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The History and Future of Architectural Design: A Review of the Latest Academic Research and Case Studies

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Overview

建築デザインは、なぜその時代にその形になったのでしょうか、そして未来の建築はどのようなデザインになるのでしょうか。ここでは、意匠を自然環境、用途・機能、設計技術、建設技術、施主・資金、思想・価値観、法規制、情報の伝達手段の8つの要因が決めるものと捉え、狩猟採集時代から現在までの各時代を同じ項目で整理しています。歴史を通して見ると、意匠の決定者は工房の親方から理論を持つ建築家へ、施主は宮廷から国家・資本・市民へ、意匠の前提を定めるものは慣習から法規と環境性能へと交代してきました。そして世界の建築家、研究者、起業家が提唱する都市構想の事例の整理から「環境共生型」「人間中心型」「デジタル最適化型」「フロンティア開拓型」の4つのシナリオに分け、最先端の事例と最新の研究をもとに、未来の建築デザインがどのように変わりうるのかを整理しています。

はじめに

未来の建築はどうなるのか、今後、建築デザインに関わる人たちは、どのような知識や技術を備える必要があるのか。この観点を検討するため、ここでは、建築デザインというものがそもそもどのようなもので、これまでの歴史でどのように変遷してきたのか整理し、そして、現在進行中の最先端事例を踏まえ、今後の建築デザインはどのようなものになるのか、考察します。

本稿の新規性は次の3点にあります。

  • 建築デザインの歴史に焦点を当てたこと:建築史の教科書の多くは、様式と代表作を年代順に記述し、意匠は様式の名前として扱われますが、本稿では建築デザインを8つの要因(自然環境、用途・機能、設計技術、建設技術、施主・資金、思想・価値観、法規制、情報の伝達手段)の変遷と捉えて整理しています。

  • 意匠が変わる仕組みを全時代の比較から抽出したこと:全時代で「前の時代から変わった点と変わった理由」を揃えたことで、意匠の転換は単一の要因ではなく、複数の要因が同時に動いたときに起きることが、時代をまたいで読み取れます。

  • 最先端の事例と2024〜2026年の研究を踏まえ、未来の建築デザインを4つのシナリオとして予想したこと:世界の建築家、研究者、起業家が提唱する都市構想を「環境共生型」「人間中心型」「デジタル最適化型」「フロンティア開拓型」の4つに分解し、建築デザインのシナリオ間の共通点と相違点を整理しました。

建築デザイン(意匠)とはなにか

意匠の定義

建築における意匠(design)は、分野によって異なる定義が与えられています。本稿では、以下の定義を踏まえたうえで、「建物の外観と空間の形を決める判断の総体」として扱います。

  • 古典建築論の定義:Vitruvius(c. 30–15 BC/1960)は、建築が備えるべき性質として強さ(firmitas)、用(utilitas)、美(venustas)の3つを挙げ、美を「部分と全体の比例(symmetria)」と「均整(eurythmia)」で説明しました。例えば、神殿の柱の直径を基準単位(モデュール)として、柱の高さや柱間をその整数倍で決める方法は、この定義の実践です。

  • ルネサンス建築論の定義:Alberti(1485/1988)は、美を「何一つ加えることも取り去ることもできない、各部分の調和(concinnitas)」と定義し、装飾(ornamentum)を美に付け加えられる補助的な輝きとして区別しました。例えば、同じ壁面でも、窓の配列が調和していれば装飾がなくても美しく、調和がなければどれだけ装飾を加えても美しくならない、という考え方です。

  • 近代建築論の定義:Sullivan(1896)は「形態は機能に従う(form follows function)」と述べ、意匠を用途と構造から導かれるものと位置づけました。例えば、高層オフィスビルは、基壇(店舗)、同じ窓が繰り返される中間部(事務室)、頂部(設備)という3層の構成を持つべきだと論じました。

  • 建築史学の定義:Kostof(1985)は、建築を「設定(settings)と儀礼(rituals)」の関係から読み、建物の形を、その建物で行われる社会的行為の器として捉えました。例えば、ギリシャの劇場の半円形は、市民が同じ舞台を見るという儀礼の形そのものです。

  • 空間論の定義:Hillier & Hanson(1984)は、建物の平面構成(どの部屋がどの部屋とつながるか)が社会関係を反映し、同時にそれを再生産する(空間の配置が、誰と誰が日常的に出会い、誰が誰を見張れるかを決め続けることで、その社会関係を維持し強化する)と論じました。例えば、来客が玄関からすぐ応接室に入れる家と、家族の居間を通らなければ応接室に入れない家では、来客と家族の関係の定義が異なります。

  • 法制度上の定義:多くの国で、意匠(デザイン)は意匠法や著作権法の保護対象であると同時に、建築法規上は安全・衛生・都市計画の規制を受けたうえでの自由領域として位置づけられています。例えば、高さや容積率は法で決まるが、その枠内での外壁の色や窓の形は設計者と施主の裁量に委ねられる、という構図です。

建築デザインを規定する要因

建築の形を決める要因を論じた代表的な文献を踏まえて、建築デザインを規定する要因を整理し、以下の8要因に集約しています。

  1. 自然環境:気候、地形、日照と風、地域で採れる材料が、建物の形の初期条件を決めます(Fitch, 1972; Olgyay, 1963; Rapoport, 1969)。例えば、サヘル地方のモスクは日干しレンガと泥で建てられ、壁から突き出た木の梁は雨季のたびに泥を塗り直すための足場です。

  2. 用途・機能:神殿、住宅、工場、駅、オフィスといった用途が、必要な空間の大きさ、動線、設備を決め、建物の型(ビルディングタイプ)を生みます(Pevsner, 1976; Sullivan, 1896; Vitruvius, c. 30–15 BC/1960)。例えば、鉄道駅という用途は19世紀に初めて現れ、「大屋根のホールと正面の駅舎」という新しい型を生みました。

  3. 設計技術:作図法、構造計算、CAD、シミュレーション、生成AIといった設計の道具が、設計者が構想し図面化できる形の上限と、設計者の働き方を決めます(Broadbent, 1973; Carpo, 2011; Evans, 1997)。例えば、自由曲面の建築は1990年代の3次元CADがなければ施工図を描けず、曲面が意匠の選択肢に入ったのは設計技術が変わった後です。

  4. 建設技術:構造・材料・施工の技術が、どのような形が物理的に建てられるかを決めます(Addis, 2007; Fitch, 1972; Frampton, 1995; Semper, 1851)。例えば、アーチとヴォールトの技術がなければ、ローマのパンテオンの直径43mのドームは存在しません。

  5. 施主・資金:何のために、どれだけの資源を投じて建てるかを決めます(Cuff, 1991; Kostof, 1977; Vale, 1992; Willis, 1995)。例えば、同じ石造技術でも、王が建てれば墓と宮殿、商人が建てればギルドホールと市場になります。

  6. 思想・価値観:作れるものの中から何を選ぶかを決めます(Jencks, 1977; Pevsner, 1936; Rapoport, 1969)。例えば、20世紀初頭に鉄筋コンクリートで装飾のない建物を建てたのは、技術的な必然ではなく「装飾は時代遅れだ」という思想(Loos, 1908)の選択でした。

  7. 法規制:高さ、外形、素材、用途の上限と下限を決めます(Ben-Joseph, 2005; Carmona et al., 2010; Talen, 2012)。例えば、ニューヨークの1916年ゾーニングは、街路に光を届けるために上層階のセットバックを義務づけ、「ウェディングケーキ型」の摩天楼を生みました(Willis, 1995)。

  8. 情報の伝達手段:どの意匠が、どれだけの速さで、どこまで伝わるかを決めます(Carpo, 2001; Colomina, 1994; Eisenstein, 1979; Larson, 1993)。例えば、16世紀にパラディオの建築書が印刷されたことで、北イタリアの地方様式がイギリスやアメリカの邸宅の標準になりました(Carpo, 2001)。

建築デザインを構成する要素

建築デザインを構成する要素を論じた代表的な文献を踏まえて、建築デザインを構成する要素を整理し、以下の7要素に集約しています。

本節の建築デザインを構成する7要素は、前節の建築デザインを規定する8要因によって決まり、建築のデザインを形づくるという関係性となります。

  1. プロポーション:高さと幅、柱の太さと高さ、窓と壁の比率など(Vitruvius, c. 30–15 BC/1960; Alberti, 1485/1988; Rasmussen, 1959; Ching, 2014)。例えば、ゴシックは垂直方向、ルネサンスは水平方向の比例を重視しました。

  2. 立面とファサード:通りや広場に面する正面の構成で、軸線、対称、リズム、階層といった構成原理が働く部分(Ching, 2014; Clark & Pause, 2012; Beder et al., 2024)。例えば、パラディオのヴィラは中央に神殿風の正面玄関を置き、左右対称に翼部を配しました。

  3. 装飾:柱頭、レリーフ、モールディング、文様など(Alberti, 1485/1988; Semper, 1851; Loos, 1908; Venturi, Scott Brown & Izenour, 1972)。例えば、イスラム建築では偶像を避けるため幾何学文様とアラビア文字の装飾が発達しました。

  4. 素材と色:石、レンガ、木、鉄、ガラス、コンクリートと、その見せ方(Semper, 1851; Rasmussen, 1959; Frampton, 1995)。例えば、ブルータリズムはコンクリートの打ち放しを隠さず、材料そのものを意匠としました。

  5. 空間構成と平面:部屋の配置、動線、天井高、開放性(Zevi, 1957; Hillier & Hanson, 1984; Ching, 2014; Clark & Pause, 2012)。例えば、近代建築の「自由な平面」は、柱で床を支えることで壁の位置を自由にしました。

  6. 構造の表現:構造を見せるか隠すか(Semper, 1851; Frampton, 1995; Clark & Pause, 2012)。例えば、ハイテク建築は配管や構造を外部に露出させ、古典建築は壁の中に隠しました。

  7. 敷地と周囲との関係:隣接する建物、街路、地形との関係(Lynch, 1960; Norberg-Schulz, 1980; Frampton, 1983; Unwin, 2014)。例えば、ロンドンの1667年再建法は、街路の格に応じて建物の階数を定め、街並みの統一を意匠の前提としました。

建築デザインの歴史

以下では、各時代の建築デザインを次の4項目で記述します。

  • 代表例

  • 建築デザインの要因(自然環境、用途・機能、設計技術、建設技術、施主・資金、思想・価値観、法規制、情報の伝達手段)

  • 建築デザインの特徴(プロポーション、立面とファサード、装飾、素材と色、空間構成と平面、構造の表現、敷地と周囲との関係)

  • 前の時代から変わった点と変わった理由

約260万年前〜紀元前1万年紀 狩猟採集時代の移動する暮らしのシェルター

  • 代表例:テラアマタ(フランス・ニース、約40万年前)の小屋跡と炉(de Lumley, 1969)、ラスコー洞窟(フランス、約1万7千年前)の壁画(Clottes, 2008)、メジリチ(ウクライナ、約1万5千年前)のマンモスの骨を組んだ住居(Pidoplichko, 1998)、オハロII(イスラエル・ガリラヤ湖畔、約2万3千年前)の草と枝の小屋(Nadel & Werker, 1999)、アイン・マラハ(イスラエル、約1万2千年前)のナトゥーフ文化の円形半地下住居(Bar-Yosef, 1998)

テラアマタの小屋の復元図(フランス・ニース、約40万年前)
図:テラアマタの小屋の復元図(フランス・ニース、約40万年前)。曲げた枝を杭で立てて組み、縁を石で押さえ、中央に炉を置いた楕円形の小屋です。手に入る材料と道具の性能がそのまま形になる、狩猟採集時代の意匠の出発点を示しています。(作図:José-Manuel Benito、パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの要因

    • 自然環境:氷期と間氷期を繰り返す気候のもとで、住まいの形は「その場所で、その季節に、手に入る材料」で決まりました。森のない草原では木が使えず、森のある地域では枝と葉が、海辺では流木と小石が材料になりました。例えば、樹木のないウクライナの草原に建てられたメジリチの住居は、数十頭分のマンモスの骨と牙を組んで骨組みと壁にしています(Pidoplichko, 1998)。

    • 用途・機能:寝る、火を囲む、食べる、道具をつくる、獲物を解体する、という生存のための機能がすべてであり、季節ごとに移動するため、住まいは「短期間のキャンプ」として設計されました。例えば、テラアマタの小屋は春の終わりに海辺を訪れた集団が数日から数週間滞在するためのもので、同じ場所に毎年建て直した跡が層になって残っています(de Lumley, 1969)。

    • 設計技術:設計図も寸法の単位もなく、身体の寸法と材料の長さ、そして前回と同じように建てるという反復が設計の方法でした。例えば、オハロIIでは同じ場所で小屋が何度も建て直されており、平面の形と炉の位置が繰り返されています(Nadel & Werker, 1999)。

    • 建設技術:石器で枝を切り、皮をなめし、地面に穴を掘って杭を立て、骨や枝を組んで葉や皮で覆う、という道具の性能で決まる範囲の技術でした。例えば、テラアマタでは杭の穴と、小屋の縁を固定した石の列が見つかっており、枝を曲げて組んだ骨組みを石で押さえる構法が復元されています(de Lumley, 1969)。

    • 施主・資金:施主は数十人規模の血縁集団(バンド)であり、住まいは住む人自身が建てました。資金という概念はなく、資源は「建てるために使える時間」でした。例えば、民族誌から推定される狩猟採集民のバンドは平均で25人程度であり、小屋はこの規模の集団が半日から数日で建てられる大きさに収まっています(Kelly, 2013)。

    • 思想・価値観:火を囲むことが集団の中心であり、住居の形はそれを核に決まりました。一方で、動物や死者への畏れと祈りは住居ではなく洞窟の奥に表現されました。例えば、ラスコーでは住む場所ではない暗い洞窟の深部に、数百頭の動物が彩色で描かれています(Clottes, 2008)。

    • 法規制:成文法はもちろん慣習的な建築のルールもなく、建てる場所を決めたのは集団の季節的な移動の範囲(縄張り)と、水や獲物のありかでした。例えば、Binford(1980)が整理したように、狩猟採集民は資源の分布に合わせてキャンプを移動させるか、拠点から出向くかを使い分けており、住まいの場所はこの移動の仕組みの中で決まりました。

    • 情報の伝達手段:口伝と模倣、そして集団内での共同作業が唯一の伝達手段であり、言葉の発達が集団の規模と知識の蓄積を可能にしました。例えば、Dunbar(1993)は人が安定して関係を保てる集団の規模(約150人)と言葉の発達の関係を論じており、住居の建て方もこの集団の中で世代を超えて共有されました。

マンモスの骨でつくられた住居の復元(メジリチの例に基づく、国立科学博物館・東京)
図:マンモスの骨でつくられた住居の復元(メジリチの例に基づく、国立科学博物館・東京)。数十頭分の頭骨、下顎骨、牙を組んで壁と骨組みにしたドーム状の住居で、構造材がそのまま外観になり、骨の積み方の規則性が装飾を兼ねています。(撮影:Momotarou2012、CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの特徴

    • プロポーション:人の身体と材料の長さで決まる小さな比例であり、一つの小屋は数人から十数人が寝られる大きさでした。例えば、メジリチの住居は直径4〜7mの円形で、オハロIIの小屋は床面積が5〜13㎡でした(Nadel & Werker, 1999; Pidoplichko, 1998)。

    • 立面とファサード:正面という概念はなく、外観は低いドーム状または円錐状の塊で、風上を閉じ、風下に出入り口を開けました。例えば、テラアマタでは炉の北西側に小石を積んだ風よけの壁が設けられており、風向きへの対応がそのまま小屋の形の非対称になっていました(de Lumley, 1969)。

    • 装飾:住居そのものにはほとんど装飾がなく、意味を担う表現は洞窟の壁画と、持ち運べる小さな彫像に集中しました。例えば、メジリチではマンモスの下顎骨を向きを揃えて積み、ヘリンボーン状の模様をつくっており、構造材の積み方が装飾を兼ねた最初期の例とされています(Pidoplichko, 1998)。

    • 素材と色:枝、草、葉、獣皮、骨、石を加工せずそのまま用い、色は材料の色そのものでした。例えば、ラスコーの壁画に使われた赤と黒の顔料(酸化鉄と炭)は、建築ではなく表現のために選ばれた最初期の「色」です(Clottes, 2008)。

    • 空間構成と平面:炉を中心に置いた円形または楕円形の単室で、炉の周囲に寝る場所、その外側に作業の場所が同心円状に配置されました。例えば、オハロIIの小屋では、炉の周囲の床に草を敷いた寝床の跡が残っており、世界最古の寝具の証拠とされています(Nadel et al., 2004)。

    • 構造の表現:構造と外観が完全に一致し、組んだ枝や骨がそのまま見える状態でした。例えば、メジリチの住居では骨組みに使った牙や長骨が外側からそのまま見え、構造材の形が建物の形でした(Pidoplichko, 1998)。

    • 敷地と周囲との関係:水辺、岩陰、南向きの斜面など、自然の地形が住まいの条件を決め、移動を前提とするため土地を大きく改変することはありませんでした。例えば、テラアマタは当時の海岸の砂丘の上、オハロIIは湖のほとりに位置し、水と食料に近い場所が選ばれています(de Lumley, 1969; Nadel & Werker, 1999)。

ラスコー洞窟の壁画(フランス、約1万7千年前)
図:ラスコー洞窟の壁画(フランス、約1万7千年前)。住居には装飾がほとんどなかった一方で、動物への畏れや祈りといった「意味」は、人が住まない洞窟の深部に彩色で表現されました。意味の表現と住まいが分かれていたこの時代から、次の時代には記念碑という「意味のための建築」が生まれます。(撮影:Eline13Viki+、CC0、Wikimedia Commons)
  • 前の時代から変わった点と変わった理由:他の動物の巣が「身を守り、子を育てる」ための構造であるのに対し、この時代の人類は、道具、火、言葉によって環境を選ぶだけでなく環境を加工する存在になりました。火の利用が「火を囲む空間」という家の原型をつくり(Wrangham, 2009)、道具が枝や皮を加工して覆いをつくることを可能にし、言葉が建て方を集団で共有することを可能にしたためです。例えば、チンパンジーの巣が毎晩新しく枝を折って一晩だけ使われるのに対し、テラアマタの小屋は炉を中心に置き、同じ場所に毎年建て直されており、「場所と形を記憶して繰り返す」という建築の基本的な営みがここで始まっています(de Lumley, 1969)。なお、この時代の末期に定住の兆しが現れた点は、次の時代の出発点になります。例えば、アイン・マラハでは農耕が始まる前の狩猟採集民が石積みの基礎を持つ円形の半地下住居を建てており、移動を前提としない「長持ちする家」への移行が農耕に先立って始まっていたことを示しています(Bar-Yosef, 1998)。

