)。プロイセンの建築線法とドイツのゾーニングが、1919年の都市計画法・市街地建築物法の建築線・用途地域制度に取り込まれました。
- 1918年〜 英国(ハワード)→日本・田園調布(自発的採用)。内務省の紹介(1907年)と田園都市株式会社の開発を経て、田園都市は日本では郊外住宅地の開発手法として受容されました。
国土開発・地域開発
- 1934〜40年 ドイツ→日本(戦時総動員体制)。内務技師がナチス期ドイツのRaumordnungを「国土計画」と訳して学習し、1940年の国土計画設定要綱に結実しました。米英ソの計画も併せて参照されており、ドイツ一辺倒ではありません。
- 1950年 米国(TVA)→日本(占領期)。国土総合開発法は「TVA方式の河川総合開発推進」を主目的に特定地域総合開発計画を定め、戦後日本の国土計画の出発点になりました。
- 1956〜58年 英国(大ロンドン計画)→日本(大都市圏対応、部分的影響)。首都圏整備法と首都圏整備計画の近郊地帯(グリーンベルト)は大ロンドン計画を参照したとされますが、日本では実現せず挫折しました。
- 1958〜62年 英国(ニュータウン)→日本・千里(高度成長期の自発的採用)。千里ニュータウンは英国のニュータウンをモデルに近隣住区方式で計画され、多摩などの後続ニュータウンの原型になりました。
- 1962年 フランス(ペルー)→日本(拠点開発方式、部分的影響)。全国総合開発計画の拠点開発方式・新産業都市は、成長の極理論との関連が論じられますが、直接継受の一次資料は限定的です。
その他
- 1889年 プロイセン→日本(大日本帝国憲法)(近代化改革)。伊藤博文らはプロイセン憲法を主要モデルとして明治憲法を起草し、君主権の強い立憲制と官僚制を整備しました。日本の公法がドイツ法系に位置づけられる起点です。
- 1946年 米国→日本(日本国憲法)(占領改革)。GHQ草案に基づく日本国憲法は、違憲審査制・人権規定・地方自治などに米国憲法の影響を強く受け、私法はドイツ法系のまま公法に英米法的要素が重層する構造を生みました。
- 1947〜48年 米国→日本(独占禁止法・証券取引法)(占領改革)。反トラスト法と連邦証券法をモデルとする経済法が導入され、戦後日本の企業法制の基礎になりました。
- 20世紀後半 米国→世界(会社法・証券規制・競争法)(市場のグローバル化、部分的影響)。米国法は英語圏を越えて、証券規制・競争法・契約実務(英文契約書)・規制手法(費用便益分析)の第二の発信源となりました。
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 1911〜31年 日本→中華民国(顧問・参照、部分的影響)。清末の民律草案には日本人顧問が関与し、中華民国民法(1929〜31年)は日本民法を含む大陸法の諸法典を参照しました。
- 1912年→1958年 日本→韓国(植民地依用→独立後の法典化)。朝鮮民事令により日本民法が依用され、独立後の1958年民法典はドイツ法を直接参照しつつ、日本民法の構造を継承しました。韓国がドイツ法系に分類される理由です。
- 1986〜2020年 ドイツ・日本・台湾→中国(改革開放後の再導入)。民法通則(1986年)、契約法(1999年)、物権法(2007年)を経て民法典(2020年)が成立しました。ドイツ法系の概念体系に、国際規範(CISG)や東ドイツ民法の要素を取り込んだ、社会主義体制下の大陸法典です。
建築法規
- 1900年/1936年 日本→台湾(植民地法規、部分的影響)。台湾家屋建築規則と台湾都市計画令が施行されましたが、1945年以降は中華民国建築法(1938年)に切り替わり、系統が断絶しました。
- 1934年→1962年 日本→韓国(植民地化→独立後の再立法)。朝鮮市街地計画令が独立後の韓国建築法(1962年)の基本構造となり、単体規定と集団規定を一つの法律に収める日本型の構成が引き継がれました。
都市計画法
- 1934年→1962年 日本→韓国(植民地化→独立後の継続)。朝鮮市街地計画令の中央集権的構造が、独立後の都市計画法(1962年)に「極めて類似した基本構造」として継承されました。米国ゾーニングの影響は歴史的証拠がありません。
- 1936年 日本→台湾(植民地化)。台湾都市計画令が施行され、1945年以降は中華民国都市計画法(1939年、日本の1919年法を参照。部分的影響)に切り替わりました。
国土開発・地域開発
- 1963年/1972年 日本→韓国(制度構造の類似、部分的影響)。国土建設総合計画法(1963年)と第1次国土総合開発計画(1972年)は日本の国土総合開発法・全総と類似した構造を持ちますが、直接継受を明記する出典は限定的です。
- 1980年代 日本→中国(全訳・参照、部分的影響)。日本の全国総合開発計画が中国側で全訳・参照され、京津唐などの国土規划の試点に影響しました。
その他
- 特にない
韓国
日本統治期に日本法(ドイツ法系)が依用され、独立後の1958年民法典、1962年建築法・都市計画法はいずれも日本法の構造を継承しました。一方、耐震規定は1997年以降米国系(UBC・IBC)を採用し、ソウルのグリーンベルト(1971年)は英国を範とするなど、領域ごとに異なる継受元を持つ典型例です。1995年の三豊百貨店崩壊が建築規制の転換点になりました。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1912年→1958年 日本→韓国(植民地依用→独立後の法典化)。朝鮮民事令により日本民法が依用され、独立後の1958年民法典はドイツ法を直接参照しつつ、日本民法の構造を継承しました。韓国がドイツ法系に分類される理由です。
建築法規
- 1934年→1962年 日本→韓国(植民地化→独立後の再立法)。朝鮮市街地計画令が独立後の韓国建築法(1962年)の基本構造となり、単体規定と集団規定を一つの法律に収める日本型の構成が引き継がれました。
- 1997年/2005年 米国→韓国(自発的採用)。1997年耐震規準はUBC 97の基礎せん断力式を採用し、2005年のKBCはIBC 2000の枠組みを採用しました。一般法はドイツ法系、技術基準は米国系という「二重の系統」の典型です。
都市計画法
- 1934年→1962年 日本→韓国(植民地化→独立後の継続)。朝鮮市街地計画令の中央集権的構造が、独立後の都市計画法(1962年)に「極めて類似した基本構造」として継承されました。米国ゾーニングの影響は歴史的証拠がありません。
国土開発・地域開発
- 1963年/1972年 日本→韓国(制度構造の類似、部分的影響)。国土建設総合計画法(1963年)と第1次国土総合開発計画(1972年)は日本の国土総合開発法・全総と類似した構造を持ちますが、直接継受を明記する出典は限定的です。
- 1971年 英国(ロンドン)→韓国・ソウル(都市問題+安保)。ソウルの開発制限区域はロンドンのグリーンベルトを範とし、韓国流に適応されました。今日まで維持されている数少ないグリーンベルトの一つです。
- 1972年 フランス(ペルー)→韓国(成長拠点戦略、部分的影響)。第1次国土総合開発計画の成長拠点戦略は、途上国に広く拡散した成長の極理論の系譜にあります。
その他
- 20世紀後半 米国→世界(会社法・証券規制・競争法)(市場のグローバル化、部分的影響)。米国法は英語圏を越えて、証券規制・競争法・契約実務(英文契約書)・規制手法(費用便益分析)の第二の発信源となりました。
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 特にない
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
トルコ
1926年のケマル世俗化改革でオスマン帝国のイスラム法典を廃止し、スイス民法典・債務法典を翻訳採用した、宗教法から世俗の大陸法への最も急進的な転換例です。建築法規では1940年の最初の耐震規定がイタリア規定に類似し、1968年以降は米国系の規定を地震のたびに参照してきました。都市計画は建国期のドイツ人計画家(ヤンセン)、地域政策はEU加盟交渉の影響を受けています。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1926年 スイス→トルコ(ケマル世俗化改革)。オスマン帝国のイスラム法典(メジェッレ)を廃止し、スイス民法典・債務法典を翻訳採用しました。宗教法から世俗の大陸法への転換を一挙に実現した、最も急進的な継受の例です。
建築法規
- 1909年〜 イタリア→トルコ(1939年エルジンジャン地震後、1940年)。トルコ最初の耐震規定(一律の地震係数0.10)はイタリアの規定に類似していました。以後トルコは米国規定を参照する系譜に移ります。
- 1968年〜 米国→トルコ(地震後の改革)。1968年に米国型の応答スペクトル、1975年に靭性詳細、1998年に応答修正係数が導入され、2018年のTBECはASCE 7-16と整合しています。地震のたびに米国規定を参照する周期が確立しました。
- 2000年代〜 ユーロコード→トルコ(EU加盟プロセス)。EU加盟候補国としてTS EN規格を採用し、米国系の耐震規定とユーロコード系の構造規格が併存しています。
都市計画法
- 1928〜32年 英国(ハワード)・ドイツ→トルコ・アンカラ(建国期の専門家招聘)。ドイツ人計画家ヤンセンが田園都市と独計画原理に基づくアンカラ計画を作成し、以後8都市を計画しました。
国土開発・地域開発
- 2002年/2006年 EU→トルコ(加盟交渉・義務的政策移転)。EU加盟交渉の一環として、NUTS地域区分(2002年)と地域開発庁法(2006年)が導入されました。
その他
- 特にない
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 特にない
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
英米法系
英国
12世紀以来の判例法(コモンロー)を法源の中心とし、大英帝国の拡大により米国・カナダ・オーストラリア・インド・南アフリカ・シンガポール・香港に広がりました。建築法規では1667年のロンドン再建法が建築確認行政の原型となり、1985年に世界最初期の性能規定化を実現、2017年のグレンフェル火災後に執行体制を再強化しています。都市計画では1909年法とハワードの田園都市(1898年)、国土計画では戦後のニュータウンとグリーンベルトが世界に広がりました。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 特にない(コモンローは12世紀以降に国王裁判所の判例として固有に発達し、大陸のようなローマ法の体系的継受は起きませんでした)
建築法規
- 特にない(1667年のロンドン再建法以来、国内で発達しました。近年のグレンフェル火災後の改革も国内起源です)
都市計画法
- 1904〜09年 ドイツ→英国(ドイツ学習)。ホースフォールらの著作を通じてドイツの都市拡張計画が紹介され、英国最初の計画法である住宅・都市計画法(1909年)の成立を後押ししました。
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 20世紀後半 米国→世界(会社法・証券規制・競争法)(市場のグローバル化、部分的影響)。米国法は英語圏を越えて、証券規制・競争法・契約実務(英文契約書)・規制手法(費用便益分析)の第二の発信源となりました。
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 1607年〜 英国→米国(植民地化)。植民地はイングランドのコモンローと衡平法を持ち込み、独立後も「1776年時点のコモンロー」を各州が継受法で維持しました。連邦制の下で州ごとの判例法が分岐する原因にもなりました。
- 1763年〜 英国→カナダ(植民地化)。ケベック以外の諸州はコモンローを継受し、ケベックだけがフランス私法を保持したことで、連邦内に二つの法系が共存する体制が生まれました。
- 1788年〜 英国→オーストラリア(植民地化)。コモンローの継受により、判例法・陪審・実務家型裁判官の制度がそのまま移植され、建築や都市計画の分野でも英国法をモデルとする傾向が長く続きました。
- 1806年〜 英国→南アフリカ(再植民地化)。ローマ・オランダ法の私法の上に、英国の手続法・会社法・証拠法・判例法主義が重なり、世界で最も代表的な「混合法系」が形成されました。
- 1860〜82年 英国→インド(植民地法典化)。刑法典(1860年)、契約法・証拠法(1872年)など、英本国では実現しなかった法典化がインドで実施されました。コモンローの実質を法典の形式で継受した特異な例で、後の英領植民地の法典のモデルにもなりました。
建築法規
- 1837年/1849年 英国→オーストラリア(植民地化)。シドニー・メルボルンの建築法がロンドン建築法を範に制定され、州ごとに分立した建築法が、1988〜90年の建築コード(BCA)による国内統一まで続きました。
- 1856年〜 英国→香港(植民地化)。英国の公衆衛生法・建築法の更新が香港の建築条例改正に反映され続け、1955年の条例が現行法の基礎になりました。
都市計画法
- 1898年 英国(ハワード)→ドイツ・ヘレラウ(1909年)(自発的採用)。ドイツ田園都市協会(1902年)を経て、ドイツ最初の田園都市が建設されました。田園都市は制度ではなく「概念」として国境を越えた代表例です。
- 1900〜14年→1946年 英国→カナダ(専門家の移動)。アダムズら英国の計画家の移動と会議・雑誌を通じて計画思想が伝わり、オンタリオ州計画法(1946年)に結実しました。
- 1911〜13年 英国(ハワード)→オーストラリア・キャンベラ(新首都コンペ)。グリフィンの計画は田園都市の思想を新首都に適用し、低密度で緑地の多いキャンベラの都市構造を決めました。
- 1915年 英国→インド(植民地化)。ボンベイ都市計画法は英1909年法を範とするインド初の都市計画法で、独立後の各州都市計画法の原型になりました。
- 1918年〜 英国(ハワード)→日本・田園調布(自発的採用)。内務省の紹介(1907年)と田園都市株式会社の開発を経て、田園都市は日本では郊外住宅地の開発手法として受容されました。
- 1928〜32年 英国(ハワード)・ドイツ→トルコ・アンカラ(建国期の専門家招聘)。ドイツ人計画家ヤンセンが田園都市と独計画原理に基づくアンカラ計画を作成し、以後8都市を計画しました。
- 1931年 英国→南アフリカ(英連邦・財産権観念で変質)。トランスヴァール都市計画条例は英国都市計画の影響を強く受けつつ、ローマ・オランダ法の財産権観念により土地利用統制型に変質し、集団地域法(1950年)によるアパルトヘイト空間統制、民主化後の統合法SPLUMA(2013年)へと続きます。
- 1939年 英国→香港(植民地化)。英1932年法を範とする都市計画条例が制定されました。
- 1945〜48年 英国→オーストラリア・NSW(戦後成長対応)。1932年法とアバークロンビー大ロンドン計画を参照して、NSW州法(1945年)とカンバーランド県計画(1948年、ゾーニングとグリーンベルト)が作成されました。英1947年法より先行しています。
- 1958〜59年 英国→シンガポール(植民地末期)。英1947年法のマスタープラン方式が導入され、独立後の計画体制の基礎になりました。
国土開発・地域開発
- 1948年 英国(大ロンドン計画)→オーストラリア(戦後成長対応)。カンバーランド県計画がシドニーにグリーンベルトと衛星都市の構想を導入しました。
- 1950〜60年代 英国→シンガポール(植民地末期からの継続)。英国の計画概念に沿ったニュータウンがSITからHDBへ引き継がれ、シンガポールの公共住宅政策の基盤になりました。
- 1956〜58年 英国(大ロンドン計画)→日本(大都市圏対応、部分的影響)。首都圏整備法と首都圏整備計画の近郊地帯(グリーンベルト)は大ロンドン計画を参照したとされますが、日本では実現せず挫折しました。
- 1958〜62年 英国(ニュータウン)→日本・千里(高度成長期の自発的採用)。千里ニュータウンは英国のニュータウンをモデルに近隣住区方式で計画され、多摩などの後続ニュータウンの原型になりました。
- 1971年 英国(ロンドン)→韓国・ソウル(都市問題+安保)。ソウルの開発制限区域はロンドンのグリーンベルトを範とし、韓国流に適応されました。今日まで維持されている数少ないグリーンベルトの一つです。
その他
- 特にない
米国
植民地期に英国のコモンローを継受し、独立後は連邦制の下で州ごとの判例法が発達しました。20世紀後半には会社法・証券規制・競争法で世界の第二の発信源となりました。建築法規は連邦法がなく、保険業界と民間団体のモデルコード(1905年〜、IBC 2000年)を州が採用する方式で、耐震規定(UBC・ATC・NEHRP・ASCE 7)は中南米・トルコ・韓国・インドネシア・中東への最大の輸出元です。都市計画では1916年のニューヨーク市ゾーニングが、国土開発では1933年のTVAが世界的なモデルになりました。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1607年〜 英国→米国(植民地化)。植民地はイングランドのコモンローと衡平法を持ち込み、独立後も「1776年時点のコモンロー」を各州が継受法で維持しました。連邦制の下で州ごとの判例法が分岐する原因にもなりました。
建築法規
- 1625年〜19世紀 英国(・オランダ)→米国(植民地期の建築条例、部分的影響)。ニューアムステルダム(1625年、煙突規制)やボストン(1630年、木製煙突・茅葺屋根の禁止)など植民地都市の建築条例は英国・オランダの都市の慣行に由来し、19世紀の各市の建築条例と「耐火造義務区域(fire limits)」も英国の建築法の考え方を引き継いでいます。ただし体系的な法典の継受ではなく、1905年以降の保険業界・民間団体によるモデルコードは米国独自の発展です。
都市計画法
- 1853〜70年 フランス(オスマン)→米国(自発的参照、1909年)。パリ改造はシカゴ計画(1909年)がオスマンを「真の英雄」と呼ぶなど、シティ・ビューティフル運動の直接の参照点になりました。
- 1909〜16年 ドイツ→米国(参照+独自の変形)。マーシュやウィリアムズがドイツのゾーニングを参照してニューヨーク市ゾーニング条例(1916年)が成立しましたが、専用住居地区・一戸建専用地区という米国独自の変形が早期に加えられました。
国土開発・地域開発
- 特にない(TVAとニューディール期の地域計画は国内起源で、後に世界への輸出元となりました)
その他
- 特にない
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 1946〜48年 米国→日本(占領改革、部分的影響)。日本国憲法、家族法・相続法の改正、刑事訴訟法に米国法の影響が入りました。私法の骨格はドイツ法系のまま、公法と手続法に英米法的要素が重層する構造が生まれました。
建築法規
- 1930年→1941年 米国商務省→カナダ(技術整合)。カナダ国家建築コード(1941年)は米商務省系のモデル規定を直接のモデルとし、州が採用するモデルコード方式を北米で共有する体制が生まれました。
- 1968年〜 米国→トルコ(地震後の改革)。1968年に米国型の応答スペクトル、1975年に靭性詳細、1998年に応答修正係数が導入され、2018年のTBECはASCE 7-16と整合しています。地震のたびに米国規定を参照する周期が確立しました。
- 1993〜96年 米国→チリ(1985年地震後の改革)。チリのNCh433はUBC・ATC 3-06を参照し、ACI 318を正式採用しました。2010年のマウレ地震で良好な性能を示し、米国側が逆にチリの実務を研究する対象になりました。
- 1997年/2005年 米国→韓国(自発的採用)。1997年耐震規準はUBC 97の基礎せん断力式を採用し、2005年のKBCはIBC 2000の枠組みを採用しました。一般法はドイツ法系、技術基準は米国系という「二重の系統」の典型です。
- 2002年 米国→インド(自発的採用)。IS 1893の2002年改訂でNEHRPの表が採用され、1962年初版以来の独自体系に米国系の要素が入りました。
- 2002〜19年 米国→インドネシア(自発的採用)。SNI 1726はUBC 97・ASCE 7-10・ASCE 7-16を順に参照し、SNI 2847はACI 318系です。
- 2006年 米国→ブラジル(自発的採用)。ブラジル初の耐震規準NBR 15421はASCE 7-05を基礎としています。地震の少ない国が、国際整合のために米国系を選んだ例です。
- 2007年/2018年 米国(ICC)→サウジアラビア(技術協定)。サウジ建築コードはICCのI-Codesを基礎とし、2018年版は2015年版I-Codesに準拠しています(ICC, n.d.)。湾岸地域(UAEを含む)への米国モデルコードの影響圏を形成しました。
都市計画法
- 1929年→1972年 米国→ブラジル・サンパウロ(資料の翻訳・参照)。米国のゾーニング資料が翻訳・参照され、1972年の包括的ゾーニング法に至りました。
- 1951年 米国(マイヤー)・CIAM→インド・チャンディーガル(独立後の新州都)。マイヤーの近隣住区案をル・コルビュジエが再構成した計画で、英国ニュータウンではなく米国・CIAM系の系譜に属します。
国土開発・地域開発
- 1945〜48年 米国(TVA)→ブラジル(戦時米州協力)。サンフランシスコ川電力会社CHESF(1945年)と流域委員会(1948年)がTVAを参照して設立されました。
- 1948年 米国(TVA)→インド(独立前後)。TVAの技師の調査を経て、TVAを模したダモダル渓谷公社が設立されました。
- 1949〜51年 米国(TVA)→オーストラリア(戦後開発)。スノーウィーマウンテンズ計画はTVAをモデルに設計され、米国開拓局と技術援助協定を結びました。
- 1950年 米国(TVA)→日本(占領期)。国土総合開発法は「TVA方式の河川総合開発推進」を主目的に特定地域総合開発計画を定め、戦後日本の国土計画の出発点になりました。
- 1950〜51年 米国(マイヤー)・CIAM→インド・チャンディーガル(独立後の新州都)。近隣住区の思想が独立インドの新州都に適用されました。
- 1955年→1959年 フランス(ペルー)・イタリア・米国→ブラジル・SUDENE(後進地域開発)。北東部開発庁SUDENEは、イタリアの南部開発公庫(1950年)とTVAを参照し、成長の極理論(部分的影響)も背景に設立されました。
その他
- 1946年 米国→日本(日本国憲法)(占領改革)。GHQ草案に基づく日本国憲法は、違憲審査制・人権規定・地方自治などに米国憲法の影響を強く受け、私法はドイツ法系のまま公法に英米法的要素が重層する構造を生みました。
- 1947〜48年 米国→日本(独占禁止法・証券取引法)(占領改革)。反トラスト法と連邦証券法をモデルとする経済法が導入され、戦後日本の企業法制の基礎になりました。
- 20世紀後半 米国→世界(会社法・証券規制・競争法)(市場のグローバル化、部分的影響)。米国法は英語圏を越えて、証券規制・競争法・契約実務(英文契約書)・規制手法(費用便益分析)の第二の発信源となりました。
カナダ
ケベック以外の諸州は英国のコモンローを、ケベックはフランス私法(1866年法典化)を継受し、連邦内に二つの法系が共存する体制です。建築法規では1941年の国家建築コードが米商務省系のモデル規定を直接のモデルとし、都市計画では英国の計画家の移動を通じて1946年オンタリオ州計画法に至りました。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1763年〜 英国→カナダ(植民地化)。ケベック以外の諸州はコモンローを継受し、ケベックだけがフランス私法を保持したことで、連邦内に二つの法系が共存する体制が生まれました。
- 1866年 フランス→ケベック(英征服後も存続・法典化)。1774年のケベック法で保障されたフランス私法が、フランス民法典の構成をモデルに法典化されました。1994年の新民法典に至るまで、北米で唯一の大陸法系の私法を維持しています。
建築法規
- 1930年→1941年 米国商務省→カナダ(技術整合)。カナダ国家建築コード(1941年)は米商務省系のモデル規定を直接のモデルとし、州が採用するモデルコード方式を北米で共有する体制が生まれました。
都市計画法
- 1900〜14年→1946年 英国→カナダ(専門家の移動)。アダムズら英国の計画家の移動と会議・雑誌を通じて計画思想が伝わり、オンタリオ州計画法(1946年)に結実しました。
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 特にない
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
オーストラリア
植民地としてコモンローを継受し、州ごとの建築法(1837年シドニー、1849年メルボルン)は1988〜90年の建築コードで統一され、1996年に世界最初期の性能規定化を実現しました。都市計画では英国の1932年法と大ロンドン計画を参照した1945〜48年のNSW州法とカンバーランド県計画、ハワードの田園都市を新首都に適用したキャンベラ(1913年)、国土開発ではTVAを模したスノーウィーマウンテンズ計画(1949年)が知られます。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1788年〜 英国→オーストラリア(植民地化)。コモンローの継受により、判例法・陪審・実務家型裁判官の制度がそのまま移植され、建築や都市計画の分野でも英国法をモデルとする傾向が長く続きました。
建築法規
- 1837年/1849年 英国→オーストラリア(植民地化)。シドニー・メルボルンの建築法がロンドン建築法を範に制定され、州ごとに分立した建築法が、1988〜90年の建築コード(BCA)による国内統一まで続きました。
都市計画法
- 1911〜13年 英国(ハワード)→オーストラリア・キャンベラ(新首都コンペ)。グリフィンの計画は田園都市の思想を新首都に適用し、低密度で緑地の多いキャンベラの都市構造を決めました。
- 1945〜48年 英国→オーストラリア・NSW(戦後成長対応)。1932年法とアバークロンビー大ロンドン計画を参照して、NSW州法(1945年)とカンバーランド県計画(1948年、ゾーニングとグリーンベルト)が作成されました。英1947年法より先行しています。
国土開発・地域開発
- 1948年 英国(大ロンドン計画)→オーストラリア(戦後成長対応)。カンバーランド県計画がシドニーにグリーンベルトと衛星都市の構想を導入しました。
- 1949〜51年 米国(TVA)→オーストラリア(戦後開発)。スノーウィーマウンテンズ計画はTVAをモデルに設計され、米国開拓局と技術援助協定を結びました。
その他
- 特にない
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 特にない
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
インド