紀元前1万年紀〜紀元前4千年紀 定住集落のシェルターから記念碑へ

  • 代表例:ギョベクリ・テペ(現在のトルコ、紀元前9600年頃)のT字型石柱群、チャタル・ヒュユク(トルコ、紀元前7500年頃)の密集住居、ニューグレンジ(アイルランド、紀元前3200年頃)の羨道墳、スカラ・ブレイ(スコットランド、紀元前3100年頃)の石造集落、ストーンヘンジ(イングランド、紀元前3000〜2000年頃)。

ギョベクリ・テペ(紀元前10千年紀頃、トルコ)
図:ギョベクリ・テペ(紀元前10千年紀頃、トルコ)。農耕が始まる前の狩猟採集民が築いた最古級の記念的建造物です。T字形の石柱を円形に配置し、動物の浮き彫りを施しており、構造・装飾・配置が宗教的な意味を担い始めたことを示しています。(撮影:Teomancimit、CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの要因

    • 自然環境:気候と地形がそのまま住居の形を決め、材料は歩いて運べる範囲のものに限られました。例えば、スカラ・ブレイは樹木のないオークニー諸島で石を積み、チャタル・ヒュユクは森のないアナトリアの平原で日干しレンガを用いました(Hodder, 2006; Rapoport, 1969)。

    • 用途・機能:住居(寝る、火を囲む、貯蔵する)と、儀礼・埋葬のための記念碑という2つの用途が分かれ、後者に労働が集中しました。例えば、ニューグレンジの羨道墳は居住には使えない構造物で、用途が「意味」そのものになった例です(O'Kelly, 1982)。

    • 設計技術:設計図は存在せず、共同体の経験知と現場での配置の決定が設計でした。例えば、ニューグレンジの羨道は、冬至の朝日が奥室に届くように現地で向きが決められています(O'Kelly, 1982)。

    • 建設技術:土、木、葦、石を手と石器で加工できる範囲で積む、組む、掘る技術が上限でした。例えば、ストーンヘンジの最大の石(約25トン)は丸太のそりと人力で運ばれ、石の大きさは「運べる重さ」で決まりました(Parker Pearson, 2012)。

    • 施主・資金:血縁集団と部族共同体が施主であり、資金ではなく共同体の労働力が資源でした。例えば、ギョベクリ・テペは定住農耕が始まる前の狩猟採集民が集団で建てた儀礼施設と考えられています(Schmidt, 2000)。

    • 思想・価値観:自然現象(太陽、季節、死)との関係づけと祖先への崇拝が、形と配置を決めました。例えば、羨道墳は死者の家であると同時に、季節の節目を示す装置でした(O'Kelly, 1982; Parker Pearson, 2012)。

    • 法規制:成文法はなく、慣習と共同体の合意が建てる場所と形を決めました。

    • 情報の伝達手段:口伝と模倣のみで、様式は数世代かけて隣接地域に伝わりました。例えば、同じ地域の住居が同じ形をしているのは、材料と気候への対処法が共有されていたためです。

スカラ・ブレイ(紀元前3100年頃、オークニー諸島)
図:スカラ・ブレイ(紀元前3100年頃、オークニー諸島)。木材の乏しい島で石を積み、寝台や棚まで石で造った住居群です。地域で手に入る材料と気候への対応が、そのまま意匠の特徴になっていた時代を代表します。(撮影:Bewahrerderwerte、CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの特徴

    • プロポーション:住居は人の身体と材料の長さで決まる小さな比例、記念碑は人を圧倒する巨大な比例でした。

    • 立面とファサード:正面という概念はなく、住居は地形に溶け込む低い形、記念碑は配列と量塊が外観でした。例えば、スカラ・ブレイの住居は風を避けるため半地下に埋まり、外からはほとんど見えません。

    • 装飾:記念碑に動物のレリーフや幾何学の刻線が現れました。例えば、ギョベクリ・テペのT字柱の動物像は、構造上は不要な最初期の装飾です(Schmidt, 2000)。

    • 素材と色:土、石、木、葦をそのまま用い、加工は最小限でした。

    • 空間構成と平面:円形または楕円形の単室で炉が中心にありました。例えば、チャタル・ヒュユクの住居は壁を共有して密集し、屋根から梯子で出入りする平面で、通りがありませんでした(Hodder, 2006)。

    • 構造の表現:構造と外観が一致し、積んだ石や組んだ木がそのまま見える状態でした(Conway & Roenisch, 2005)。

    • 敷地と周囲との関係:記念碑は天体の方位と地形の高所に、住居は水場の近くで風を避ける場所に置かれました。

ストーンヘンジ(紀元前3000〜2000年頃、英国)
図:ストーンヘンジ(紀元前3000〜2000年頃、英国)。立てた巨石をまぐさ石で結ぶ最も基本的な構法で、夏至の日の出に軸線を合わせています。天体と結びついた配置が、シェルターから記念碑への転換を象徴しています。(撮影:garethwiscombe、CC BY 2.0、Wikimedia Commons)
  • 前の時代から変わった点と変わった理由:狩猟採集時代の、移動を前提とした生存のためのシェルターに加えて、定住化が進んだこの時代では、意味のための構造物が生まれました。定住と余剰食料が、生産に直接寄与しない構造物に労働を投じることを可能にしたためです。例えば、ギョベクリ・テペの石柱に彫られた動物のレリーフは、構造上は不要であり、意匠が「意味を伝える手段」として独立した最初期の例です(Childe, 1936; Schmidt, 2000)。

紀元前3千年紀〜紀元前7世紀 古代文明の記念建築

  • 代表例:ウルのジッグラト(メソポタミア、紀元前2100年頃)、ギザの大ピラミッド(エジプト、紀元前2560年頃)、カルナック神殿の多柱室(エジプト、紀元前13世紀)、モヘンジョ・ダロ(インダス、紀元前2500年頃)の焼成レンガの格子状都市、二里頭・殷墟(中国、紀元前1700〜1100年頃)の版築基壇、クノッソス宮殿(クレタ、紀元前1700年頃)。

ウルのジッグラト(紀元前21世紀頃、イラク)
図:ウルのジッグラト(紀元前21世紀頃、イラク)。日干し煉瓦の芯を焼成煉瓦で覆った階段状の基壇です。石のない沖積平野で、高さと量塊によって神殿の権威を示す意匠が生まれました。(撮影:Tla2006、パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの要因

    • 自然環境:大河の氾濫原では石が乏しく泥レンガが主材料になり、ナイル上流の石切場が神殿とピラミッドの石を供給しました。例えば、メソポタミアのジッグラトが泥レンガの段状の山であるのに対し、エジプトのピラミッドが切石であるのは、材料の入手可能性の差です(Arnold, 1991; Frankfort, 1970)。

    • 用途・機能:神殿、王墓、宮殿、城壁、穀倉という国家の用途が記念建築の型を決め、住居は日干しレンガの中庭式でした。例えば、カルナック神殿の列柱室は儀礼の行列のための空間で、柱の密度は構造の必要と行列の演出の両方から決まりました(Arnold, 1991)。

    • 設計技術:文字と数の記録、規格単位(モデュール)、縮尺の概念が生まれ、神官と王室の書記官が宗教的な規範と前例を判断材料に設計を管理しました。例えば、エジプトの建築家イムホテプ(紀元前27世紀)は神官と宰相を兼ねていました(Arnold, 1991; Kostof, 1985)。

    • 建設技術:泥レンガ、焼成レンガ、切石を積む組積造が基本で、大スパンの屋根を架ける技術はなく、内部は柱で埋まるか外部の量塊が主役になりました。例えば、カルナック神殿の多柱室は134本の柱が密集し、柱間はわずか数メートルです(Arnold, 1991)。

    • 施主・資金:王権と神殿が施主で、国家が農閑期の労働力と食料を集中させました。例えば、ピラミッドは王の墓であると同時に、労働力を組織する国家の装置でした(Lehner, 1997)。

    • 思想・価値観:王は神の代理であり、建築は宇宙の秩序を地上に写すものとされました。例えば、ピラミッドの各辺は東西南北に正確に合わせられ、天体観測が意匠の基準になりました(Lehner, 1997)。

    • 法規制:ハンムラビ法典(紀元前1755年頃)が建築者の結果責任を定め(Avalon Project, n.d.)、城壁と条坊制が都市の中での建物の配置を規定しました(Mumford, 1961)。

    • 情報の伝達手段:文字による記録が始まりましたが、設計の知識は神官と工房の内部に閉じていました。例えば、エジプトの神殿の形式は千年以上ほとんど変わりませんでした。

ギザの大ピラミッド(紀元前26世紀頃、エジプト)
図:ギザの大ピラミッド(紀元前26世紀頃、エジプト)。王権と来世観が、幾何学的に純粋な形態と圧倒的な量塊として表現されています。巨大な労働力と組織を動かせた集権国家ならではのデザインです。(撮影:Douwe C. van der Zee、CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの特徴

    • プロポーション:権威を示す巨大さと、規格レンガの整数倍で決まる寸法体系が生まれました。例えば、モヘンジョ・ダロの焼成レンガは4:2:1の規格で統一され、都市全体で同じ寸法が使われました(Kenoyer, 1998)。

    • 立面とファサード:斜面、段状の基壇、軸線上の門と参道が共通し、遠くから見える高さが権威の表現でした。例えば、ジッグラトは平坦なメソポタミアの平野で唯一の山でした(Frankfort, 1970)。

    • 装飾:神像、王の事績を刻むレリーフ、彩色が壁面を覆いました。

    • 素材と色:泥レンガ、焼成レンガ、石灰岩、花崗岩が中心で、エジプトでは壁面に彩色が施されました。

    • 空間構成と平面:軸線に沿って門、中庭、列柱室、至聖所と進む段階的な平面が、エジプトでも中国でも見られました。例えば、中国の「門—庭—殿」の繰り返しは、この時代の版築基壇と木造架構の組み合わせに起源を持ちます(Steinhardt, 2019)。

    • 構造の表現:量塊と柱列そのものが構造であり、表現でもありました。

    • 敷地と周囲との関係:大河の沿岸と都市の中心に置かれ、天体の方位に合わせて配置されました。

カルナック神殿の多柱室(紀元前13世紀頃、エジプト)
図:カルナック神殿の多柱室(紀元前13世紀頃、エジプト)。石の梁は長く架けられないため柱を密に林立させる必要があり、その制約がパピルスやロータスを象った柱頭の装飾へと昇華されています。構造上の制約が様式の特徴に転じた例です。(撮影:Kurohito、CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons)
  • 前の時代から変わった点と変わった理由:規模が桁違いに大きくなり、標準化(規格レンガ、モデュール)が始まりました。国家が大量の労働力と食料を集中できるようになり(Childe, 1936; Mumford, 1961)、文字と数の記録によって設計と施工の管理が可能になったためです。例えば、モヘンジョ・ダロの焼成レンガは縦横高さが4:2:1の規格で統一され、都市全体で同じ寸法が使われました(Kenoyer, 1998)。

紀元前6世紀〜紀元後5世紀 古典建築の規範の成立

  • 代表例:パルテノン神殿(アテネ、紀元前447〜432年)、エピダウロスの劇場(紀元前4世紀)、ペルセポリス(ペルシア、紀元前6〜5世紀)、パンテオン(ローマ、118〜128年)、コロッセウム(80年)、カラカラ浴場(216年)、ポン・デュ・ガール水道橋(1世紀)。

パルテノン神殿(紀元前5世紀、アテネ)
図:パルテノン神殿(紀元前5世紀、アテネ)。ドリス式オーダーの比例体系に、柱の膨らみ(エンタシス)や基壇の反りといった視覚補正が組み合わされています。規範としての「様式」が確立した古典建築の頂点です。(撮影:Steve Swayne、CC BY 2.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの要因

    • 自然環境:地中海の乾燥した気候と良質な大理石・石灰岩の産地が、屋外の列柱と彫刻的な外観を可能にしました。例えば、パルテノンのペンテリコン大理石は近郊の山から運ばれ、ローマのコンクリートはナポリ近郊の火山灰(ポッツォラーナ)に依存していました(Lawrence, 1996; Ward-Perkins, 1981)。

    • 用途・機能:ギリシャでは神殿と劇場、ローマでは浴場、バシリカ、円形闘技場、集合住宅、水道といった公共と都市の用途が多様化し、用途ごとの型が確立しました。例えば、ローマの浴場は冷・温・熱の浴室を順に配する平面を持ち、この型は帝国全域で反復されました(Ward-Perkins, 1981)。

    • 設計技術:オーダーの比例体系と規範書(Vitruvius, c. 30–15 BC/1960)が設計の判断材料になり、建築家の名が記録に残り始めました。例えば、パルテノンの建築家イクティノスとカリクラテスの名は記録に残っていますが、彼らの仕事は彫刻家フェイディアスの監督のもとにありました(Lawrence, 1996)。

    • 建設技術:ギリシャは石の柱と梁(まぐさ式構造)でスパンが数メートルに限られ、ローマはアーチ、ヴォールト、ドームと火山灰のコンクリートで大空間と多層を可能にしました。例えば、パンテオンのドームは直径43.3mで、上に行くほど軽い骨材を使っています(MacDonald, 1976)。

    • 施主・資金:ギリシャでは都市国家(ポリス)の市民共同体、ローマでは皇帝と元老院が施主でした。例えば、パルテノンはデロス同盟の資金で建てられ、アテネ市民の決議で予算が承認されました(Lawrence, 1996)。

    • 思想・価値観:ギリシャでは「数の比例が美を生む」というピタゴラス的な考え、ローマでは「帝国の威厳と公共の福利」が意匠の根拠でした。例えば、Vitruvius はドリス式を男性、イオニア式を女性の身体の比例になぞらえました(Vitruvius, 1960)。

    • 法規制:ローマ帝政期の高さ制限(約20m)と十二表法の相隣規定が、集合住宅(インスラ)の断面と配置を規定しました(Robinson, 1992)。

    • 情報の伝達手段:写本と植民都市の建設を通じて、ローマの建築の型が帝国全域に伝わりました。例えば、ロンドン、パリ、バルセロナの都市の基礎はローマの植民都市に遡ります(Mumford, 1961)。

パンテオン(2世紀、ローマ)
図:パンテオン(2世紀、ローマ)。ローマン・コンクリートによる直径43mの半球ドームに、ギリシア風の柱廊を組み合わせています。構法の革新が「内部空間」という新しい意匠の主題を生み出しました。(撮影:NikonZ7II、CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの特徴

    • プロポーション:オーダー(ドリス式、イオニア式、コリント式)による、柱径を単位とした比例体系とエンタシスが確立しました(Vitruvius, 1960)。

    • 立面とファサード:列柱とペディメントによる端正な正面が生まれ、ローマはこれを付け柱としてアーチと組み合わせました。例えば、コロッセウムの外壁は1階ドリス式、2階イオニア式、3階コリント式を重ねています(Ward-Perkins, 1981)。

    • 装飾:柱頭とフリーズの彫刻、ローマではモザイクと大理石の化粧張りが加わりました。

    • 素材と色:大理石と石灰岩が中心で、ローマではコンクリートをレンガと大理石で覆いました。

    • 空間構成と平面:ギリシャ建築は外から見る彫刻的な建物で内部は小さく暗く、ローマ建築は内部空間そのものを主題にしました。例えば、パンテオンの内部は直径と高さが等しい球が収まる空間です(MacDonald, 1976; Zevi, 1957)。

    • 構造の表現:ギリシャは柱と梁をそのまま見せ、ローマは構造(コンクリート)を装飾で覆いました(Ward-Perkins, 1981)。

    • 敷地と周囲との関係:ギリシャはアクロポリスの地形に、ローマはフォルムと格子状の植民都市の軸線に従って配置されました。

コロッセウム(1世紀、ローマ)
図:コロッセウム(1世紀、ローマ)。アーチとヴォールトを重ねた構造を、階ごとにドリス・イオニア・コリントの各オーダーで飾っています。ギリシアの柱の言語をローマの構造技術の表面装飾として転用した点に、前の時代からの変化が表れています。(撮影:FeaturedPics、CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)
  • 前の時代から変わった点と変わった理由:権威の量塊から比例の体系へ、外部の彫刻から内部空間へと主題が移りました。市民共同体という新しい施主が「公共の場」を求めたこと、コンクリートとアーチという技術が大空間を可能にしたこと、そして高さ制限などの都市規制が集合住宅の形を規定したことが理由です(Robinson, 1992)。例えば、ローマの集合住宅インスラは、アウグストゥス帝の約20mの高さ制限の範囲で、1階が店舗、上階が賃貸住居という断面を持ち、賃貸経済と規制が意匠を決めた最初期の例です。

紀元前5世紀〜13世紀 並行して発展した非西洋の意匠系譜

  • 代表例:東アジアでは中国の仏光寺東大殿(857年)と『営造法式』(李誡、1103年)、朝鮮半島の仏国寺(8世紀)、日本の法隆寺(7世紀)。南アジアではサーンチーの仏塔(紀元前3世紀)、エローラのカイラーサナータ寺院(8世紀、岩山を彫り出した一体建築)、カジュラーホー寺院群(10〜11世紀)。東南アジアではボロブドゥール(9世紀)とアンコール・ワット(12世紀)。イスラム世界では岩のドーム(691年)、コルドバの大モスク(785年〜)、アルハンブラ宮殿(14世紀)、サマルカンドのレギスタン広場(15世紀)。アメリカ大陸ではテオティワカンの太陽のピラミッド(2世紀頃)、ティカル、マチュ・ピチュ(15世紀)。アフリカではラリベラの岩窟教会群(12〜13世紀)、グレート・ジンバブエ(11〜15世紀)、ジェンネの大モスク(泥造、現在の建物は1907年)。

仏光寺東大殿(857年、中国・山西省)
図:仏光寺東大殿(857年、中国・山西省)。現存する唐代の木造建築で、組物(斗栱)が深い軒を支えています。木造架構の規格化という、西洋とは異なる原理で発展した意匠系譜を代表します。(撮影:Patrick20242023、CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの要因

    • 自然環境:モンスーンの雨と地震(東アジア)、酷暑と乾燥(西アジア・北アフリカ)、熱帯の豪雨(東南アジア)、高地(アンデス)が、それぞれ深い軒、厚い壁と中庭、高床と急勾配の屋根、石の段々畑を生みました。例えば、イスラム世界の中庭と風塔(バードギール)は、冷房のない時代の受動的な環境制御装置です(Hillenbrand, 1994; Rapoport, 1969)。

    • 用途・機能:寺院、モスク、宮殿、陵墓、城郭といった宗教と王権の用途が主で、イスラム都市ではモスク、市場(バザール)、隊商宿が都市の核になりました。例えば、モスクのメッカの方向に向く壁(キブラ)と礼拝の列のための横長の多柱室は、礼拝という用途から直接導かれた平面です(Hillenbrand, 1994)。

    • 設計技術:中国では国家の規範書『営造法式』(李誡、1103年)と「材」のモデュール、南アジアでは建築論書(ヴァーストゥ・シャーストラ)、イスラム世界では幾何学に通じた職人と宮廷の学者が設計を担いました。例えば、『営造法式』は木材の断面を8等級に分け、建物の格に応じて等級を選ぶ設計法を定めました(Steinhardt, 2019)。

    • 建設技術:東アジアは木造の柱・梁・斗栱の架構、南アジアは石の持ち送りによるシカラ、イスラム世界はレンガと石のアーチ・ドーム・ムカルナス、アメリカ大陸は金属器と車輪を持たない石積みでした。例えば、南アジアは真のアーチを使わずに持ち送りで塔の高さを得ました(Kubler, 1984; Michell, 1988)。

    • 施主・資金:王朝と宗教組織が施主でした。例えば、アンコール・ワットはクメール王スーリヤヴァルマン2世がヴィシュヌ神に捧げた寺院であると同時に、王の墓廟でした(Fletcher, 1996)。

    • 思想・価値観:儒教の位階秩序と風水、須弥山を再現する仏教・ヒンドゥーの宇宙観、唯一神の無限性を幾何学の反復で表すイスラムの思想、天体と暦の秩序が意匠を決めました。例えば、ボロブドゥールは仏教の宇宙観を登りながら体験する立体的な曼荼羅です(Hillenbrand, 1994; Michell, 1988)。

    • 法規制:中国では建物の規模と装飾が位階に応じて法で定められ、イスラム都市では隣地との関係(眺望、日照、通行)が法学者の判断で規定されました。例えば、『営造法式』は国家の制度が意匠を決めた例です(Hillenbrand, 1994; Steinhardt, 2019)。

    • 情報の伝達手段:宗教の伝播経路がそのまま様式の継受経路になりました。例えば、仏教はインドから中央アジア・中国・朝鮮半島・日本へ、イスラムはアラビア半島からイベリア半島・ペルシア・インド・東南アジアへ伝わりました。

ボロブドゥール(8〜9世紀、インドネシア)
図:ボロブドゥール(8〜9世紀、インドネシア)。階段状の基壇に仏教の宇宙観を重ね、回廊の浮き彫りを巡りながら上昇していく構成です。思想・宗教が建築の形態と動線を直接規定した例です。(撮影:Heri nugroho、CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの特徴

    • プロポーション:中国は「材」の等級で建物の格に応じて決まる比例、南アジアは塔の垂直性、イスラムはドームとミナレットの比例が特徴です(Hillenbrand, 1994; Steinhardt, 2019)。

    • 立面とファサード:東アジアは反りのある屋根と深い軒、南アジアは全面を彫刻で覆う塔、イスラムは平滑な壁面と大きな門(イーワーン)が正面を作りました。

    • 装飾:イスラムは偶像を避けて幾何学文様・植物文様・書道を発達させ、南アジアは神像の彫刻、東アジアは彩色と組物が装飾になりました(Hillenbrand, 1994; Michell, 1988)。

    • 素材と色:木と瓦(東アジア)、石(南アジア)、レンガと青のタイル(イスラム)、泥(サヘル)と、地域の材料がそのまま色を決めました。

    • 空間構成と平面:東アジアは中庭を囲む左右対称と「門—庭—殿」の軸線、南アジアは内陣に向かって暗くなる平面、イスラムは中庭と多柱室、そして内向きで外に窓を持たない住宅が特徴です。例えば、アルハンブラ宮殿は意匠のすべてが中庭と内部に向けられています(Hillenbrand, 1994)。

    • 構造の表現:東アジアは斗栱を見せ、イスラムはムカルナスで構造の移行部そのものを装飾化しました(Hillenbrand, 1994; Steinhardt, 2019)。

    • 敷地と周囲との関係:風水と方位、聖地と河川、城壁内の街区の秩序に従って配置されました。

ジェンネの大モスク(現在の建物は1907年、マリ)
図:ジェンネの大モスク(現在の建物は1907年、マリ)。日干し煉瓦と泥の仕上げによるサヘル地方特有の様式で、壁面から突き出す木材は毎年の補修に使う足場です。気候、地域材料、維持管理の仕組みがそのまま意匠になっています。(撮影:Ruud Zwart、CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons)
  • 前の時代から変わった点と変わった理由:各地域で宗教が国家に組み込まれ、宗教建築が意匠の最前線になりました。仏教はインドから中央アジア・中国・朝鮮半島・日本・東南アジアへ、イスラムはアラビア半島からイベリア半島・ペルシア・インド・東南アジアへと伝播し、宗教の伝播経路がそのまま様式の継受経路になりました。例えば、仏塔(ストゥーパ)はインドの半球形から、中国の多層の楼閣式、日本の五重塔へと、伝播先の木造技術に合わせて形を変えました(Fletcher, 1996)。

5〜15世紀 宗教が意匠を牽引した時代

  • 代表例:ハギア・ソフィア(コンスタンティノープル、532〜537年)、サン・ヴィターレ聖堂(ラヴェンナ、547年)、クリュニー修道院第3教会(11世紀末)、ダラム大聖堂(1093年〜)、サン・ドニ修道院教会の内陣(1140年代)、シャルトル大聖堂(1194〜1220年頃)、サント・シャペル(パリ、1248年)、ケルン大聖堂(1248年着工)、シエナ市庁舎(14世紀)。

ハギア・ソフィア(537年、イスタンブール)
図:ハギア・ソフィア(537年、イスタンブール)。ペンデンティブによって方形の平面に巨大なドームを架け、光に満ちた内部空間を実現しています。ビザンティン建築が宗教的な象徴性と構造技術を結びつけた到達点です。(撮影:Adli Wahid、CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの要因

    • 自然環境:北西ヨーロッパの寒冷で雨の多い気候が急勾配の屋根と厚い壁を要求し、良質な石灰岩の産地(カーン、パリ盆地)がゴシックの石工を支えました。例えば、イングランドの大聖堂の多くはノルマンディーのカーン石で建てられ、石は海路で運ばれました(Frankl, 2000)。

    • 用途・機能:大聖堂、修道院、城、ギルドホール、市庁舎が主な用途で、巡礼という用途が聖堂の平面(周歩廊と放射状礼拝堂)を変えました。例えば、サンティアゴ巡礼路の聖堂は、巡礼者が礼拝中も聖遺物の周りを歩けるように内陣を周歩廊で囲みました(Conant, 1978)。

    • 設計技術:石工の親方(マスター・メイソン)と工房(ロッジ)が、コンパスと定規による幾何学の作図法と原寸の型板で設計し、設計図は限られていました。例えば、ヴィラール・ド・オヌクールの画帖(1230年頃)は、親方が各地の大聖堂で集めた細部と幾何学の記録です(Kostof, 1977)。

    • 建設技術:ビザンティンはペンデンティブで正方形の平面に円形ドームを載せ、ロマネスクは厚い壁で石造ヴォールトを支え、ゴシックは尖頭アーチ、リブ・ヴォールト、飛梁で壁を薄くしました。例えば、ボーヴェ大聖堂は内陣の高さ48mで限界に挑み、1284年に一部が崩落しました(Frankl, 2000; Mainstone, 1988)。

    • 施主・資金:教会(司教、修道院、聖堂参事会)と台頭する都市共同体が施主でした。例えば、ゴシック大聖堂の資金は、司教と参事会の収入、巡礼者の献金、商人組合の寄付が組み合わさっていました(Frankl, 2000)。

    • 思想・価値観:「光は神の顕現である」という新プラトン主義的な光の神学が、大開口を正当化しました。例えば、サン・ドニの修道院長シュジェールは、内陣の改築(1140年代)を「光によって精神を物質から引き上げる」と記しました(Panofsky, 1946)。

    • 法規制:教会法と都市の条例が建物の用途と場所を定め、大火を経験した都市では壁の材料が規定され始めました(Knowles & Pitt, 1972)。

    • 情報の伝達手段:石工の親方の移動と、口伝・型板による技術の運搬が様式を広げました。例えば、ゴシックはフランス王領から100年足らずで欧州全域に広がり、印刷物のない時代の最速の伝播でした(Frankl, 2000)。

シャルトル大聖堂(13世紀、フランス)
図:シャルトル大聖堂(13世紀、フランス)。尖頭アーチ、リブ・ヴォールト、フライング・バットレスの組み合わせで壁を薄くし、大きな窓を開けています。ゴシックの構造システムが、垂直性と光という意匠の特徴を生み出しました。(撮影:Olvr、CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの特徴

    • プロポーション:ロマネスクは水平で重厚な比例、ゴシックは垂直性を極限まで高めた比例でした(Frankl, 2000)。

    • 立面とファサード:双塔、バラ窓、彫刻で埋まる正面が特徴です。例えば、ゴシック大聖堂の正面は「石の聖書」と呼ばれ、文字を読めない信者に聖書の物語を伝えました(Frankl, 2000)。

    • 装飾:聖書の物語の彫刻、ステンドグラス、ガーゴイルが装飾になりました。

    • 素材と色:切石と、ステンドグラスによる色光が素材と色を決めました。

    • 空間構成と平面:ラテン十字の平面、身廊と側廊の高さの対比、内陣に向かう軸線、そしてゴシックでは色光で満たされる高い内部空間が特徴です。例えば、サント・シャペルは壁面のほとんどがステンドグラスです。

    • 構造の表現:飛梁とリブという構造の骨組みが、外観と内観の意匠そのものになりました(Frankl, 2000)。

    • 敷地と周囲との関係:都市の中心の密集した街区から突出し、遠方から見えるランドマークになりました。

サント・シャペル上部礼拝堂(1248年、パリ)
図:サント・シャペル上部礼拝堂(1248年、パリ)。壁面のほとんどがステンドグラスに置き換わり、構造は細い柱に集約されています。ロマネスクの厚い壁から光を主題とする空間へ変化したことを、最も端的に示す例です。(撮影:Didier B (Sam67fr)、CC BY-SA 2.5、Wikimedia Commons)
  • 前の時代から変わった点と変わった理由:外部の量塊から内部の光へ、水平の比例から垂直の比例へと移り、構造の骨組みそのものが意匠になりました。教会という施主が「天上を地上に現す」ことを求め、都市の経済成長が長期の建設資金を支え、石工の工房が技術を蓄積したことが理由です。例えば、ゴシック様式がフランス王領から100年足らずで欧州全域に広がったのは、石工の親方が各地を移動し、口伝と型板で技術を運んだためで、印刷物のない時代の最速の伝播でした(Frankl, 2000; Kostof, 1977)。

15〜18世紀 建築家と理論書の誕生

  • 代表例:フィレンツェ大聖堂のドーム(ブルネレスキ、1420〜1436年)、サン・ピエトロ大聖堂(1506〜1626年)、ヴィラ・ロトンダ(パラディオ、1567年〜)、サン・カルロ・アッレ・クアトロ・フォンターネ(ボッロミーニ、1638〜1641年)、ヴェルサイユ宮殿(1660年代〜)、メキシコ・シティのメトロポリタン大聖堂(1573〜1813年)、パリのパンテオン(スフロ、1758〜1790年)、イスタンブールのスレイマニエ・モスク(シナン、1550〜1557年)、タージ・マハル(1632〜1653年)。

フィレンツェ大聖堂のドーム(1436年、ブルネレスキ)
図:フィレンツェ大聖堂のドーム(1436年、ブルネレスキ)。二重殻構造と煉瓦のヘリンボーン積みにより、足場なしで直径45mのドームを架けました。建築家個人の名が作品と結びつき、設計技術が意匠を主導し始めた時代の象徴です。(撮影:Gary Campbell-Hall、CC BY 2.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの要因

    • 自然環境:前時代と同じ。ただし、ヴィラの建築では眺望と涼風を得る丘の上という立地が、意匠の前提として意識されるようになりました。例えば、Palladio のヴィラ・ロトンダは、四方の景観を等しく取り込むために4面に同じ玄関を持ちます(Ackerman, 1966)。

    • 用途・機能:宮殿、ヴィラ、教会に加えて、劇場、図書館、病院、兵舎、取引所といった世俗の用途が増え、植民地では教会と総督府が新しい都市の核になりました。例えば、テアトロ・オリンピコ(1585年)は古代以来初めての常設の屋内劇場で、劇場という用途の型をここから再開しました(Pevsner, 1976)。

    • 設計技術:透視図法と図面、模型による事前検討が可能になり、Alberti は施工から離れて図面と理論で指示する最初期の建築家になりました(Evans, 1997; Carpo, 2011)。1671年にはフランスで王立建築アカデミーが設立され、教育が制度化されました。例えば、Palladio のヴィラは平面・立面・断面の図面で出版され、建てられる前に意匠が完成していました。

    • 建設技術:前時代と同じ(組積造)。ただし施工法の発明がありました。例えば、ブルネレスキはフィレンツェ大聖堂のドームを足場なしで建てるために、内外二重の殻とレンガのヘリンボーン積みを考案しました(King, 2000)。

    • 施主・資金:都市貴族と銀行家(メディチ家など)、教皇と枢機卿、絶対王政の宮廷、植民地の教会と総督府が施主でした。例えば、ヴェルサイユは国王が貴族を宮廷に集めて統制する政治装置でした(Kostof, 1985)。

    • 思想・価値観:人文主義(古代の復興、人体の比例を宇宙の秩序とみなす)、カトリック改革(バロックの劇的な空間で信仰を鼓舞する)、啓蒙思想(Laugier, 1753 の「原始の小屋」)が順に意匠を導きました。例えば、Alberti(1485/1988)は美を「各部分の調和」と定義しました。

    • 法規制:ロンドン再建法(1667年)が建物を街路の格に応じて4類型に分けて階数と壁厚を定め、パリの1783年令が街路幅に応じた高さを定めました(Ley, 2000; Sutcliffe, 1981)。例えば、ロンドンのテラスハウスの統一された街並みは法規の産物です。

    • 情報の伝達手段:印刷された建築書(Serlio 1537年〜、Vignola 1562年、Palladio 1570年)が、オーダーの比例と建物の型を欧州全域に同一に複製しました(Eisenstein, 1979; Carpo, 2001)。例えば、Palladio の『建築四書』は18世紀のイギリスとアメリカで邸宅の標準になりました。

ヴィラ・ロトンダ(1567年頃、パッラーディオ)
図:ヴィラ・ロトンダ(1567年頃、パッラーディオ)。四面に同じ神殿風ポルティコを持つ完全対称の平面で、古典の比例体系を住宅に適用しています。この意匠はパッラーディオの『建築四書』という理論書を通じて各国へ伝播しました。(撮影:Marco Bagarella、CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの特徴

    • プロポーション:古典のオーダーを再発見し、水平の層構成と人体比例に基づく調和が規範になりました(Wittkower, 1971)。

    • 立面とファサード:左右対称で明快なルネサンスの立面から、凹凸が波打つバロックの立面へ、そして再び簡素な新古典へ移りました。例えば、ボッロミーニのサン・カルロ聖堂の正面は波打つ壁面で、平面的なファサードを彫刻に変えました(Blunt, 1979)。

    • 装飾:古典モチーフ(オーダー、ペディメント)、バロックの彫刻と金箔、新古典の抑制と交代しました。

    • 素材と色:石と漆喰が基本で、バロックでは大理石、金、スタッコが加わりました。

    • 空間構成と平面:集中式平面(円・正方形・ギリシャ十字)と左右対称の部屋配置が理想とされ、バロックでは楕円と軸線の連続によって空間が動的に連なりました。例えば、ヴィラ・ロトンダは4面すべてに同じ神殿風の玄関を持ちます(Wittkower, 1971)。

    • 構造の表現:構造はオーダーの背後に隠され、比例と装飾が表に出ました。

    • 敷地と周囲との関係:ヴィラは庭園と景観の軸線上に置かれ、都市では再建法と街路幅の規定が街並みを揃えました。

サン・カルロ・アッレ・クアトロ・フォンターネ(1638〜46年、ボッロミーニ)
図:サン・カルロ・アッレ・クアトロ・フォンターネ(1638〜46年、ボッロミーニ)。波打つファサードと楕円のドームが特徴で、古典のルールを意図的に歪めています。ルネサンスの静的な調和からバロックの動的な表現への変化を示す例です。(撮影:Architas、CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)
  • 前の時代から変わった点と変わった理由:意匠の決定者が工房の親方から理論を持つ個人の建築家へ移り、様式が国境を越えて同一に複製されるようになりました。印刷術が建築書を配布し、人文主義が古典という共通の規範を与え、都市貴族と宮廷が個人の名で建築を注文したことが理由です。同時に、法規が街並みを揃える最初期の例が現れました。例えば、ロンドンの1667年再建法は、建物を街路の格に応じて4類型に分け、階数と壁厚を定めたため、ロンドンのテラスハウスの統一された街並みは法規の産物です(Ley, 2000)。

19世紀 産業革命と様式の混乱

  • 代表例:英国国会議事堂(バリーとピュージン、1840〜1870年、ゴシック・リバイバル)、サント・ジュヌヴィエーヴ図書館(ラブルースト、1850年、鉄骨の露出)、水晶宮(パクストン、1851年)、パリ・オペラ座(ガルニエ、1875年)、エッフェル塔(1889年)、ホーム・インシュアランス・ビル(シカゴ、1885年、鉄骨造高層)、ウェインライト・ビル(サリヴァン、1891年)、タッセル邸(オルタ、1893年、アール・ヌーヴォー)、オスマンのパリ改造(1853〜1870年)。

水晶宮(1851年、ロンドン、パクストン
図:水晶宮(1851年、ロンドン、パクストン。写真は1854年の移築後)。鉄とガラスの規格部材を工場で生産し、数か月で組み立てた万国博覧会の展示館です。産業革命が構法と材料を一変させたことを示しています。(撮影:Philip Henry Delamotte、パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの要因

    • 自然環境:鉄道と蒸気船が材料を遠隔地から運べるようにし、地域の材料と気候が意匠を決める度合いが初めて下がりました。例えば、ロンドンのテラスハウスの黄色いレンガは地元産ですが、公共建築のポートランド石は海路で運ばれ、地域色は「選べるもの」になりました(Muthesius, 1982)。