英国植民地期に、英本国では実現しなかったコモンローの法典化(刑法典1860年、契約法・証拠法1872年)が実施され、独立後もこの体系を維持しつつ家族法では宗教法が併存しています。都市計画ではボンベイ都市計画法(1915年)が英1909年法を範とし、国土開発ではTVAを模したダモダル渓谷公社(1948年)とソ連を参照した五カ年計画(1951年)、CIAM系のチャンディーガル(1951年)と、多様な継受元を持ちます。耐震規定は2002年改訂で米国系の要素を取り込みました。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1860〜82年 英国→インド(植民地法典化)。刑法典(1860年)、契約法・証拠法(1872年)など、英本国では実現しなかった法典化がインドで実施されました。コモンローの実質を法典の形式で継受した特異な例で、後の英領植民地の法典のモデルにもなりました。
建築法規
- 2002年 米国→インド(自発的採用)。IS 1893の2002年改訂でNEHRPの表が採用され、1962年初版以来の独自体系に米国系の要素が入りました。
都市計画法
- 1915年 英国→インド(植民地化)。ボンベイ都市計画法は英1909年法を範とするインド初の都市計画法で、独立後の各州都市計画法の原型になりました。
- 1951年 米国(マイヤー)・CIAM→インド・チャンディーガル(独立後の新州都)。マイヤーの近隣住区案をル・コルビュジエが再構成した計画で、英国ニュータウンではなく米国・CIAM系の系譜に属します。
国土開発・地域開発
- 1948年 米国(TVA)→インド(独立前後)。TVAの技師の調査を経て、TVAを模したダモダル渓谷公社が設立されました。
- 1950〜51年 米国(マイヤー)・CIAM→インド・チャンディーガル(独立後の新州都)。近隣住区の思想が独立インドの新州都に適用されました。
- 1951年 ソビエト→インド(独立後の自発的採用)。計画委員会(1950年)と第1次五カ年計画(1951年)はソ連の計画経済を参照し、ソ連援助の製鉄所建設などにつながりました。
その他
- 20世紀後半 米国→世界(会社法・証券規制・競争法)(市場のグローバル化、部分的影響)。米国法は英語圏を越えて、証券規制・競争法・契約実務(英文契約書)・規制手法(費用便益分析)の第二の発信源となりました。
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 特にない
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
混合法系(大陸法と英米法の重層)
南アフリカ
17世紀のオランダ入植でローマ・オランダ法が私法の基礎となり、19世紀の英国による再植民地化で手続法・会社法・判例法主義が重なった、世界で最も代表的な混合法系です。都市計画は英国の影響を受けつつローマ・オランダ法の財産権観念により土地利用統制型に変質し、アパルトヘイト期の集団地域法(1950年)を経て民主化後のSPLUMA(2013年)に至ります。構造規格は2010年にユーロコードを採用しました。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1652年 オランダ→南アフリカ(ケープ入植)。ローマ・オランダ法が私法の基礎となり、今日まで南アフリカの契約法・物権法の骨格として残っています。
- 1806年〜 英国→南アフリカ(再植民地化)。ローマ・オランダ法の私法の上に、英国の手続法・会社法・証拠法・判例法主義が重なり、世界で最も代表的な「混合法系」が形成されました。
建築法規
- 2010年 ユーロコード→南アフリカ・マレーシア(自発的採用)。南アフリカの荷重規準SANS 10160がEN 1990/1991を採用し、マレーシアはMS EN規格を導入しました。
都市計画法
- 1931年 英国→南アフリカ(英連邦・財産権観念で変質)。トランスヴァール都市計画条例は英国都市計画の影響を強く受けつつ、ローマ・オランダ法の財産権観念により土地利用統制型に変質し、集団地域法(1950年)によるアパルトヘイト空間統制、民主化後の統合法SPLUMA(2013年)へと続きます。
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 特にない
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
インドネシア
1847年に施行されたオランダ民法典が独立後も暫定的に効力を持ち、イスラム法・慣習法と並存する混合体制です。建築法規はオランダ植民地期の規準(1935年)から、ACI・英CP110・オランダ規準(1971年)、ニュージーランド規格(1983〜89年)、米国系(2002年以降)へと継受元を変えてきました。都市計画は植民地期の条例が1992年・2007年の空間計画法に法典化されました。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1847年 オランダ→インドネシア(植民地民法典)。オランダ民法典が東インドに施行され、独立後も憲法の移行規定で暫定的に効力を持ち続けています。イスラム法・慣習法と並存する混合体制の起源です。
建築法規
- 1935年→1955年 オランダ→インドネシア(植民地遺制)。オランダ領東インドの鉄筋コンクリート規準が独立後もPBI 1955として継続し、1971年にACI(米)・CP110(英)・オランダ規準を参照して更新されました。
- 1983〜89年 ニュージーランド→インドネシア(二国間技術援助)。ニュージーランドの規格を参照した耐震規定(1983年、1989年)が整備され、2002年以降の米国系規定への移行の基礎になりました。
- 2002〜19年 米国→インドネシア(自発的採用)。SNI 1726はUBC 97・ASCE 7-10・ASCE 7-16を順に参照し、SNI 2847はACI 318系です。
都市計画法
- 1948年→1992年/2007年 オランダ→インドネシア(独立後の法典化)。植民地期の都市形成条例が、独立後の空間計画法(1992年、2007年)に法典化・分権化されました。
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 特にない
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
社会主義法系
ロシア(ソビエト)
1917年革命後のソビエト法は、法を国家と党の政策の道具と位置づけ、冷戦期に中国・東欧・ベトナムへ広がりました。1994年以降の民法典はオランダの法律家の助言を受けつつソ連民法典との連続性を持つ独自の法典で、大陸法系へ移行しています。建築法規のSNiP、都市計画のミクロラヨン、国土開発の五カ年計画は、いずれも社会主義陣営と新興独立国に輸出されました。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1994年〜 オランダ→ロシア(体制転換への助言、部分的影響)。ロシア民法典の起草にオランダの法律家が助言しましたが、1922年・1964年のソ連民法典との連続性も強く、独自の法典と評価されています。
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 1949年 ソビエト→中国(革命・社会主義化)。中華民国の法体系が廃止され、ソ連の法律顧問の下で社会主義法が導入されました。私法は長く法典を持たない状態が続きました。
建築法規
- 1950〜80年代 ソビエト→ベトナム・東欧(陣営内技術援助)。SNiP系の規準が東欧・ベトナム(TCVN)に広がり、東欧はEU加盟後にユーロコードへ、ベトナムは2012年に耐震規定をユーロコード8ベースへ移行しました。
- 1959年 ソビエト→中国(陣営内技術援助)。中国最初の耐震設計規範草案は「ソ連規準に密接に従う」ものでした。1974年以降は独自に発展し、GB 50011(2001年、2010年)へ至ります。
都市計画法
- 1949〜59年 ソビエト→中国(陣営内技術援助)。ソ連の専門家がモスクワ総合計画(1935年)とミクロラヨンの手法を持ち込み、城市規划法(1989年)、城郷規划法(2008年)、国土空間規划(2019年)へと発展する中国の都市計画制度の基礎になりました。
国土開発・地域開発
- 1951年 ソビエト→インド(独立後の自発的採用)。計画委員会(1950年)と第1次五カ年計画(1951年)はソ連の計画経済を参照し、ソ連援助の製鉄所建設などにつながりました。
- 1953年 ソビエト→中国(陣営内援助)。第1次五カ年計画はソ連の援助による156の重点プロジェクトを中核とし、以後の中国の計画体系の骨格を作りました。
- 1964〜80年 ソビエト→中国・三線建設(冷戦下の内陸工業化、部分的影響)。領域生産複合体の思想と中国独自の安全保障上の判断が、内陸部への工業移転を駆動しました。
その他
- 特にない
中国
清末・民国期にドイツ法・日本法を継受した民法典(1929〜31年、現在は台湾で施行)を1949年に廃止し、ソビエト法を導入しました。改革開放後にドイツ法系の概念体系と国際規範を再導入し、2020年に民法典が成立しました。建築法規は1959年のソ連規準から独自発展、都市計画はソ連専門家の技術援助(1949〜59年)を起点に城市規划法(1989年)から国土空間規划(2019年)へ、国土開発はソ連の五カ年計画(1953年)と日本の全総の参照(1980年代)という系譜です。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 1949年 ソビエト→中国(革命・社会主義化)。中華民国の法体系が廃止され、ソ連の法律顧問の下で社会主義法が導入されました。私法は長く法典を持たない状態が続きました。
- 1986〜2020年 ドイツ・日本・台湾→中国(改革開放後の再導入)。民法通則(1986年)、契約法(1999年)、物権法(2007年)を経て民法典(2020年)が成立しました。ドイツ法系の概念体系に、国際規範(CISG)や東ドイツ民法の要素を取り込んだ、社会主義体制下の大陸法典です。
建築法規
- 1959年 ソビエト→中国(陣営内技術援助)。中国最初の耐震設計規範草案は「ソ連規準に密接に従う」ものでした。1974年以降は独自に発展し、GB 50011(2001年、2010年)へ至ります。
都市計画法
- 1949〜59年 ソビエト→中国(陣営内技術援助)。ソ連の専門家がモスクワ総合計画(1935年)とミクロラヨンの手法を持ち込み、城市規划法(1989年)、城郷規划法(2008年)、国土空間規划(2019年)へと発展する中国の都市計画制度の基礎になりました。
国土開発・地域開発
- 1953年 ソビエト→中国(陣営内援助)。第1次五カ年計画はソ連の援助による156の重点プロジェクトを中核とし、以後の中国の計画体系の骨格を作りました。
- 1964〜80年 ソビエト→中国・三線建設(冷戦下の内陸工業化、部分的影響)。領域生産複合体の思想と中国独自の安全保障上の判断が、内陸部への工業移転を駆動しました。
- 1980年代 日本→中国(全訳・参照、部分的影響)。日本の全国総合開発計画が中国側で全訳・参照され、京津唐などの国土規划の試点に影響しました。
その他
- 20世紀後半 米国→世界(会社法・証券規制・競争法)(市場のグローバル化、部分的影響)。米国法は英語圏を越えて、証券規制・競争法・契約実務(英文契約書)・規制手法(費用便益分析)の第二の発信源となりました。
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 特にない
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
宗教法系
サウジアラビア
ハンバル派のイスラム法学を国家法の基礎とし、私法は長く法典を持ちませんでしたが、2023年に民事取引法として初めて法典化されました。建築法規は2007年からICCのI-Codesを基礎とするサウジ建築コードを採用し、都市計画はギリシャのドクシアディスによるリヤド計画(1968〜72年)を出発点とする、宗教法の上に米国系技術基準と外国人専門家の計画が重なる構造です。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 特にない
建築法規
- 2007年/2018年 米国(ICC)→サウジアラビア(技術協定)。サウジ建築コードはICCのI-Codesを基礎とし、2018年版は2015年版I-Codesに準拠しています(ICC, n.d.)。湾岸地域(UAEを含む)への米国モデルコードの影響圏を形成しました。
都市計画法
- 1968〜72年 ギリシャ(Doxiadis)→サウジアラビア(石油収入期の外国コンサル招聘)。リヤド初のマスタープランがドクシアディスにより作成され、サウジの都市計画体系の出発点になりました。
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 特にない
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 特にない
その他
- 特にない
超国家的な法秩序
EU
1957年以来、加盟国の国内法に優位する超国家的な法の層を形成し、指令・規則を通じて加盟国法を接近させています。建築分野では建設製品規則とユーロコード(1975年計画、2010年義務化)が構造設計の共通言語となり、EU域外(トルコ・シンガポール・マレーシア・ベトナム・南アフリカ)にも広がりました。地域政策では欧州地域開発基金(1975年)と欧州空間開発展望ESDP(1999年)が、中東欧加盟国とトルコの計画制度を変えています。
継受元(この国が受け継いだもの)
一般法
- 特にない
建築法規
- 特にない
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 1975〜99年 ドイツ・フランス・オランダ→EU(欧州統合)。欧州地域開発基金(1975年)を経て、独のRaumordnung、仏のaménagement du territoire、蘭の計画伝統を折衷した欧州空間開発展望ESDP(1999年)が成立し、領域アジェンダへと続いています。
その他
- 20世紀後半 米国→世界(会社法・証券規制・競争法)(市場のグローバル化、部分的影響)。米国法は英語圏を越えて、証券規制・競争法・契約実務(英文契約書)・規制手法(費用便益分析)の第二の発信源となりました。
- 1950年 独→EU(欧州石炭鉄鋼共同体〜EU法秩序)(欧州統合、部分的影響)。EU法の基本概念(比例原則・法的安定性など)にはドイツ行政法・憲法学の影響が指摘され、加盟国法との相互作用の中で形成されました。
継受先(この国から広がったもの)
一般法
- 1957年〜 EU→加盟国(上位法)。EU法は加盟国の国内法に優位する超国家的な層を形成し、契約法・消費者法・建設製品規制などで加盟国法を接近させています(継受とは性質が異なるため系統図では破線)。
建築法規
- 2000年代〜 ユーロコード→トルコ(EU加盟プロセス)。EU加盟候補国としてTS EN規格を採用し、米国系の耐震規定とユーロコード系の構造規格が併存しています。
- 2010年 ユーロコード→南アフリカ・マレーシア(自発的採用)。南アフリカの荷重規準SANS 10160がEN 1990/1991を採用し、マレーシアはMS EN規格を導入しました。
- 2013年 ユーロコード→シンガポール(自発的採用)。英国規格(BS)から全面移行し、BSは2015年に廃止されました。英国自身がEU離脱後もユーロコードを維持しているため、旧英領の構造設計はユーロコード系に収斂しています。
都市計画法
- 特にない
国土開発・地域開発
- 2002年/2006年 EU→トルコ(加盟交渉・義務的政策移転)。EU加盟交渉の一環として、NUTS地域区分(2002年)と地域開発庁法(2006年)が導入されました。
- 2004年〜 EU→中東欧加盟国(EU加盟)。ESDPと結束政策の枠組みが、中東欧諸国の戦略的空間計画に導入されました。
その他
- 特にない
まとめ
- 同じ国が領域ごとに異なる継受元を持つ:韓国は一般法・建築法(枠組み)は日本経由のドイツ法系、耐震規定は米国系、グリーンベルトは英国系です。トルコは一般法はスイス経由のドイツ法系、耐震はイタリア→米国系、都市計画はドイツ人計画家、地域政策はEUです。
- 継受の単位が異なる:一般法の継受は「体系ごと」、建築法規は「工学として」、都市計画は「概念として」、国土開発は「モデルとして」移動する。移動する単位が異なるため、同じ国でも領域ごとに系統が食い違います。
- 継受のタイミングが領域ごとに異なる:一般法は独立・革命・占領、建築法規は大地震、都市計画は専門家の往来と植民地行政、国土開発は戦後復興・冷戦・EU加盟です。
- 継受元の多極化:20世紀後半以降、継受元は英米独仏の4か国から、米国(モデルコード・耐震規定)、EU(ユーロコード・結束政策)、そして日本(東アジアの都市計画・国土計画)へと多極化した一方で、技術基準では米国系とユーロコード系という2つの地域標準への収斂が進んでいます。
各国の法体系の分類
この章では、4つのカテゴリー(A 系統と出発点、B 法源と規定の様式、C 権限・主体・運用、D 変化と外圧)に分け、法体系の要素ごとに各国を分類します。分類の根拠は、法系についてJuriGlobeと「法の起源」研究(JuriGlobe, n.d.; La Porta et al., 2008)、法典化の様式と法律家の役割について比較法学の標準的文献(Zweigert & Kötz, 1998; Merryman & Pérez-Perdomo, 2007)、憲法構造についてLijphart(2012)の連邦制・違憲審査の類型とGinsburg(2003)の違憲審査機関の類型です。
カテゴリーA:系統
要素1と要素2は、その国の法がどの伝統から出発し、どのように受け取られたかという「出発点」に関する要素です。
要素1:法系(継受元)
法系は、法源の構造、判例の地位、裁判官のキャリア、公法・私法の区別という国の法体系の「初期設定」を決めます。比較法学では、世界の法体系を歴史的な系譜、法源の構造、法律家の思考様式の共通性によってグループ化し、法系(legal families)と呼びます。法系が会社法・倒産法・規制の内容と強く相関することは、比較法学と「法の起源」研究の双方で示されています(Zweigert & Kötz, 1998; La Porta et al., 2008)。代表的な分類は次の通りです。
- David & Brierley(1985):ロマノ・ゲルマン法系、コモンロー、社会主義法、その他(宗教法・伝統法)の4分類。
- Zweigert & Kötz(1998):ロマニスト法系、ゲルマン法系、北欧法系、コモンロー、その他(極東・宗教法)。
- JuriGlobe(オタワ大学):世界の全法域を大陸法・コモンロー・慣習法・イスラム法・混合に分類した地図とデータ。定量分析の標準的な資料です(JuriGlobe, n.d.)。
- La Portaら(2008):英国法系・フランス法系・ドイツ法系・北欧法系・社会主義法系の5分類で各国の「法の起源」をコード化し、金融発展や規制の量との関係を実証分析。
以上を統合すると、7つの系統と混合法系に整理できます。
カテゴリー
- フランス法系(ロマニスト法系):市民に読みやすい法典、行政裁判所と司法裁判所の分離、公証人制度、中央集権的な行政を特徴とします。
- ドイツ法系(ゲルマン法系):抽象度の高い概念を階層的に組み上げた体系的な法典、大学法学者の学説の影響力、憲法裁判所による違憲審査を特徴とします。
- 北欧法系:ローマ法の影響が薄く、包括的な民法典を持たず、個別の制定法と実務的な法解釈を特徴とし、北欧諸国間の立法協力が制度化されています。
- 英米法系(コモンロー):先例拘束、当事者主義、陪審制、実務家型の裁判官、判例・実務を重視する法文化を特徴とします。
- 宗教法系:宗教の教義を法源とします。最も広く現存するのがイスラム法(シャリーア)で、国家法の基礎とする国と、家族法・相続法に限って適用し商法・刑法・行政法には大陸法や英米法を用いる混合型があります。
- 慣習法系:文字化されていない共同体の慣習を法源とし、土地・家族・紛争解決の領域で国家法と並行して機能します。
- 社会主義法系からの移行系:ソビエト連邦を源流とし、法を国家と党の政策の道具と位置づける法系です。1990年前後の体制転換後、大陸法系に「復帰」した国と、社会主義体制を維持しつつ大陸法(特にドイツ法系)の概念を大規模に導入した国に分かれます。
- 混合法系:複数の法系が一つの法域で共存する型です。法域の数で見ると、世界のかなりの部分が何らかの意味で混合です(JuriGlobe, n.d.)。
各カテゴリーに当たる国・地域
- フランス法系
- フランス:起点。1804年民法典と、行政裁判所(コンセイユ・デタ)を頂点とする行政法の体系。
- イタリア:ナポレオン法典の直接導入(1806年)から1865年・1942年の自国民法典へ。20世紀にはドイツ法学の影響も受けています。
- ブラジル:ポルトガル法を経てフランス法系に属し、1916年民法典はドイツのパンデクテン法学の体系も取り入れました(2002年に新民法典)。
- メキシコ:スペイン法を経て、1870年民法典でフランス民法典を範としました。
- アルゼンチン:1869年民法典(ベレス・サルスフィエルド起草)がフランス法系の典型で、2015年に民商法典へ統合されました。
- ドイツ法系
- ドイツ:起点。ローマ法学説の継受を経て1900年に民法典を施行。
- 日本:フランス法系の旧民法(1890年、未施行)を経て、ドイツ民法典草案を主要な参照元とする明治民法(1898年)を採用。戦後は憲法・経済法で米国法の影響を受けています。
- 韓国:日本民法の依用(1912年)を経て、1958年民法典でドイツ法を直接参照しつつ日本民法の構造を継承。
- トルコ:1926年にスイス民法典・債務法典を翻訳採用し、行政法はフランス型です。
- 英米法系
- 英国:起点。12世紀以来のコモンローと議会制定法。
- 米国:植民地期にコモンローを継受し、独立後に連邦・州の二重構造で発展。
- カナダ:英国法を継受。ケベック州のみフランス私法(1866年民法典、1994年新民法典)を維持する混合。
- オーストラリア:植民地期にコモンローを継受し、1901年の連邦結成後も英国法との連続性を保ちました。
- インド:英国統治下で法典化された英法(1860年刑法典、1872年契約法など)を継受し、家族法では宗教別の身分法が併存します。
- 混合法系
- 南アフリカ:ローマ・オランダ法(私法)と英米法(手続・商事)の重層。
- インドネシア:オランダ法(1847年民法典の暫定適用)、イスラム法(家族法)、慣習法(アダット)の三層。
- 社会主義法からの移行系
- ロシア:帝政期の大陸法→ソビエト法→1994年民法典で大陸法へ復帰。
- 中国:清末・民国期にドイツ法・日本法の概念体系を導入→1949年以降ソビエト法→改革開放後に大陸法の概念を再導入(1986年民法通則、2020年民法典)。
- イスラム法系
- サウジアラビア:シャリーアを国家法の基礎とし、建設・商事分野ではサウジ建築コード(米国系)や商事法典を輸入。
- 超国家的な法秩序
- EU:加盟27か国の大陸法・英米法・北欧法を横断する独自の法秩序で、規則(直接効力)と指令(国内法化)を法源とします。
どちらの法系を採用する国が多いのでしょうか。オタワ大学のJuriGlobeは、世界の政治的実体(国と、法体系が異なる州・属領などの法域)を法系ごとに分類しています。それによると、大陸法だけを法源の基礎とする法域は約110、英米法だけの法域は約55で、両者を混合する法域や、宗教法・慣習法と組み合わせる法域を含めても、大陸法の要素を持つ法域は約170、英米法の要素を持つ法域は約85と、法域の数では大陸法が英米法の約2倍です。人口で見ると、大陸法系の法域に世界人口の約60%、英米法系に約35%、両者の混合に約4%が住んでいます(JuriGlobe, n.d.)。英米法の人口シェアが法域数のシェアより大きいのは、インド・パキスタン・ナイジェリア・米国という人口大国を含むためです。なお、JuriGlobeは米国の各州や英国の構成国を別の法域として数えるため、「国の数」とは一致しません。「法の起源」研究が用いる国単位の分類でも、フランス法系の国が最も多く、英米法系、ドイツ法系、北欧法系の順です(La Porta, Lopez-de-Silanes, & Shleifer, 2008)。
要素2:継受の様式
同じ法系でも、それをどのように受け取ったかで、法と社会の関係は異なります。継受の様式は、征服・植民地化による強制的な移植か近代化のための自発的な採用か、そして受容的(受け入れ側が内容を選び適応させた)か非受容的かで分けられ、非受容的な継受は法の実効性を下げることが示されています(Berkowitz, Pistor, & Richard, 2003)。低所得国で制度の「形だけの模倣」が起きやすいという指摘もこの延長にあります(Andrews, Pritchett, & Woolcock, 2017)。
カテゴリー
- 起点:自国で発展した法体系が他国の継受元になった国。
- 植民地化による移植と独立後の継承:植民地期に宗主国の法が導入され、独立後もそれを基礎として継続した国。
- 独立後の自発的な法典採用:独立後に、他国の法典を範として自ら法典を制定した国。
- 近代化・世俗化のための自発的な継受:主権を保ちながら、条約改正や世俗化のために外国法を自ら導入した国。
- 占領・体制転換による書き換え:敗戦・占領や体制転換によって法体系の重要部分が書き換えられた国。
各カテゴリーに当たる国・地域
- 起点
- 英国:コモンローの起点。
- フランス:フランス民法典の起点。
- ドイツ:ドイツ民法典・パンデクテン法学の起点。
- サウジアラビア:シャリーアを基礎とし、外国法は分野別に選択的に輸入。
- 植民地化による移植と独立後の継承
- 米国:英国植民地としてコモンローを継受し、1776〜89年の独立・建国後も継承。
- カナダ:フランス(1763年まで)と英国の植民地を経て、1867年の連邦結成。
- オーストラリア:1788年以降の英国植民地から1901年の連邦結成へ。
- インド:1858年の英直轄統治下で法典化された英法を、1947年の独立後も継承。
- インドネシア:オランダ植民地法を1945年の独立後も暫定的に継続し、独自法へ段階的に置き換え。
- 南アフリカ:オランダ、次いで英国の植民地化で二重の継受を受け、1996年憲法で再構成。
- 独立後の自発的な法典採用
- ブラジル:1822年独立後、1916年民法典で欧州法典を範に法典化。
- メキシコ:1821年独立後、1870年民法典でフランス法典を採用。
- アルゼンチン:1816年独立後、1869年民法典を制定。
- イタリア:1861年統一後、1865年民法典でナポレオン法典を継承。
- 韓国:1945年独立後、1958年民法典で日本法・ドイツ法を参照して自ら法典化。
- 近代化・世俗化のための自発的な継受
- 日本:不平等条約の改正を目的に、1889年憲法(プロイセン型)と1898年民法(ドイツ民法典草案参照)を導入(Röhl, 2005)。
- トルコ:1923年のローザンヌ条約で治外法権撤廃と引き換えに司法近代化を約束し、1926年にスイス民法典を翻訳採用。
- 占領・体制転換による書き換え
- 日本:1945〜47年の占領期に憲法・民法(家族法)・経済法が米国法の影響で書き換えられました。
- ドイツ:1949年基本法で憲法裁判所と基本権体系を新設(民法典は継続)。
- 中国:1949年にソビエト法を継受し、1978年の改革開放後に大陸法を再導入。
- ロシア:1917年革命でソビエト法へ、1991年の体制転換で大陸法へ復帰。
- 韓国:1910年の併合で日本法が依用され、1945年の独立で再立法。
- 超国家的な受容
- EU:加盟による受容。加盟国は加盟時にEU法体系(アキ・コミュノテール)全体を受け入れます。
継受の帰結については、実証研究が重要な知見を示しています。
- 法の起源が英米法系か大陸法系かによって、現代の投資家保護・規制の量・司法の効率性が系統的に異なります(La Porta et al., 2008)。
- 同じ法を移植しても、受け入れ側が自発的に適応させた「受容的な継受」と、外部から押し付けられた「非受容的な継受」とでは、法の実効性に大きな差が出ます。これをトランスプラント効果と呼びます(Berkowitz, Pistor, & Richard, 2003)。
- 法の起源による分類は粗すぎる、因果解釈に問題があるという比較法学からの批判もあります(Siems, 2007)。
カテゴリーB:法源と規定の様式
法がどのような文書に、どのような様式で書かれ、どこで更新されるかという「法源」に関する要素です。
要素3:法典化の程度と様式
法源の構造(法典中心か、判例中心か、宗教的テキストと学説か、口承の慣習か)と、法典化の程度・様式は、法系を横断して各国を分ける要素です。網羅的な民法典を持つか(フランス法系・ドイツ法系)、持たないか(北欧・英米法系)、持つ場合も市民向けの明快さ(フランス型)か体系性・概念の精密さ(ドイツ型)かという違いは、法文の長さ、起草の文化、そして建築法規で技術基準を「どの段に書くか」に直結します(Zweigert & Kötz, 1998; Dale, 1977)。
カテゴリー
- 網羅的法典・明快型:一つの法分野を市民に読める簡潔な法典に書き尽くし、細部は解釈と学説に委ねる。フランス民法典(1804年)の型。
- 網羅的法典・体系概念型:抽象度の高い概念を階層的に組み上げた精密な法典を持つ。ドイツ民法典(1900年)の型。
- 法典なし・制定法と判例の併用型:包括的な民法典を持たず、個別の制定法と判例で法を形成する。英米法系と北欧法系の型。
- 法典化された英法型:英米法系だが、植民地期に英法が法典の形で導入され、制定法の比重が高い。
- 宗教法典と輸入法典の併用型:宗教法を基礎に、商事・建設などの分野で外国法典を採用する。
- 社会主義法典から民法典へ復帰した型:ソビエト型の法典体系を経て、大陸法型の民法典を再建した。
各カテゴリーに当たる国・地域
- 網羅的法典・明快型
- フランス:民法典に加え、建設・住宅法典、都市計画法典など分野別の法典を持つ「法典の国」。
- イタリア:1942年民法典と、建築統一法典(2001年)など分野別の統一法典。
- ブラジル・メキシコ・アルゼンチン:フランス法系の民法典を持ち、憲法が詳細な点が共通します。
- 網羅的法典・体系概念型
- ドイツ:民法典と、建設法典(BauGB)のような分野別の法典。
- 日本:明治民法以来のパンデクテン体系の民法と、単一の建築基準法。
- 韓国:1958年民法典と単一の建築法。
- トルコ:スイス民法典・債務法典の翻訳採用。
- 法典なし・制定法と判例の併用型
- 英国:民法典を持たず、判例と制定法・委任立法で法を形成。建築規則も「機能要求+指針」という非法典的な構造です。
- 米国:連邦・州の制定法と判例。統一商事法典(UCC)のような部分的な法典化と、民間団体のモデルコードの採用。
- カナダ:英国型(ケベック州は民法典を持つ混合)。
- オーストラリア:英国型。
- 法典化された英法型
- インド:1860年刑法典、1872年契約法、1908年民事訴訟法など、英国統治下で法典の形に書かれた英法を継承。
- 南アフリカ:ローマ・オランダ法の私法と英米法の手続が制定法と判例で並存。
- 宗教法典と輸入法典の併用型
- サウジアラビア:シャリーアを基礎に、2023年の民事取引法や建築コードなど分野別の法典・コードを導入。
- インドネシア:オランダ民法典の暫定適用と、家族法のイスラム法、慣習法の併存。
- 社会主義法典から民法典へ復帰した型
- ロシア:1994年民法典で大陸法型の法典体系を再建。
- 中国:1986年民法通則から2020年民法典へ、大陸法(ドイツ法系)型の法典を整備。
- 超国家的な法秩序
- EU:規則・指令による分野別の立法で、民法典のような包括法典は持ちません。
大陸法と英米法の文章量を実際に測った研究は、英米法の方が文章量が多いことを示しています。
- 米国とドイツの連邦法(1994〜2018年):米国連邦法典(U.S. Code)の語数は1,400万語から2,120万語へ(+51%)、ドイツの連邦法律は450万語から740万語へ(+64%)増えました。いずれも24年で1.5倍以上ですが、絶対量では米国がドイツの約3倍です(Katz, Coupette, Beckedorf, & Hartung, 2020)。
- 規則(委任立法)を加えると差はさらに開く(1998〜2019年):米国の連邦規則集(CFR)は4,390万語から8,430万語へ(+92%)、ドイツの連邦規則(Rechtsverordnungen)は390万語から540万語へ(+38%)。法律と規則を合わせた連邦レベルの法文は、2019年時点で米国約1億600万語、ドイツ約1,300万語と、約8倍の差があります。著者らは「米国の連邦法体系はますます規則に支配され、ドイツは法律に統治され続けている」と要約しています(Coupette, Beckedorf, Hartung, Bommarito, & Katz, 2021)。
- 米国の規則の長期推移:CFRの総ページ数は1950年の9,745ページから1970年の54,834ページ、2019年の185,984ページへと、70年で約19倍になりました(Office of the Federal Register, 2022)。「shall」「must」「may not」「required」「prohibited」という拘束語の数で測ると、1970年の約40万から2016年には108万を超え、年約2万4,000語ずつ増えた1970年代と、年約600語にとどまった1981〜85年(レーガン政権の規制緩和期)のように、政権によって増加速度が大きく変わります(McLaughlin & Sherouse, 2017)。
- 英国:議会制定法の1本あたりの平均ページ数は、1930〜50年の16ページから2000〜10年の85ページへと5倍になりました。本数は減っている(1970年代の年73本から2006年以降は年33本)のに総量は増え、2006年には年4,911ページというピークを記録しています。委任立法(SI)は1950〜90年の年約2,100件から2000年代の年約4,200件へ倍増し、2010年代後半には年1,500〜2,000件に戻りました(House of Commons Library, 2019, 2026)。英国の議会法制局長は2014年、「制定法集は5,000万語で、毎月10万語が追加・変更されている」と述べています(Heaton, 2014)。
- フランス:政府の公式指標では、施行中の法規範の語数は2002年からの20年間で約2倍(+93.8%)の4,410万語となり(Secrétariat général du Gouvernement, 2022)、2026年版では4,880万語・366,999条(2006年比+51%)と「過去最高」を更新しています。環境法典は2005年の約25万語から2026年の約120万語へ、20年で5倍近くに膨らみました(Secrétariat général du Gouvernement, 2026)。
- ドイツ:連邦法律は2010年の1,668本(個別規範43,085)から2024年の1,797本(52,401)、連邦規則は2,655本(36,850)から2,866本(44,475)へと、14年で個別規範数が約21%増えました(Deutscher Bundestag, 2024)。2005〜2011年には法整理により法律数を意図的に約1,550本まで減らした時期もあります(Katz et al., 2020)。
- 日本:施行中の法律は2013年の1,890本から2025年の2,143本、府省令は2016年の3,750本から2025年の4,313本へ増えています(井田, 2013; デジタル庁, 2025)。1年に成立する法律は約120本で、その7〜8割は改正法です(井田, 2013)。
これらを合わせると、次のように整理できます。
- 絶対量では英米法の国のほうが多い。米国連邦法はドイツ連邦法の約8倍、英国の議会制定法は1本あたりドイツ・フランスの法律より格段に長い。比較法学が指摘してきた「英米法の制定法は、裁判官が文言を厳格に読むことを前提に、あらゆる場合を書き尽くす詳細な起草をする」「大陸法の法典は一般原則と抽象的概念で書き、細部は解釈と学説に委ねる」という起草様式の違いが、文章量の差として現れています(Dale, 1977; Zweigert & Kötz, 1998)。
- 増加は「急激」ではなく「持続的」で、どの法系でも止まっていない。年率にすると米国連邦法典2〜4%、ドイツ連邦法律約2%、フランス約3.5%、CFR約3%です。ただし増加速度は政治によって変わり、米国の1970年代の規制拡大期と1980年代前半の停滞、英国の2000年代のピーク、ドイツの2005〜2011年の法整理のように、明確な屈折点があります。
- 増えているのは法律より規則(委任立法)であり、その傾向は英米法の国で強い。米国ではCFRの増加率が連邦法典の2倍以上、英国ではSIが制定法本数の50〜100倍の件数です。ドイツでは逆に法律の増加率が規則を上回ります。技術基準を告示・省令・規格に置く建築法規は、この「規則の膨張」の最前線にあります。
- 「規制の重さ」で測ると逆転する。事業の開業に必要な手続の数や日数で比べた研究では、フランス法系・ドイツ法系・社会主義法系の国のほうが英米法系の国より規制が多いことが示されています(Djankov, La Porta, Lopez-de-Silanes, & Shleifer, 2002)。つまり「文章量」では英米法、「手続の数」では大陸法が多いという、指標によって答えが変わる関係です。
- 比較の限界。語数は言語によって密度が異なり(ドイツ語の複合語、日本語の文字数)、米国の数字は連邦のみで50州の法を含みません。フランスの指標は法典化された部分と非法典化部分を合算しています。異なる指標を横並びにする際は、この点に注意が必要です。
要素4:規範形成の重心
法体系は、議会の制定法、行政の委任立法、裁判所の判例、民間団体や標準化機関の規格という複数の経路で更新されます。法の変化の主な経路が議会による法典の改正か、裁判所の判例の積み重ねかという違いは、法系間の古典的な相違点の一つです(Zweigert & Kötz, 1998)。どの経路に重みがあるかは国によって異なり、民間規格を法が引用する仕組みの厚さ(Schepel, 2005)や、米独の連邦法の計測で示された「米国は規則が、ドイツは法律が体系の成長を担う」という違い(Coupette et al., 2021)がその例です。
カテゴリー
- 法典・法律中心:体系的な法典と議会の法律が中心で、下位法令は補完的。
- 委任立法中心:政令・省令・告示・技術規則など、行政が作る規範に技術的な中身の大部分がある。
- 判例中心:裁判所の判例が主要な更新経路で、制定法はそれを補う。
- 民間規格・モデル文書の参照が厚い:民間団体・標準化機関の規格や見本文書を、法が参照して取り込む慣行が厚い。
各カテゴリーに当たる国・地域
- 法典・法律中心
- ドイツ:法律(連邦法・州法)が体系の成長を担い、学説が解釈を支えます(Coupette et al., 2021)。
- フランス:法典に法律・デクレ・アレテが編み込まれた体系。
- イタリア:法典・法律と省令。
- ブラジル:詳細な憲法と法律、市法。
- メキシコ:詳細な憲法と競合事項の一般法、州法・市規則。
- アルゼンチン:法典と州法・市法。
- 委任立法中心
- 日本:法律の下の政令・省令・告示に技術的な中身があり、行政指導が実務を補います。
- 韓国:大統領令・部令・告示。
- 中国:行政法規・部門規章と強制性国家標準。
- ロシア:政府決定と技術規則・規則集。
- トルコ:省令(Yönetmelik)。
- インドネシア:法令階層法に基づく政府規則・省令・条例。
- サウジアラビア:勅令の下の執行規則とコード。
- 判例中心と制定法の併用
- 英国:判例と制定法・委任立法の併用。
- インド:法典化された英法の制定法と判例、州法。
- 南アフリカ:制定法と判例、国の規則。
- 民間規格・モデル文書の参照が厚い
- 米国:連邦・州の規則が膨張し、民間団体のモデルコードと規格の参照が厚い(Coupette et al., 2021)。
- カナダ:国のモデル文書を州が採用。
- オーストラリア:政府間機関のモデル文書と規格の参照。
- EU:規則・指令と、欧州規格(EN)の参照。
カテゴリーC:権限・主体・運用
誰がどのレベルで立法し、誰が執行権を握り、誰が法を審査し、国家が個人の行為にどう介在し、誰が法を運用するかという「権限と主体」に関する要素です。
要素5:国家の構成
憲法構造は、法体系の「配線」を決めます。36の民主主義国を比較した研究は、連邦制・二院制・違憲審査・中央銀行の独立性が一つの次元にまとまって各国の統治の型を分けることを示しています(Lijphart, 2012)。
カテゴリー
- 単一国家:立法権は中央にあり、地方は法律の委任の範囲で条例を作ります。地方分権や州制度を持つ場合も、州に固有の立法権はありません。
- 連邦制:憲法が州に固有の立法権を保障し、建築のような分野が州の権限に属することが多いです。
- 超国家連合:加盟国の上に条約に基づく法秩序が置かれ、一部の分野で直接適用される規則を作ります。
採用する国・地域
- 単一国家(10か国)
- 英国:1998年以降スコットランド・ウェールズ・北アイルランドへ権限移譲があるが、議会主権の単一国家。
- フランス:地方分権を進めた単一国家。
- イタリア:州制度を持つ単一国家。
- 日本:単一国家。地方は条例で付加します。
- 韓国:単一国家。
- 中国:単一国家(党国家体制)。
- インドネシア:分権を進めた単一国家。
- トルコ:単一国家。
- サウジアラビア:単一の君主制国家。
- 南アフリカ:準連邦的な9州を持つ単一国家。
- 連邦制(9か国)
- 米国:連邦制。建築法規は州の権限。
- ドイツ:連邦制。建築法規は州の権限。
- ロシア:連邦制。ただし技術規制は連邦の専管。
- インド:準連邦的な連邦制。
- ブラジル:連邦・州・市の3層の連邦制。
- メキシコ:連邦制。
- アルゼンチン:連邦制。
- オーストラリア:連邦制。建築法規は州の権限。
- カナダ:連邦制。建築法規は州の権限。
- 超国家連合
- EU:条約に基づく超国家連合。
国家の構成は法系から予測できません。連邦制は英米法系(米国・インド・オーストラリア・カナダ)にもフランス法系(ブラジル・メキシコ・アルゼンチン)にもドイツ法系(ドイツ)にも社会主義法からの移行系(ロシア)にもあり、単一国家も同様に全法系にまたがります。次章で見るように、建築法規の権限配分を決めるのは、法系ではなくこの要素です。
要素6:統治形態
執行権が議会の信任に依存する議院内閣制、国民が選ぶ大統領が執行権を握る大統領制、両者を組み合わせた半大統領制、君主が立法・執行を握る君主制、党が国家機構を指導する党国家体制の区別です。執行と立法の関係は、Lijphart(2012)の「執行・政党」次元にあたり、委任立法(政令・省令)の使われ方や、行政が技術基準を単独で改定できる範囲に影響します。
カテゴリー
- 議院内閣制:内閣が議会の多数派から生まれ、議会に責任を負います。
- 大統領制:大統領と議会が別々に選ばれ、互いに独立します。
- 半大統領制:国民が選ぶ大統領と、議会に責任を負う首相・内閣が併存します。
- 君主制(絶対君主制):君主が立法権と執行権を握り、勅令で立法します。
- 党国家体制:共産党が国家機構を指導し、議会(人民代表大会)と行政が党の決定を法にします。
採用する国・地域
- 議院内閣制(8か国):英国、ドイツ、イタリア、日本、インド、オーストラリア、カナダ、南アフリカ(議会が大統領を選ぶ議院内閣制的な仕組み)。
- 大統領制(7か国):米国、韓国、インドネシア、トルコ(2017年憲法改正で議院内閣制から移行)、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン。
- 半大統領制(2か国):フランス、ロシア(強い大統領)。
- 君主制:サウジアラビア(勅令による立法)。
- 党国家体制:中国。
- 該当なし:EU(欧州委員会・欧州議会・閣僚理事会からなる独自の制度)。
統治形態も法系と独立に分布し、英米法系に議院内閣制(英国・カナダ・オーストラリア・インド)と大統領制(米国)の両方が、フランス法系に半大統領制(フランス)と大統領制(中南米3か国)の両方があります。
要素7:違憲審査
法律が憲法に適合するかを、専門の憲法裁判所が抽象的に審査する型(ケルゼン型)、通常の裁判所が具体的な事件に付随して審査する型(米国型)、裁判所による審査を認めない型に分かれます。20世紀後半に民主化した国は憲法裁判所型を選ぶ傾向があります(Ginsburg, 2003)。
カテゴリー
- 憲法裁判所型:専門の憲法裁判所が法律の違憲審査を集中して行います。
- 付随的審査型:通常の裁判所が、具体的な事件の解決に必要な範囲で法律の違憲を判断します。
- 併用型:憲法裁判所の機能を持つ最高裁判所が、抽象的審査と付随的審査の両方を行います。
- 違憲審査なし:裁判所は法律を無効にできず、議会または党・君主が最終的な判断者です。
採用する国・地域
- 憲法裁判所型(8か国):ドイツ(1951年)、イタリア(1956年)、フランス(憲法院、1958年。2008年以降は事後審査も)、トルコ(1961年)、韓国(1988年)、ロシア(1991年)、南アフリカ(1994年)、インドネシア(2003年)。
- 付随的審査型(7か国):米国(1803年マーベリー判決以来)、日本(最高裁判所)、インド(最高裁判所)、オーストラリア(高等法院)、カナダ(1982年権利章典以降強化)、メキシコ(アンパロ訴訟)、アルゼンチン。
- 併用型:ブラジル(連邦最高裁判所が抽象的審査と付随的審査を併用)。
- 違憲審査なし(3か国):英国(議会主権。1998年人権法による不適合宣言のみ)、中国(全国人民代表大会常務委員会による合憲性審査)、サウジアラビア。
- 超国家レベル:EU(欧州司法裁判所がEU法の統一的解釈と、加盟国法のEU法適合性の審査を担います)。
違憲審査の型は法系と時代に対応しています。憲法裁判所型は大陸法系の国と20世紀後半に民主化した国に、付随的審査型は英米法系の国と、米国型憲法を参照した日本・中南米に集まります。
要素8:裁判所の構成
国家を相手にする争い(行政訴訟)を、司法裁判所とは別の行政裁判所の系統が扱うか、単一の裁判所系統がすべてを扱うかという区別です。裁判所の構成は法系ごとに異なり、司法裁判所と行政裁判所を分離するか(フランス型)、専門の憲法裁判所を置くか(ドイツ型)、単一の裁判所系統がすべてを扱うか(英米法型)に分かれます(Zweigert & Kötz, 1998)。二元型は大陸法の「公法と私法の峻別」に対応し、一元型は英米法の「国家も私人と同じ法・同じ裁判所に服する」という法の支配の理解に対応します(Merryman & Pérez-Perdomo, 2007)。
カテゴリー
- 二元型:行政裁判所を司法裁判所から分離し、最高行政裁判所(国務院など)を頂点とする独立の系統を持ちます。
- 一元型:単一の裁判所系統が民事・刑事・行政のすべてを扱います。
- 混合・独自型:行政系統と司法系統が併存する、または通常裁判所内に行政専門の法廷・系統を置く形です。
採用する国・地域
- 二元型(5か国):フランス(コンセイユ・デタを頂点とする行政裁判所)、イタリア(国務院・地方行政裁判所)、ドイツ(行政・財政・労働・社会の専門裁判所系統)、トルコ(国務院)、インドネシア(行政裁判所)。
- 一元型(10か国):英国、米国、カナダ、オーストラリア、インド、南アフリカという英米法系の国に加え、戦前の行政裁判所を1947年に廃止した日本、行政法院を通常裁判所の系統内に置く韓国、ブラジル、アルゼンチン。
- 混合・独自型(4か国):メキシコ(連邦行政司法裁判所という行政系統と、アンパロを扱う司法系統の併存)、中国・ロシア(通常裁判所内の行政法廷・仲裁裁判所系統)、サウジアラビア(苦情処理院が行政裁判所の機能を担う)(要確認)。
- 超国家レベル:EU(欧州司法裁判所と一般裁判所の二層)。
二元型の裁判所は、大陸法の公私法峻別を保つ国(フランス・イタリア・ドイツ・トルコ・インドネシア)に集まり、国家と個人の関係と強く連動します。一方、同じ大陸法系でも日本・韓国・ブラジル・アルゼンチンは一元型で、公法・私法の区別を学説上は保ちつつ裁判所は分けないという中間形があります。
要素9:国家と個人の関係
公法と私法を峻別し、行政作用を独自の法(行政法)で規律するか(大陸法)、国家も私人と同じ法の下に置くことを原則とするか(英米法)は、法系間の最も古い相違の一つです(Zweigert & Kötz, 1998; Merryman & Pérez-Perdomo, 2007)。この違いは、国の統治の「初期設定」を決めます。行政が事前に許可・審査を行う制度を設計しやすいのは行政法の体系を持つ大陸法系であり、専門職の自己規律と事後的な責任追及に頼る制度が馴染みやすいのは英米法系です。
カテゴリー
- 峻別型:公法(憲法・行政法)と私法(民法・商法)を体系として分け、行政作用を行政法と行政裁判所で規律する。国家は私人とは異なる法に服する。
- 統一型:「国家も私人と同じ法の下にある」という法の支配の観念を原則とし、行政法は判例の中で個別に発達した。
- 国家優位型:党・国家の政策が法に優位し、公法と私法の区別より国家の統制が体系を規定する。
- 宗教法基礎型:宗教法が公私を貫く基礎で、国家の行為も宗教法上の正当性を問われる。
各カテゴリーに当たる国・地域
- 峻別型
- フランス:コンセイユ・デタの判例が形成した行政法の体系。建築では、民法典の10年責任(私法)と都市計画許可(公法)が別の法として動きます。
- ドイツ:「法律の留保」と行政裁判所を中核とする行政法。建築秩序法は公法の典型です。
- イタリア・トルコ・日本・韓国:いずれもフランス・ドイツ型の行政法の体系を継受し、「法律による行政の原理」(日本)のように公法固有の原則を持ちます。
- ブラジル・メキシコ・アルゼンチン・インドネシア:大陸法系の行政法を持ちます(メキシコのアンパロのように英米法的な救済手続を併せ持つ国もあります)。
- 統一型
- 英国:ダイシーの法の支配(公務員も通常の裁判所で通常の法に服する)を原則とし、行政法は20世紀後半に判例で発達しました。
- 米国:連邦・州の行政手続法と判例で行政を統制し、行政機関は議会が権限を与える範囲でのみ行為できます(Louisiana Public Service Commission v. FCC, 1986)。
- カナダ・オーストラリア・インド・南アフリカ:英国型の伝統に、憲法上の権利保障と行政審判所を重ねています。
- 国家優位型
- 中国:党の指導の下で法を統治の道具と位置づけ、行政訴訟は人民法院内で扱われます。
- ロシア:大陸法型の公私法区分を再建しつつ、大統領権力の下で公法の優位が強い体制です。
- 宗教法基礎型
- サウジアラビア:シャリーアが国家の行為の正当性の基礎で、勅令による法はその枠内で制定されます。
- 該当なし
- EU:加盟国の公法・私法の区分をそのまま前提とします。
要素10:法律家の役割分担
法体系の性格は、法律家のどの職種が中心にいるかにも現れます。大陸法では公証人・キャリア裁判官・大学教授が、英米法では弁護士と実務家型の裁判官が中心で、この違いは判決文のスタイル、法学教育、そして専門職への信頼の置き方に及びます(Zweigert & Kötz, 1998; Merryman & Pérez-Perdomo, 2007)。
カテゴリー
- キャリア官僚・学者中心型:法学部卒業後に試験を経て若くして任官するキャリア裁判官と、法典の解釈を体系化する大学教授、契約・登記を扇う公証人が中心。
- 実務家中心型:経験を積んだ弁護士の中から任命される裁判官と、法を作り解釈する主役としての裁判官・弁護士が中心。
- 党・国家官僚中心型:党・国家の官僚機構が法の制定と運用の中心で、裁判所と法曹の独立性が限定される。
- 宗教法学者中心型:宗教法学者(ウラマー)が法解釈の権威を持ち、裁判官もその中から任命される。
各カテゴリーに当たる国・地域
- キャリア官僚・学者中心型
- フランス・ドイツ・イタリア:キャリア裁判官、公証人、大学法学者の三者が制度の中心です。
- 日本・韓国:司法試験と司法修習を経たキャリア裁判官・検察官と、学説の影響力。公証人制度はありますが大陸欧州ほどの比重を持ちません。
- トルコ・インドネシア・ブラジル・メキシコ・アルゼンチン:大陸法型のキャリア裁判官と公証人制度を持ちます。
- 実務家中心型
- 英国・米国・カナダ・オーストラリア:弁護士出身の裁判官と、法曹一元の伝統。
- インド・南アフリカ:英米法型の法曹一元を継承しています。
- 党・国家官僚中心型
- 中国:裁判官は国家公務員体系に組み込まれ、党の政法委員会の指導下にあります。
- ロシア:大陸法型のキャリア裁判官制度を持ちますが、司法の独立性は限定的と評価されています(World Justice Project, 2024)。
- 宗教法学者中心型
- サウジアラビア:シャリーア裁判所の裁判官は宗教法学者から任命され、商事・建設分野では外国人専門家が実務を支えます。
- 該当なし
- EU:加盟国の法曹制度を前提とします。
要素11:国家のタイプ
国家のタイプは、法の「使い方」を左右します。現代国家の7類型は、規制を最小限にし専門職と訴訟で秩序を保つ国から、強い官僚制が事前審査で秩序を作る国まで、法の運用の型を分けます。
カテゴリー
- 自由市場型:規制は最小限、専門職の資格と事後的な責任追及(訴訟)で秩序を保つ傾向。英米法系と重なります。
- 社会民主主義型:高い社会的信頼を前提に、行政と当事者の協議による実務的な規制。北欧諸国で、G20には含まれません。
- 保守主義・コーポラティズム型:職域団体や技術者団体が制度運用に組み込まれ、法典と行政法の体系が厚い。
- 東アジア開発型:強い官僚制が産業政策と一体で規制を運用し、事前審査型の制度が発達。
- 国家資本主義・権威主義型:党・国家の政策が法に優位し、強制的な国家標準による規制。
- レンティア国家:資源収入を基盤とし、宗教法を基礎に商事・建設分野では輸入した法典を採用、執行は外国人専門家に依存。
- 新興・低所得型:法典は先進国から継受されていても、執行能力の制約から法文と実態が乖離しやすい。
各カテゴリーに当たる国・地域
- 自由市場型
- 米国:民間団体のモデルコードと専門職責任、訴訟による事後的な責任追及。
- 英国:専門職の自己規律と、1980年代以降の規制緩和の伝統。
- カナダ:英国型の専門職責任と州ごとの規制。
- オーストラリア:1990年代の規制改革と民間認証の導入。
- 保守主義・コーポラティズム型
- ドイツ:職域団体(建築家会議所・技術者団体・DIN)が制度運用に組み込まれた厚い行政法。
- フランス:法典化と、保険・技術検査機関という制度化された民間の担い手。
- イタリア:職能団体(専門職会)と地域行政の重層。
- 東アジア開発型