    • 用途・機能:駅、工場、倉庫、百貨店、博物館、病院、刑務所、万博のパビリオンといった前例のない用途が次々に現れ、用途ごとの新しい型が生まれました(Pevsner, 1976)。例えば、駅は「大屋根のホール」と「様式的な正面の駅舎」の二部構成になり、新しい用途と古い様式がひとつの建物の中で分業しました。

    • 設計技術:建築家とエンジニアが分離し、建築家はエコール・デ・ボザールの様式教育(Drexler, 1977)、エンジニアはエコール・ポリテクニークの構造計算(Navier の弾性理論以降)を判断材料にしました。例えば、エッフェル塔はエンジニアの設計で、建築家ソヴェストルは後から脚部のアーチ装飾を加える役割でした(Collins, 1965)。

    • 建設技術:鋳鉄、錬鉄、鋼、板ガラスの大量生産とエレベーター(1850年代)が大スパン、高層、透明な外皮を可能にし、鉄筋コンクリートが特許化されました(エヌビック、1892年; Addis, 2007)。例えば、水晶宮は規格化された部材を工場で作り、約9ヶ月で完成しました。

    • 施主・資金:国家と市(議事堂、駅、市庁舎、博物館)、産業資本家(工場、倉庫、百貨店)、鉄道会社、市民階級(住宅)が施主になりました。例えば、駅は19世紀の「大聖堂」と呼ばれました(Meeks, 1956)。

    • 思想・価値観:様式を道徳と結びつける歴史主義(Pugin、Ruskin、Morris)と、材料と構造から様式を導く合理主義(Semper, 1851; Viollet-le-Duc; Sullivan, 1896)が対立しました。例えば、同じ鉄の構造を「隠すべきもの」とみなすか「見せるべきもの」とみなすかが、この世紀の意匠の混乱の核心です(Collins, 1965)。

    • 法規制:公衆衛生法(1848年、1875年)と建築条例が街路幅、壁面線、採光を規定し、オスマンのパリ改造では建物の高さ、軒線、ファサードの石材と開口の配列まで規定されました(Gaskell, 1983; Sutcliffe, 1981)。例えば、英国の「バイロー・テラス(条例住宅)」は条例が生んだ均質な街並みです。

    • 情報の伝達手段:写真と建築雑誌が普及し、各地の建築が即座に参照できるようになりました。例えば、万国博覧会(1851年〜)は各国の様式を一度に見せる場になりました。

英国国会議事堂(1840〜76年、バリーとピュージン)
図:英国国会議事堂(1840〜76年、バリーとピュージン)。ゴシック・リヴァイヴァルの代表作で、近代の議会という新しい用途に中世の様式を国家の象徴として着せています。新しい用途に過去の様式を適用した、19世紀の様式の混乱を表す例です。(撮影:ThatsTheBoss、CC0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの特徴

    • プロポーション:鉄骨とエレベーターによる高層化で垂直の比例が生まれ、Sullivan(1896)は基壇・中間部・頂部の3層構成を示しました(Condit, 1964)。

    • 立面とファサード:公共建築は過去の様式を用途に応じて選ぶ折衷主義、産業建築は鉄とガラスの露出でした。例えば、同じロンドンで国会議事堂はゴシック、大英博物館はギリシャの外観です(Hitchcock, 1958)。

    • 装飾:歴史様式の装飾と、世紀末のアール・ヌーヴォーの植物曲線が並立しました(Hitchcock, 1958)。

    • 素材と色:鉄、ガラス、レンガ、石の化粧張りが加わりました。

    • 空間構成と平面:鉄の構造が図書館、駅、百貨店、温室に大空間を与える一方、住宅は条例で規格化されたテラスハウスとアパートメントになりました(Muthesius, 1982; Pevsner, 1976)。

    • 構造の表現:鉄を隠す歴史主義と見せる合理主義が並立しました。例えば、セント・パンクラス駅はゴシックの外観の背後に鉄の大屋根を隠しています(Meeks, 1956)。

    • 敷地と周囲との関係:街路幅に応じた高さと軒線の統一が法で定められ、「パリらしい」街並みが法規と不動産投資の協働で作られました(Loyer, 1988)。

エッフェル塔(1889年、パリ)
図:エッフェル塔(1889年、パリ)。錬鉄のトラスを装飾で覆わずに露出させ、構造そのものを意匠とした塔です。技術者が建築の表現を先導し、過去の様式に頼らないデザインの可能性を示しました。(撮影:Benh LIEU SONG、パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
  • 前の時代から変わった点と変わった理由:材料が石から鉄とガラスへ変わり、駅や工場という前例のない用途が新しい型を要求し、施主が宮廷から国家・資本・市民へ広がり、法規が衛生を目的に街並みを規定し、写真と雑誌が様式を即時に伝えるようになりました。その結果、「どの様式を選ぶか」が自由になり、同時に「外形は法が決める」構図が始まりました(Loyer, 1988; Sutcliffe, 1981)。例えば、オスマンのパリ改造では、街路幅に応じた建物の高さ、軒線の統一、ファサードの石材と開口の配列まで規定され、「パリらしい」街並みは法規と不動産投資の協働で作られました。

20世紀前半 モダニズムと装飾の否定

  • 代表例:フランクリン街のアパート(ペレ、1903年、鉄筋コンクリートの露出)、AEG タービン工場(ベーレンス、1909年)、ファグス靴工場(グロピウス、1911年)、バウハウス校舎(デッサウ、1926年)、ヴァイセンホーフ・ジードルング(1927年)、ヴィラ・サヴォア(ル・コルビュジエ、1931年)、バルセロナ・パビリオン(ミース、1929年)、クライスラー・ビル(1930年、アール・デコ)、エンパイア・ステート・ビル(1931年)、ナルコムフィン集合住宅(モスクワ、1930年)。

バウハウス校舎(1926年、デッサウ、グロピウス)
図:バウハウス校舎(1926年、デッサウ、グロピウス)。平らな屋根、ガラスのカーテンウォール、装飾のない白い壁面という、モダニズムの語彙を集約した校舎です。機能に基づく形態という思想が、教育機関を通じて世界に広まりました。(撮影:A.Savin、FAL、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの要因

    • 自然環境:暖房、電灯、エレベーターの普及で、気候と日照が意匠を縛る度合いが下がり、同じ白い箱がベルリンからテルアビブまで建てられました。例えば、テルアビブの「白い都市」は、中欧で生まれた意匠を地中海の気候に持ち込み、後に日除けとバルコニーで修正されました(Frampton, 2007)。

    • 用途・機能:工場と労働者住宅、学校、病院、オフィスと摩天楼が主な用途になり、「機能」そのものが意匠の根拠とされました。例えば、CIAM の機能都市は、住む・働く・憩う・移動するという用途ごとに都市を分け、用途が建物の型だけでなく都市の形まで決めました(Frampton, 2007)。

    • 設計技術:機能分析、標準化、最小限住宅の寸法研究が設計の判断材料になり、柱と床だけの構造の型(ドミノ・システム)が設計の出発点になりました。例えば、ドミノ・システムでは壁をどこに置いても構造が成立するため、「自由な平面」と「自由なファサード」が導かれました(Le Corbusier, 1923)。

    • 建設技術:鉄筋コンクリートのラーメン構造と鉄骨造が壁を構造から解放し、ガラス、鋼、コンクリートの平滑な面が材料の標準になりました(Giedion, 1941)。

    • 施主・資金:産業企業(工場、本社)、社会民主主義の自治体(労働者住宅団地)、前衛的な個人、不動産会社(摩天楼)、国家(記念建築)が施主でした。例えば、「新フランクフルト」計画(1925〜1930年)では市が1万戸以上を標準化された平面で建てました(Frampton, 2007)。

    • 思想・価値観:Loos(1908)の「装飾は犯罪である」、Le Corbusier(1923)の「住宅は住むための機械」、バウハウス、CIAM(1928年〜)の「機能都市」が、機械と大量生産を美の根拠にしました。Pevsner(1936)と Giedion(1941)はこれを歴史の必然として書き、Banham(1960)は機械時代の技術への応答として整理しました。

    • 法規制:ニューヨークの1916年ゾーニングがセットバックによって摩天楼の外形を決め、ゾーニングが各国に広がりました(Willis, 1995)。例えば、Ferriss(1929)のドローイングはゾーニングが許す最大外形を描いただけで、それが1920年代の摩天楼の原型になりました。

    • 情報の伝達手段:雑誌と展覧会が様式を即時に国際化しました(Colomina, 1994)。例えば、ヴァイセンホーフ・ジードルング(1927年)は17人の建築家が同じ白い箱型の住宅を並べた「展覧会」であり、1932年のニューヨーク近代美術館の展覧会で「インターナショナル・スタイル」と命名されました(Hitchcock & Johnson, 1932)。

バルセロナ・パビリオン(1929年、ミース・ファン・デル・ローエ
図:バルセロナ・パビリオン(1929年、ミース・ファン・デル・ローエ。1986年再建)。鉄骨の細い柱が屋根を支え、壁は構造から解放されて自由に配置されています。大理石とガラスの面が構成する流動的な空間は、装飾を否定した後に残った意匠の豊かさを示しています。(撮影:Canaan、CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの特徴

    • プロポーション:水平連続窓と平屋根による水平の比例が生まれ、摩天楼では法規が定める階段状の輪郭が比例を決めました(Le Corbusier, 1923; Willis, 1995)。

    • 立面とファサード:装飾のない白い壁、ガラスのカーテンウォール、構造から独立した「自由なファサード」が共通語彙になりました(Le Corbusier, 1923)。

    • 装飾:原則として排除されました。例外は摩天楼のアール・デコ装飾です。

    • 素材と色:白い漆喰、ガラス、鋼、コンクリートの平滑な面が標準になりました。

    • 空間構成と平面:柱で床を支える「自由な平面」、内と外のガラスによる連続、機能ごとに分けられた平面が住宅から都市計画まで貫かれました。例えば、バルセロナ・パビリオンは独立した壁が屋根の下を横切り、部屋という概念を解体しました(Frampton, 2007)。

    • 構造の表現:構造の表現が意匠の根拠になり、ピロティと柱が露出しました。

    • 敷地と周囲との関係:ピロティで敷地から浮き、街路から後退して緑地の中に置かれる配置(CIAM)が理想とされました(Frampton, 2007)。

クライスラー・ビル(1930年、ニューヨーク)
図:クライスラー・ビル(1930年、ニューヨーク)。鉄骨造とエレベーターが可能にした超高層に、アール・デコの装飾的な冠を載せています。同時期のモダニズムとは対照的に、商業的な象徴性が装飾を求め続けたことを示す例です。(撮影:David Shankbone(修正:Overand)、パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
  • 前の時代から変わった点と変わった理由:装飾が否定され、構造の表現と機能の表現が意匠の根拠になりました。ここでは思想が起点となり、鉄筋コンクリートという技術が選ばれました。第一次世界大戦後の住宅不足が標準化と大量生産を要請し、社会民主主義の自治体が施主となり、雑誌と展覧会が様式を即時に国際化したことが理由です。例えば、同じ鉄筋コンクリートでも、ペレは古典的な比例を残し、ル・コルビュジエは一切の様式を捨てました。技術ではなく思想が意匠を決めた例です(Frampton, 2007)。

20世紀後半 モダニズム批判とグローバル化

  • 代表例:ユニテ・ダビタシオン(マルセイユ、1952年、ブルータリズム)、シーグラム・ビル(ミースとジョンソン、1958年、カーテンウォール)、シドニー・オペラハウス(ウッツォン、1973年)、ポンピドゥー・センター(ピアノとロジャース、1977年、ハイテク)、ポートランド・ビル(グレイブス、1982年、ポストモダン)、AT&T ビル(ジョンソン、1984年)、香港上海銀行(フォスター、1986年)、グッゲンハイム・ビルバオ(ゲーリー、1997年)、ペトロナス・ツインタワー(1998年)。

シーグラム・ビル(1958年、ニューヨーク、ミースとジョンソン)
図:シーグラム・ビル(1958年、ニューヨーク、ミースとジョンソン)。ブロンズ色のカーテンウォールと前面の広場を持つ、インターナショナル・スタイルのオフィスビルの規範です。この型が世界中で再生産されたことが、画一化への批判を招きました。(撮影:Ken OHYAMA、CC BY-SA 2.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの要因

    • 自然環境:空調の普及でガラスのカーテンウォールが気候を問わず世界中に建てられ、自然環境は一時的に「克服すべきもの」になりました。例えば、1950年代以降は砂漠や熱帯の都市でも、ニューヨークと同じ密閉されたガラスのオフィスビルが建てられました。1970年代の石油危機以降、批判的地域主義が気候への応答を意匠に戻し始めました(Frampton, 1983)。

    • 用途・機能:団地、ショッピングモール、空港、企業本社、美術館、スタジアムが主な用途になり、用途の大規模化と複合化が進みました。例えば、ショッピングモールは1956年のサウスデール・センター以降、内向きで外観を持たない新しい型になりました(Curtis, 1996)。

    • 設計技術:計算機による構造解析(1960年代〜)、環境性能のシミュレーション、1990年代の3次元CADが判断材料に加わりました。例えば、シドニー・オペラハウスのシェルは当初の自由曲面では施工できず、球面の一部として再定義して初めて実現しました(Curtis, 1996)。

    • 建設技術:前時代と同じ(鉄筋コンクリートと鉄骨造)。プレキャスト・コンクリート、カーテンウォール、鉄骨の大スパンが普及しました。

    • 施主・資金:戦後復興を担う国家と自治体(団地、学校、庁舎)、多国籍企業(本社ビル)、文化施設で都市再生を狙う自治体、新興国の国家が施主でした。例えば、企業本社はポストモダンの装飾的な頂部を企業のロゴとして使いました(Sklair, 2017)。

    • 思想・価値観:Venturi(1966)の「複雑さと矛盾」、Jencks(1977)のポストモダン論、Frampton(1983)の批判的地域主義がモダニズムの普遍主義を批判し、ヴェネツィア憲章(1964年)が「古いものを残す」価値を制度化しました。

    • 法規制:容積率と公開広場のボーナス(ニューヨーク1961年)、日影・斜線規制、歴史的建造物保存法(ニューヨーク1965年)、デザインレビューが意匠の大半を決めるようになりました(Ben-Joseph, 2005; Talen, 2012)。例えば、1963年のペンシルベニア駅の取り壊しへの反発が1965年の保存法につながりました。

    • 情報の伝達手段:航空機とテレビ、国際コンペ、建築雑誌の国際化が建築の流通を加速しました(Colomina, 1994; Sklair, 2017)。例えば、グッゲンハイム・ビルバオ(1997年)の「ビルバオ効果」は世界の自治体に即座に模倣されました(Sklair, 2017)。

シドニー・オペラハウス(1973年、ウツソン)
図:シドニー・オペラハウス(1973年、ウツソン)。貝殻状のコンクリート・シェルを、初期のコンピュータによる構造解析を用いて実現しました。機能主義の箱から離れた彫刻的な形態が、都市の象徴となった例です。(撮影:Bernard Spragg、CC0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの特徴

    • プロポーション:均質な高層の反復と、ポストモダンによる古典比例の引用が並立しました。

    • 立面とファサード:カーテンウォール、ブルータリズムの量塊、ポストモダンの引用、ハイテクの露出、脱構築の傾いた形が並立しました。例えば、AT&T ビルの頂部はチッペンデール様式の家具を模した割れたペディメントです(Jencks, 1977)。

    • 装飾:歴史的装飾の引用として復権しました(ポストモダン)。

    • 素材と色:コンクリート打ち放し、ガラスと鋼、ポストモダンの色彩と石の化粧張りが使われました。

    • 空間構成と平面:ユニバーサル・スペース、アトリウム、ショッピングモール、画一的な団地の平面が広がりました。例えば、プルイット・アイゴー団地は廊下と階段室が監視の届かない空間になり、1972年に爆破解体されました(Newman, 1972)。

    • 構造の表現:ハイテクは構造と設備を外部に露出し(ポンピドゥー・センター)、ポストモダンは再び隠しました(Curtis, 1996)。

    • 敷地と周囲との関係:公開広場の奥にタワーを置く型(シーグラム・ビル)、保存地区での審査、批判的地域主義による地形と気候への応答が生まれました(Frampton, 1983; Talen, 2012)。

ポートランド・ビル(1982年、マイケル・グレイヴス)
図:ポートランド・ビル(1982年、マイケル・グレイヴス)。巨大な柱型やリボン状の装飾をファサードに描き、モダニズムが否定した装飾と歴史的な記号を復活させました。ポストモダニズムが公共建築に採用された最初期の例です。(撮影:Another Believer、CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons)
  • 前の時代から変わった点と変わった理由:単一の正統(モダニズム)が崩れ、複数の様式が並立するようになりました。空調が気候を問わない外観を世界に広げたこと、モダニズムの画一性への市民の反発、企業と都市が「差異」を広告として求めたこと、保存と景観の法規が「揃える」側に回ったこと、そして航空機とテレビが建築の国際的な流通を加速したことが理由です(Colomina, 1994; Sklair, 2017)。例えば、グッゲンハイム・ビルバオ(1997年)は、衰退した工業都市が文化施設で観光と投資を呼び込む「ビルバオ効果」のモデルになり、以後の自治体は意匠を都市戦略の一部として発注するようになりました(Ponzini & Nastasi, 2016; Sklair, 2017)。

1990年代〜現在 デジタルと性能の時代

  • 代表例:グッゲンハイム・ビルバオ(1997年、航空機設計ソフト CATIA による曲面)、ヘイダル・アリエフ・センター(ザハ・ハディド、2012年、パラメトリック)、ボスコ・ヴェルティカーレ(ミラノ、2014年、植栽の外皮)、グラン・パルク・ボルドーの団地改修(ラカトン&ヴァッサル、2017年)、ミョーストーネット(ノルウェー、2019年、木造85.4m)、Ascent(ミルウォーキー、2022年、木造86.6m)、ICON の3Dプリント住宅地(テキサス、2022年〜)、マルクトハル(ロッテルダム、2014年)。

グッゲンハイム美術館ビルバオ(1997年、フランク・ゲーリー)
図:グッゲンハイム美術館ビルバオ(1997年、フランク・ゲーリー)。チタンで覆われた曲面を、航空機設計用のCADソフトウェアで設計・施工しました。デジタル技術が設計の自由度と建設の精度を同時に高めたことを示す例です。(撮影:Naotake Murayama、CC BY 2.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの要因

    • 自然環境:気候危機によって、自然環境は「克服するもの」から「守るべきもの」に転じ、炭素、気温上昇、洪水、猛暑への適応が意匠の前提になりました。例えば、日射を遮る深い庇や二重外皮、都市の緑化外皮は、20世紀前半なら「余計な要素」とみなされたものです(Olgyay, 1963)。