- 日本:強い官僚制と行政指導、事前審査型の制度。
- 韓国:開発国家の官僚制と、1987年民主化後の法治の強化。
- 国家資本主義・権威主義型
- 中国:党・国家の政策が法に優位し、強制性国家標準で規制。
- ロシア:大統領権力の下の連邦法と技術規則。
- レンティア国家
- サウジアラビア:石油収入を基盤に、輸入した建築コードと外国人専門家に依存する執行。
- 新興・低所得型
- インド:継受された法典と、市レベルの執行能力の制約。
- ブラジル:詳細な憲法と法典を持つ一方、非正規建設が広範。
- メキシコ:市の権限と自力建設(自己建設)の広がり。
- アルゼンチン:市の建築法典と非正規居住区の並存。
- インドネシア:分権後の県・市の制度整備が進行中。
- 南アフリカ:民主化後の制度整備と非正規居住の並存。
- トルコ:強い中央集権を持つ新興国で、2018年の建築アムネスティが示すように法文と実態の乖離が大きい(7類型には明確に当たらないため、便宜的にここに置きます)。
- 該当なし
- EU:国家のタイプは加盟国ごとに異なります。
カテゴリーD:変化と外圧
法体系が時間の中でいつ書き換えられ、外からどのような力を受けるかという「変化」に関する要素です。
要素12:外的ショックと転換点
革命、敗戦・占領、体制転換、大災害、大事故は法体系を一気に書き換えます。制度は一度定まると、それに適応した組織と利害が蓄積して変更費用が上がるため経路依存的に維持され、短い「決定的転換点(critical juncture)」での選択の影響が長く残ります(North, 1990; Pierson, 2000; Capoccia & Kelemen, 2007)。転換点は国ごとの歴史的事実ですが、その「種類」で分類できます。
カテゴリー
- 革命・独立による創設:革命や独立が近代法体系の出発点になった。
- 敗戦・占領による書き換え:敗戦と占領が憲法・基本法を書き換えた。
- 体制転換:社会主義体制の成立や崩壊、民主化が法体系を転換させた。
- 災害・事故:大地震・大火・建物崩壊などが分野別の法を書き換えた(建築法規で特に重要)。
各カテゴリーに当たる国・地域
- 革命・独立による創設
- 米国:独立革命(1776年)と合衆国憲法(1789年)、南北戦争後の修正条項。
- フランス:1789年革命と1804年民法典。
- ブラジル・メキシコ・アルゼンチン:19世紀前半の独立と、その後の憲法・法典(ブラジル1988年憲法、メキシコ1917年憲法、アルゼンチン1853年憲法)。
- インド:1947年独立と1950年憲法。
- インドネシア:1945年独立と1998年民主化。
- トルコ:1923年共和国建国と1926年の法典採用。
- 敗戦・占領による書き換え
- 日本:1945〜47年の占領と日本国憲法。関東大震災(1923年)と阪神・淡路大震災(1995年)も建築法規の転換点。
- ドイツ:1949年基本法と1990年再統一。
- イタリア:1946年の共和制移行と1948年憲法。
- 体制転換
- ロシア:1917年革命と1991年の体制転換。
- 中国:1949年の建国と1978年の改革開放。
- 韓国:1945年独立、1987年民主化。
- 南アフリカ:1994年の民主化と1996年憲法。
- 災害・事故(建築法規の転換点として)
- 米国:シカゴ大火(1871年)、サンタバーバラ地震(1925年)、ロングビーチ地震(1933年)。
- 英国:ロンドン大火(1666年)、グレンフェル・タワー火災(2017年)。
- イタリア:メッシーナ地震(1908年)、ラクイラ地震(2009年)。
- トルコ:エルジンジャン地震(1939年)、マルマラ地震(1999年)、カフラマンマラシュ地震(2023年)。
- 中国:四川地震(2008年)。
- 韓国:三豊百貨店崩壊(1995年)。
- オーストラリア:Lacrosseビル火災(2014年)。
- 超国家の転換点
- EU:1957年ローマ条約、1992年マーストリヒト条約、2004年の東方拡大。
要素13:国際的な収斂圧力
EU法、国際条約、モデル法、国際技術標準、貿易協定(WTO/TBT協定)は、法系の違いを越えて各国法を接近させます。世界の事業規制の形成を追った研究は、モデル化(先行例の模倣)、相互承認、国際標準化、経済的強制という機構を通じて各国の規制が収斂してきたことを示しています(Braithwaite & Drahos, 2000)。
カテゴリー
- 超国家法の直接効力:EU規則のように、国内法化を待たずに国内で効力を持つ法に服する。
- 加盟交渉・援助条件による義務的な法整合:加盟や融資の条件として法制度の整合を求められる。
- 貿易協定と国際規格による緩い整合:WTO/TBT協定や自由貿易協定、国際規格を通じて技術規則を整合させる。
- 地域統合の枠組み:地域機構の下で部分的に法を調整する。
各カテゴリーに当たる国・地域
- 超国家法の直接効力
- ドイツ・フランス・イタリア:EU規則の直接効力と指令の国内法化。建設分野では建設製品規則とユーロコード。
- 英国:1973〜2020年はEU法の直接効力下にあり、離脱後は貿易協定による緩い整合へ移行。
- 加盟交渉・援助条件による義務的な法整合
- トルコ:EU加盟交渉(2005年〜)に伴う法整合。地域開発庁法(2006年)などが「義務的な政策移転」の例です。
- 中国・ロシア・サウジアラビア:WTO加盟(2001年、2012年、2005年)に伴う技術規則・標準の整合。
- 貿易協定と国際規格による緩い整合
- 米国・カナダ・メキシコ:北米貿易協定(USMCA)とWTO/TBT。カナダは国内の州間調整協定も持ちます。
- 日本・韓国・オーストラリア:WTO/TBT協定と自由貿易協定。日本の1998年性能規定化はTBT対応が動機の一つでした。
- インド:WTO/TBTによる緩い整合。
- 地域統合の枠組み
- ブラジル・アルゼンチン:メルコスール。
- インドネシア:ASEAN。
- 南アフリカ:南部アフリカ開発共同体。
- 収斂圧力の源
- EU:自身が加盟国と周辺国に対する収斂圧力の源です。
各国の建築法規の分類
現在の各国の建築法規はどこがどう違うのでしょうか。前章で整理した13の要素は、その国の法体系全体を形づくる要因です。本章は、その13の要素のそれぞれが建築法規という一分野にどう現れるかを詳しく見ていきます。前章と同じ4つのカテゴリー(A 系統、B 法源と規定の様式、C 権限・主体・運用、D 変化と外圧)で区切ります。
建築規制の国際比較は、1990年代末からデルフト工科大学のグループ、規制研究者、国際機関によって積み重ねられてきました。それぞれが使った比較の次元を並べると、次のように重なり合っています。
- 技術要求の書き方(仕様/機能/性能)と、みなし適合指針の有無:欧州8か国の技術基準を比較した研究は、規定の様式を仕様規定・機能規定・性能規定に分け、みなし適合の指針の位置づけを比較の柱にしました(Sheridan, Visscher, & Meijer, 2003)。EU27か国の技術基準を比較した研究も、規定の様式に加えて「建築法の有無」「基準を定める政府のレベル(国・地域・地方)」「文書の構成(単一文書か、調整された文書群か、分散した文書か)」「規格の参照の仕方」「既存建築物への適用」を次元として立てました(Pedro, Meijer, & Visscher, 2008)。性能規定化の国際比較でも、目標→機能要求→性能基準→検証方法→みなし適合解という規定の階層が比較の共通言語になっています(Meacham, Bowen, Traw, & Moore, 2005)。規制論一般では、May(2007)が規制の型を「規則基準型(prescriptive)」「性能基準型(performance-based)」「管理基準型(management-based)」の3つに分け、それぞれ責任の問い方が異なると論じています。
- 審査・検査の任務を誰が担うか(公的/民間/混合):欧州の建築確認制度の比較は、「技術要求の範囲」「建築許可の手続」「審査・検査責任の配分」の3要素を比較の枠とし(Meijer & Visscher, 2006)、EU27か国を「規制枠組み・申請・図面審査・現場検査・完成・監督」の6局面で比べて、公的型(5か国)、混合型(21か国)、申請者が公的・民間を選べる二元型(イングランド・ウェールズ)に分類しました(Pedro, Meijer, & Visscher, 2010)。民間関与の程度に着目した執行体制の類型としては、「純粋公的型」「規定された共同規制」「条件付き共同規制」「代替的共同規制」「純粋民間型」の5類型が提案され、オランダ・オーストラリア・カナダの事例に適用されています(van der Heijden, 2009, 2010)。
- 責任と保険の制度:欧州委員会の委託研究は、EU27か国の建設分野の責任・保険制度を「責任の根拠」「責任の期間」「潜在的欠陥に対する保険の義務化」などで比較し、法定の保険義務を持つローマ法系(フランス・スペイン・イタリア)、契約上の保証に依るアングロサクソン型(英国・アイルランド)、契約と職能団体の取り決めに依る北欧型、規範と保証金に依るゲルマン型に分けました(CEA & CSTB, 2010)。世界銀行のDoing Businessは2016年から2020年まで、190か国の建築規制の質を「建築規制の質」「着工前の品質管理」「工事中の品質管理」「完成後の品質管理」「責任・保険制度」「専門資格」の6指標で採点しました(World Bank, 2020)。
- 審査主体の資格・監督、規制の範囲、手続の負担:欧州7か国の品質管理制度の比較は、「法定審査の範囲(免除・届出)」「局面ごとの手続」「公的か民間かの審査主体」「審査主体への資格要求と監督」「施工者への要求(保険・登録)」を比較表の項目にしています(Meijer & Visscher, 2017)。手続の比較では、事前相談、都市計画許可と建築許可の関係、提出図書、審査、着工、検査、完成、手数料、審査期限、第三者の異議申立てが項目です(Pedro, Meijer, & Visscher, 2011)。欧州建築確認機関連合(CEBC)は、加盟国の制度を「申請・計画」「申請・建築」「工事」「完成」「使用」の局面別テンプレートで整理し(CEBC, 2006)、2018年には電子申請・BIMなどデジタル化の7項目で比較しています(CEBC, 2018)。
- 制度の能力と社会技術システム:世界銀行の「レジリエンスのための建築規制」は、途上国を含む比較のために「法的・行政的枠組み」「規制の作成・維持」「実施(執行体制、非正規建設、事後検査)」の3本柱の評価枠組みを示し(World Bank & GFDRR, 2015; Moullier, Meacham, Krimgold, & Franchini, 2017)、建築規制を法・市場・組織が相互作用する社会技術システムとして捉える枠組みも提案されています(Meacham & van Straalen, 2018)。
これらの枠組みを重ねると、3つ以上の枠組みで繰り返し現れる次元は、①技術要求の書き方、②審査・検査の任務配分と担い手、③責任・保険と専門資格、④基準を定める政府のレベルと文書の構成、⑤規格の参照とみなし適合指針の位置づけ、の5つです。先行研究が用いるこれ以外の次元、すなわち「規制の範囲」(Sheridan et al., 2003; Meijer & Visscher, 2017)、「手続の負担」(Pedro et al., 2011; World Bank, 2020)、「執行能力と非正規建設」(World Bank & GFDRR, 2015; Moullier et al., 2017)、「既存建築物への適用」(Pedro et al., 2008)、「デジタル化」(CEBC, 2018)、都市計画の「確実性か裁量か」(Booth, 1996)についても同じ構成で扱います。これに加えて、本稿の系統図から得られる「技術基準の系統」と「継受の様式」、そして国際標準との整合を立てることで、先行研究が建築規制の国際比較に用いてきた次元を網羅し、かつ前章の法体系の要素との一対多の対応を完結させています。
データは、世界銀行のDoing Business 2020(2019年5月時点の調査)、World Justice Projectの法の支配指数2024、各国の統計を用いています。
カテゴリーA:系統
要素1:技術基準の系統(継受元)
一般法における法系(前章の要素1)に当たるのが、建築法規では技術基準の系統です。構造・耐震・防火の技術基準は「法」よりも「工学」として国境を越えるため、一般法では大陸法系に属する国が建築の技術基準では米国系に属するというねじれが多く見られます。「建築法規の歴史」の章で整理した継受の系統図から、主要国の技術基準の継受元は次のカテゴリーに分かれます。
カテゴリー
- 起点(独自の系統を発展させた国):自国で技術基準を発展させ、他国の継受元になった国。米国系(UBC・IBC・ASCE 7・NEHRP)、英国系(ロンドン建築法→Building Regulations)、ドイツ系(建築警察→州建築法)、フランス系(法典化と保険)、日本系(1924年の法定震度)、ユーロコード系(EU)、ソ連系(SNiP)、そしてメキシコ(1942年の重要度係数、1957年の義務的マイクロゾーニング)がこれに当たります。
- 米国系を採用:UBC・IBC・ASCE 7・NEHRPの耐震・構造規定を直接または間接に採用した国。
- ユーロコード系を採用:EU加盟国以外で、ユーロコードを構造設計規格として採用した国。
- 日本系を採用:日本の建築法規の枠組みを継受した国・地域。
- ソ連系を採用:ソ連のSNiP・耐震規準を継受した国。
- 複数系統の合流:時期や分野によって異なる系統を採用し、現在の体系が複数の系統の合流点にある国。
各カテゴリーに当たる国・地域
- 起点
- 米国:保険業界のモデルコード(1905年)からUBC(1927年)、IBC(2000年)へ。耐震規定はSEAOC(1959年)→ATC 3-06(1978年)→NEHRP(1985年〜)→ASCE 7という系譜で、世界最大の輸出元です(Rossberg & Leon, 2013)。
- 英国:ロンドン建築法群(1667年〜)からBuilding Regulations(1965年、1985年性能規定化)へ。英連邦への輸出元でしたが、構造設計規格は2010年にユーロコードへ移行しました(下記「ユーロコード系を採用」にも該当)。
- ドイツ:建築警察令からモデル建築法(1960年)と州建築法へ。日本の建築線制度の継受元です。
- フランス:法典化と10年責任・保険という独自の体系。
- イタリア:1909年の耐震勅令が近代耐震規定の起点で、トルコの最初の耐震規定(1940年)の参照元でした(Fajfar, 2018)。
- 日本:1924年に国の法規として世界初の耐震設計を義務化し、朝鮮・台湾への輸出元になりました(小山, 2021)。
- メキシコ:1942年の重要度係数、1957年の世界初の義務的マイクロゾーニングなど独自性が強く、他国への輸出元とみなされています。
- ロシア:ソ連のSNiPを起点とし、規則集(СП)へ更新しています。
- EU:1975年の行動計画から2007年に完成したユーロコードの源です。
- 米国系を採用
- サウジアラビア:ICCとの技術協定により、I-Codesを基礎とするサウジ建築コード(2007年、2018年版は2015年版I-Codes準拠)を採用(ICC, n.d.)。
- カナダ:国家建築コード(1941年)が米商務省系のモデル規定を参照し、その後は独自に発展(Canadian Commission on Building and Fire Codes, n.d.)。
- ブラジル:初の耐震規準NBR 15421(2006年)がASCE 7-05を参照。
- アルゼンチン:INPRES-CIRSOCの耐震規則が米国系を参照。
- 韓国:耐震規定にUBC 1997、IBC/ASCE 7を採用(1997年、2005年)。
- 中国:改革開放後の耐震設計規範(GB 50011)の改訂で米国の規定を参照。
- トルコ:1968年以降の耐震規定がUBC/SEAOCを参照し、2018年版はASCE 7-16と整合。
- インドネシア:耐震規格SNI 1726(2002年以降)がUBC 97・ASCE 7を、コンクリート規格SNI 2847がACI 318を参照。
- インド:耐震規格IS 1893の2002年改訂で米国系NEHRPの考え方を採用。
- 英国系を採用
- オーストラリア:1837年のシドニー建築法以来、植民地としてロンドン建築法を継受。州法の分立を経て独自のBCA(1988〜90年)・NCC(2011年)に統一しましたが、枠組みは英国系です。
- インド:植民地期の英国系の規格・建築条例が、独立後の国家建築コード(1970年)とIS規格の土台になりました。
- 南アフリカ:英国系の間接的影響のもとで自治体建築条例が発達し、1977年の国家建築規則に統一されました。
- インドネシア:コンクリート規準に英国のCP110(1971年)を参照しました。
- ユーロコード系を採用
- 南アフリカ:荷重規準SANS 10160(2010年)がEN 1990/1991を採用。
- トルコ:EU加盟プロセスの中で、国内規格をユーロコードと整合させる方針を採用。
- 英国:起点でありながら、2010年に自国の構造設計規格(BS)を撤回してユーロコードへ移行。
- 日本系を採用
- 韓国:建築法規の枠組みは日本系(朝鮮市街地計画令1934年→建築法1962年)で、単体規定・集団規定・告示という構成を継承しています。
- 中国:改革開放後の規範改訂で、米・欧とともに日本の基準を参照しました(部分的参照)。
- ソ連系を採用
- 中国:1950年代のソ連の技術援助のもとで技術基準を整備し、最初の耐震設計規範草案(1959年)はソ連の規準に基づきました。
- その他の系統を採用
- トルコ:最初の耐震規定(1940年)はイタリアの1937年規定を参照しました(Fajfar, 2018)。
- インドネシア:植民地期のオランダ規準(1935年)から出発し、1983〜89年にはニュージーランド規格を参照しました。
- 複数系統の合流(上記の2つ以上に当たる国)
- 韓国:日本系(枠組み)+米国系(耐震)。
- 中国:ソ連系→米・欧・日を参照して独自発展(GB 50011)。
- トルコ:イタリア系(1940年)→米国系(1968年〜)+ユーロコード(EU加盟プロセス)。
- インドネシア:オランダ系(1935年)→英国系・米国系(1971年)→ニュージーランド系(1983〜89年)→米国系(2002年〜)。
- インド:英国系(枠組み)+米国系(耐震、2002年)。
- 南アフリカ:英国系(枠組み)→ユーロコード(2010年)。
- 英国:自国系統の起点→ユーロコード(2010年)。
建築法規も、一般法と同じく継受によって広がってきました。ただし経路は一般法と一致しません。一般法では大陸法系に属する国が、建築の技術基準では米国の耐震規定を採用している例が多くあります。主要国への流れを、背景と時期を付して整理します。
要素2:技術基準の継受の様式
建築の技術基準も、押しつけられたか、自ら選んだか、技術援助で持ち込まれたか、市場統合で義務化されたかによって、その後の運用が異なります。
カテゴリー
- 起点・独自発展:自国で技術基準を発展させ、外国基準の参照は部分的にとどまる。
- 植民地化・依用による移植:植民地期に宗主国の建築法規・規格が導入され、独立後もその枠組みが継続した。
- 自発的採用(地震後の改革・国際整合):主権国家が大地震後の改革や国際整合を動機に外国の基準を自ら採用した。
- 技術協定・技術援助による導入:外国の団体・政府との技術協定や技術援助によって基準が導入された。
- 市場統合・加盟による義務化:地域統合の一環として共通規格の採用が義務づけられた。
各カテゴリーに当たる国・地域
- 起点・独自発展
- 米国・英国・ドイツ・フランス・イタリア・日本・メキシコ・ロシア:いずれも自国の系統の起点です(要素1参照)。
- 植民地化・依用による移植
- オーストラリア:ロンドン建築法群を範とする各植民地の建築法(1837年シドニー、1849年メルボルン)。
- インド:英国系の規格・条例の間接的影響を受けた国家建築コード(1970年)。
- 韓国:朝鮮市街地計画令(1934年)による日本法規の依用。独立後の建築法(1962年)がその構造を継承。
- インドネシア:オランダ植民地期の規準(1935年)がPBI 1955へ継続。
- 南アフリカ:英国系の条例・規格の間接的影響。
- 自発的採用(地震後の改革・国際整合)
- 韓国:UBC 1997→耐震規準(1997年)、IBC・ASCE 7→建築構造基準KBC(2005年)。
- ブラジル:ASCE 7-05→NBR 15421(2006年)。
- アルゼンチン:米国系を参照したINPRES-CIRSOC。
- トルコ:1939年エルジンジャン地震後にイタリア規定を、1968年以降は米国系を採用。1999年マルマラ地震後の改革でも米国系との整合を進めました。
- インド:IS 1893の2002年改訂でNEHRPの表を採用。
- 南アフリカ:2010年にユーロコードを荷重規準に採用。
- 中国:改革開放後、米・欧・日の規準を自発的に参照して独自発展。
- 英国:2010年に競合するBS規格を撤回してユーロコードへ移行(EU域内市場統合の義務でもあった)。
- 技術協定・技術援助による導入
- サウジアラビア:ICCとの技術協定によるI-Codesの採用(2007年、2018年)。
- カナダ:米商務省系モデル規定を参照した国家建築コード(1941年、貿易・技術整合)。
- インドネシア:ニュージーランドとの二国間技術援助(1983〜89年)、その後の米国系採用。
- 中国:ソ連の陣営内技術援助による1959年耐震設計規範草案。
- 市場統合・加盟による義務化
- ドイツ・フランス・イタリア:2010年にユーロコードと競合する国内規格を撤回(EU域内市場統合)。
- トルコ:EU加盟プロセスの一環としてのユーロコード導入。
- 該当なし
- EU:自身が義務化の主体です。
要素3:品質担保の思想
建物の品質を最終的に何で担保するかという、制度の基本思想の要素です。先行研究の次元では、責任・保険制度(CEA & CSTB, 2010; World Bank, 2020)と専門資格・専門家への監督(Meijer & Visscher, 2017; World Bank, 2020)に対応し、規制の型ごとに責任の問い方が異なるというMay(2007)の議論とも重なります。
カテゴリー
- 事前審査型:「悪い建物は建つ前に止める」。行政の許可・検査を品質担保の中心に置く体系。行政法の体系を持つ大陸法系の国に多く見られます。
- 責任・保険型:「建つ前に全部は見きれないから、事後の責任を確実にし、保険会社に品質を監視させる」。法定の長期責任と保険加入義務を中心に置く体系。欧州の比較では、法定の保険義務を持つローマ法系(フランス・スペイン・イタリア)がこれに当たります(CEA & CSTB, 2010)。
- 専門家認証型:「専門職の資格と責任を信頼する」。登録建築士・技術者の証明と、専門職の自己規律・事後的な責任追及を中心に置く体系。契約上の保証に依るアングロサクソン型の責任制度と対応します(CEA & CSTB, 2010)。
各カテゴリーを採用する地域
- 事前審査型
- 日本:建築確認・中間検査・完了検査と、2007年以降の構造計算適合性判定。
- ドイツ:州の建築監督官庁の許可と検査技師の審査。建築警察の伝統が駆動しています。
- 韓国:許可権者の審査と工事監理。画期は三豊百貨店崩壊(1995年、死者502人)です。
- 中国:施工許可・竣工検収と監理制度。画期は四川地震(2008年)です。
- ロシア:国家鑑定と建設監督。
- トルコ:行政の許可と義務的な民間建築検査。
- インドネシア:建築承認(PBG)と機能適合証明(SLF)。
- サウジアラビア:アマーナの許可とコード適合検査。
- 南アフリカ:自治体の承認と占有証明。
- インド:市の許可と完成証明。ただし執行能力の制約から法文と実態の乖離が指摘されています(要確認)。
- 責任・保険型
- フランス:民法典第1792条の10年責任に、1978年Spinetta法が保険加入義務と技術検査義務を組み合わせました(DHUP, 2021)。
- イタリア:民法典の10年責任(第1669条)と、2005年以降の新築住宅への10年瑕疵保険の義務化を持ち、欧州の比較ではフランス・スペインとともに法定保険義務のグループに分類されています(CEA & CSTB, 2010)。
- 専門家認証型
- 米国:登録建築士・技術者の押印(seal)と専門職責任、事後的な訴訟が品質担保の中心です。
- 英国:専門職の資格と責任を信頼する伝統に、グレンフェル後は高リスク建物への公的審査と「義務者(dutyholder)」制度を重ねました(Hackitt, 2018)。
- オーストラリア:登録された認証者・設計者の責任と専門職の自己規律。
- カナダ:州の専門職法に基づく建築士・技術者の責任。
- メキシコ:登録された工事責任者(DRO)と共同責任者の証明が制度の中心です(要確認)。
- ブラジル:技術責任記録(ART)を通じた登録技術者の責任と市の許可の組み合わせです(要確認)。
- アルゼンチン:登録された責任専門家(profesional responsable)の証明と市の許可の組み合わせです(要確認)。
この要素は、ハンムラビ以来の「結果責任」の系譜(私法的アプローチ)と、ローマ大火以来の「事前規制」の系譜(公法的アプローチ)のどちらに重心を置くかという、法の歴史の最初の分岐が現代に生きている場所だと考えられます。欧州の責任・保険制度の比較が、法系(ローマ法系・アングロサクソン・北欧・ゲルマン)とほぼ対応する4グループを見いだしていることは(CEA & CSTB, 2010)、この要素が5つの要素の中でもっとも法系と結びついていることを示しています。
カテゴリーB:法源と規定の様式
要素4:法源のかたち
「その国で建築のルールを知りたければ、どんな文書を開けばよいか」で考えると分かりやすい要素です。
カテゴリー
- 単一法・法典型:国の一つの法律(または法典)と、その下の政令・省令・告示を開けば技術基準まで辿れる体系。大陸法の法典主義と中央集権的な行政に対応します。
- 州法分散型:国の建築法がなく、州ごとの建築法を見る必要がある体系。法的拘束力のないモデル法が州法の水平調整を担います。
- モデル文書の州法採用型:民間団体または政府間機関が作成するモデルコードを、各州が採用して初めて法になる体系。採用時に修正が加わるため、法域の数だけコードが存在します。
- 規則+指針の二層型:法的拘束力のある規則本体はわずかな機能要求だけで、実務者が参照するのは法的拘束力のない指針という体系。
- 市町村条例型:建築コードそのものが市の条例で、国は任意の見本や規格を示すにとどまる体系。
- 多層ガバナンス型:超国家機関が製品の性能表示と設計規格の「共通言語」を統一し、安全水準の決定は加盟国に留保する体系。
各カテゴリーを採用する地域
- 単一法・法典型
- フランス:建設・住宅法典(CCH、1978年法典化)に法律・デクレ・アレテが一つの法典として編まれています。
- イタリア:建築統一法典(DPR 380/2001)と、建設技術基準(NTC、省令)。州は手続の詳細を法制化できますが、技術基準は国の省令です。
- ロシア:連邦法「建物・構造物の安全に関する技術規則」(384-FZ、2009年)と、その下の規則集(СП)・国家規格(ГОСТ)。
- トルコ:建設法(İmar Kanunu、1985年)と省の規則(計画区域建築規則2017年、建物耐震規則2018年)。
- 日本:建築基準法(1950年)と施行令・施行規則・告示。単体規定と集団規定を一つの法律に収める構成です。
- 韓国:建築法(1962年)と大統領令・国土交通部令・告示。日本法の構成を引き継いでいます。
- 中国:建築法(1997年)と行政法規・部門規章の下に、強制性国家標準(GB)が実体規定を担います。
- インドネシア:建築物法(UU 28/2002)と政府規則PP 16/2021、省令、SNI規格。
- サウジアラビア:建築コード適用法(2017年)と執行規則の下に、サウジ建築コード(SBC)全巻が全国一律に適用されます。
- 南アフリカ:国家建築規則・建築基準法(1977年)と国家建築規則が直接全国に適用され、SANS 10400がみなし適合の指針を担います。
- 州法分散型
- ドイツ:「ドイツの建築法」は存在せず、16の州建築法を見る必要があります。州建設大臣会議のモデル建築法(MBO)が水平調整の役割を果たします(Maiworm et al., 2023; Bauministerkonferenz, 2002/2023)。
- モデル文書の州法採用型
- 米国:民間団体ICCの国際建築コード(IBC)などを、州法・州規則・市条例が採用します。連邦の建築法はなく、採用の有無・版・修正は州と市ごとに異なります(Congressional Research Service, 2025)。
- カナダ:国立研究機構(NRC)が編む国家建築コード(NBC)を各州が採用し、州によってはさらに修正を加えます(Building Code Act, 1992; Regulatory Reconciliation and Cooperation Table, 2020)。
- オーストラリア:政府間機関ABCBが編む国家建設コード(NCC)を州・準州法が参照して採用し、州ごとの変更はNCC巻末の付表に収められます(Australian Building Codes Board, 2022)。
- 規則+指針の二層型
- 英国:1984年建築法の下の建築規則(Building Regulations 2010)本体は別表1の機能要求だけで、寸法や工法は法的拘束力のない承認文書(Approved Documents)にあります(Building Act 1984, ss. 6–7)。スコットランド・北アイルランドも同型で、それぞれ技術ハンドブック・技術冊子を持ちます。
- 市町村条例型
- ブラジル:建築規則(Código de Obras)は市法で、防火は州の消防、構造・性能は民間のABNT規格に分散しています(Brasil, 1988)。
- メキシコ:建築許可は憲法上の市の権限で、首都の建築規則(RCDF)と補完技術規範(NTC)が他の市の参照モデルになっています(Vanguardia, 2018)。
- アルゼンチン:建築法典は市法(例:ブエノスアイレス市法典、2018年)で、国の構造・耐震規則(CIRSOC)は国の公共工事にのみ義務です(Secretaría de Obras Públicas, 2012)。
- インド:州法の下で市が建築細則(bye-laws)を定め、標準化機関BISの国家建築コード(NBC 2016)は細則に採用されて初めて拘束力を持ちます(Bureau of Indian Standards, 2022)。
- 多層ガバナンス型
- EU:建設製品規則(CPR)とユーロコードが「製品の性能表示」と「構造設計の共通言語」を統一し、安全水準の決定は加盟国に留保されます。各国は国家附属書で安全率などを定めるため、「共通の設計式+国ごとの安全水準」という二層構造です(Regulation (EU) No 305/2011; Commission Recommendation 2003/887/EC)。
要素5:規定の様式
技術要求を「どう造るか」(寸法・材料・工法)で書くか、「何を達成すべきか」(機能・性能)で書くかという要素です。欧州比較の最も古い比較次元であり(Sheridan et al., 2003; Pedro et al., 2008)、性能規定化の国際比較の中心でもあります(Meacham et al., 2005)。規制論では、規則基準型・性能基準型・管理基準型の3つの規制の型として一般化されており、それぞれ「規則に従ったか」「結果を達成したか」「管理の仕組みが適切か」という異なる責任の問い方を伴います(May, 2007)。
カテゴリー
- 性能規定型:法令には目標と機能要求・性能要求を書き、仕様は「みなし適合」の一経路として併存させる体系。革新的な設計を性能の証明で受け入れられ、貿易障壁も減りますが、「安全」の検証には高度な工学的能力が要求され、審査者の力量や検証データの不足が制度全体の弱点になります(Meacham et al., 2005)。実務の大半は仕様ルートで動いています。
- 仕様規定型:法令が寸法・材料・工法を直接指定する体系。審査が容易で結論が一致し、執行コストが低い一方、規定作成時に想定していない新技術(例:CLTによる木造高層)を受け入れにくい(Meacham et al., 2005)。多くの国が、限定的な代替経路(同等性の証明、逸脱許可)を備えています。
- 移行中:仕様規定を基本としつつ、性能志向の文書を部分的に導入している体系。
- 管理基準型(補足):設計・施工・維持管理の「仕組み」の適切さを問う型。建築分野では、英国が2022年建築安全法で高リスク建物に導入した「安全ケース」制度が代表例で、性能規定の上に管理基準を重ねています(May, 2007; Hackitt, 2018)。
各カテゴリーを採用する地域
- 性能規定型
- 英国:1985年に機能要求+承認文書方式へ転換。国家レベルで世界最初期です。2017年のグレンフェル・タワー火災(72名死亡)を経て「性能規定は失敗だったのか」という論点が生まれましたが、公式レビューと学術研究が指摘したのは規定様式そのものではなく、検証可能性の不足、審査者の能力、責任の曖昧化という運用と執行の崩壊でした(Hackitt, 2018; Spinardi & Law, 2019)。英国は性能規定の枠組みを維持したまま執行を強化し、可燃性外装材の禁止のような仕様的規定を高リスク建物に再導入しています。
- オーストラリア:1996年のBCA96で全面転換。性能要求を最上位に置き、従来の仕様は「みなし適合」、代替設計は「Performance Solution」として検証可能にしました(ABCB, 2017)。
- 日本:1998年改正で単体規定を「要求性能+検証方法」に再編。建築基準法第20条(構造耐力)は英国のRequirement A1とほぼ同型の要求を立てています。
- カナダ:2005年版から国家建築コードが「目標ベース」の構成(目標・機能要求・許容解)に移行しました。
- 南アフリカ:2008年の国家建築規則の改正で機能規定化し、SANS 10400をみなし適合、合理的設計を代替経路としました(National Building Regulations and Building Standards Act 103 of 1977)。
- フランス:2018年のESSOC法に基づく改革で、2021年に建設・住宅法典第I編を「手段の義務から結果の目標へ」全面書き換えしました(DHUP, 2021; République française, 2020, 2021)。
- EU:建設製品指令(1989年)以来、建築物の基本要求を性能の言葉で定め、ユーロコードは信頼性理論に基づく性能型の設計規格です(Council Directive 89/106/EEC, 1989)。
- 仕様規定型
- 米国:2001年に性能規定版コード(ICC Performance Code)が刊行されましたが採用はごく僅かで、IBCは仕様規定を基本に、代替材料・工法の承認条項で柔軟性を確保しています。
- ドイツ:仕様規定+保護目標と逸脱手続という限定的な弁を持ちます(Maiworm et al., 2023)。
- 韓国:仕様規定+専門家責任の型を維持し、耐震規定は米国IBC系です。
- イタリア:建設技術基準NTCは仕様型で、防火については2015年の「防火予防法典」が性能的手法を選択できる構成です。
- ロシア:規則集(СП)は仕様型ですが、技術規則384-FZが計算・特別技術条件による代替経路を認めています。
- トルコ・インド・メキシコ・アルゼンチン・インドネシア・サウジアラビア:いずれも仕様規定型で、耐震・構造の技術基準は米国系(UBC・ASCE 7・IBC)を採用しています。
- 移行中
- 中国:2021年以降の「通用規範」で部分的に性能志向へ移行中です(住房和城乡建设部, 2021)。
- ブラジル:市の建築規則は仕様型ですが、住宅の性能規格NBR 15575(2013年、2021年改訂)が性能要求の枝を持っています。
性能規定化の先駆者だった英国がグレンフェル火災後に高リスク建物へ仕様的規制と管理基準型の「安全ケース」を再導入したことは、規定様式が一方向に進化するものではなく、規制の型を建物のリスクに応じて組み合わせる段階に入ったことを示しています。また、いずれの性能規定国でも実務の大半はみなし適合ルートで動いており、法文上の様式と運用上の様式は必ずしも一致しません。
要素6:規制の範囲
建築法規が構造・防火・衛生という伝統的な安全分野に限られるか、省エネルギー・アクセシビリティ・環境・音・防犯まで一つの法規の中に取り込んでいるかという要素です。欧州8か国の比較では、対象分野の広がりが国によって大きく異なることが最初の発見の一つでした(Sheridan et al., 2003; Pedro et al., 2008)。範囲の広がりは法系ではなく、各国が省エネや高齢化をいつ政策課題としたかを反映します。あわせて、小規模な工事や建物を規制から免除する範囲も国によって異なり、免除が広い国では法定審査の対象が「複雑な建物の安全」に偏ります(Meijer & Visscher, 2017)。
カテゴリー
- 統合型:省エネルギー・アクセシビリティなどを建築法規本体(または同じコード群)の中に置き、一つの審査で確認する体系。
- 分散型:安全は建築法規、省エネは別の法律、アクセシビリティはさらに別の法律というように、分野ごとに法律が分かれ、審査の接続を制度で補う体系。
各カテゴリーを採用する地域
- 統合型
- 英国:建築規則の別表1がA(構造)からS(電気自動車充電設備)まで、L(省エネ)、M(アクセス)、O(過熱防止、2022年施行)、S(充電設備、2022年施行)を含みます(HM Government, 2021)。
- オーストラリア:NCCがSection J(省エネ)、Part D4(アクセス)、2023年採用の居住性設計基準(Livable Housing)を含みます(Australian Building Codes Board, 2022)。
- フランス:建設・住宅法典の中に省エネ(RE2020、2022年施行)とアクセシビリティ(2005年法)が法典化されています。
- 中国:全文強制の通用規範の一群に、省エネ・再生可能エネルギー(GB 55015-2021)、無障害(GB 55019-2021)、防火(GB 55037-2022)が含まれます(住房和城乡建设部, 2021)。
- 南アフリカ:国家建築規則にPart XA(省エネ、2011年)が追加され、SANS 10400シリーズの中で扱われます(National Building Regulations and Building Standards Act 103 of 1977)。
- サウジアラビア:サウジ建築コードの一巻として省エネ(SBC 601/602)を持ちます(Kingdom of Saudi Arabia, 2017)(要確認)。
- 分散型
- 日本:建築基準法(安全)、建築物省エネ法(2015年。2025年4月から全新築に適合義務、建築確認と連動)、バリアフリー法(2006年)が別の法律で、建築確認の手続で接続されています。
- ドイツ:安全は州建築法、省エネは連邦の建物エネルギー法(GEG、2020年)、アクセシビリティは州建築法(モデル建築法第50条)という分散です(Bauministerkonferenz, 2002/2023)。
- 米国:安全はIBC、省エネは別のモデルコードIECC(またはASHRAE 90.1)、アクセシビリティは公民権法であるADAの基準とIBC第11章が参照するICC A117.1という三重の体系です(Congressional Research Service, 2025)。
- カナダ:国家建築コードと別に国家建物エネルギーコード(NECB 2020)があり、住宅の省エネのみNBC第9.36節に含まれます。
- 韓国:建築法と別に緑色建築物造成支援法(2013年施行)と障害者・高齢者等便宜増進法(1997年)があります。
- イタリア・ロシア・インド・ブラジル・メキシコ・アルゼンチン・インドネシア・トルコ:いずれも省エネは別法・別規則(イタリアの2005年省エネ法令、インドのECBC 2007/2017、トルコの建物エネルギー性能規則2008年など)で、分散型に分類できます(要確認)。
- 該当なし
- EU:建築物のエネルギー性能指令(EPBD)は加盟国に目標を課し、統合か分散かは各国に委ねられます。
要素7:技術の中身を置く段
ある国で建物を建てるとき、守るべきルールが1つの文書にまとまっていることはありません。法律の下に政令・省令・告示が連なり、その横に州や市の条例、さらに法的拘束力を持たない指針や行政指導、民間規格が並びます。つまり建築のルールは、「どの範囲の地域に効くか」という空間の次元(超国家→国→州・地域→市町村)と、「どれだけ強い拘束力を持つか」という効力の次元(憲法→法律→政令・省令→告示・行政規則→指針・要綱→民間規格)の2つの次元で組み立てられています。
効力の次元は、法理論では「法秩序の段階構造(Stufenbau)」として知られています。あらゆる規範はより上位の規範から効力を授けられ、最終的に憲法に遡るという考え方で、大陸法の理論家によって定式化されました(Merkl, 1931; Kelsen, 1934/1992)。建築法規は、この段階構造がもっとも深く、もっとも下の段まで使われる法分野の1つです。先行研究の次元では、「規格の参照・みなし適合指針の位置づけ」に対応します(Pedro et al., 2008)。主要国を並べると、2つの次元の構造そのものは普遍的である一方、「技術の中身をどの段に置くか」(本要素)と「技術基準を作る権限をどの地域レベルに置くか」の2点で大きく異なることが示されています。
カテゴリー
- 拘束力のある下位法令:政令・省令・告示・強制規格など、法的拘束力を持つ下位法令に技術の中身を書く体系。法令を読めば要求が分かる反面、改正に省庁の手続が必要で、改正頻度が制度の柔軟性を決めます。
- みなし適合の指針:法令には機能要求だけを書き、技術の中身は法的拘束力のない指針に置き、「指針どおりなら適合とみなす」体系。実務は指針で動きますが、法的には別の方法で性能を証明することが常に可能です。
- 民間・標準化機関の規格の参照:法令が民間団体や標準化機関の規格を参照することで、規格に拘束力を与える体系。「規格は法ではないが、法の力によって義務になる」(CREA-SC, n.d.)という関係で、規格団体が事実上の立法者になり、規格の著作権・公開性・民主的正統性という固有の問題を生みます(Schepel, 2005; Bremer, 2013)。
各カテゴリーを採用する地域
- 拘束力のある下位法令
- フランス:建設・住宅法典の条文番号は、L(法律)、R(コンセイユ・デタの議を経たデクレ)、D(単純デクレ)、A(アレテ=省令)という接頭文字を持ち、条文番号を見れば効力の段が分かります。防火の実体規定は「1986年1月31日アレテ(住宅の防火)」「1980年6月25日アレテ(不特定多数収容施設の安全規則)」のようにアレテの段にあり、その下に通達(非拘束)と契約規範のNF DTU・技術評価が続きます。2021年7月には第I編が全面的に書き換えられ、「一般目標・最低限の結果」を法典に、「参照解」をアレテに、「同等効果解」を第三者検証付きで認める構造になりました(République française, 2020, 2021)。
- イタリア:建設技術基準(NTC 2018)は省令として拘束力を持ち、公共事業高等評議会の通達(2019年第7号)が「適用指示」として実務の参照点になっています。
- 日本:建築基準法→施行令(政令)→施行規則(省令)→告示(例:平成12年建設省告示第1461号「超高層建築物の構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準」)。その下に技術的助言(地方自治法第245条の4。2000年の地方分権改革で拘束力のある通達が廃止され、助言に置き換わりました)があり、法第37条が指定建築材料にJIS・JASへの適合または大臣認定を求めることで、規格も法体系に取り込まれています。
- 韓国:建築法→施行令(大統領令)→施行規則(国土交通部令)→告示。2016年に国土交通部が約1,000件の設計基準・標準示方書をKDS(設計基準)・KCS(標準示方書)の統一コード体系に再編し、告示として発出することで、法令が参照する限りで拘束力を持たせています(국토교통부, 2016)。
- 中国:法律(建築法)→行政法規→部門規章→地方性法規・地方政府規章→規範性文件→標準。標準は標準化法(2017年改正)で「強制性国家標準GB」「推薦性国家標準GB/T」「行業標準JGJ」「地方標準DB」「団体標準」「企業標準」の6段に分かれ、強制性標準は「必ず執行しなければならない」と定められています(中华人民共和国标准化法, 2017)。2015年の標準化改革方案以降、散在していた強制条文は「全文強制」の通用規範(例:GB 55001-2021 工程結構通用規範。2022年1月施行と同時に旧強制条文を廃止)に集約されつつあります(国务院, 2015; 住房和城乡建设部, 2021)。設計の実体規定が法律や規章ではなく標準の段にある点で、中国は「標準が事実上の技術法規」の国です。
- ロシア:連邦法(技術規制法184-FZ、技術規則384-FZ)→政府決定→規則集(СП)・国家規格(ГОСТ)。2010年から2024年8月までは政府決定が「義務適用リスト」と「任意適用リスト」を指定して規格の拘束力を切り分けていましたが(例:政府決定第815号、2021年)、2023年12月の法改正(653-FZ)で2024年9月に義務リストが廃止され、技術規則本体と建設省の要求事項登録簿に一本化されました(Федеральный закон № 653-ФЗ, 2023)。
- トルコ:建設法の下の省令(Yönetmelik)に技術の中身があり、建物耐震規則(2018年)は防災庁AFADの省令として官報で公布されています(Planlı Alanlar İmar Yönetmeliği, 2017)。
- インドネシア:建築物法→政府規則PP 16/2021→公共事業・国民住宅省令→SNI規格(例:SNI 1726:2019 耐震設計)という縦の連なりで、SNIは省令で指定されることで義務化されます(Republik Indonesia, 2021)。
- サウジアラビア:勅令による法→執行規則(2018年、2021年改正)→サウジ建築コード各巻→SASO規格。コード全巻が執行規則によって拘束力を持ちます(Kingdom of Saudi Arabia, 2017)。
- メキシコ:首都の建築規則(RCDF)は補完技術規範(NTC)を官報で公布し、規則本体と同じ「公の秩序」の効力を持たせています。
- みなし適合の指針
- 英国:建築規則の別表1にある機能要求の下に承認文書(Approved Documents)があり、1984年建築法第7条は「承認文書に従わなかったこと自体は違法ではなく、訴訟で責任を立証・否定する証拠として扱われる」と定めています(Building Act 1984, ss. 6–7)。技術の中身はほぼすべてこの「拘束力のない」段にあります。スコットランドの技術ハンドブック、北アイルランドの技術冊子も同型です。
- オーストラリア:NCCの中で、拘束力を持つのは性能要求だけで、みなし適合(Deemed-to-Satisfy)規定は「性能解」「みなし適合解」「併用」という3つの適合経路の1つとして採用された法文の中に置かれています(Australian Building Codes Board, 2022)。
- カナダ:NBCのDivision Aが目標と機能要求を、Division Bが「許容解(acceptable solutions)」を定め、代替解による適合も認められます。
- 南アフリカ:SANS 10400シリーズがみなし適合の指針ですが、法律第17条第7項が「指定された実施基準への適合は要求への適合とみなす」と定め、みなし適合の地位を法律の段で与えている点が特徴です。合理的設計(rational design)による代替も認められます(National Building Regulations and Building Standards Act 103 of 1977)。
- 民間・標準化機関の規格の参照
- 米国:州法→州行政規則→採用されたモデルコード(IBCなど)→参照規格(ASCE 7、NFPA、ASTM。採用と同時に法の一部になります)→解説書。連邦レベルでは連邦規則集1 CFR Part 51が取り込みの手続を定めています(Congressional Research Service, 2025)。民間団体の著作物が法の一部になるため、法文を無償公開してよいかが争われ、2023年に連邦控訴裁判所が「法に取り込まれた規格の非営利公開はフェアユース」と判断しました(American Society for Testing and Materials v. Public.Resource.Org, 2023)。
- ドイツ:州建築法→州の規則→技術建築規定行政規則(VV TB)→DIN規格。VV TBは形式上は行政規則ですが、州建築法(モデル建築法第85a条)が「VV TBで導入された技術規則は遵守しなければならない」と定めることで、DIN規格が法的拘束力を得ます。同等性を証明すれば逸脱できる点も条文に書かれています。この仕組みは、2014年の欧州司法裁判所判決(C-100/13)でドイツの建築製品規制リストがEU法違反とされたことを受け、2017年から導入されました(Bauministerkonferenz, 2002/2023; CJEU, 2014)。
- ブラジル:ABNT規格(NBR 15575、NBR 6118など)は本来任意ですが、法令の参照、公共工事での義務(法律4.150/1962)、消費者保護法第39条第8号(規格不適合の製品・サービス提供を禁止)を通じて事実上の拘束力を持ちます(Brasil, 1962, 1990)。
- アルゼンチン:国の構造規則CIRSOC・耐震規則INPRES-CIRSOC 103と、民間のIRAM規格。市の法典が参照して初めて私的工事に及びます(Secretaría de Obras Públicas, 2012)。
- インド:標準化機関BISの国家建築コードとインド規格(IS 1893、IS 456など)が、市の建築細則に参照されて拘束力を持ちます(Bureau of Indian Standards, 2022)。
- EU:ユーロコードは欧州標準化委員会(CEN)の規格で、各国の国家附属書と国内法令の参照を経て拘束力を得ます(Commission Recommendation 2003/887/EC)。
まとめ
- 見本(モデル文書)の層を持つ国と持たない国。米国のI-Codes、カナダのNBC、オーストラリアのNCC、ドイツのMBO、インドのNBCとモデル建築細則、メキシコの住宅建築コード(CONAVI, 2017)は、法的効力を持たない文書が全国統一を担う点で共通し、連邦制や分権の国に現れます。単一法・法典型の国には、この層がありません。
- 最下段のソフトロー。効力の次元の最下段には、法的拘束力を持たないが実務を動かす文書があります。EU法研究ではこれを「原則として法的拘束力を持たないが、実際上の効果を持ちうる行為規範」としてソフトローと呼びます(Snyder, 1993; Senden, 2004)。日本の宅地開発指導要綱は、自治体が開発者に負担を「要請」する内部文書で法的拘束力はなく、最高裁は1993年、要綱に基づく負担金の事実上の強制を「違法な公権力の行使」と判断し(最高裁, 1993)、同年の行政手続法が行政指導を「相手方の任意の協力によってのみ実現される」もの(第32条)と定め、指導指針の公表(第36条)を義務づけました(行政手続法, 1993; Young, 1984; Haley, 1991)。イタリアの通達、フランスのcirculaire、中国の規範性文件、トルコのtebliğ、米国のコード解説書、英国の国家計画政策枠組み(NPPF)も同じ段にあり、ドイツでは開発者との負担の取り決めを建設法典第11条の「都市建設契約」として法律の段で明文化しています。この段が「事実上の義務」になるかどうかは、許認可権者の裁量の大きさで決まります。
カテゴリーC:権限・主体・運用
要素8:技術基準を作る権限の所在
建物の安全に関する技術基準を作る立法権が、どの地域レベルにあるかです。空間の次元(超国家→国→州・地域→市町村)のどこに技術基準の立法権を置くかで各国が分かれます(Pedro et al., 2008)。
カテゴリー
- 国(単一国家・委任型):国が技術基準を持ち、地方は法律が開けた「窓」からだけ条例を作ります。連邦制でも技術基準を連邦専管とする国を含みます。
- 州(連邦・州主権型):憲法上、建築の安全に関する立法権が州にあり、国は見本を作るか、関与しません。
- 市町村(連邦・市町村型):建築コードそのものが市町村レベルにあり、州・国は枠組み法や任意の規格を示します。
- 超国家:国の上に、製品規格と設計規格の共通言語を定める層があります。
各カテゴリーを採用する地域
- 国(単一国家・委任型)
- フランス:市町村(コミューン)には建築の技術基準を作る権限がなく、市長の権限は都市計画(PLU)と危険建築物への警察権(mise en sécurité)に限られます。
- 英国:19世紀以来の自治体の建築細則(byelaws)が1966年2月施行の全国建築規則(Building Regulations 1965)に置き換えられ、自治体の役割は執行だけになりました。インナー・ロンドンのみ1986年までロンドン建築法群が残りました(Kefford, 2022)。
- イタリア:憲法第117条で「国土の統治」は国と州の競合事項ですが、技術基準(NTC)は国の省令で、市の建築規則は国と州の法の枠内に置かれます。
- 日本:憲法第94条と地方自治法第14条が条例を「法律の範囲内」に限定し、建築基準法が第39条(災害危険区域)、第40条(気候・風土・特殊建築物の用途規模に応じた制限の付加)、第41条(都市計画区域外での緩和。大臣承認が必要)、第43条第3項(接道の付加)、第50条(用途地域内の制限)、第68条の2(地区計画の内容を条例化)という窓を開けています。東京都建築安全条例は第40条・第43条第3項に基づく条例です(建築基準法, 1950)。
- 韓国:建蔽率と容積率の上限が「国土計画法第77条・第78条が法律上の上限を定め、大統領令がその範囲内の基準を定め、市・郡の条例が具体的な数値を定める」という3段の委任で決まります(국토의 계획 및 이용에 관한 법률, 第77–78条)。建築法も第42条(緑化)、第58条(敷地内空地)、第60条・第61条(高さ・日照)などで「建築条例で定める」と明示した事項に限って条例に委ねています。