    • 用途・機能:オフィスの縮小と住宅への転用、物流施設とデータセンターの増加、複合用途と用途の可変性が主題になりました。例えば、在宅勤務の定着は都心のオフィスの空室を増やし、既存のオフィスの住宅への転用(コンバージョン)が意匠の新しい課題になりました(Brand, 1994)。

    • 設計技術:BIM、パラメトリック・デザイン、LCA と環境シミュレーション、法規の自動チェック、2022年以降の生成AIが判断材料になりました(Lynn, 1999; Li et al., 2025; Wang et al., 2026)。例えば、RIBA(2025)によれば、英国の設計事務所の59%がAIを一部のプロジェクトで使っています。

    • 建設技術:デジタルファブリケーション、CLT と大断面木造、高性能ガラスと外皮、建設3Dプリントとロボット施工が、非標準形状と環境性能の両立を可能にしました(Kolarevic, 2003; Bayat & Hoang, 2026)。例えば、ヘイダル・アリエフ・センターの連続曲面は、構造・外装・内装を同じ3次元モデルから製作しました。

    • 施主・資金:グローバルな不動産投資ファンド、国家ファンド、テクノロジー企業、サステナビリティを融資条件とする金融機関が施主になりました(Kaika, 2010; Tarazona-Vento & Atkinson, 2024)。例えば、Apple Park(2017年)は企業のブランドを建築で表現する型を大規模に継承しています。

    • 思想・価値観:サステナビリティ(LEED、BREEAM)、レジリエンス、ウェルビーイング、「新築より改修」という循環の倫理が意匠の根拠になりました。例えば、2021年のプリツカー賞がラカトン&ヴァッサルに贈られたことは、「壊さず、付け加える」価値観が最上位に置かれたことを示します(Brand, 1994)。

    • 法規制:性能規定化、グレンフェル火災後の外装規制(2018年)、炭素上限(デンマーク2023年〜、Social- og Boligstyrelsen, 2025)、EU の LCA 算定義務が意匠の前提を定め、米国では単一階段の容認が集合住宅の平面を変え始めています(Hackitt, 2018; Niskanen Center, 2025)。例えば、炭素上限のもとではガラスのカーテンウォールが不利になり、木材と再生材が標準の座を争い始めています。

    • 情報の伝達手段:インターネットと SNS、生成AIが意匠の伝播を即時にしました(Wagiri et al., 2024; Zhang & Zhang, 2025)。例えば、マルクトハルの内側の壁画は Instagram と TikTok で拡散され、プラットフォームごとに建物の表象が変わることが研究されています。

ミョーストーネット(2019年、ノルウェー)
図:ミョーストーネット(2019年、ノルウェー)。高さ85mの木造高層建築で、集成材とCLTによる構造を用いています。環境性能と脱炭素が意匠を決める主要な要因になった時代を代表します。(撮影:Øyvind Holmstad、CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの特徴

    • プロポーション:パラメトリックな連続曲面の比例と、木造高層の新しい比例が生まれました(Schumacher, 2009)。

    • 立面とファサード:曲面と非標準形状、植栽の外皮、既存躯体に付け替える外皮、SNSで「撮られる」ことを前提にした外観が並立しています(Schumacher, 2009; Wagiri et al., 2024)。

    • 装飾:3Dプリントの積層痕やパラメトリックなパターンが新しい装飾になりました(Carpo, 2017)。

    • 素材と色:木の露出、再生材、高性能ガラス、低炭素コンクリートが増えています(Nordic Council of Ministers, 2024)。

    • 空間構成と平面:環境性能(断熱、日射、自然換気)と防火・避難の規定が平面と断面を決め、二重外皮と「冬の庭」(ボルドーの団地改修)が標準化しました(Hackitt, 2018)。

    • 構造の表現:木の梁と柱を見せる意匠(Ascent)と、構造最適化で生成された形の露出が現れました(Carpo, 2017)。

    • 敷地と周囲との関係:既存建物の改修と再利用、都市のブランド化、炭素上限による躯体の再利用が、敷地との関係を決めています(Brand, 1994; Nordic Council of Ministers, 2024)。

マルクトハル(2014年、ロッテルダム、MVRDV)
図:マルクトハル(2014年、ロッテルダム、MVRDV)。集合住宅がアーチ状に市場を覆い、内側には巨大なデジタル印刷のアートが広がります。複合用途と性能評価の時代に、建築が都市の体験装置として設計されている例です。(撮影:Exmpletree、CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons)
  • 前の時代から変わった点と変わった理由:意匠の自由度は技術によって最大化された一方で、環境・防火・炭素の規制が意匠の前提を定める度合いも最大になりました。デジタル技術が非標準形状のコストを下げ、気候危機がインターネットによるグローバルでの情報共有の速さが価値観と法規を同時に変えました(北欧の炭素上限、グレンフェル後の外装規制)。例えば、ガラスのカーテンウォールは20世紀後半の「標準」でしたが、デンマークの炭素上限(2025年に7.1 kgCO₂e/m²/年)のもとでは不利になり、木材と再生材が「標準」の座を争い始めています。

未来の建築デザインはどうなるのか

これまでの歴史的な変遷を踏まえ、ここでは今後の建築デザインがどのように変化する可能性があるのか、いくつかのシナリオを設定し、整理します。

著名な建築家、ランドスケープアーキテクト、研究者、起業家などが提唱する都市構想の網羅的な整理を踏まえ、「環境共生型」「人間中心型」「デジタル最適化型」「フロンティア開拓型」の4つのシナリオに分解し、未来の建築デザインについて整理します。

出典:未来の都市はどのようなものか?世界の建築家、研究者、起業家のアイデア

https://www.mign.io/articles/58105/

環境共生型:生態系を都市のインフラにするシナリオ

  • 代表例(先行例):The Green Dip(Winy Maas、The Why Factory/MVRDV、2024年;The Why Factory, n.d.)とその実作である Valley(アムステルダム、2022年;MVRDV, n.d.)、海綿都市(俞孔堅、ハルビン群力湿地公園、2011年;Turenscape, n.d.)、Oyster-tecture(Kate Orff、2010年;SCAPE, 2016)、Room for the River(オランダ、2007年〜;Dutch Water Sector, n.d.)、グラン・パルク団地の改修(ボルドー、2017年、ラカトン&ヴァッサル;The Hyatt Foundation, 2021)、Ascent(ミルウォーキー、2022年)の木造高層(International Code Council, 2021)。

グラン・パルク団地の改修(ボルドー、2017年、ラカトン&ヴァッサル、ドゥルオ、ユタン)
図:グラン・パルク団地の改修(ボルドー、2017年、ラカトン&ヴァッサル、ドゥルオ、ユタン)。改修前(左)と改修後(右)です。既存の躯体を壊さず、外側に冬の庭(ウィンターガーデン)の層を付け加えることで、住戸の面積と光を増やしています。「壊さない」ことを美の基準にする環境共生型シナリオの意匠の先行例です。(出典:Lacaton & Vassal 公式サイト lacatonvassal.com)
  • 建築デザインの要因

    • 自然環境:気候危機によって、自然環境は「克服するもの」から「守るべきもの」へ転じました(Frampton, 1983; Nordic Council of Ministers, 2024)。このシナリオではさらに進み、水、植物、土、生物を建築の外皮と敷地に組み込み、猛暑、洪水、炭素制約への適応を意匠の第一の前提にします。例えば、海綿都市では川岸のコンクリート護岸を撤去して湿地に戻し、氾濫を「防ぐ」のではなく「受け止める」ことが設計の目標になっています(Turenscape, n.d.)。

    • 用途・機能:建物と敷地が、居住や業務に加えて、貯水、浄化、冷却、生物の生息地といった生態系サービスを提供する用途を持ち、新築より既存建物の転用と改修が増えます(Brand, 1994)。例えば、Oyster-tecture ではカキ礁が防波堤と水質浄化装置と公園を兼ね、建築と土木とインフラの区別がなくなります(SCAPE, 2016)。

    • 設計技術:LCA(ライフサイクルアセスメント)による炭素の算定が設計技術に組み込まれ(IEA EBC, 2025)、生態系の性能(貯水量、蒸散による冷却、生物多様性)をシミュレーションする設計ツールが加わります。例えば、The Green Dip の Green-Maker は、気候帯ごとに最適な植物種、必要な水量、二酸化炭素の吸収量、気温の低下度合いを計算する設計ソフトウェアです(The Why Factory, n.d.)。

    • 建設技術:木造、再生材、既存躯体の再利用、低炭素コンクリートに投資が集中し、植物を支持する外皮や、湿地と共存する基礎といった構法が発達します(Bayat & Hoang, 2026; IEA EBC, 2025)。例えば、米国の IBC 2021 は大断面木造で18階までの建設を認め、木造高層が北米でも可能になりました(International Code Council, 2021)。

    • 施主・資金:ESG 投資、公的資金、自治体の防災予算が主役になり、融資条件(炭素量、環境認証、生態系への寄与)が意匠の条件になります(Kaika, 2010; Tarazona-Vento & Atkinson, 2024)。例えば、海綿都市は2013年に中国政府の国家方針になり、公共投資が設計の内容を直接決めました(Turenscape, n.d.)。

    • 思想・価値観:気候倫理と「自然と戦わず共生する」という価値観が最上位に置かれ、「壊さない」「足す」「戻す」ことが美の基準になります。例えば、2021年のプリツカー賞がラカトン&ヴァッサルに贈られたことは、改修の美学が建築界の最高の評価軸に入ったことを示しています(The Hyatt Foundation, 2021)。

    • 法規制:炭素上限が北欧から EU へ広がり、新築の炭素排出が高さや容積と同じ「外形規制」になります。例えば、デンマークは2023年から新築に炭素上限を課し(Social- og Boligstyrelsen, 2025)、北欧5か国は上限値の調和と段階的な引き下げを進め(Nordic Council of Ministers, 2024)、EU の建物エネルギー性能指令は新築のライフサイクル全体の温室効果ガス排出の算定を義務づけました(European Parliament and Council, 2024)。

    • 情報の伝達手段:LCA の計算結果、材料の履歴、生態系への寄与が意匠の評価軸として共有され、建築の写真より環境データが伝播します。例えば、北欧の炭素規制は材料ごとの環境データの整備と共有を前提としており、設計の判断材料が写真から数値へ移っています(Nordic Council of Ministers, 2024)。

Ascent(ミルウォーキー、2022年)
図:Ascent(ミルウォーキー、2022年)。25階建て、高さ86mの木造(マスティンバー)集合住宅で、竣工時点では世界で最も高い木造建築でした。米国 IBC 2021 が木造の高さ制限を緩和したことを背景に、木を見せる高層建築が北米でも実現し始めた兆候です。(撮影:SidewalkMD、CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの特徴

    • プロポーション:躯体の再利用と植物の荷重が前提になるため、既存建物の比例(階高、スパン)と、植物や土を載せるための厚い床と深いテラスが新しい比例を作ります。例えば、Valley では各階のテラスが植栽のために外側へ張り出し、建物の輪郭が段状になっています(MVRDV, n.d.)。

    • 立面とファサード:ファサードは「壁」ではなく「土壌と植物の支持体」になり、植物に覆われた外皮、外側に付加された冬の庭、木の露出、再生材の表情が並びます。例えば、ボルドーの団地改修では既存の外壁の外側に冬の庭の層を付け加え(The Hyatt Foundation, 2021)、The Green Dip では屋根、壁面、バルコニーのあらゆる表面を植物で覆うことが構想されています(The Why Factory, n.d.)。

    • 装飾:装飾は「追加するもの」ではなく、植物の生育、再生部材の痕跡、木の継手そのものになります。例えば、ボルドーの団地改修では、既存のコンクリート躯体をそのまま残し、付加した冬の庭の透明な外皮と既存の躯体の対比がそのまま外観の表情になっています(The Hyatt Foundation, 2021)。

    • 素材と色:ガラスと鉄骨の割合が下がり、木材、土、再生材、低炭素コンクリートが増え、色は仕上げ材ではなく素材と植物の色になります。例えば、デンマークの炭素上限(2025年に7.1 kgCO₂e/m²/年)のもとでは、炭素量の大きい材料ほど使いにくくなるため、材料の選択がそのまま外観を決めます(Social- og Boligstyrelsen, 2025)。

    • 空間構成と平面:新築より改修が主戦場になり、既存の躯体を残して外皮と設備を付け替える「層の設計」(Brand, 1994)が意匠の中心になります。敷地のレベルでは、水を受け止める遊水地や湿地が平面を決めます。例えば、Room for the River では堤防を後退させて川幅を広げ、増水時に水を貯める空間を平常時には公園として使います(Dutch Water Sector, n.d.)。

    • 構造の表現:木の柱と梁、既存のコンクリート躯体をそのまま見せる表現が増えます。例えば、Ascent のように木造の構造体を露出させる意匠は、IBC 2021 が露出できる木材の範囲を防火性能に応じて定めたことで可能になりました(International Code Council, 2021)。

    • 敷地と周囲との関係:建築は単体ではなく、街区と流域の生態系の一部として設計され、洪水と猛暑への対応(緑、水、日射)が配置を決めます。例えば、Oyster-tecture はニューヨーク港の一部をカキ礁と水上公園として再生する構想で、建物の敷地ではなく港全体が設計の単位になっています(SCAPE, 2016)。

The Green Dip(ニューヨークへの適用イメージ、The Why Factory/MVRDV)
図:The Green Dip(ニューヨークへの適用イメージ、The Why Factory/MVRDV)。既存の都市を丸ごと植物で「浸す」構想で、ファサードや屋上が植物の支持体として設計されています。意匠の対象が建築単体から生態系へ広がる、環境共生型シナリオの都市構想です。(出典:The Why Factory 公式サイト thewhyfactory.com、© The Why Factory / MVRDV)
  • 現在から変わる点と変わる理由:現在は環境認証(LEED、BREEAM)が意匠の「加点」にとどまり(U.S. Green Building Council, n.d.)、緑化は装飾の一種として扱われています。このシナリオでは、炭素上限と生態系の性能が高さや容積と同じ「条件」になるため、意匠の自由領域が法規と生態系によって先に定義されます。変わる理由は、自然環境(気候危機)、思想・価値観(共生の倫理)、法規制(炭素上限)の3つの要因が同時に動くことです。例えば、デンマークの炭素上限と EU のライフサイクル算定義務は、環境性能を「加点」から「条件」へ移した最初の制度です(European Parliament and Council, 2024; Social- og Boligstyrelsen, 2025)。

人間中心型:幸福とケアを都市の中心に置くシナリオ

  • 代表例(先行例):パリの15分都市政策(2020年〜;Crook, 2021; Moreno et al., 2021)、バルセロナのスーペルブロック(2018年〜;Mueller et al., 2020)、パウンドベリー(英国、1993年〜、レオン・クリエ;Hardy, 2006)、ナンスレダン(英国コーンウォール、2010年代〜)、アムステルダムのドーナツ経済学の都市戦略(2020年〜;Doughnut Economics Action Lab, 2020)、米国の大統領令14344号(2025年)による連邦建築の古典様式(Executive Office of the President, 2025)。

パウンドベリーのクイーン・マザー・スクエア(英国ドーセット、1993年着工、マスタープラン:レオン・クリエ)
図:パウンドベリーのクイーン・マザー・スクエア(英国ドーセット、1993年着工、マスタープラン:レオン・クリエ)。古典的な様式と歩行者中心の街区を現代に再現した新伝統主義の代表例です。デザインコードが建物の様式、素材、配置を規定しており、人間中心型シナリオの意匠を先取りしています。(撮影:Léon Krier、CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの要因

    • 自然環境:機械設備より建物の形で気候に対応する設計(深い庇、中庭、厚い壁)が再評価されます(Olgyay, 1963; Frampton, 1983)。例えば、Olgyay(1963)が体系化した気候に応じた設計は、空調の普及で一度は退きましたが、批判的地域主義以降、地域の気候への応答として意匠に戻っています(Frampton, 1983)。

    • 用途・機能:徒歩と自転車で15分圏内に、住む、働く、買う、ケアする、学ぶ、楽しむの6つの機能が揃う複合用途が標準になり、保育、介護、休息といったケアの用途が中心に置かれます(Kern, 2021; Moreno et al., 2021)。例えば、Moreno et al.(2021)は、学校を昼は教育、夜と週末は文化やスポーツの場として使う多目的利用を15分都市の要素として挙げています。

    • 設計技術:市民の選好を測る評価手法と、デザインコードへの適合判定が設計技術に加わります(Carmona et al., 2006; Create Streets, 2025)。例えば、Beder et al.(2024)のアイトラッキング研究が示す「近接性の原則に基づく整った配置が好まれる」という知見は、デザインコードの「窓の配列を揃える」という規定に直接つながります。

    • 建設技術:地域の材料と工法(石、レンガ、木、左官)が再評価され、住民が設計と建設に参加する仕組みが広がります。例えば、パウンドベリーでは地域の石材とスレートをデザインコードで指定し(Hardy, 2006)、Rifkin(2014)は消費者が生産に参加する「プロシューマー」の広がりを論じています。

    • 施主・資金:自治体が市民参加を発注条件にし、公共投資の基準が成長から「社会的基盤を満たし環境の上限を超えない」ことへ移ります。例えば、アムステルダム市は2020年にドーナツ経済学を都市戦略に採用し、社会と環境の両方の指標で政策を評価しています(Doughnut Economics Action Lab, 2020; Fanning & Raworth, 2025)。

    • 思想・価値観:人間の幸福、多様性、時間の価値、ケアが都市の目的になり(Kern, 2021; Moreno et al., 2021)、市民の美的選好に関する実証研究(Vartanian et al., 2013; Mouratidis, 2026; Lavdas & Sussman, 2026)が政策の根拠になって、「専門家の美」より「市民の美」が優先されます。例えば、Mouratidis(2026)の調査では、受賞作を含む現代建築より伝統建築が約70〜80%の支持を得ており、この乖離が政策に取り込まれれば、意匠の評価軸が入れ替わります。

    • 法規制:美の基準の法制化(米国の大統領令14344号、英国の Living with Beauty、デザインコード)が広がり(Building Better, Building Beautiful Commission, 2020; Carmona et al., 2006; Executive Office of the President, 2025)、同時に Kern(2021)が批判した用途純化のゾーニングは緩和されて、用途の混合が規制の既定になります。例えば、英国の報告書 Living with Beauty は、すべての自治体にデザインコードの策定を勧告しました(Building Better, Building Beautiful Commission, 2020)。

    • 情報の伝達手段:SNS が市民の評価を可視化し、建築賞より市民の反応が意匠の評価に影響します(Wagiri et al., 2024; Zhang & Zhang, 2025)。例えば、Zhang & Zhang(2025)は、プラットフォームごとの機能の違いが建築の表象を変えることを示しており、市民の反応が設計者の評判と次の発注に影響する回路がすでに働いています。