- 中国:立法法が省級人民代表大会の地方性法規と、区を設ける市の「城郷建設と管理」に関する立法を認めていますが、いずれも上位法・強制性標準に抵触できません。地方標準(DB)はあっても、強制性国家標準を緩めることはできません。
- ロシア:連邦制ですが、技術規制は連邦専管で、州・市は土地利用・建築規則(ПЗЗ)などの計画的な規制だけを担います。
- トルコ:中央省庁の計画区域建築規則(2017年)第69条が、広域市に対し「国の規則に反しない範囲で、省の同意を得て官報に掲載すれば」独自の建築規則を持つことを認めています。イスタンブール(2018年)、アンカラ(2018年)、イズミル(2021年)がこの手続で独自規則を制定しており、単一国家の中に「事前承認付きの地方規則」を組み込んだ折衷型です(Planlı Alanlar İmar Yönetmeliği, 2017)。
- インドネシア:法令階層法(UU 12/2011)第7条が憲法→法律→政府規則→大統領規則→州条例→県・市条例の順位を明文で定め、建築物法の下で県・市が建築物条例(Perda Bangunan Gedung)の制定義務を負います(Republik Indonesia, 2011, 2021)。
- サウジアラビア:建築コードは全国に一律適用され、地方(アマーナ)は許認可と執行を担うだけで内容を変更できません(Kingdom of Saudi Arabia, 2017)。
- 南アフリカ:憲法附則4が建築規制を地方政府の事務としながら、国の建築規則が直接全国に適用され、自治体は承認と検査だけを行います(National Building Regulations and Building Standards Act 103 of 1977)。
- 州(連邦・州主権型)
- ドイツ:基本法第70条・第74条第1項第18号により、都市計画法(建設法典BauGB)は連邦、建築秩序法(安全・技術・手続)は16の州という分業です。連邦憲法裁判所が1954年の「建築法鑑定」でこの線引きを確定しました。市町村は地区詳細計画(Bebauungsplan)を条例として定め、外観・駐車場などに限った「地方建築規定」(モデル建築法第86条)を作れますが、構造・防火には手を出せません(Bauministerkonferenz, 2002/2023)。
- 米国:建築規制は州のポリスパワーに属し、連邦は製造住宅の安全基準(24 CFR Part 3280。42 U.S.C. §5403(d)が州・自治体の異なる基準を明文で排除)、洪水保険の最低基準(44 CFR §60.3)、ADA基準などの隙間しか規制しません。州の下の扱いはさらに分かれ、カリフォルニア州は自治体の住宅基準の修正を「地域の気候・地質・地形上の条件により合理的に必要な場合」に限り(California Health and Safety Code, §§17958.5, 17958.7)、2025年の法改正で2031年まで住宅関係の地方修正を凍結しました。フロリダ州は地方の技術的修正を「より厳しい方向のみ、地域的必要性の立証と公聴会を経て、3年ごとの改訂で失効」と定めています(Florida Statutes, §553.73(4))。他方、州全体の統一コードを持たず郡・市の採用に委ねる州もあり、ハリケーン沿岸18州の採用状況の格付けでは大きな開差があります(Insurance Institute for Business & Home Safety, 2024)。
- カナダ:1867年憲法法第92条第13号により州の権限で、連邦は国家建築コード(NBC)を見本として作るだけです。オンタリオ州の建築法典法は「本法と建築法典は建築物の建設・解体に関するすべての自治体条例に優先する」と定め(Building Code Act, 1992, s. 35)、ブリティッシュ・コロンビア州は2015年建築法で自治体独自の建築要件を無効とし(バンクーバー市のみ憲章で例外)、2020年の「建設コード調整協定」では各州が新たな独自変更を「正当な目的(安全・環境・気候地理的要因)」に限ることに合意しました(Regulatory Reconciliation and Cooperation Table, 2020)。
- オーストラリア:連邦憲法に建築の立法権がなく、州・準州法が国家建設コード(NCC)を参照して採用します。ビクトリア州建築規則第10条は「BCAは本規則により採用され、本規則の一部を構成する」と定め、NSW州の認証規則は「BCAの要求に適合する場合でなければ建設証明書を発行してはならない」と定めます。自治体は許認可と都市計画を担いますが技術基準を追加できません(Australian Building Codes Board, 2022)。
- 市町村(連邦・市町村型)
- ブラジル:1988年憲法第30条第8号が「都市の土地利用・分割・占有の計画と管理」を市の権限とし、第182条第1項が人口2万人超の市に都市基本計画を義務づけ、第24条第1号が都市法を連邦・州の競合立法事項としています。建築規則は市法(例:サンパウロ市法16.642/2017)、防火は州の消防の技術指示書、構造・性能は民間のABNT規格という3方向への分散です(Brasil, 1988)。
- メキシコ:憲法第115条第5項が建築許可の付与を市の権限とし、2016年の人間居住・国土整序・都市開発一般法が連邦・州・市の競合を枠づけます。国の防災センターの調査では、2,457市のうち独自の建築規則を持つのは165市(7%)にとどまり、多くが首都の規則を参照するか無規則の状態でした(Vanguardia, 2018)。
- アルゼンチン:憲法第5条・第121〜123条により州が非委任権限を保持し、州憲法が市の自治を定めるため、建築コードは市法です。国のCIRSOC・INPRES-CIRSOC 103は国の公共工事にのみ義務とされ、州・市には採用を「勧奨」しています。メンドーサ州は独自の1987年耐震コードを市ごとに採用し続けています(Secretaría de Obras Públicas, 2012)。
- インド:憲法第7附則の州リスト(第5項「地方政府」、第18項「土地」)と、1992年の第74次改正で加わった第12附則(「都市計画」「土地利用と建築物の建設の規制」を市の事務に)により、州法の下で市が建築細則を作ります。マハラシュトラ州は2020年に統一開発管理・促進規則(UDCPR)で州内の細則を統一しました(Directorate of Town Planning & Valuation, 2020)。
- 超国家
- EU:域内市場(EU機能条約第114条)とエネルギー(第194条)の権限で建築に関与しますが、建設製品規則(CPR、2011年。2024年改正)は「加盟国は建築物の要求水準を自ら定める自由を保持する」と明記しています。ユーロコードは欧州規格(EN)として作られ、各国が国家附属書で国別決定パラメータを定めて初めて国内法に組み込まれます(Regulation (EU) No 305/2011; Commission Recommendation 2003/887/EC)。EUは安全の「水準」ではなく「表現の共通言語」を統一する、第4の空間レベルです。
まとめ
- 地方ルールに許す方向が5通りある。法律の窓からの委任と上限内の数値決定(日本・韓国)、より厳しい方向のみ(カリフォルニア・フロリダ)、原則禁止・上書き(オンタリオ・BC州・オーストラリア・英国・サウジアラビア)、中央の事前承認付き(トルコ)、市の自由(ブラジル・メキシコ・アルゼンチン・インド)。
- 収斂の圧力は「上へ」働いている。カナダの2020年協定、BC州(2017年)とオンタリオ州(2025年)の自治体条例の排除、カリフォルニアの地方修正の凍結(2025年)、インドの州統一規則(2020年)、中国の通用規範への集約(2021年〜)、ロシアの義務リスト廃止(2024年)は、いずれも「多数の地方ルールと散在する強制条文を、より少数の上位文書に整理する」動きです。
- 法系との対応は部分的。国型は大陸法の国に多いものの英国・南アフリカ・サウジアラビアも含み、市町村型は英米法のインドと大陸法のラテンアメリカ諸国にまたがります。この要素を決めているのは法系よりも憲法上の権限配分であり、各国の法文を比較する際にすべての段の文書を対象に含めなければ比較にならない理由でもあります。
要素9:手続の負担(手続数・日数・費用)
制度の構造ではなく運用の結果を測る要素です。世界銀行のDoing Businessは2005年から2020年まで、標準化された倉庫の新築を想定して、建築許可から水道接続・登記までの手続数・日数・費用(倉庫価格比)を190か国で計測し、2016年からは建築品質管理指数(0〜15点)を加えました(World Bank, 2020)。この報告書は2021年にデータ操作の問題で廃止され、ここで示す2020年版が最終値です(World Bank, 2021)。計測都市は原則として最大都市(2都市の国は人口加重平均)で、国全体を代表するものではない点に注意が必要です。
カテゴリー
- 短い(100日以下):標準倉庫の許可・接続・登記までの所要日数が100日以下。
- 中程度(100〜200日):同じく100日超200日以下。
- 長い(200日超):同じく200日超。
各カテゴリーを採用する地域(手続数・日数・費用の倉庫価格比・建築品質管理指数、Doing Business 2020より)
- 短い(100日以下)
- 韓国:10手続・27.5日・4.4%・12.0点。世界で最も短い部類です。
- 米国:15.8手続・80.6日・0.7%・12.4点(ニューヨークとロサンゼルスの加重平均)。
- メキシコ:15手続・82日・9.5%・11.7点。費用の高さが特徴です。
- 英国:9手続・86日・1.1%・9.0点。責任・保険と専門資格の指標が0点で、品質管理指数は主要国で最低水準です。
- トルコ:18手続・100日・3.6%・13.0点。
- サウジアラビア:14手続・100日・1.9%・12.0点。
- 中程度(100〜200日)
- インド:15手続・106日・4.0%・14.5点(ムンバイ・デリー)。
- 日本:12手続・108日・0.5%・13.0点。費用は主要国で最も低い部類です。
- 中国:18手続・111日・2.8%・15.0点(満点)。2018〜19年の審査制度改革で日数を大幅に短縮しました。
- オーストラリア:11手続・120.5日・0.6%・14.0点。
- ドイツ:9手続・126日・1.1%・9.5点。
- 南アフリカ:20手続・155日・1.9%・12.0点。手続数は主要国で最多です。
- ロシア:13手続・165日・1.1%・14.0点。
- イタリア:14手続・189.5日・3.4%・11.0点。
- 長い(200日超)
- インドネシア:18手続・200日・4.5%・13.8点。
- フランス:9手続・213日・3.9%・13.0点。手続は少ないが日数が長い型です。
- カナダ:12手続・249日・1.8%・14.0点(トロント)。
- アルゼンチン:17手続・318日・3.1%・11.0点。
- ブラジル:19手続・338日・1.1%・8.4点(サンパウロ・リオ)。品質管理指数も主要国で最低です。
まとめ
- 公民競争型の英国と日本は短〜中程度、行政審査型の韓国は最短、同じ行政審査型のブラジルは最長です。
- 都市の行政能力と、審査前の都市計画許可の重さ(フランス・カナダ)が日数を決めています。
- 品質管理指数の低さ(英国9.0、ドイツ9.5、ブラジル8.4)も意味が異なり、英国・ドイツは「責任・保険制度が法定されていない」ことによる減点、ブラジルは「工事中の検査がない」ことによる減点です。
要素10:都市計画の統制様式
建築法規と隣接する都市計画の分野には、次の比較の要素が知られています。開発の可否を、事前に公表された規則(ゾーニングの用途・高さ・密度)に当てはまるかどうかで決める規則型か、計画を参照しつつ個別の申請ごとに当局が判断する裁量型かという要素です(Booth, 1996, 2007)。
カテゴリー
- 規則型(確実性):ゾーニングや詳細計画に適合すれば許可される。行政の裁量は狭く、計画の変更は立法手続を要する。
- 裁量型(柔軟性):計画は判断の指針であり、個別の申請ごとに当局が「重要な考慮事項」を踏まえて許否を決める。
- 混合型:規則型の地区制と、開発協議・設計審査などの裁量的な手続を組み合わせる。
各カテゴリーを採用する地域
- 規則型(確実性)
- 米国:用途地区ごとに許される用途と寸法を列挙し、該当すれば当然に許可されるゾーニング(as-of-right)(Hirt, 2013)。
- ドイツ:地区詳細計画(Bebauungsplan)への適合、計画のない既成市街地では「周囲への適合(Einfügen)」という一般基準(建設法典第34条)。
- フランス:地方都市計画(PLU)の規則に適合する建築許可(permis de construire)。
- 日本:用途地域(建築基準法別表第2)と形態規制への適合、開発許可。
- 韓国・中国・ロシア・トルコ・インドネシア・イタリア・インド・ブラジル・メキシコ・アルゼンチン・サウジアラビア:いずれも用途地域・詳細計画・開発管理規則に基づく規則型で、裁量的な要素は例外許可や地区計画の変更手続に限られます(要確認)。
- 裁量型(柔軟性)
- 英国:1947年都市農村計画法以来、すべての開発に計画許可を要し、当局は計画を参照しつつ「重要な考慮事項」に基づいて個別に判断します。Boothはこの裁量をコモンローの伝統から説明しています(Booth, 2007)。
- 混合型
- オーストラリア:州法の下で、用途地域と併せて開発申請(DA)を個別に評価する裁量的な審査を持ちます(Gurran, 2011)。
- カナダ:ゾーニング条例による規則型と、敷地計画審査(site plan control)や開発許可地域という裁量的手続の併用です(要確認)。
- 南アフリカ:2013年のSPLUMAに基づく土地利用スキームと、その適用除外・変更を個別に判断する手続の併用です(要確認)。
- 該当なし
- EU:都市計画はEUの権限外です。
要素11:審査・執行の主体
多くの国で、着工前の図面審査→工事中の検査→完成時の検査・使用承認という流れがあります。この一連のチェックを「誰がやるか」が国によって大きく異なります。EU27か国の比較は、6つの局面での責任配分から公的型・混合型・二元型を区別し(Pedro et al., 2010)、執行体制の類型論は民間関与の程度で「純粋公的型」「規定された共同規制」「条件付き共同規制」「代替的共同規制」「純粋民間型」の5類型を提案しています(van der Heijden, 2009, 2010)。
カテゴリー
- 行政審査型:国・州・市の建築部局が図面審査と検査を行う体系。van der Heijdenの「純粋公的型」に相当し、局面によって民間の専門家を補助的に使うことがあります。
- 公民競争型:申請者が公的機関と民間の認証機関のどちらに審査を頼むかを選べる体系。Pedro et al.の「二元型」、van der Heijdenの「代替的共同規制」に相当します。
- 公的責任下の民間検査義務型:審査の責任は行政に残しつつ、技術審査を国が認定した民間検査技師・検査会社に義務づける体系。「規定された共同規制」に相当します。
- 保険・技術検査機関型:行政は都市計画への適合を審査するにとどまり、技術的品質は保険義務と民間技術検査機関が担う体系。
- 専門家自己証明型:登録された設計者・責任技術者が適合を証明し、行政は届出を受理して事後に監督する体系。
- 国家一元型:国家機関への審査の一元化と登録専門家・独立チェッカーの責任分担を組み合わせる体系。
各カテゴリーを採用する地域
- 行政審査型
- 米国:市・郡の建築部局が審査・検査を行い、法域によって民間の第三者検査を併用します。
- カナダ:州法の下で自治体の建築部局が審査・検査を担い、州によって民間の関与の程度が異なります(van der Heijden, 2010)。
- 韓国:許可権者(市長・郡守など)の審査と、工事監理者(建築士)による監理を組み合わせます。
- 中国:行政の施工許可・竣工検収と、監理企業(工事監理会社)による監理を組み合わせます。
- ロシア:国家鑑定(экспертиза)と建設監督が公的機関の任務です。
- インド:市(都市地方団体)が建築細則に基づいて許可・完成証明を行います。
- ブラジル:市が建築許可(alvará)を発行し、州の消防が防火の検査を行います。
- アルゼンチン:市が建築許可と検査を行います。
- インドネシア:2021年以降、県・市が国のSIMBGシステムを通じて建築承認(PBG)を行います(Republik Indonesia, 2021)。
- サウジアラビア:地方のアマーナが許認可と執行を担い、認定された検査機関が補助します(Kingdom of Saudi Arabia, 2017)。
- 南アフリカ:自治体の建築管理官が承認と検査を行います(National Building Regulations and Building Standards Act 103 of 1977)。
- 公民競争型
- 英国:1984年建築法で民間検査人(approved inspector)制度を導入。ただしグレンフェル後の建築安全法(2022年)で建築安全規制庁を設置し、2023年以降、高さ18m以上または7階以上の「高リスク建物」は民間審査の選択を廃して公的一元審査に回帰、設計・着工・完成の3段階承認(ゲートウェイ)とゴールデンスレッドを義務化しました(Hackitt, 2018)。
- 日本:1998年改正で指定確認検査機関を創設し、現在は建築確認の約9割が民間です(国土交通省, 2019)。2005年の構造計算書偽装問題で民間確認検査機関が偽装を見抜けず、2007年に構造計算適合性判定(第三者ピアチェック)の義務化、審査期間の延長、中間検査の義務化で審査を再強化しました(国土交通省, 2007)。
- オーストラリア:1990年代に民間認証者制度を導入。2014年のメルボルンLacrosseビル火災など外装材火災を受け、2018年のShergold-Weir報告書が民間認証の規律の緩みを指摘し、各州で再規制が進んでいます。
- 公的責任下の民間検査義務型
- ドイツ:審査主体は州の建築監督官庁ですが、技術審査は州が認定する民間の検査技師(Prüfingenieur)が担います(Maiworm et al., 2023)。
- トルコ:建築検査法(2001年、法律4708号)により、民間の建築検査会社(yapı denetim)による検査が義務づけられ、行政が許可と監督を行います。
- 保険・技術検査機関型
- フランス:行政は都市計画適合を審査するにとどまり、技術的品質は1978年Spinetta法による保険義務と民間技術検査機関(contrôleur technique)が担います(DHUP, 2021)。
- 専門家自己証明型
- イタリア:多くの工事が届出(SCIA)と専門家の適合証明(asseverazione)で進み、行政は事後に監督します。耐震工事は州の技術部局への届出・審査を伴います(要確認)。
- メキシコ:首都では登録された「工事責任者(Director Responsable de Obra)」が規則適合に責任を負い、多くの工事は許可ではなく「建設の届出(manifestación de construcción)」で進みます(要確認)。
- 国家一元型
- シンガポール(G20外・参考):国家機関BCAへの審査の一元化と、登録専門家・独立チェッカーの責任分担を組み合わせ、審査の自動化で世界に先行しています(Khemlani, 2005)。
注目すべきは、民間開放を進めた国々がそろって「振り子の揺り戻し」を経験していることです。日本(2005年の偽装問題→2007年再規制)、英国(2017年グレンフェル→2022〜23年の高リスク建物の公的一元化)、オーストラリア(2014年以降の外装材火災→2018年以降の再規制)、ニュージーランド(1990年代の性能規定化と民間認証→2000年代の「漏水住宅」問題)は、「民間開放→事件・事故→部分的な再公営化・ピアチェックの重層化」という同型のサイクルを、法系を越えて10〜20年周期で示しています(May, 2003; Hackitt, 2018)。
要素12:執行能力と非正規建設
法文が同じでも、それを執行する行政の能力と、法の外で建てられる建物の量が違えば、実態は異なります。世界銀行の途上国向けの枠組みが「実施(執行体制・非正規建設・事後検査)」を独立の柱としているのはこのためです(World Bank & GFDRR, 2015; Moullier et al., 2017)。ここでは、World Justice Projectの法の支配指数の「規制の執行」要因(0〜1)と、非正規建設・非正規居住に関する各国統計を手がかりにします(World Justice Project, 2024)。
カテゴリー
- 執行能力が高く、非正規建設が例外的:規制の執行スコアが0.7以上で、無許可建築が制度の周縁にとどまる。
- 執行能力が中位で、非正規建設が地域的に存在:スコアが0.5〜0.7で、特定の地域・階層に無許可建築が集積する。
- 執行能力に制約があり、非正規建設が住宅供給の主要部分:スコアが0.5未満、または住宅の相当部分が許可の外で建てられている。
各カテゴリーを採用する地域(規制の執行スコア、World Justice Project 2024)
- 執行能力が高く、非正規建設が例外的
- ドイツ:0.84。都市人口のスラム居住率は0%です。
- オーストラリア:0.81。
- カナダ:0.81。
- 日本:0.80。
- 英国:0.78。
- 韓国:0.75。
- フランス:0.74。
- 米国:0.72。
- 執行能力が中位で、非正規建設が地域的に存在
- イタリア:0.62。統計局の指標では、許可された住宅100戸に対して約15戸の無許可住宅が建てられており、南部では約40戸に達します(Pagella Politica, n.d.)。1985年・1994年・2003年の3度の建築アムネスティ(condono edilizio)が知られています。
- インドネシア:0.57。2023年の統計局調査では36.85%の世帯が「居住に適さない住宅」に住んでいます(要確認)。
- 南アフリカ:0.51。2023年に12.2%の世帯が非正規住宅(informal dwelling)に住んでいます(Statistics South Africa, 2024)。
- 中国:0.50。都市の集団所有地に建つ「小産権房」(無許可住宅)は1995〜2010年の都市住宅建設の約8%と推計されています(Wang et al., 2018)。
- ブラジル:0.50。2022年国勢調査で1,639万人(人口の8.1%)がファベーラなどの非正規居住区に住んでいます(IBGE, 2024)。
- アルゼンチン:0.50。全国登録では6,467の非正規居住区に約120万世帯が住んでいます(Infobae, 2023)。
- 執行能力に制約があり、非正規建設が住宅供給の主要部分
- インド:0.48。デリーだけで1,731の無認可コロニーに約400万人が住み、2019年から合法化事業が進められています。
- ロシア:0.47。無許可で建てた住宅の簡易登録を認める「ダーチャ・アムネスティ」(2006年〜)を1,650万人が利用しました(Profile.ru, 2026)。
- メキシコ:0.43。住宅ストックの64%超が自力建設(autoproducción)で、多くが許可も技術支援もなく建てられています(Expansión, 2025)。
- トルコ:0.42。2018年の建築アムネスティ(İmar Barışı)には1,025万件の申請があり、2017年末までに建てられた無許可建築が登録証で合法化されました(Türkiye Belediyeler Birliği, 2018; Hürriyet, 2019)。2023年の地震で、この合法化が被害を拡大したという批判が起きています。
- サウジアラビア:指数の対象外。ジッダ市では54を超える無計画居住区が市域の約16%を占め、100万人超(市人口の約4分の1)が住むとされています(Al-Shihri et al., 2020)。
この要素は、国家のタイプと最も強く対応します。自由市場型・保守主義型・東アジア開発型の国はいずれも上位群に、新興・低所得型の国は中位・下位群にあります。法文上は同じ「単一法・法典型」「事前審査型」でも、上位群と下位群では規制の実態が異なるため、法文だけの比較には限界があります。また、アムネスティによる無許可建築の合法化(イタリア・トルコ・ロシア・インド)は、法の不遡及とは別の経路で「既存建築物」を法体系に取り込む方法であり、災害リスクの温存という代償を伴います。
カテゴリーD:変化と外圧
要素13:既存建築物への適用
災害・事故という転換点が既存の建物への遡及を生みます。建築法規は原則として新築時の基準を定め、後に基準が強化されても既存の建物には及ばないのが多くの国の原則です(不遡及、既存不適格)。しかし耐震・防火・省エネのように、既存建築物こそがリスクの大部分を占める分野では、各国が何らかの形で既存建築物に手を伸ばしています。EU27か国の比較でも「既存建築物への規則」は独立の比較項目でした(Pedro et al., 2008)。
カテゴリー
- 義務的改修・診断型:特定のリスク(耐震・外装材・大規模建物の火災安全)について、既存建築物に診断・改修・登録を法律で義務づける。
- 誘導型:税制・補助金や、賃貸・売買の条件を通じて改修を促し、義務は限定的。
- 合法化(アムネスティ)併用型:無許可の既存建築物を一定の条件で合法化する制度を繰り返し用いる。
- 既存建築物専用コード型:既存建築物の改修・用途変更に適用する専用のコードを持つ。
各カテゴリーを採用する地域
- 義務的改修・診断型
- 日本:建築基準法第3条第2項が既存不適格を認める一方、耐震改修促進法(1995年)の2013年改正で、1981年以前の基準で建てられた大規模な特定用途建築物に耐震診断と結果公表を義務づけ、第12条の定期報告制度で維持管理を監督しています(建築物の耐震改修の促進に関する法律, 1995)。
- 英国:建築規則は「建築工事」(大規模改修・用途変更)に適用され、2022年建築安全法第4部が、占有中の高リスク建物に登録(2023年10月まで)と安全ケース報告を義務づけました(Hackitt, 2018; HM Government, 2024)。
- トルコ:2012年の災害リスク地域転換法(法律6306号)が「危険建物」の指定と解体・再建の枠組みを定めています(Türkiye Belediyeler Birliği, 2018)。
- 韓国:施設物安全法(1995年、2017年全面改正)の定期点検と、2020年施行の建築物管理法が既存建築物の安全管理を義務づけます(건축물관리법, 2020)。
- 中国:2009年から3年間の全国小中学校校舎安全工程で校舎の耐震改修を進め、2019〜2024年に28万の老朽住宅団地(4,800万世帯)の改造に着手しました(China News Service, 2025)。
- オーストラリア:Lacrosse(2014年)・Neo200(2019年)火災後、ビクトリア州が可燃性外装材の是正機関を法定し(Cladding Safety Victoria Act 2020)、NSW州もProject Remediateで是正を進めています。
- 誘導型
- イタリア:2017年からの耐震改修税額控除(Sismabonus)と建物の耐震リスク分類(2017年省令58号)で改修を誘導し、民間建物への一般的な改修義務はありません。
- フランス:アクセシビリティの計画義務(2014年)、賃貸住宅のエネルギー性能による賃貸禁止(2021年気候・レジリエンス法。G等級は2025年から、F等級は2028年から)など、分野別の義務で誘導します。耐震の一般的な改修義務はありません。
- ドイツ:既存建築物の保護(Bestandsschutz)が基本法第14条から導かれ、新基準は大規模な変更時にのみ及びます。建物エネルギー法に最上階天井の断熱や古いボイラーの交換など限定的な追加義務があります。
- 合法化(アムネスティ)併用型
- トルコ:2018年の建築アムネスティで1,025万件を合法化(要素12参照)。
- イタリア:1985年・1994年・2003年の建築アムネスティ法。
- ロシア:「ダーチャ・アムネスティ」(2006年〜、1,650万人が利用)。
- インド:デリーの無認可コロニーの合法化事業(2019年〜)。
- ブラジル:2017年の都市土地正規化法(REURB、法律13.465/2017)が非正規居住区の土地・建物の正規化を制度化しました。
- 既存建築物専用コード型
- 米国:2003年初版の国際既存建築物コード(IEBC)が改修・用途変更の基準を定め、ロサンゼルス(2015年条例)やサンフランシスコ(2013年)のように特定構造(軟弱1階、非靱性RC)の義務的耐震改修を条例で定める市があります(City of Los Angeles, n.d.)。
要素14:デジタル化
情報技術という外的な変化が申請・審査の形を書き換えています。建築確認の電子申請、BIMの提出、法規適合の自動チェックは、2010年代以降の建築法規の最大の運用変化です。欧州建築確認機関連合は2018年に、申請・審査・決定・検査・保存・BIM・移行の7項目で加盟国のデジタル化を比較しました(CEBC, 2018)。デジタル化の進み方は法系よりも、国の行政のデジタル戦略と、要素11で見た「誰が審査するか」の集権度に対応します。
カテゴリー
- BIM審査・自動審査先行型:BIMデータの提出を義務化し、法規適合の自動チェックに進んでいる。
- 全国統一プラットフォーム型:国が全国共通の電子申請システムを運用し、地方政府がその上で審査する。
- 自治体・州ごとの電子化型:電子申請は自治体・州ごとに導入され、全国統一の仕組みはない。
各カテゴリーを採用する地域
- BIM審査・自動審査先行型
- シンガポール(G20外・参考):1995年のCORENETに始まり、2015年から5,000㎡以上の建物にBIM提出を義務化、2023年のCORENET Xは2025〜27年に段階的に義務化されます(Khemlani, 2005; Urban Redevelopment Authority, 2025)。
- 日本:2026年4月から建築確認の「BIM図面審査」を開始し、2029年春にBIMデータ審査へ進む計画です(国土交通省, 2024)。
- 韓国:電子建築行政システム(セウムト)が2008年6月から全国運用され、法規の機械可読化研究でも先行しています。
- 全国統一プラットフォーム型
- 中国:2018年の15都市での試行を経て、2019年に全国の審査制度改革を実施し、全国統一の審査管理システムと、審査全体を120営業日以内とする目標を定めました(国务院办公厅, 2019)。
- インドネシア:2021年から国のシステムSIMBGを通じて県・市が建築承認(PBG)を審査します(Republik Indonesia, 2021)。
- サウジアラビア:自治体省のプラットフォーム「Balady」が建築許可を電子的に発行し、認定技術事務所がコード適合を証明します(Ministry of Municipalities and Housing, n.d.)。
- フランス:2022年1月から全コミューンに電子申請の受付を義務づけ、人口3,500人超のコミューンには電子処理も義務づけました(Ministère de la Transition écologique, n.d.)。
- オーストラリア(NSW州):2020〜21年にかけて州の計画ポータルへの申請提出を全カウンシルに義務化しました(NSW Department of Planning, 2020)。
- 英国:計画申請には全国ポータルがあり、建築確認では高リスク建物に「ゴールデンスレッド」の電子情報管理を義務づけましたが(HM Government, 2024)、建築確認の全国電子申請システムはありません。
- ロシア:都市計画活動の国家情報システム(ГИСОГД)が2019年から各地域に義務化され、許可は行政ポータルを通じて申請できます(要確認)。
- 自治体・州ごとの電子化型
- 米国:ニューヨーク市のDOB NOW、ロサンゼルスのePlanLAのように市ごとに電子審査を導入し、全国システムもBIM義務もありません。
- カナダ:トロント・バンクーバーなど市ごとの電子申請で、全国システムはありません。
- ドイツ:オンラインアクセス法(2017年)に基づき、メクレンブルク・フォアポンメルン州が開発した「デジタル建築申請」を11州が共同利用する一方、バイエルンなどは独自ポータルを持ちます(Open Government Deutschland, 2025)。
- イタリア:建築の単一窓口(SUE)は市ごとで、2017年に申請様式が全国で統一されました。
- インド:オンライン建築許可システムは州・市ごとに導入され、住宅都市省のモデル建築細則が枠組みを示します(National Institute of Urban Affairs, 2024)。
- ブラジル:サンパウロ市は2020年12月に建築許可を100%電子化しましたが、全国システムはありません(Prefeitura de São Paulo, 2020)。
- メキシコ:メキシコ市が2024年3月に建設手続の単一デジタル窓口を開設しました。全国システムはありません。
- アルゼンチン:ブエノスアイレス市が遠隔手続システム(TAD)で許可を処理し、全国システムはありません。
- トルコ:空間住所登録システム(MAKS)と電子政府ポータルを通じて許可書が電子発行されています(要確認)。
- 南アフリカ:ケープタウン市は2014年から電子申請を運用していますが、全国的には紙の申請が主流です。
- 該当なし
- EU:電子申請は加盟国の権限で、EUレベルの統一はありません。
要素15:国際標準との整合
EU法の直接効力、WTO/TBT協定の「性能の観点から技術規則を定める」義務(WTO, 1994)、ISO・EN・米国規格という国際的・地域的な標準が、各国の技術基準をどこまで国境の外の標準に合わせさせているかで、各国は3つに分かれます。
カテゴリー
- 超国家規格の直接適用:地域統合の法により、共通の設計規格の採用と競合する国内規格の撤回が義務づけられている。
- 国際・地域規格の自発的採用:義務はないが、国際規格や他国のモデルコードを自国の技術基準としてほぼそのまま採用している。
- 国内規格中心・部分整合:国内で作る規格を中心とし、国際規格は参照・部分的な整合にとどまる。
各カテゴリーに当たる国・地域
- 超国家規格の直接適用
- ドイツ・フランス・イタリア:建設製品規則(CPR)とユーロコードの下で、製品の性能表示と構造設計の共通言語が統一され、各国は国家附属書で安全水準だけを定めます(Regulation (EU) No 305/2011)。
- EU:整合の主体。2024年の建設製品規則改正でデジタル製品パスポートなどを追加しました。
- 国際・地域規格の自発的採用
- 英国:EU離脱後もユーロコードを構造設計規格として維持しています。
- サウジアラビア:米国のI-Codesを基礎とするコードを全国に義務化(Kingdom of Saudi Arabia, 2017)。
- インドネシア:SNI 1726(耐震)・SNI 2847(コンクリート)は米国のASCE 7・ACI 318の翻訳採用です。
- トルコ:2018年の建物耐震規則はASCE 7-16と整合し、ユーロコードの導入も進めています。
- 南アフリカ:荷重規準にユーロコードを採用(2010年)。
- 国内規格中心・部分整合
- 米国:ASCE・NFPA・ASTMという国内の民間規格が中心で、ISOとの整合は限定的です。米国規格自体が他国の採用対象になっています。
- 日本:JISとISOの整合を進め、1998年の性能規定化はWTO/TBT協定への対応も動機でしたが、技術基準(告示)は国内で作ります。
- 韓国:国内の設計基準(KDS)を中心に、耐震ではIBC・ASCE 7を参照しています。
- 中国:強制性国家標準(GB)が中心で、WTO加盟(2001年)後に国際規格との整合を進めています。
- ロシア:規則集(СП)と国家規格(ГОСТ)が中心。2024年の改正で外国規格の適用も適合経路として認められました(Федеральный закон № 653-ФЗ, 2023)。
- インド・ブラジル・メキシコ・アルゼンチン:国内規格(IS、ABNT、NMX、IRAM・CIRSOC)が中心で、耐震・構造で米国規格を参照しています。
- オーストラリア・カナダ:国内規格(AS/NZS、CSA)が中心で、ISO・ENは参照にとどまります。
国際標準との整合は、法系ではなく地域統合の有無と国の規格作成能力で決まります。EU加盟国は義務として、輸入国(サウジアラビア・インドネシア・南アフリカ)は自らの選択として国境の外の標準を採用し、大きな国内市場と規格団体を持つ国(米国・中国・日本・インド)は国内規格を中心に据えます。米国系とユーロコード系という2つの地域標準への収斂が進む一方で、その2つの間の整合は限定的であり、建築法規の国際比較で最後まで残る分岐がここにあります。
国・地域別の特徴
ここまで、法体系と建築法規を要素ごとに横断的に見てきました。この章では視点を国・地域に戻し、主要国(G20)の一つ一つについて、法体系全体と建築法規の特徴を簡潔に列挙します。
大陸法系(フランス法系)
フランス
- 法系と継受:フランス法系の起点です。ローマ法と慣習法を1804年の民法典に統合し、自ら作った法典を欧州・中南米・アフリカへ広げました。
- 憲法構造と立法権限:単一国家・半大統領制で、憲法院が法律を事前に審査します。法律と法典が中心で、技術的な詳細は政令(デクレ)と省令(アレテ)に置かれます。
- 国家のタイプと法源の重心:保守主義・コーポラティズム型の国家で、公法と私法を峻別し、行政裁判所の系統(コンセイユ・デタ)を持ちます。
- 転換点と外圧:1789年の革命が近代法の起点であり、現在はEU法の直接効力の下にあります。
- 技術基準の系統と品質担保:独自の技術規格からユーロコードへ移行しました(市場統合)。品質担保は10年責任と保険義務による責任・保険型です。
- 法源のかたちと規定の様式:建設・住居法典に統合された単一法・法典型で、技術規定は拘束力のある省令に書かれます。2021年から性能規定化が進み、規制の範囲は省エネルギー・環境まで含む統合型です。
- 審査・執行と手続:技術基準は国が定め、審査は保険者と技術検査機関が担う型です。手続は長く(213日)、執行能力は高い(0.74)水準です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:既存建築物には誘導型で対応し、2022年に全国の電子申請が始まりました。技術基準は超国家規格(ユーロコード)を直接適用します。
イタリア
- 法系と継受:フランス法系に属し、統一後に自発的にフランス型の法典を採用しました(1865年民法典、1942年に改訂)。
- 憲法構造と立法権限:単一国家ですが州制度を持ち、議院内閣制で憲法裁判所型の違憲審査を採ります。
- 国家のタイプと法源の重心:保守主義・コーポラティズム型で、法典・法律中心の法源構造です。
- 転換点と外圧:1946年の共和制移行と、1908年のメッシーナ地震が制度の画期です。EU法の直接効力の下にあります。
- 技術基準の系統と品質担保:1909年の耐震規定は世界的にも早い独自の起点で、その後ユーロコードへ移行しました。品質担保は責任・保険型です。
- 法源のかたちと規定の様式:統一建築法典に基づく単一法・法典型で、技術規定は拘束力のある建設技術規範(NTC)に書かれます。規定様式は仕様規定が中心で、規制の範囲の広がりは要確認です。
- 審査・執行と手続:技術基準は国が定め、審査は専門家(技師)の自己証明に依存する型です。手続は中程度(189.5日)、執行能力は中位(0.62)です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:既存建築物には誘導型の耐震改修支援と建築アムネスティが併用され、電子化は自治体ごとに進みます。技術基準はユーロコードを直接適用します。
ブラジル
- 法系と継受:フランス法系に属し、独立後に自発的に法典を採用しました(1916年民法典はフランス法系)。
- 憲法構造と立法権限:連邦・州・市の3層からなる連邦制・大統領制で、付随的審査と憲法裁判を併用します。
- 国家のタイプと法源の重心:新興・低所得型に位置づけられ、法典・法律中心の法源構造です。
- 転換点と外圧:1822年の独立と1988年憲法が画期で、地域統合の枠組みはメルコスールです。
- 技術基準の系統と品質担保:耐震・構造の技術基準は米国系を参照しつつ、独自の国内規格(ABNT)を自発的に整備してきました。品質担保は専門家認証型です。
- 法源のかたちと規定の様式:建築法規は市町村条例型で、技術の中身は国内規格の参照によって組み込まれます。住宅性能規格(NBR 15575)により性能規定への移行が進んでいますが、規制の範囲の広がりは要確認です。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は市にあり、審査は行政審査型です。手続は長く(338日)、執行能力は中位(0.50)です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:既存建築物と非正規建設には正規化法(REURB)で対応し、電子化は自治体ごとに進みます(サンパウロは2020年に全面電子化)。技術基準は国内規格中心です。
メキシコ
- 法系と継受:フランス法系に属し、独立後に自発的に法典を採用しました。
- 憲法構造と立法権限:連邦制・大統領制で、アンパロ訴訟による付随的審査を持ちます。
- 国家のタイプと法源の重心:新興・低所得型で、法典・法律中心の法源構造です。
- 転換点と外圧:1821年の独立と1917年憲法が画期で、外圧は北米貿易協定が中心です。
- 技術基準の系統と品質担保:1942年と1957年の連邦区建築規則を起点とする独自の系統で、耐震規定を自国で発展させてきました。品質担保は専門家認証型です。
- 法源のかたちと規定の様式:建築法規は市町村(州・市)条例型で、技術規定は拘束力のある補完技術規範(NTC)に書かれます。規定様式は仕様規定で、規制の範囲の広がりは要確認です。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は市にあり、審査は登録された工事責任者(DRO)による専門家自己証明型です。手続は短く(82日)、執行能力は低位(0.43)です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:非正規建設の比率が高く、既存建築物への対応の分類は保留です。メキシコ市は2024年に電子窓口を導入し、技術基準は国内規格中心です。
アルゼンチン
- 法系と継受:フランス法系に属し、独立後に自発的に法典を採用しました(2015年に民商法典へ統合)。
- 憲法構造と立法権限:連邦制・大統領制で、付随的審査を採ります。
- 国家のタイプと法源の重心:新興・低所得型で、法典・法律中心の法源構造です。
- 転換点と外圧:1816年の独立と1853年憲法が画期で、地域統合の枠組みはメルコスールです。
- 技術基準の系統と品質担保:耐震の技術基準は米国系を参照しつつ、独自の国内規格(CIRSOC)を自発的に整備しました。品質担保は専門家認証型です。
- 法源のかたちと規定の様式:建築法規は市町村条例型で、技術の中身は国内規格(CIRSOC・IRAM)の参照によって組み込まれます。規定様式は仕様規定で、規制の範囲の広がりは要確認です。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は市にあり、審査は行政審査型です。手続は長く(318日)、執行能力は中位(0.50)です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:既存建築物への対応の分類は保留です。電子化は市ごとに進み、技術基準は国内規格中心です。
大陸法系(ドイツ法系)
ドイツ
- 法系と継受:ドイツ法系の起点です。ローマ法学の再体系化(パンデクテン法学)を1900年施行の民法典に結晶させ、中欧・東アジアへ広げました。
- 憲法構造と立法権限:連邦制・議院内閣制で、憲法裁判所型の違憲審査を採ります。建築法規の立法権は州にあります。
- 国家のタイプと法源の重心:保守主義・コーポラティズム型で、法典・法律中心の法源構造です。
- 転換点と外圧:1949年の基本法と1990年の再統一が画期で、EU法の直接効力の下にあります。
- 技術基準の系統と品質担保:独自の国内規格(DIN)からユーロコードへ移行しました。品質担保は事前審査型です。
- 法源のかたちと規定の様式:16州の州建築法に分かれる州法分散型で、各州が見本文書をもとに制定します。規定は仕様規定と保護目標を組み合わせ、技術の中身は行政規則(VV TB)経由でDIN規格を参照します。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は州にあり、審査は公的責任の下で民間の検査技師に義務づける型です。手続は中程度(126日)、執行能力は高い(0.84)水準です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:既存建築物には誘導型で対応し、電子化は州ごとに進みます。技術基準は超国家規格(ユーロコード)を直接適用します。
日本
- 法系と継受:ドイツ法系に属し、近代化のために自発的に継受しました。戦後は占領期に米国法の影響を受けています。
- 憲法構造と立法権限:単一国家・議院内閣制で、付随的審査を採ります。建築法規の立法権は国にあり、地方は条例で付加します。
- 国家のタイプと法源の重心:東アジア開発型で、法律の委任を受けた政令・省令・告示という委任立法が法源の重心です。
- 転換点と外圧:1868年の明治維新と1945年の敗戦、関東大震災(1923年)と阪神・淡路大震災(1995年)が画期です。外圧はWTO・TBT協定による緩い整合です。
- 技術基準の系統と品質担保:1924年の法定耐震規定を起点とする日本系の独自の系統で、韓国・台湾などへ広がりました。品質担保は事前審査型(建築確認)です。
- 法源のかたちと規定の様式:建築基準法を頂点とする単一法・法典型で、技術の中身は拘束力のある告示に書かれます。1998年改正で性能規定化し、規制の範囲は分散型(省エネルギー等は別法)です。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は国にあり、審査は1999年の民間開放以降、行政と指定確認検査機関が競争する公民競争型で、2007年から構造計算適合性判定(ピアチェック)が加わりました。手続は中程度(108日)、執行能力は高い(0.80)水準です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:既存建築物には耐震診断の義務化(義務的診断型)で対応し、2026年にBIM図面審査が始まる予定です。技術基準は国内規格中心です。
韓国
- 法系と継受:ドイツ法系に属し、日本経由で継受しました。植民地期の依用(日本法の適用)を経て、独立後に自発的に法典化しました。
- 憲法構造と立法権限:単一国家・大統領制で、憲法裁判所型の違憲審査を採ります。
- 国家のタイプと法源の重心:東アジア開発型で、委任立法(施行令・施行規則・告示)が法源の重心です。
- 転換点と外圧:1945年の独立、1987年の民主化、三豊百貨店崩壊(1995年)が画期です。外圧はWTO・FTAによる緩い整合です。
- 技術基準の系統と品質担保:日本系の骨格に米国系の耐震規定が合流した系統です。品質担保は事前審査型です。
- 法源のかたちと規定の様式:建築法を頂点とする単一法・法典型で、技術の中身は告示と建設基準コード(KDS)に書かれます。規定様式は仕様規定が中心で、規制の範囲は分散型です。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は国にあり、審査は行政審査型です。手続は短く(27.5日)、執行能力は高い(0.75)水準です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:既存建築物には義務的点検型で対応し、2008年の電子建築行政システム(セウムト)で電子化を先行させました。技術基準は国内規格中心で、耐震はIBCを参照しています。
トルコ
- 法系と継受:ドイツ法系(スイス経由)に属し、1926年に世俗化のためスイス民法典を自発的に継受しました。
- 憲法構造と立法権限:単一国家・大統領制で、憲法裁判所型の違憲審査を採ります。
- 国家のタイプと法源の重心:強い中央集権を特徴とする新興型で、委任立法(省令)が法源の重心です。
- 転換点と外圧:1923年の建国、1999年のマルマラ地震、2023年の地震が画期です。EU加盟交渉が義務的な整合の圧力になっています。
- 技術基準の系統と品質担保:イタリア系から出発し、地震後に米国系の耐震規定とユーロコードを合流させた系統です。品質担保は事前審査型です。
- 法源のかたちと規定の様式:建築法(İmar Kanunu)を頂点とする単一法・法典型で、技術の中身は拘束力のある省令(計画区域建築規則など)に書かれます。規定様式は仕様規定で、規制の範囲の広がりは要確認です。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は国にあり、広域市の規則は事前承認付きです。審査は公的責任の下で民間の建築検査会社に義務づける型で、手続は短く(100日)、執行能力は低位(0.42)です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:危険建物の義務的な改修・撤去と、2018年の建築アムネスティ(1,025万件)が併存します。電子化は電子政府経由(要確認)で、技術基準は米国規格への整合とユーロコード導入が並行します。
英米法系
英国
- 法系と継受:英米法系(コモンロー)の起点です。判例法を中心とする法を、植民地化を通じて英連邦と米国に広げました。
- 憲法構造と立法権限:単一国家・議院内閣制で、議会主権のもと裁判所による違憲審査はありません。
- 国家のタイプと法源の重心:自由市場型で、判例と制定法を併用する法源構造です。
- 転換点と外圧:1666年のロンドン大火と2017年のグレンフェル・タワー火災が画期です。2020年までEU法の直接効力の下にありました。
- 技術基準の系統と品質担保:英国規格(BS)を起点とする系統で、2010年に市場統合によりBSを撤回しユーロコードへ移行しました。品質担保は専門家認証型です。
- 法源のかたちと規定の様式:建築法(1984年)と建築規則(2010年)の下に承認文書(みなし適合指針)を置く二層型で、1985年から性能規定(機能要求)です。規制の範囲は統合型です。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は国にあり、審査は自治体と民間の検査機関が競争する公民競争型でしたが、2023年から高リスク建物は公的機関(建築安全規制庁)に一元化されました。手続は短く(86日)、執行能力は高い(0.78)水準です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:高リスク既存建物には義務的な安全管理が課され、計画ポータルと「ゴールデンスレッド」(建物情報の電子的保持)が進みます。技術基準は地域規格(ユーロコード)を自発的に維持しています。
米国
- 法系と継受:英米法系に属し、植民地としてコモンローを継受し、独立後も継承しました。
- 憲法構造と立法権限:連邦制・大統領制で、付随的審査(司法審査)を採ります。建築法規の立法権は州(および市)にあり、連邦は関与しません。
- 国家のタイプと法源の重心:自由市場型で、民間団体が作るモデル文書と民間規格の参照が厚い法源構造です。
- 転換点と外圧:独立革命、シカゴ大火(1871年)、1925年と1933年の地震が画期です。外圧は貿易協定による緩い整合にとどまります。
- 技術基準の系統と品質担保:米国系の起点で、モデルコード(現在はIBC)と耐震規定を世界に輸出しています。品質担保は専門家認証型です。
- 法源のかたちと規定の様式:民間団体(ICC)のモデルコードを各州が州法として採用するモデル文書の州法採用型で、規定様式は仕様規定が中心です。規制の範囲は分散型で、技術の中身は民間規格(ASCE・ACIなど)の参照で組み込まれます。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は州にあり、審査は自治体の行政審査型です。手続は短く(80.6日)、執行能力は高い(0.72)水準です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:既存建築物には専用コード(IEBC)を持つ型で、電子化は自治体ごとに進みます。技術基準は国内規格中心です。
カナダ
- 法系と継受:英米法系に属し(ケベック州は大陸法との混合)、植民地化と1867年の連邦結成を経て継承しました。
- 憲法構造と立法権限:連邦制・議院内閣制で、付随的審査を採ります。建築法規の立法権は州にあります。
- 国家のタイプと法源の重心:自由市場型で、モデル文書の参照が厚い法源構造です。
- 転換点と外圧:1867年の連邦結成と1982年の権利章典が画期です。外圧は北米貿易協定と州間の規制調整協定です。
- 技術基準の系統と品質担保:1941年に米国系を参照して国家建築コード(NBC)を作り、その後独自に発展させました。品質担保は専門家認証型です。
- 法源のかたちと規定の様式:連邦の研究機関が作るNBCを各州が州法として採用するモデル文書の州法採用型で、2005年から目標ベースの性能規定です。規制の範囲は分散型で、技術の中身はみなし適合指針で示されます。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は州にあり、審査は行政審査型です。手続は長く(249日)、執行能力は高い(0.81)水準です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:既存建築物への対応の分類は保留で、電子化は自治体ごとに進みます。技術基準は国内規格中心です。
オーストラリア
- 法系と継受:英米法系に属し、植民地化と1901年の連邦結成を経て継承しました。
- 憲法構造と立法権限:連邦制・議院内閣制で、付随的審査を採ります。建築法規の立法権は州にあります。
- 国家のタイプと法源の重心:自由市場型で、モデル文書と規格の参照が厚い法源構造です。
- 転換点と外圧:1901年の連邦結成と2014年のメルボルンLacrosseビル火災(外装材問題)が画期です。外圧はWTO・TBT協定による緩い整合です。