ナンスレダン(英国コーンウォール、2010年代〜)
図:ナンスレダン(英国コーンウォール、2010年代〜)。パウンドベリーの手法を引き継いで開発されている新市街で、地域の伝統的な住宅型と色彩、街路に面した連続する立面をデザインコードで定めています。英国の Building Better, Building Beautiful 以降、デザインコードが住宅供給の標準になりつつある兆候です。(撮影:Mutney、CC0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの特徴

    • プロポーション:ヒューマンスケールと、地域の伝統的な建物の比例(階高、窓の縦横比)が規範になります(Carmona et al., 2006)。例えば、デザインコードは「窓は縦長、軒高は4階以下」といった比例を直接規定します(Carmona et al., 2006; Hardy, 2006)。

    • 立面とファサード:街路に面した連続した立面、揃った窓の配列、地域の様式の現代的な再現が標準になります。例えば、パウンドベリーの広場では、異なる建物が同じ軒線と素材で連続する立面を形成しています(Hardy, 2006)。

    • 装飾:装飾が復権し、コーニス、柱型、窓枠といった古典的な要素と地域の意匠が再び使われます。例えば、大統領令14344号は連邦建築で古典様式を既定とし、装飾を公的に正当化しました(Executive Office of the President, 2025)。

    • 素材と色:地域で採れる石、レンガ、木、土が優先され、色は地域の伝統的な色彩に合わせます。例えば、パウンドベリーとナンスレダンでは、地域の伝統的な材料と色彩がデザインコードで定められています(Hardy, 2006)。

    • 空間構成と平面:中庭、路地、広場といった歩行者のための空間が主題になり、ベビーカーと車椅子が通れる動線、保育と介護の空間、1階の店舗と上階の住宅という型が平面の基本になります(Kern, 2021)。例えば、スーペルブロックでは交差点が広場に変わり、建物の1階は広場に開くように計画されます(Mueller et al., 2020)。

    • 構造の表現:構造は見せるものではなく、伝統的な壁と屋根の形の中に収められます。例えば、デザインコードは外観の様式と素材を規定する一方で構造には触れないため、構造は伝統的な外観の内側に隠れます(Carmona et al., 2006)。

    • 敷地と周囲との関係:周囲の建物との連続性(軒高、素材、街路への面し方)が最優先され、突出した形態は避けられ、建築単体より街区の意匠が重視されます(Carmona et al., 2010)。例えば、15分都市では徒歩圏の街路に面した1階の意匠(店舗、入口、窓)が、建物の高さやタワーの輪郭より重要になります(Moreno et al., 2021)。

スーペルブロック(バルセロナ、サン・アントニ地区、2018年〜)
図:スーペルブロック(バルセロナ、サン・アントニ地区、2018年〜)。複数の街区をまとめて通過交通を排除し、交差点を広場に変えた歩行者優先の街区です。15分都市と同じく、建築単体より街路と広場の意匠が主題になる人間中心型シナリオの都市構想の実例です。(撮影:Cataleirxs、CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons)
  • 現在から変わる点と変わる理由:現在は建築賞と専門家の批評が意匠の評価軸で、用途の純化と車中心の街路が都市の前提ですが(Kern, 2021)、このシナリオでは市民の選好とデザインコードが評価軸になり、徒歩圏の混合用途とケアが前提になって、建築家の裁量はコードの枠内に限られます。変わる理由は、思想・価値観(幸福とケアと市民の美)と情報の伝達手段(SNS による可視化)が起点になり、用途・機能(徒歩圏の複合用途)と法規制(美の基準の法制化とゾーニングの緩和)が追随することです。例えば、Create Streets(2025)が提案する AI による建築評価は、市民の選好を数値化して審査に組み込む道具になります。

デジタル最適化型:データとアルゴリズムが空間を最適化するシナリオ

  • 代表例(先行例):MIT メディアラボの CityScope と変形する住戸(Ori;MIT Media Lab, n.d.; Ori, n.d.)、チューリッヒ工科大学の In situ Fabricator と DFAB HOUSE(2019年;Giftthaler et al., 2017; NCCR Digital Fabrication, n.d.)、Toyota Woven City(2025年に第1期完成;Toyota Woven City, n.d.)、TECLA(2021年、WASP とマリオ・クチネッラによる土の3Dプリント住宅;WASP, n.d.)、AMIE 1.0(2015年、オークリッジ国立研究所と SOM;Oak Ridge National Laboratory, 2015)、シンガポールの地下空間マスタープラン(2019年)と CORENET による図面審査の電子化(Urban Redevelopment Authority, n.d., 2025)。

TECLA(イタリア・マッサ・ロンバルダ、2021年、WASP とマリオ・クチネッラ・アーキテクツ)
図:TECLA(イタリア・マッサ・ロンバルダ、2021年、WASP とマリオ・クチネッラ・アーキテクツ)。現地の土を材料に、複数の3Dプリンターで同時に積層した住宅です。積層の痕跡がそのまま外観の装飾になっており、ロボット施工の痕跡が新しい装飾になるというデジタル最適化型シナリオの意匠を先取りしています。(撮影:Alfredo Milano(動画の1コマ)、CC BY 2.5、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの要因

    • 自然環境:センサーとシミュレーションで数値化され、最適化の変数の一つになります(Kolarevic, 2003)。例えば、CityScope では日照、風、交通への影響を模型の操作に応じて即時に計算し、環境条件が設計の入力として扱われます(MIT Media Lab, n.d.)。

    • 用途・機能:可変性が前提になり、間仕切りと設備を変えることで同じ躯体が複数の用途を切り替え、Glaeser(2012)が主張する高密度化と地下空間の活用(Urban Redevelopment Authority, n.d.)によって用途が立体的に積層されます。例えば、MIT の CityHome から生まれた Ori では、壁と家具が一体になったモジュールがモーターで動き、ワンルームが寝室、リビング、仕事部屋に変形します(Ori, n.d.)。

    • 設計技術:生成AIと自動最適化が案の生成を担い、建築家は生成された案を選び、責任を負う役割に移ります(Li et al., 2025; Wang et al., 2026)。例えば、RIBA(2025)の調査では、英国の設計事務所の AI 利用率が1年で41%から59%に上昇し、回答者の78%が設計段階(RIBA Plan of Work の第2〜4段階)で AI の影響が大きいと予想しています。

    • 建設技術:ロボットの現場施工と3Dプリントによって非標準形状のコストが下がり、設計データから直接施工する流れが広がります(Bayat & Hoang, 2026)。例えば、In situ Fabricator は現場の状況をスキャンして設計データとの誤差を自ら補正しながら鉄線を曲げ溶接し、型枠を使わずに曲面の壁を造ります(Giftthaler et al., 2017)。

    • 施主・資金:テクノロジー企業が街区単位の施主になり、企業が意匠を決める範囲が建物から街区へ広がります。例えば、Woven City はトヨタが(Toyota Woven City, n.d.)、Net City はテンセントが(NBBJ, n.d.)、Quayside は Alphabet が(Tomorrow.City, 2024)施主となり、企業が街区単位で意匠を決めました。

    • 思想・価値観:技術楽観と効率が優勢になり、最適化の結果が美の根拠になります(Schumacher, 2009)。例えば、Schumacher(2009)のパラメトリシズムは、パラメータの連続的な変化から生成される形を新しい様式として提示し、「最適化の結果の形」に美の根拠を置く思想の先行例です。

    • 法規制:機械可読化(Rules as Code)と自動審査が標準になり、「審査に通る形」が設計の前に計算できます(Amor & Dimyadi, 2021; Mohun & Roberts, 2020)。同時に、Glaeser(2012)が主張する高さ制限の緩和によって、密度が規制の目的になります。例えば、各国の BIM 図面審査とシンガポールの CORENET(Eastman et al., 2009; Urban Redevelopment Authority, 2025)は、法規が設計データの一部になる方向を示しています。

    • 情報の伝達手段:AI が学習した意匠を即時に伝播させ、学習データの平均に収敛した「AI様式」(Wang et al., 2026 が「雰囲気のある可視化」と呼ぶもの)が広まります。例えば、生成AIの設計利用に関する総説(Li et al., 2025; Wang et al., 2026)は、画像生成が意匠の検討の入口になりつつあることを示しています。

AMIE 1.0(米国オークリッジ国立研究所、2015年、設計:SOM)
図:AMIE 1.0(米国オークリッジ国立研究所、2015年、設計:SOM)。大型3Dプリンターで炭素繊維強化樹脂を積層した居住ユニットで、プリントの積層方向と曲面の形状がそのまま外観になっています。国立研究所と設計事務所が組んで3Dプリント建築を実証した、デジタル最適化型シナリオの早い段階の兆候です。(撮影:Oak Ridge National Laboratory/Carlos Jones、CC BY 2.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの特徴

    • プロポーション:比例は様式の規範ではなく、性能(採光、構造効率、コスト)の最適化の結果として決まり(Kolarevic, 2003; Schumacher, 2009)、高密度化によって高層と地下の比例が標準になります(Glaeser, 2012)。例えば、DFAB HOUSE では構造最適化で生成された天井スラブの形が、そのまま空間の比例になっています(NCCR Digital Fabrication, n.d.)。

    • 立面とファサード:2つの方向に分かれます。一つは自動審査に通りやすい形への収敛(Amor & Dimyadi, 2021)、もう一つは非標準形状の大衆化です(Carpo, 2017)。例えば、Carpo(2017)が論じたように、デジタル製造は非標準形状のコストを下げ、同じ住宅地に AI が生成した平均的な立面と3Dプリントの曲面の立面が並ぶ状況を可能にします。

    • 装飾:3Dプリントの積層痕、ロボット加工の痕跡、パラメトリックなパターンが新しい装飾になります(Carpo, 2017)。例えば、TECLA の外壁は積層の線そのものが模様になっています(WASP, n.d.)。

    • 素材と色:プリント可能な材料(土、低炭素コンクリート、樹脂、再生材)と、ロボットが加工する木材が主役になり、色は材料の色と印刷された色になります(Bayat & Hoang, 2026)。例えば、Woven City の建物は木造で、日本の伝統的な継手とロボットによる加工を組み合わせて建てられています(Toyota Woven City, n.d.)。

    • 空間構成と平面:平面は性能(採光、換気、動線)の最適化の結果として生成され、間仕切りの可変性と、人・低速モビリティ・自動運転車・物流を分ける動線の分離が前提になります。例えば、Woven City は3本の地上の道と地下の物流網を網の目状に織り込み、平面が交通の種類ごとに分かれています(Toyota Woven City, n.d.)。

    • 構造の表現:構造最適化で生成された有機的な形がそのまま露出し、「構造を隠す」か「見せる」かの選択は計算の結果になります(Kolarevic, 2003)。例えば、DFAB HOUSE の Mesh Mould の壁は、ロボットが編んだ金網がそのまま鉄筋と型枠を兼ね、構造の形が壁の形になっています(NCCR Digital Fabrication, n.d.)。

    • 敷地と周囲との関係:敷地はセンサーで計測され、周囲との関係(日影、風、騒音)は制約条件として自動的に計算され、地下空間も含めて立体的に使われます(Urban Redevelopment Authority, n.d.)。例えば、CityScope では街区の模型を動かすと交通、日照、エネルギーへの影響が即時に投影され、周囲との関係が数値で確認されます(MIT Media Lab, n.d.)。

CityScope(MIT メディアラボ City Science)
図:CityScope(MIT メディアラボ City Science)。ブロックと投影で街区を操作し、人口や交通への影響をリアルタイムに計算する都市シミュレーションの卓上模型です。市民や行政が数値を見ながら設計を調整する、デジタル最適化型シナリオの都市構想を具体化した道具です。(出典:MIT Media Lab City Science、media.mit.edu)
  • 現在から変わる点と変わる理由:現在は BIM と環境シミュレーションが「人間の設計を補助する道具」で、都市のデータは計画の参考資料にとどまりますが(Amor & Dimyadi, 2021; RIBA, 2025)、このシナリオでは案の生成と審査の両方を機械が担い、都市のデータがリアルタイムに設計を更新して、意匠の決定者は職人時代のように「施主と道具」に戻ります。変わる理由は、設計技術(生成AI)、建設技術(ロボット施工)、情報の伝達手段(AI による即時の伝播)が起点になり、法規制(自動審査)と施主・資金(テクノロジー企業)が追随することです。例えば、Carpo(2023)が論じたように、「設計者が図面を描き職人が複製する」という Alberti 以来の近代的な分業は、AI と自動施工によって終わる可能性があります。

フロンティア開拓型:既存のルールの外にゼロから建てるシナリオ

  • 代表例(先行例):The Line(サウジアラビア NEOM、2021年構想;NEOM, n.d.)、Telosa(Marc Lore、2021年構想;City of Telosa, 2020)、NASA の火星模擬居住施設 Mars Dune Alpha(2022年、ICON による3Dプリント;NASA, 2023)、ESA と Foster + Partners の月面基地構想(2013年;ESA, 2013; Foster + Partners, n.d.)、SpaceX の火星コロニー構想(SpaceX, n.d.)、Blue Origin の O'Neill Cylinders(Blue Origin, 2019)、Seasteading の浮体都市構想(The Seasteading Institute, n.d.)。

The Line の掘削跡(サウジアラビア NEOM、2022年10月、Sentinel-2 衛星画像のモザイク)
図:The Line の掘削跡(サウジアラビア NEOM、2022年10月、Sentinel-2 衛星画像のモザイク)。幅200m、長さ170kmの線状都市として構想された The Line の掘削が、衛星画像に一本の線として写っています。「都市が一つの建築」になるフロンティア開拓型シナリオの規模感を示す画像です。(出典:ESA(Copernicus Sentinel-2 データ)、CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの要因

    • 自然環境:放射線、気圧、砂嵐、水の欠如といった極限条件そのものが、意匠の最大の決定要因になります。例えば、ESA の月面基地構想では、放射線と微小隕石から居住者を守る遮蔽の厚さが、ドームの形と断面を決めています(ESA, 2013)。

    • 用途・機能:居住、生命維持、生産、実証実験が一体化し、建物と設備の区別がなくなります。例えば、SpaceX の火星構想では、水と二酸化炭素から燃料を生成する設備と居住区が一つのシステムとして計画されています(SpaceX, n.d.)。

    • 設計技術:生命維持と環境制御のシステム設計と一体化し、建築家の設計はシステムエンジニアリングの一部になります。例えば、NASA の3Dプリント居住区コンペでは、居住性と並んで、材料、施工の自律性、構造性能が審査基準とされました(NASA, 2019)。

    • 建設技術:自律建設、閉鎖環境制御、現地材料の3Dプリント(月のレゴリス、砂漠の砂)が主役になります(Bayat & Hoang, 2026)。例えば、ESA の月面基地構想では、ロボットが地球から持参した少量の結合剤とレゴリスを混ぜ、膨張式ドームの上に層状に吹き付けて外殻を造ります(ESA, 2013)。

    • 施主・資金:国家と起業家(サウジアラビアの The Line、Marc Lore の Telosa、SpaceX の火星構想、Blue Origin の軌道上居住区)が施主になり、国家予算と個人資産が意匠を決めます(Blue Origin, 2019; City of Telosa, 2020; NEOM, n.d.; SpaceX, n.d.)。例えば、The Line は幅200m、長さ170km、高さ500mの線状都市として構想され(NEOM, n.d.)、その規模は施主である国家ファンドの資金によって直接決まります。

    • 思想・価値観:技術楽観と「人類の居住域を広げる」使命感に加えて、Telosa のエクイティズムや Seasteading の競争的ガバナンスのように、新しい経済・政治システムを実験する思想が優勢になります(City of Telosa, 2020; The Seasteading Institute, n.d.)。例えば、Blue Origin は地球を保護区として残し、重工業を宇宙の居住区へ移すという構想を掲げています(Blue Origin, 2019)。

    • 法規制:既存の建築法規が前提とする敷地、隣地、避難の概念が通用しない環境で、特区法や新しい基準がゼロから作られます。例えば、NEOM は既存の都市計画の外で独自の規制を設ける特区として構想され(NEOM, n.d.)、Seasteading は公海上でホスト国の法律から独立した自治を前提にしています(The Seasteading Institute, n.d.)。

    • 情報の伝達手段:情報は企業と国家の内部に閉じ、意匠の公開と批評の回路が働きにくくなります。例えば、The Line の設計は公式サイトの完成予想図と映像の公開が中心で、設計の過程や根拠は外部からは見えません(NEOM, n.d.)。

Mars Dune Alpha(NASA ジョンソン宇宙センター、2022年、ICON による3Dプリント、設計:BIG)
図:Mars Dune Alpha(NASA ジョンソン宇宙センター、2022年、ICON による3Dプリント、設計:BIG)。NASA の火星模擬居住実験 CHAPEA のための約160m²の居住施設で、壁の積層痕が居室の内部にそのまま現れています。「外観を見る人がいない」極限環境では内部空間が意匠の主対象になる、というフロンティア開拓型シナリオの兆候です。(撮影:NASA/Bill Stafford、パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
  • 建築デザインの特徴

    • プロポーション:人間の身体ではなく、気密区画、与圧、遮蔽といったシステムの単位が比例を決めます。例えば、ESA の月面基地構想では、膨張式モジュールの直径と、3Dプリントで覆える外殻の厚さが居住空間の寸法を決めています(ESA, 2013; Foster + Partners, n.d.)。

    • 立面とファサード:「外観を見る人」がいない宇宙、砂漠、海上では外観の意味自体が変わり、外皮は環境制御装置(放射線、気圧、砂嵐、温度)として設計されます。例えば、The Line の鏡面の外壁は、建物を周囲の景観に溶け込ませる装置として説明されており、外観そのものより環境との関係が外皮の根拠になっています(NEOM, n.d.)。

    • 装飾:外部の装飾は消え、内部の居住性(色、光、植物)が装飾の役割を担います。例えば、O'Neill Cylinders の構想では、円筒の内部にフィレンツェのような歴史都市を再現することが語られ、装飾は内部の演出になります(Blue Origin, 2019)。

    • 素材と色:現地で調達できる材料(レゴリス、砂、再生水)に限られ、地球から運ぶ材料は最小化されます。例えば、ESA と Foster + Partners の月面基地構想では、レゴリスを3Dプリントしたドームで膨張式モジュールを覆います(ESA, 2013; Foster + Partners, n.d.)。

    • 空間構成と平面:閉鎖系であり、換気、水、食料生産が平面を決め、「都市が一つの建築」になります。例えば、The Line では街路、住戸、交通が一つの線状の建物の中に積層されます(NEOM, n.d.)。