- 技術基準の系統と品質担保:英国系の植民地建築法から出発し、独立後に統一して独自の国家建設法典(NCC)を作りました。品質担保は専門家認証型です。
- 法源のかたちと規定の様式:NCCを各州が採用するモデル文書の州法採用型で、1996年から性能規定です。規制の範囲は統合型で、技術の中身はみなし適合指針で示されます。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は州にあり、審査は民間認証者を含む公民競争型ですが、2018年以降は再規制が進んでいます。都市計画は混合型で、手続は中程度(120.5日)、執行能力は高い(0.81)水準です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:可燃性外装材の是正を義務化し、州の電子申請ポータルを義務化しました(ニューサウスウェールズ州は2021年完了)。技術基準は国内規格中心です。
インド
- 法系と継受:英米法系に属し、植民地化を通じて継受し、1947年の独立後も継承しました。
- 憲法構造と立法権限:連邦制・議院内閣制で、付随的審査を採ります。建築法規の立法権は州と市にあります。
- 国家のタイプと法源の重心:新興・低所得型で、制定法と判例を併用する法源構造です。
- 転換点と外圧:1947年の独立と1950年憲法が画期です。外圧はWTOによる緩い整合です。
- 技術基準の系統と品質担保:英国系の間接的な影響から出発し、耐震では米国系の規定を自発的に採用して合流させました。国家建築コード(1970年)は見本文書です。品質担保は事前審査型です。
- 法源のかたちと規定の様式:建築法規は市町村条例型で、技術の中身は国家建築コードとインド規格(IS)の参照で組み込まれます。規定様式は仕様規定で、規制の範囲の広がりは要確認です。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は市にあり、審査は行政審査型です。手続は中程度(106日)、執行能力は低位(0.48)です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:非正規建設が多く、既存建築物にはアムネスティ(合法化)が併用されます。電子化は州・市ごとに進み、技術基準は国内規格中心です。
混合法系
南アフリカ
- 法系と継受:ローマ・オランダ法と英米法が重層する混合法系です。植民地化を経て、1994年の民主化後に新憲法を制定しました。
- 憲法構造と立法権限:準連邦的な単一国家・議院内閣制で、憲法裁判所型の違憲審査を採ります。
- 国家のタイプと法源の重心:新興・低所得型で、制定法と判例を併用する法源構造です。
- 転換点と外圧:1994年の民主化と1996年憲法が画期です。地域統合の枠組みは南部アフリカ開発共同体です。
- 技術基準の系統と品質担保:英国系の間接的影響から独自の国家建築規則(1977年)を作り、2010年にユーロコードを自発的に採用しました。品質担保は事前審査型です。
- 法源のかたちと規定の様式:国家建築規則・建築基準法(1977年)を頂点とする単一法・法典型で、2008年に機能規定(性能規定)へ移行しました。規制の範囲は統合型で、技術の中身は法定のみなし適合指針(SANS 10400)で示されます。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は国にあり、審査は自治体の行政審査型です。都市計画は混合型で、手続は中程度(155日)、執行能力は中位(0.51)です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:非正規住宅が多く、既存建築物への対応の分類は保留です。電子化は自治体ごとで紙が主流(ケープタウンは2014年に電子化)、技術基準はユーロコードの自発的採用です。
インドネシア
- 法系と継受:オランダ法(大陸法)・イスラム法・慣習法(アダット)が重層する混合法系で、植民地化を経て1945年の独立後に継承しました。
- 憲法構造と立法権限:分権化した単一国家・大統領制で、憲法裁判所型の違憲審査を採ります。
- 国家のタイプと法源の重心:新興・低所得型で、委任立法(政令・省令)が法源の重心です。
- 転換点と外圧:1945年の独立と1998年の民主化が画期です。地域統合の枠組みはASEANです。
- 技術基準の系統と品質担保:オランダ系の植民地遺制から、ニュージーランドの技術援助を経て、米国系の耐震規定を自発的に採用した合流型の系統です。品質担保は事前審査型です。
- 法源のかたちと規定の様式:建築物法(UU 28/2002)を頂点とする単一法・法典型で、技術の中身は政府規則・省令と国家規格(SNI)に書かれます。規定様式は仕様規定で、規制の範囲の広がりは要確認です。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は国にあり、県・市が条例で運用します。審査は行政審査型で、手続は長く(200日)、執行能力は中位(0.57)です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:既存建築物への対応の分類は保留で、全国統一の電子申請プラットフォーム(SIMBG)を持ちます。技術基準は米国規格をSNIとして自発的に採用しています。
社会主義法系とその移行
ロシア
- 法系と継受:社会主義法からの移行系です。1917年の革命でソビエト法を作り、1991年の体制転換後に大陸法型の法典へ書き換えました。
- 憲法構造と立法権限:連邦制・半大統領制で、憲法裁判所型の違憲審査を採ります。建築の技術規制は連邦の専管です。
- 国家のタイプと法源の重心:国家資本主義・権威主義型で、委任立法(政府決定・規則集)が法源の重心です。
- 転換点と外圧:1917年と1991年の2度の体制転換が画期です。外圧はWTO加盟とユーラシア経済連合です。
- 技術基準の系統と品質担保:ソ連の建設規範(SNiP)を起点とし、現在の規則集(СП)へ独自に発展させた系統で、旧ソ連圏と中国に広がりました。品質担保は事前審査型です。
- 法源のかたちと規定の様式:「建物・構造物の安全に関する技術規則」(384-FZ、2009年)を頂点とする単一法・法典型で、技術の中身は拘束力のある規則集に書かれます。規定様式は仕様規定に代替経路(特別技術条件)を加えたもので、規制の範囲の広がりは要確認です。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は連邦にあり、審査は国家鑑定による行政審査型です。手続は中程度(165日)、執行能力は低位(0.47)です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:別荘(ダーチャ)アムネスティなどの合法化を併用し、電子化は全国情報システム(要確認)で進みます。技術基準は国内規格中心ですが、2024年から外国規格の適用経路が開かれました。
中国
- 法系と継受:社会主義法からの移行系です。1949年以降ソビエト法を継受し、1978年の改革開放後に大陸法(ドイツ・日本・台湾経由)を再導入しました。
- 憲法構造と立法権限:党国家としての単一国家で、裁判所による違憲審査はありません。
- 国家のタイプと法源の重心:国家資本主義・権威主義型で、行政法規・部門規章・強制標準という委任立法が法源の重心です。
- 転換点と外圧:1949年、1978年、四川地震(2008年)が画期です。外圧はWTO加盟による整合です。
- 技術基準の系統と品質担保:ソ連系の技術援助から出発し、その後米・欧・日を参照して独自に発展させた系統です。品質担保は事前審査型です。
- 法源のかたちと規定の様式:建築法と強制標準(強制GB)を組み合わせた単一法・法典型で、全文強制の「通用規範」への移行により性能規定化が進行中です。規制の範囲は統合型です。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は国にあり、審査は行政審査型です。手続は中程度(111日)、執行能力は中位(0.50)です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:既存建築物には義務的改修型で対応し、2019年から全国統一の審査管理システムを整備しました。技術基準は国内標準中心です。
宗教法系
サウジアラビア
- 法系と継受:イスラム法系の起点の一つで、家族法・刑法はシャリーアに基づき、商事・建設などの分野は法典を輸入しています。
- 憲法構造と立法権限:単一の君主制で、裁判所による違憲審査はありません。法は勅令・閣議決定・執行規則の形をとります。
- 国家のタイプと法源の重心:レンティア国家で、勅令・執行規則・技術コードという委任立法が法源の重心です。
- 転換点と外圧:1932年の建国と1992年の統治基本法が画期です。外圧はWTO加盟と湾岸協力会議です。
- 技術基準の系統と品質担保:米国系(IBC)を国際コード評議会との技術協定によって導入した系統です。品質担保は事前審査型です。
- 法源のかたちと規定の様式:サウジ建築コード(SBC)を勅令で拘束力ある法とした単一法・法典型で、規定様式はIBC系の仕様規定です。規制の範囲は統合型(要確認)です。
- 審査・執行と手続:技術基準を作る権限は国にあり、審査は行政審査型です。手続は短く(100日)、執行能力の指数は対象外です。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:既存建築物への対応の分類は保留で、全国統一の電子申請プラットフォーム(Balady)を持ちます。技術基準は米国モデルコードの自発的採用です。
超国家的な法秩序
EU
- 法系と継受:加盟国の大陸法・英米法の上に置かれた超国家的な法秩序で、加盟によって受容されます。
- 憲法構造と立法権限:条約に基づく超国家連合で、規則(直接適用)と指令(国内法化)によって立法し、欧州司法裁判所が統一的に解釈します。
- 国家のタイプと法源の重心:国家のタイプの分類は当てはまりません。規則・指令と欧州規格(EN)が法源の重心です。
- 転換点と外圧:1957年のローマ条約と1992年のマーストリヒト条約が画期で、加盟国に対する収斂圧力の源そのものです。
- 技術基準の系統と品質担保:ユーロコード系の起点で、建設製品規則(CPR)とユーロコードを加盟国に義務化しています。品質担保の型は加盟国に委ねられます。
- 法源のかたちと規定の様式:超国家・国・州・市が重なる多層ガバナンス型で、CPRとユーロコードは性能規定です。技術の中身はEN規格に国家附属書を付けて参照します。
- 審査・執行と手続:技術基準の権限は製品と構造設計について超国家にあり、審査・執行・手続は加盟国に委ねられます。
- 既存建築物・デジタル化・国際整合:既存建築物(建物エネルギー性能指令)と製品情報のデジタル化(デジタル製品パスポート)で加盟国を誘導し、国際整合においては収斂圧力の源です。
こうして国ごとに並べると、まず、法系と憲法構造は独立に組み合わさっていることがわかります。英米法系にも単一国家(英国)と連邦制(米国・インド・オーストラリア・カナダ)があり、フランス法系にも単一国家(フランス・イタリア)と連邦制(ブラジル・メキシコ・アルゼンチン)があります。建築法規の形(誰が技術基準を作り、誰が審査するか)を決めるのは、法系そのものよりも、この憲法構造と国家のタイプの組み合わせであることが示されています。
次に、法系と建築法規の各要素は相関しています。大陸法系は単一法・法典型と事前審査型に、英米法系はモデル文書の採用と専門家認証型に寄り、法の継受の系譜が建築法規の構造にも現れています。同時に、技術基準の系統(米国系・ユーロコード系・日本系・ソ連系)は法系と交差しており、トルコ・インドネシア・ブラジル・サウジアラビア・インドのように、一般法は多様でも耐震・構造の技術基準は米国系という第三のパターンがあります。建築法規は「法系」と「技術系」という2つの系統の重ね合わせとして理解する必要があると考えられます。
おわりに
各国の建築法規にどのような相違があるのかということを理解するために、各国の建築法規を含めた全ての法体系の歴史、由来、構造など網羅的な整理を踏まえ、国別の特徴を整理しました。
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- Secretaría de Obras Públicas (Argentina). (2012). Resolución 247/2012 [CIRSOC・INPRES-CIRSOC規則の承認決議]. Boletín Oficial, 4 de julio de 2012. https://www.argentina.gob.ar/normativa/nacional/norma-199224/texto [国の構造・耐震規則を国の公共工事に義務づけ、州・市に採用を勧奨した決議]
- Secrétariat général du Gouvernement. (2022). Indicateurs de suivi de l'activité normative, édition 2022 [法規範活動の追跡指標2022年版]. Légifrance. [施行中の法規範の語数が2002年比+93.8%の4,410万語に達したことを示す政府統計]
- Secrétariat général du Gouvernement. (2026). Indicateurs de suivi de l'activité normative, édition 2026 [法規範活動の追跡指標2026年版]. Légifrance. https://www.legifrance.gouv.fr/ [施行中の法規範が4,880万語・366,999条(2006年比+51%)、環境法典が20年で約5倍に膨張したことを示す政府統計]
- Senden, L. (2004). Soft law in European Community law. Hart Publishing. [法的拘束力を持たないが実効性を持つ規範(ソフトロー)の類型化]
- Sheridan, L., Visscher, H. J., & Meijer, F. M. (2003). Building regulations in Europe Part II: A comparison of technical requirements in eight European countries (Housing and Urban Policy Studies 24). Delft University Press. [欧州8か国の住宅の技術要求を、規定様式、対象分野、水準で比較した研究]
- Siems, M. M. (2007). Legal origins: Reconciling law & finance and comparative law. McGill Law Journal, 52, 55–81. [「法の起源」研究の分類の粗さと因果解釈を比較法学の立場から批判的に検討した論文]
- Snyder, F. (1993). The effectiveness of European Community law: Institutions, processes, tools and techniques. Modern Law Review, 56(1), 19–54. [ソフトローの古典的定義を示した論文]
- Sorensen, A. (2002). The making of urban Japan: Cities and planning from Edo to the twenty-first century. Routledge. [1919年の都市計画法・市街地建築物法が用途地域の実体規制を建築警察の側に置いた構成を含む日本都市計画の通史]
- Spinardi, G., & Law, A. (2019). Beyond the stable door: Hackitt and the future of fire safety regulation in the UK. Fire Safety Journal, 109, 102856. [グレンフェル後のHackittレビューへの学術的応答として最も引用される論文。問題の本質を運用・執行の崩壊と整理]
- Statistics South Africa. (2024). The state of South African households in 2023 (General Household Survey). https://www.statssa.gov.za/?p=17283 [2023年に12.2%の世帯が非正規住宅に居住]
- Stein, P. (1999). Roman law in European history. Cambridge University Press. [ローマ法大全の編纂から中世の注釈学派、近代法典化までのローマ法の継承史]
- Sutcliffe, A. (1981). Towards the planned city: Germany, Britain, the United States and France, 1780–1914. Blackwell. [4か国における都市計画の誕生を比較した都市史の標準的研究。プロイセン建築線法、フランクフルト段階建築条例、パリ改造、英国公衆衛生法を扱う]
- タキトゥス. 年代記(第15巻43章). [ローマ大火後のネロ帝による再建規制(街路幅員・高さ制限・耐火材料・共有界壁禁止)の記録]
- The Building Regulations 2010 (UK), Schedule 1. legislation.gov.uk. [英国の性能規定(機能要求)の現行条文。本文で引用したRequirement A1・B1を含む]
- Town and Country Planning Act 1990 (UK), c. 8, ss. 55, 57. legislation.gov.uk. https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1990/8 [「土地の開発には計画許可が必要である」と定める英国の許可制の根拠条文]
- Türkiye Belediyeler Birliği. (2018). İmar Barışı ve Yapı Kayıt Belgesi [建築アムネスティと建物登録証]. https://www.tbb.gov.tr/sites/default/files/storage/userfiles/rehber_ve_bilgi_notlari/imar_barisi.pdf [2018年建築アムネスティ(法律7143号)と災害リスク地域転換法(法律6306号)の解説]
- Urban Redevelopment Authority (Singapore). (2025). CORENET X: Mandatory submissions starting from 1 October 2025 (Circular DC25-07). https://www.ura.gov.sg/Corporate/Guidelines/Circulars/dc25-07 [CORENET Xの2025〜27年の段階的義務化]
- van der Heijden, J. (2009). Building regulatory enforcement regimes: Comparative analysis of private sector involvement in the enforcement of public building regulations. TU Delft / IOS Press. [建築確認・検査の民間開放を国際比較し類型化した博士論文。この論点の代表的研究]
- van der Heijden, J. (2010). One task, a few approaches, many impacts: Private-sector involvement in Canadian building code enforcement. Canadian Public Administration, 53(3), 351–374. https://doi.org/10.1111/j.1754-7121.2010.00138.x [執行体制の5類型(純粋公的型・規定された共同規制・条件付き共同規制・代替的共同規制・純粋民間型)をカナダの州に適用]
- Vanguardia. (2018, 19 de septiembre). Cenapred: 93% de municipios, sin reglamento de construcción [国家防災センター:93%の市に建築規則がない]. https://vanguardia.com.mx [メキシコ2,457市のうち独自の建築規則を持つのは165市とする防災センター調査の報道]
- Vogel, D. (1986). National styles of regulation: Environmental policy in Great Britain and the United States. Cornell University Press. [英国の非公式・合意型と米国の法律主義・敵対型という規制スタイルの違いを実証した研究]
- Wang, X., et al. (2018). Small property rights housing in major Chinese cities. Habitat International. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0197397517307981 [中国の集団所有地上の無許可住宅「小産権房」の規模推計]
- Ward, S. V. (2000). Re-examining the international diffusion of planning. In R. Freestone (Ed.), Urban planning in a changing world: The twentieth century experience (pp. 40–60). E & FN Spon. [計画の国際的拡散を借用と押しつけの6類型に整理した論文]
- Ward, S. V. (2010). What did the Germans ever do for us? A century of British learning about and imagining modern town planning. Planning Perspectives, 25(2), 117–140. [英国の都市計画がドイツから学んだ過程の歴史研究]
- Watson, A. (1974). Legal transplants: An approach to comparative law. Scottish Academic Press. [法が国境を越えて移植されるという「法の継受」論の古典]
- Weiss, G. A. (2000). The enchantment of codification in the common-law world. Yale Journal of International Law, 25(2), 435–532. [編纂(compilation)と法典化(codification)を区別し、法典化の概念史を英米法との対比で整理した論文]
- World Bank, & GFDRR. (2015). Building regulation for resilience: Managing risks for safer cities. World Bank. http://hdl.handle.net/10986/24438 [途上国を含む建築規制の比較のために、法的・行政的枠組み、規制の作成・維持、実施の3本柱を示した報告書]
- World Bank. (2020). Doing Business 2020: Comparing business regulation in 190 economies — Dealing with construction permits (economy profiles and methodology). World Bank. https://archive.doingbusiness.org/en/methodology/dealing-with-construction-permits [190か国の建築許可の手続数・日数・費用と、6指標からなる建築品質管理指数(0〜15)。本稿の建築法規の要素9のデータの出典]
- World Bank. (2021). World Bank Group to discontinue Doing Business report [Press release]. https://www.worldbank.org/en/news/statement/2021/09/16/world-bank-group-to-discontinue-doing-business-report [建設許可指標を含むDoing Business報告書の廃止公表]
- World Justice Project. (2024). WJP Rule of Law Index 2024. https://worldjusticeproject.org/rule-of-law-index/ [142か国の法の支配を8要因で採点。本稿は「規制の執行」要因(0〜1)を執行能力の指標として用いた]
- WTO (World Trade Organization). (1994). Agreement on Technical Barriers to Trade, Article 2.8. https://www.wto.org/english/docs_e/legal_e/17-tbt_e.htm [技術規則を設計・記述的特性ではなく性能の観点から定めることを求める条項]
- Young, M. K. (1984). Judicial review of administrative guidance: Governmentally encouraged consensual dispute resolution in Japan. Columbia Law Review, 84(4), 923–983. [日本の行政指導と司法審査に関する比較法研究]
- 中华人民共和国标准化法 [中華人民共和国標準化法]. (2017年改正). 全国人民代表大会. https://flk.npc.gov.cn [強制性国家標準・推薦性国家標準・行業標準・地方標準・団体標準・企業標準の6段の標準体系を定める法律]
- 住房和城乡建设部. (2021). 关于发布国家标准《工程结构通用规范》的公告 [国家標準「工程構造通用規範」GB 55001-2021の公布に関する公告]. [全文強制の通用規範の第1弾。2022年1月施行と同時に旧強制条文を廃止]
- Zweigert, K., & Kötz, H. (1998). An introduction to comparative law (3rd ed.). Oxford University Press. [世界の法体系をロマニスト法系・ゲルマン法系・北欧法系・コモンロー等に分類する法系論の標準的教科書]
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