    • 構造の表現:構造は遮蔽と気密の層の内側に隠れ、見せるものではなく守るものになります。例えば、ESA の月面基地構想では3Dプリントした外殻の内側に、膨張式の居住モジュールが収まります(ESA, 2013)。

    • 敷地と周囲との関係:隣地も街路もない環境では、敷地との関係は「環境からの隔離」と「資源(水、エネルギー、材料)の確保」に置き換わり、Seasteading のように建物ごと移動できる敷地も現れます(The Seasteading Institute, n.d.)。例えば、NASA の3Dプリント居住区コンペ(2015〜2019年)では、外観より放射線遮蔽と施工の自律性が評価されました(NASA, 2019)。

月面基地の構想図(ESA/Foster + Partners、2013年)
図:月面基地の構想図(ESA/Foster + Partners、2013年)。膨張式のモジュールを、月のレゴリスを3Dプリントしたドームでロボットが覆い、放射線と微小隕石から居住者を守ります。「外皮は遮蔽、内部は居住」という分離がそのまま意匠になる、フロンティア開拓型シナリオの都市構想です。(出典:ESA、Credit: ESA/Foster + Partners、ESA Standard Licence)
  • 現在から変わる点と変わる理由:現在の建築は「敷地があり、隣地があり、外観を見る人がいて、既存の法規の中で建てる」ことを前提としていますが、このシナリオではその前提が消え、内部空間が意匠の主対象になり、法規は建物と同時にゼロから設計されます。変わる理由は、自然環境(極限条件)、施主・資金(国家と起業家)、法規制(既存法規の外)の3つの要因が同時に動き、建設技術(自律建設と現地材料)が追随することです。例えば、Mars Dune Alpha では、外観より居室の壁の積層痕と内装の光が、1年間の模擬火星生活を送る居住者の経験を決める意匠になっています(NASA, 2023)。

各シナリオの相違点

共通点

  • 意匠の決定者が協働になる:建築家単独の判断から、施主、市民、エンジニア、AIが並列で案を出し合う協働へ移ります。例えば、4つのシナリオのいずれでも、設計の初期段階で「法規チェック」「環境性能」「市民の評価」を同時に計算することが前提になります。

  • 伝播が速くなり、様式が並立する:情報の伝達速度が上がり続けるため、様式の寿命はさらに短くなり、同時に並立する様式の数が増えます。例えば、SNSと生成AIによって新しい意匠が数か月で世界に広がる一方、どれも「標準」にはならず、複数の意匠が同時に存在する状態が続きます。

  • 法規が意匠の前提を定める:法規の対象が「安全」から「環境」と「美」へ広がり、意匠の自由領域が法規によって定義される度合いが強まります。例えば、炭素上限、デザインコード、自動審査、特区の新基準は、いずれも「どの形が許されるか」を設計の前に決める仕組みです。

  • 用途は転用と可変性として働く:用途・機能の要因は、どのシナリオでも「新しい建物の型」よりも「既存の建物の転用」と「用途の可変性」という形で意匠に影響します。例えば、オフィスから住宅への転用や、時間帯によって用途を切り替える空間は、4つのシナリオに共通する課題です。

異なる点

  • 何を最適化するか:環境共生型は生態系と炭素、人間中心型は市民の幸福と選好、デジタル最適化型は性能と審査可能性、フロンティア開拓型は生存と新しいルールの実証を最適化します。意匠はその最適化の結果として生成され、「様式」はその副産物になります。例えば、同じ木造高層でも、環境共生型では炭素貯蔵量、人間中心型では木の見た目の温かさ、デジタル最適化型ではロボット加工の効率、フロンティア開拓型では現地で調達できることが、木を選ぶ理由になります。

  • 起点となる要因:環境共生型は自然環境と思想・価値観と法規制、人間中心型は思想・価値観と情報の伝達手段、デジタル最適化型は設計技術と建設技術と情報の伝達手段、フロンティア開拓型は自然環境と施主・資金と法規制が起点です。例えば、環境共生型は気候危機(自然環境)が法規(炭素上限)を動かすのに対し、デジタル最適化型は技術が先に選択肢を広げ、法規が後から追いつきます。

  • 施主の違い:環境共生型は自治体と環境認証を融資条件とする金融機関、人間中心型は市民とコミュニティ、デジタル最適化型はテクノロジー企業とデベロッパー、フロンティア開拓型は国家と起業家が主な施主です。例えば、海綿都市は国家の方針として自治体が発注し、Woven City は自動車会社が、The Line は国家ファンドが発注しています。

  • 意匠の主題の違い:環境共生型は外皮が「壁」から「生態系の支持体」になり、人間中心型は建築単体より街区と街路の意匠が主題になり、デジタル最適化型は非標準形状と積層痕が新しい装飾になり、フロンティア開拓型は「外皮は遮蔽、内部は居住」という分離と「都市が一つの建築」になる規模が主題になります。例えば、The Green Dip では屋上とファサードの緑化が、スーペルブロックでは交差点を広場に変える街路の設計が、TECLA では3Dプリントの積層痕が、Mars Dune Alpha では内部空間だけが、それぞれ意匠の中心です。

  • 法規と審査の方向の違い:環境共生型は炭素上限と LCA の審査、人間中心型はデザインコードと市民の選好の審査、デジタル最適化型は機械可読な法規と自動審査、フロンティア開拓型は既存法規の外に新設される特区の基準に向かいます。例えば、同じ「審査」でも、炭素計算書を審査するのか、街並みとの調和を審査するのか、機械が判定できる形かを審査するのか、避難の概念そのものを新しく定義するのかが異なります。

おわりに

未来の建築はどうなるのか、地球環境との共生、人間らしい生活、AIなどの技術と人との関わり、宇宙や非居住地への生活圏の拡大がテーマとなっており、建築デザインに携わる方々もこのような視点で課題と向き合っていくことが重要だと考えられます。

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  • The Hyatt Foundation. (2021). Anne Lacaton and Jean-Philippe Vassal receive the 2021 Pritzker Architecture Prize. The Pritzker Architecture Prize. https://www.pritzkerprize.com/laureates/anne-lacaton-and-jean-philippe-vassal 概要:2021年プリツカー賞の発表。ボルドーのグラン・パルク団地改修(2017年)など、既存建物を壊さずに冬の庭を付加して再生する手法を受賞理由として説明している。

  • IEA EBC. (2025). Mandatory whole life embodied carbon: Report of the Working Group on Building Embodied Carbon. International Energy Agency, Energy in Buildings and Communities Programme. 概要:各国の建物のライフサイクル炭素排出の義務化の動向を整理し、申告義務から上限値規制への移行の経路を示した。

  • International Code Council. (2021). 2021 International Building Code (IBC). International Code Council. 概要:米国の模範建築基準。2021年版で大断面木造(マスティンバー)の新しい構造種別(Type IV-A/B/C)を導入し、最大18階までの木造建築と、防火性能に応じた木材の露出範囲を規定した。

  • Jencks, C. (1977). The language of post-modern architecture. Rizzoli. 概要:モダニズムの「死」を1972年のプルイット・アイゴー団地の爆破に定め、歴史的な引用と多義性を持つポストモダン建築を定義した。

  • Kaika, M. (2010). Architecture and crisis: Re-inventing the icon, re-imag(in)ing London and re-branding the City. Transactions of the Institute of British Geographers, 35(4), 453–474. 概要:金融危機の前後にロンドンの金融街で建築アイコンが「再発明」され、都市のブランド化に使われた経緯を分析した。

  • Kelly, R. L. (2013). The lifeways of hunter-gatherers: The foraging spectrum (2nd ed.). Cambridge University Press. 概要:世界の民族誌から狩猟採集民の集団規模、移動、食料獲得、社会組織を比較し、「25人程度のバンド」といった一般化された像と、その実際の多様性の両方を示した教科書。

  • Kenoyer, J. M. (1998). Ancient cities of the Indus Valley civilization. Oxford University Press. 概要:インダス文明の都市について、焼成レンガの規格(4:2:1)、格子状の街路、排水設備、城塞と下町の構成を考古学的証拠から整理した標準的概説。

  • Kern, L. (2021). Feminist city: Claiming space in a man-made world. Verso. 概要:近代都市が男性の通勤者を標準として設計されてきたことを批判し、ケア労働の移動、安全、用途の混合、意思決定への参画を軸にした都市のあり方を提唱した書籍。

  • King, R. (2000). Brunelleschi's dome: The story of the great cathedral in Florence. Bloomsbury. 概要:フィレンツェ大聖堂のドームの建設史。足場を使わない内外二重の殻、レンガのヘリンボーン積み、揚重機の発明といった施工法の工夫を記述している。

  • Knowles, C. C., & Pitt, P. H. (1972). The history of building regulation in London, 1189–1972. Architectural Press. 概要:1189年の建築裁定から1972年までのロンドンの建築規制史。1212年の茅葵禁止、大火後の再建法、1844年・1855年メトロポリタン建築法と地区測量士制度を含む。

  • Kolarevic, B. (Ed.). (2003). Architecture in the digital age: Design and manufacturing. Spon Press. 概要:設計データを直接製造機械に渡す「ファイルからファクトリーへ」の流れが、非標準形状のコストを下げ、意匠の選択肢を広げることを論じた論集。

  • Kostof, S. (Ed.). (1977). The architect: Chapters in the history of the profession. Oxford University Press. 概要:古代エジプトから現代までの建築家の職能史を編み、施主と建築家の関係、意匠の決定権の所在が時代ごとにどう変わったかを示した。

  • Kostof, S. (1985). A history of architecture: Settings and rituals. Oxford University Press. 概要:建築を「設定と儀礼」の関係から読み、建物の形をその建物で行われる社会的行為の器として記述した建築通史。

  • Kubler, G. (1984). The art and architecture of ancient America: The Mexican, Maya, and Andean peoples (3rd ed.). Yale University Press. 概要:メソアメリカとアンデスの建築・美術の標準的通史。テオティワカン、ティカル、インカの石積みについて、金属器と車輪を持たない社会の技術と形態を整理している。

  • Larson, M. S. (1993). Behind the postmodern facade: Architectural change in late twentieth-century America. University of California Press. 概要:20世紀後半の米国建築の変化を、職能、施主、建築賞とメディアの相互作用から社会学的に分析した。

  • Laugier, M.-A. (1753). Essai sur l'architecture. Duchesne. 概要:建築の起源を4本の柱と梁と屋根からなる「原始の小屋」に求め、構造的に必要な要素だけで建築を構成すべきだとする理性的な古典主義を説き、新古典主義の思想的な根拠になった。

  • Lavdas, A. A., & Sussman, A. (2026). Quantifying emotional responses to traditional and modern architecture: The case of US federal buildings. Applied Sciences, 16(9), 4406. 概要:米国の連邦建築の伝統様式と現代様式の写真を見た参加者の表情を解析し、伝統様式のほうが「喜び」と「関与」の反応が高かったと報告した。

  • Lawrence, A. W. (1996). Greek architecture (5th ed., R. A. Tomlinson, Rev.). Yale University Press. 概要:ギリシャ建築の標準的通史。オーダーの比例、ペンテリコン大理石、まぐさ式構造の限界、パルテノンの建築家と施工組織、ポリスによる発注を扱う。

  • Le Corbusier. (1923). Vers une architecture. Crès. 概要:「住宅は住むための機械」と宣言し、機械と大量生産を美の根拠とする近代建築の思想を示した。

  • Lehner, M. (1997). The complete pyramids. Thames & Hudson. 概要:エジプトのピラミッドを網羅した概説書。方位の精度、建設に動員された労働力と集落の組織、王権と来世観との関係を考古学的証拠から説明している。

  • Ley, A. J. (2000). Building control UK: An historical review. CIB Proceedings. 概要:ロンドン大火後の1667年再建法(4類型による階数と壁厚の指定、測量士の任命)から現代までの英国の建築規制行政史を整理した論考。

  • Li, C., Zhang, T., Du, X., Zhang, Y., & Xie, H. (2025). Generative AI models for different steps in architectural design: A literature review. Frontiers of Architectural Research, 14(3), 759–783. 概要:生成AI(GAN、VAE、拡散モデル、基盤モデル)の設計利用を設計工程6段階ごとに整理し、建築家の技術情報へのアクセス不足が導入を遅らせていると指摘した。

  • 李誡. (1103). 営造法式. 北宋. 概要:北宋の国家が定めた建築の設計・施工の標準書で、木材の断面を「材」という基準単位で8等級に分けるモデュール設計を規定した。

  • Loos, A. (1908). Ornament und Verbrechen [Ornament and crime]. (Lecture, Vienna, 1910; published 1913) 概要:装飾を「文化の退化」と断じ、装飾の排除を経済と文化の進歩と結びつけた、モダニズムの思想的な出発点。

  • Loyer, F. (1988). Paris nineteenth century: Architecture and urbanism. Abbeville Press. 概要:19世紀パリの建築と都市を、街路幅に応じた高さ、軒線、ファサードの石材と開口の規定、不動産投資の仕組みとの関係から分析し、「パリらしい」街並みの成り立ちを示した研究。

  • Lynch, K. (1960). The image of the city. MIT Press. 概要:都市の視覚的なイメージをパス、エッジ、ディストリクト、ノード、ランドマークの5要素で説明し、建物と周囲の関係を読む枠組みを示した。

  • Lynn, G. (1999). Animate form. Princeton Architectural Press. 概要:アニメーションソフトで生成した曲面の建築を提案し、デジタル技術による非標準形状の設計を理論化した。

  • MacDonald, W. L. (1976). The Pantheon: Design, meaning, and progeny. Harvard University Press. 概要:パンテオンのドーム(直径43.3m、上部ほど軽い骨材)の構法と、直径と高さが等しい球を収める内部空間の意味、後世への影響を論じたモノグラフ。

  • Mainstone, R. J. (1988). Hagia Sophia: Architecture, structure and liturgy of Justinian's great church. Thames & Hudson. 概要:ハギア・ソフィアの構造と空間を分析したモノグラフ。ペンデンティブによって正方形の平面に円形ドームを載せる構法と、その後の修復の経緯を詳述している。

  • Meacham, B., Bowen, R., Traw, J., & Moore, A. (2005). Performance-based building regulation: Current situation and future needs. Building Research & Information, 33(2), 91–106. 概要:仕様規定から性能規定への各国の転換の到達点と課題(検証手法、教育、データ不足)を整理したレビュー。

  • Meeks, C. L. V. (1956). The railroad station: An architectural history. Yale University Press. 概要:鉄道駅の建築史。鉄とガラスの大屋根のホールと様式的な駅舎という二部構成が19世紀に確立した過程と、駅が「19世紀の大聖堂」と呼ばれた背景を記述している。

  • Michell, G. (1988). The Hindu temple: An introduction to its meaning and forms. University of Chicago Press. 概要:ヒンドゥー寺院の意味と形態を解説した標準的入門書。須弥山を表すシカラ、持ち送りによる塔の構法、内陣に向かって暗くなる平面、全面を覆う神像の彫刻を扱う。

  • MIT Media Lab. (n.d.). CityScope Volpe. Retrieved from https://www.media.mit.edu/projects/cityscope-volpe/overview/ 概要:レゴブロックの都市模型と投影を組み合わせ、人口、交通、エネルギーへの影響をリアルタイムに計算する都市シミュレーション・プラットフォーム CityScope のプロジェクトページ。

  • Mohun, J., & Roberts, A. (2020). Cracking the code: Rulemaking for humans and machines (OECD Working Papers on Public Governance No. 42). OECD Publishing. https://doi.org/10.1787/3afe6ba5-en 概要:法規を人間と機械の両方が読める形で作成する「機械可読な規制(Rules as Code)」の国際的な動向をまとめた OECD の報告書。建築基準の自動審査を含む事例と課題を整理している。

  • Moreno, C., Allam, Z., Chabaud, D., Gall, C., & Pratlong, F. (2021). Introducing the "15-Minute City": Sustainability, resilience and place identity in future post-pandemic cities. Smart Cities, 4(1), 93–111. https://doi.org/10.3390/smartcities4010006 概要:15分都市の概念を提唱した論文。居住、仕事、商業、医療、教育、娯楽の6つの機能に徒歩か自転車で15分以内に到達できる都市を提案し、近接性、密度、多様性、デジタル化を要素として整理した。

  • Mouratidis, K. (2026). Aesthetic preferences for traditional versus contemporary architecture: Cross-national evidence from real-world buildings. Cities, 179, 107410. 概要:ノルウェーとギリシャの約3,000人に同じオスロの実在建築8棟の写真を示し、受賞作を含む現代建築より伝統建築が約70〜80%の支持を得たことを報告した。

  • Mueller, N., Rojas-Rueda, D., Khreis, H., Cirach, M., Andrés, D., Ballester, J., Bartoll, X., Daher, C., Deluca, A., Echave, C., Milà, C., Márquez, S., Palou, J., Pérez, K., Tonne, C., Stevenson, M., Rueda, S., & Nieuwenhuijsen, M. (2020). Changing the urban design of cities for health: The superblock model. Environment International, 134, 105132. https://doi.org/10.1016/j.envint.2019.105132 概要:バルセロナのスーペルブロック(街区の内側から通過交通を排除し、交差点を広場に変える街路設計)を市全体に展開した場合の健康影響を推計した研究。大気汚染、騒音、暑熱の低減と緑地の増加による死亡の回避数を示した。

  • Mumford, L. (1961). The city in history: Its origins, its transformations, and its prospects. Harcourt, Brace & World. 概要:都市の起源から現代までの歴史を、村、神殿、城壁、市場、植民都市といった要素の結びつきとして描いた都市史の古典。国家による労働力の集中とローマの植民都市の遺産を論じている。

  • Muthesius, S. (1982). The English terraced house. Yale University Press. 概要:英国のテラスハウスの建築史。地元産レンガの使用、条例による規格化、街路の格に応じた類型が均質な街並みを生んだ過程を記述している。

  • MVRDV. (n.d.). Valley. https://www.mvrdv.com/projects/243/valley 概要:アムステルダム南軸に2022年に完成した複合建築 Valley の設計事務所による解説。各階の段状のテラスに植栽を施し、自然の谷のような外観を持つ設計を説明している。

  • Nadel, D., Weiss, E., Simchoni, O., Tsatskin, A., Bar-Yosef Mayer, D., & Kislev, M. E. (2004). Stone Age hut in Israel yields world's oldest evidence of bedding. Proceedings of the National Academy of Sciences, 101(17), 6821–6826. 概要:オハロIIの小屋の床から、炉の周囲に草を敷いた寝床の跡を報告し、住居の内部が炉を中心に機能ごとに使い分けられていたことを示した研究。

  • Nadel, D., & Werker, E. (1999). The oldest ever brush hut plant remains from Ohalo II, Jordan Valley, Israel (19,000 BP). Antiquity, 73(282), 755–764. 概要:イスラエル・ガリラヤ湖畔のオハロII遺跡で見つかった約1万9千年前(放射性炭素年代。較正年代では約2万3千年前)の小屋の跡から、草や枝でつくった壁や床の植物遺存体を報告し、狩猟採集民の住居の具体的な材料と構造を示した研究。

  • NASA. (2019). 3D-Printed Habitat Challenge. National Aeronautics and Space Administration. https://www.nasa.gov/directorates/stmd/centennial-challenges/3d-printed-habitat-challenge/ 概要:NASA が2015年から2019年に実施した、火星などで現地材料を用いて居住施設を3Dプリントする技術を競うコンテストの公式解説。最終段階では AI SpaceFactory の MARSHA などが実寸の試作を行った。

  • NASA. (2023). CHAPEA: Crew Health and Performance Exploration Analog. National Aeronautics and Space Administration. https://www.nasa.gov/mission/chapea/ 概要:火星での長期滞在を模擬するため、3Dプリントした居住施設 Mars Dune Alpha(ICON 社と BIG が設計)で4人の乗員が1年間生活する NASA の地上実験の公式解説。

  • NBBJ. (n.d.). Tencent Shenzhen headquarters project (Net City). Retrieved from https://www.nbbj.com/work/tencent-shenzhen-headquarters-project-net-city 概要:テンセントの新本社都市 Net City の設計事務所によるプロジェクトページ。自動車を排除した人間中心の街路、職住近接の複合用途、海綿都市の理念を示す。

  • NCCR Digital Fabrication. (n.d.). In situ Fabricator. Retrieved from https://dfabhouse.ch/in_situ_fabric 概要:チューリッヒ工科大学の現場施工ロボット In situ Fabricator のプロジェクトページ。自己位置推定と誤差の自動補正によって、現場で曲面の金網(Mesh Mould)を造る技術を示す。

  • NEOM. (n.d.). THE LINE: A revolution in urban living. Retrieved from https://www.neom.com/en-us/regions/theline 概要:幅200m、長さ170km、高さ500mの線状都市 The Line の公式ページ。自動車と道路を持たず、徒歩5分で生活機能に到達するという構想を示す。

  • Newman, O. (1972). Defensible space: Crime prevention through urban design. Macmillan. 概要:住民の目が届かない共用空間が犯罪を招くと論じ、プルイット・アイゴー団地などの高層住宅団地の平面を批判した環境設計の古典。

  • Niskanen Center. (2025). Understanding single stair reform efforts across the United States. Niskanen Center. 概要:米国各州で進む集合住宅の単一階段(シングルステア)改革の動向を整理し、二方向避難の規定が平面と住戸の形を決めてきた構図を示した。

  • Norberg-Schulz, C. (1980). Genius loci: Towards a phenomenology of architecture. Rizzoli. 概要:場所の精神(ゲニウス・ロキ)という概念で、建築が敷地と風土の性格に応答すべきことを現象学の立場から論じた。

  • Nordic Council of Ministers. (2024). Harmonised carbon limit values for buildings in the Nordic countries. Nordic Sustainable Construction. 概要:北欧各国の建物の炭素排出上限値規制(デンマークの2023年導入、スウェーデンの2025年提案値など)を比較し、共通化の方向を示した報告書。

  • O'Kelly, M. J. (1982). Newgrange: Archaeology, art and legend. Thames & Hudson. 概要:ニューグレンジの発掘報告。冬至の朝日が屋根箱から羨道を通って奥室に届く配置を実測で確認し、羨道墳が死者の家であると同時に季節の装置であったことを示した。

  • Oak Ridge National Laboratory. (2015). AMIE demonstration project. U.S. Department of Energy. https://www.ornl.gov/amie 概要:米国オークリッジ国立研究所が2015年に公開した、3Dプリントした住宅と車両が電力を融通し合う実証プロジェクト AMIE(Additive Manufacturing Integrated Energy)の解説。

  • Olgyay, V. (1963). Design with climate: Bioclimatic approach to architectural regionalism. Princeton University Press. 概要:気候区分ごとに日射、風、温湿度に応じた建物の向き、形、外皮の設計法を体系化し、気候を意匠の出発点に置く「バイオクライマティック・デザイン」を提唱した。

  • Ori. (n.d.). Ori expandable apartments. https://www.oriliving.com/ 概要:MIT メディアラボから生まれたロボット家具の企業 Ori の公式サイト。ベッドやクローゼットが移動して一室を寝室、居間、仕事場に切り替える可動式の住戸システムを紹介している。

  • Panofsky, E. (Ed. & Trans.). (1946). Abbot Suger on the Abbey Church of St.-Denis and its art treasures. Princeton University Press. 概要:サン・ドニ修道院長シュジェールの著作の校訂・英訳と解説。光によって精神を物質から引き上げるという新プラトン主義的な光の神学が、内陣の改築と大開口を正当化した経緯を示す。

  • Parker Pearson, M. (2012). Stonehenge: Exploring the greatest Stone Age mystery. Simon & Schuster. 概要:ストーンヘンジ・リバーサイド・プロジェクトの成果をまとめた書籍。巨石の運搬と立て方、夏至と冬至の軸線、周辺の集落と祖先祭祀との関係を論じている。

  • Pevsner, N. (1936). Pioneers of the modern movement: From William Morris to Walter Gropius. Faber & Faber. 概要:アーツ・アンド・クラフツからバウハウスへ至る系譜を描き、近代建築を歴史の必然として位置づけた。

  • Pevsner, N. (1976). A history of building types. Princeton University Press. 概要:博物館、図書館、劇場、駅、工場、百貨店など20の建築類型について、用途の出現がどのように新しい建物の型と意匠を生んだかを通史として整理した。

  • Pidoplichko, I. G. (1998). Upper Palaeolithic dwellings of mammoth bones in the Ukraine: Kiev-Kirillovskii, Gontsy, Dobranichevka, Mezin and Mezhirich (P. Allsworth-Jones, Trans.; BAR International Series 712). Archaeopress. 概要:ウクライナのマンモスの骨でつくられた旧石器時代の住居の発掘報告の英訳。メジリチの住居について、数十頭分の骨と牙の組み方、下顎骨をヘリンボーン状に積んだ壁、直径4〜7mの円形の平面を記録している。

  • Ponzini, D., & Nastasi, M. (2016). Starchitecture: Scenes, actors, and spectacles in contemporary cities (2nd ed.). Monacelli Press. 概要:スターキテクトによる建築が都市の政治と投資の装置になる過程を、事例と写真で示した。

  • Rapoport, A. (1969). House form and culture. Prentice-Hall. 概要:住居の形は気候や材料だけでは説明できず、社会文化的要因が一次的に決め、気候・材料・構法・技術は修正要因として働くと論じた。

  • Rasmussen, S. E. (1959). Experiencing architecture. MIT Press. 概要:量塊と空洞、スケールと比例、リズム、テクスチャ、昼光、色彩など、建築を体験する際の要素を平易に整理した建築論の古典。

  • RIBA. (2025). Artificial intelligence: The unreliable outlier driving the future of architecture (Future Business of Architecture white paper). Royal Institute of British Architects. 概要:英国の設計事務所のAI利用率が2024年の41%から2025年の59%に上昇したことを報告し、AIが建築家の役割を縮小・維持・拡大する3つのシナリオを示した。

  • Rifkin, J. (2014). The zero marginal cost society: The internet of things, the collaborative commons, and the eclipse of capitalism. Palgrave Macmillan. 概要:IoT と再生可能エネルギーの普及によって財とサービスの限界費用がゼロに近づき、所有から共有へ、市場から協同型コモンズへ経済が移行すると論じた著作。

  • Robinson, O. F. (1992). Ancient Rome: City planning and administration. Routledge. 概要:十二表法の建物間隔、帝政期の高さ制限、ネロ帝の大火後の再建規制など、古代ローマの建築・都市規制を整理した研究。

  • SCAPE. (2016, August 1). Oyster-tecture. Retrieved from https://www.scapestudio.com/projects/oyster-tecture/ 概要:ケイト・オルフによる、カキ礁をニューヨーク港の生きたインフラとして再生し、水質浄化と高潮の緩和を図る構想 Oyster-tecture のプロジェクトページ。

  • Schmidt, K. (2000). Göbekli Tepe, southeastern Turkey: A preliminary report on the 1995–1999 excavations. Paléorient, 26(1), 45–54. 概要:ギョベクリ・テペの発掘報告。農耕開始前の狩猟採集民が、動物の浮き彫りを施したT字形の石柱を円形に配置した記念的建造物を集団で建てたことを示した。

  • Schumacher, P. (2009). Parametricism: A new global style for architecture and urban design. Architectural Design, 79(4), 14–23. 概要:パラメトリックな設計手法を、モダニズムに続く新しいグローバル様式「パラメトリシズム」として宣言した。

  • The Seasteading Institute. (n.d.). Home. Retrieved from https://www.seasteading.org/ 概要:公海上に自治権を持つモジュール式の浮体都市を建設し、新しい統治システムを実験することを目指すシーステディング研究所の公式サイト。

  • Semper, G. (1851). Die vier Elemente der Baukunst. Vieweg. 概要:建築を炉・基壇・屋根・囲いの4要素に分け、各要素が材料と技術に対応するという、材料と技法から様式を導く理論を示した。

  • Sklair, L. (2017). The icon project: Architecture, cities, and capitalist globalization. Oxford University Press. 概要:グローバル資本がアイコン建築を通じて都市を広告化する過程を「アイコン・プロジェクト」として分析した。

  • Social- og Boligstyrelsen. (2025). Bygningsreglementet BR18: Klimakrav til nybyggeri. Danish Social and Housing Agency. 概要:デンマークの建築規則の気候要件で、2025年7月から150m²超のほぼすべての新築に7.1 kgCO₂e/m²/年の上限を適用し、2027年と2029年に段階的に強化することを定めた。

  • SpaceX. (n.d.). Mars & beyond: The road to making humanity multiplanetary. Retrieved from https://www.spacex.com/humanspaceflight/mars 概要:SpaceX の火星居住構想の公式ページ。Starship による大量輸送、現地資源からの燃料生成、自給自足の火星都市という計画を示す。

  • Steinhardt, N. S. (2019). Chinese architecture: A history. Princeton University Press. 概要:中国建築の標準的通史。版築基壇と木造架構の起源、「門—庭—殿」の軸線、『営造法式』の「材」のモデュール、位階に応じた規模と装飾の規定、朝鮮半島と日本への伝播を扱う。

  • Sullivan, L. H. (1896). The tall office building artistically considered. Lippincott's Magazine, 57, 403–409. 概要:「形態は機能に従う」と宣言し、高層オフィスビルの立面を基壇・中間部・頂部の3層で構成する原則を示した。

  • Sutcliffe, A. (1981). Towards the planned city: Germany, Britain, the United States and France, 1780–1914. Blackwell. 概要:4か国における都市計画の誕生を比較した都市史の標準的研究。パリの街路幅に応じた高さ規制とオスマンの改造、英国の公衆衛生法、ドイツの建築線法を扱う。

  • Talen, E. (2012). City rules: How regulations affect urban form. Island Press. 概要:ゾーニング、道路幅、駐車場要件、セットバックなどのルールの積み重ねが米国の都市の形を決めてきたことを示した。

  • Tarazona-Vento, A., & Atkinson, R. (2024). Commanding heights: The role of wealthy 'starchitects' in city remaking. City, 28(3–4), 419–436. 概要:スターキテクト自身が超富裕層に加わりつつあり、都市行政と富裕な施主が資本を呼び込むための象徴的プロジェクトを彼らに委ねる構図を分析した。

  • Tomorrow.City. (2024, January 19). Sidewalk Toronto, the vision behind Google's failed city. Retrieved from https://www.tomorrow.city/sidewalk-toronto-the-vision-behind-googles-failed-city/ 概要:Sidewalk Labs のトロント Quayside 構想(センサーによる都市データの収集、木造高層、可変の街路)と、データの所有権をめぐる市民の反発による撤退の経緯をまとめた記事。

  • Toyota Woven City. (n.d.). People of Woven City. Retrieved from https://www.woven-city.global/jpn/ 概要:トヨタの実証都市 Woven City の公式サイト。3種類の道を織り込んだ街路構成、地下の物流網、木造建築と水素エネルギーの実証を示す。

  • Turenscape. (n.d.). Harbin Qunli Stormwater Park. Retrieved from https://www.turenscape.com/en/project/detail/435.html 概要:俞孔堅の設計事務所による海綿都市の初期の代表作。都市の中の湿地を雨水の貯留と浄化の装置として再生したプロジェクトページ。

  • U.S. Green Building Council. (n.d.). LEED rating system. https://www.usgbc.org/leed 概要:米国グリーンビルディング協会による環境性能認証制度 LEED の公式解説。立地、水、エネルギー、材料などのカテゴリーで加点し、取得点数に応じて認証レベルを付与する仕組みを説明している。

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  • Urban Redevelopment Authority. (n.d.). Underground space. Retrieved from https://www.ura.gov.sg/Corporate/Get-Involved/Plan-Our-Future-SG/Innovative-Urban-Solutions/Underground-space 概要:シンガポール都市再開発庁の地下空間マスタープランのページ。地下を3Dでマッピングし、交通、設備、備蓄などの機能を地層ごとに計画する方針を示す。

  • Vale, L. J. (1992). Architecture, power, and national identity. Yale University Press. 概要:議事堂などの国家建築を事例に、政治権力が施主として建築の意匠を国家の正統性の表現に用いる過程を分析した。

  • Vartanian, O., Navarrete, G., Chatterjee, A., Fich, L. B., Leder, H., Modroño, C., Nadal, M., Rostrup, N., & Skov, M. (2013). Impact of contour on aesthetic judgments and approach-avoidance decisions in architecture. Proceedings of the National Academy of Sciences, 110(Suppl. 2), 10446–10453. 概要:曲線的な室内空間が直線的な空間より「美しい」と判定されやすいことを、脳機能画像とあわせて示した神経美学の研究。

  • Venturi, R. (1966). Complexity and contradiction in architecture. Museum of Modern Art. 概要:モダニズムの単純さに対して「複雑さと矛盾」の価値を主張し、「少ないことは退屈だ」としてポストモダンの思想的な出発点になった。

  • Venturi, R., Scott Brown, D., & Izenour, S. (1972). Learning from Las Vegas. MIT Press. 概要:建築を「アヒル」(形そのものが意味を表す)と「装飾された小屋」(単純な箱に記号を付ける)に分け、装飾と記号の役割を再評価した。

  • Vitruvius. (1960). The ten books on architecture (M. H. Morgan, Trans.). Dover. (Original work written c. 30–15 BC) 概要:現存する唯一の古代建築理論書で、強・用・美の3原則、オーダーの比例、都市計画、機械までを網羅し、ルネサンス以降の建築理論の規範になった。

  • Wagiri, F., Wijaya, D. C., & Sitindjak, R. H. I. (2024). Embodied spaces in digital times: Exploring the role of Instagram in shaping temporal dimensions and perceptions of architecture. Architecture, 4(4), 948–973. 概要:香港の大館とグラーツのクンストハウスを事例に、Instagram が建築の時間的・多感覚的な経験を一瞬の画像に圧縮する一方、繰り返し解釈し直す機会も生むことを論じた。

  • Wang, Y., Li, T., Zhao, Y., Zhang, B., & Huang, X. (2026). Generative AI in architectural conceptual design: A structured scoping review of LLMs, text-to-image diffusion models, spatial layout generation, BIM-AI coupling, and human-AI workflows. Buildings, 16(14), 2882. 概要:建築の概念設計における生成AI研究を体系化し、可視化と探索が最も進む一方で、建築的妥当性、編集可能性、法規チェック、責任の証拠が不足していると結論づけ、制御可能性・評価可能性・変換可能性・責任の4つの評価観点を提案した。

  • Ward-Perkins, J. B. (1981). Roman imperial architecture. Yale University Press. 概要:ローマ帝国の建築の標準的通史。火山灰のコンクリートとアーチ・ヴォールトによる大空間、浴場やバシリカなど用途ごとの型、内部空間の主題化、コンクリートの化粧張りを論じている。

  • WASP. (n.d.). TECLA: Technology and clay. https://www.3dwasp.com/en/3d-printed-house-tecla/ 概要:イタリアの3Dプリンター企業 WASP が建築家マリオ・クチネッラと2021年に完成させた、現地の土を材料とする3Dプリント住宅 TECLA の公式解説。積層の痕跡がそのまま外観になる設計を紹介している。

  • Watson, A. (1974). Legal transplants: An approach to comparative law. Scottish Academic Press. 概要:法が国境を越えて移植されるという「法の継受」論の古典。法の発展の多くが借用によることを示した。

  • The Why Factory. (n.d.). The Green Dip. Retrieved from https://thewhyfactory.com/project/the-green-dip/ 概要:ヴィニー・マースの研究機関による、既存の都市のあらゆる表面を植物で覆う構想 The Green Dip のプロジェクトページ。気候帯ごとの植物と環境効果をソフトウェアで定量化している。

  • Willis, C. (1995). Form follows finance: Skyscrapers and skylines in New York and Chicago. Princeton Architectural Press. 概要:ニューヨークとシカゴの摩天楼の形が、様式ではなくゾーニングと賃貸床の経済性(コアから窓までの距離、床面積効率)で決まったことを示した。

  • Wittkower, R. (1971). Architectural principles in the age of humanism (3rd ed.). W. W. Norton. 概要:ルネサンス建築の比例と集中式平面が、人体比例を宇宙の秩序とみなす人文主義の思想から導かれたことを論じた古典。アルベルティとパラディオのヴィラの調和的比例を分析している。

  • Wrangham, R. (2009). Catching fire: How cooking made us human. Basic Books. 概要:火による調理が人類の身体と社会を変えたとする仮説を示した書籍。火を囲んで食事を共にすることが集団の結びつきと住まいの中心をつくったと論じている。

  • Zevi, B. (1957). Architecture as space: How to look at architecture. Horizon Press. 概要:建築の本質を内部空間に置き、様式や立面ではなく空間の体験から建築史を読み直した。

  • Zhang, S., & Zhang, G. (2025). The impact of platform affordance on the representation of iconic architecture: A case study of Markthal across visual social media. Archnet-IJAR, 19(2), 390–410. 概要:ロッテルダムのマルクトハルを事例に、TikTok、Instagram、Google Maps という各プラットフォームの仕様が建築の表象を変えることを、画像とテキストのラベル分析で示した。

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