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29 mars 2026Masahiro Taima

Discussion avec les meilleurs spécialistes du secteur, du gouvernement et du milieu universitaire sur l'état actuel et les perspectives de l'examen BIM au Japon

はじめに

2026年3月18日に京都大学で開催された建築情報学会のAIS WEEK2026 KYOTOにて、BIM審査の国際動向と日本の位置づけというテーマで、産官学それぞれの第一人者(日本ERI・国土交通省・東京大学)と私の4名で議論をするという機会がありました。以下の当日の内容を投影したスライドとともに読みやすい形で要約・修正しながら文字起こしをした内容を掲載します。

なお、当日の映像は建築情報学会会員限定で動画を閲覧できるようになっておりますので、ご関心のある方は学会ウェブサイトから申し込みをしていただければと思います。

AIS 建築情報学会 – 建築・都市の情報技術の実践、研究を行う学会です。 ais-j.org

当日の参加者

オーガナイザー
對間昌宏(株式会社mign CEO)

パネリスト
関戸有里(日本ERI株式会社・BIM推進センター)
池田靖史(東京大学工学系研究科建築学専攻特任教授)
野口雄史(国土交通省住宅局)



アジェンダ

オーガナイザーのプレゼンテーション

對間:
本日はお集まりいただきありがとうございます。それでは始めさせていただきます。
「BIM審査の国際動向と日本の位置づけ、BIM審査完全自動化に向けた技術課題」というテーマでお話しさせていただきます。

本日の流れとしましては、冒頭20分ほどで私のほうから本日のテーマに関してリサーチと分析をした内容を説明し、その後パネリストの方々から補足やディスカッションをしていただきます。

最後に皆様からのご質問やディスカッションの時間を設けておりますので、積極的にコメントいただけると非常にありがたいです。

簡単に自己紹介をします。私は東京大学の都市工学専攻というところで、都市計画領域でPh.D.を取得しました。
学部は土木系で、大学院では博士課程の際にダブルスクールで建築系の学位も取得しています。その後、慶應で助教を務めた際に、(本日のパネリストの)池田先生の研究室でも助教を務めさせていただきました。

主に建築や土木領域でデータサイエンス関連の研究を長くやっていました。
現在はスタートアップの代表を務めており、主に不動産・建設系のAIエージェントの開発をしており、特に建築の審査の自動化に取り組んでいます。現在、人材を募集しておりますので、関心がある方はぜひチェックしていただければと思います。

本日ご参加いただいている方々ですが、日本のBIM導入や審査の領域に関して、産官学のリーダーの方々からご参加いただいております。日本ERIの関戸様、東京大学の池田教授、国土交通省の野口様です。
一言ずつ自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。関戸さん、お願いいたします。

関戸:
日本ERIのBIM推進センターに所属しております、関戸と申します。よろしくお願いいたします。私は、建築確認におけるBIM活用について2017年から取り組んでおりまして、現在はデータ審査の研究も行っております。本日はよろしくお願いいたします。

對間:
池田先生、お願いします。

池田:
建築情報学会で会長をしております、東京大学の池田です。
BIM推進会議の建築確認におけるBIM利用に関しても、ずっと委員をしております。
本日は少し広めのお話も含めて参加させていただきました。よろしくお願いいたします。

對間:
野口様、お願いできますでしょうか。

野口:
国土交通省の野口です。よろしくお願いいたします。

對間:
国土交通省のBIM専門官ということで、野口様からもご参加いただいております。
それでは、内容の方に入らせていただきます。

ここにいらっしゃる方々であれば耳にタコができるくらい聞いているかと思いますが、まず「BIMとは何か」について私の観点から2つのポイントをお話しします。
1つ目は、様々なデータが連携することです。1つの建物に関するデータが、属性も含めて連携されます。
2つ目は、これがクラウド上でバックログを含めて記録され、関係者全員に同期されることです。
他の業界で言えば、顧客管理ならCRM、製造であればBIMの先輩にあたるPLM、ほかにもSiemens、ソフトウェア開発ならGit、経営管理ならSAPやOracleなどがあります。
こうしたソフトウェアは他業界で導入が進んでいる一方で、建築業界でBIMの導入が遅れている、難しいというのは、それだけで論文が書けるテーマですが、ここでは割愛します。

次に「BIM審査とは何か」についてです。
ここでお見せしているのは、シンガポールのCORENET Xというシステムです。左側が民間企業などの申請者、右側が政府や関係当局です。
CORENET Xというプラットフォームを通じてBIMファイルを提出し、最初に機械的に1次チェックされます。
その後、規制当局がプラットフォーム上でデータを同期し、ディスカッションやデータ修正を行います。
このように効率よくプロジェクトの審査を行うシステムです。

BIM審査の導入のメリットは4つあります。
1点目は、審査が迅速になることです。2Dだったものが3Dになり、人の目で判断すべき箇所が減るため早くなります。
2点目は、客観性です。機械的に判断できる項目が増えることによります。
3点目は、プロセスの透明性です。コミュニケーションが円滑になります。
4点目は、都市モデルや不動産データとの連携です。
これまで審査された図面はそこで終わっていましたが、BIMを使えばPLATEAUのようなプラットフォームと連携し、国土のデータとして蓄積・充実されます。

BIM審査の国際動向を評価するには、まず進展フェーズを定義する必要があります。
いくつかの論文で段階整理がされていますが、ここでは建築研究所の武藤先生がbuilding Smart Internationalで示している文献をもとに、レベル0からレベル3までの4段階で整理します。
レベル0は電子申請がない状態です。
レベル1は電子申請が可能、レベル2は部分的な自動化、レベル3は完全自動化です。
今回の国際動向の整理や日本の位置づけの分析では、主に国際ジャーナル約70本に加え、日本の国土交通省やシンガポールなどの電子申請システム関連資料などを含め、合計約100本の文献を整理しています。

レベル3、つまり完全自動化に向けて必要な機能を文献から整理すると、複数の機能群が見えてきます。
レベル1では電子申請機能が中心ですが、レベル2からレベル3へ進むには、法規制のデジタル化、BIMモデルの共通化、GISとの統合などが必要になります。
たとえば、Revitなどソフトごとに異なる仕様を共通化すること、GISシステムと接続することなどが重要になります。
細かく分類すると、レベル1を含めて全部で14の機能が必要だと整理できます。
各地域の進展状況を私の方でまとめたのがこちらの表です。

各地域の進展状況をまとめると、シンガポールはアジアの中でもかなり進んでいます。
韓国も早い段階からBIM提出の義務化が進められており、導入が先行しています。
日本は、今年4月から始まる制度を前提に位置づけると、まだ初期段階です。

欧州ではイギリスやノルウェーなど北欧が進んでいます。

北米・中南米・オセアニアを見ると、BIMやCADはアメリカを中心に発展してきた歴史がありますが、BIM審査の実運用という点では、アメリカでも州単位の部分的な取り組みにとどまっている状況です。

14の必要機能のうち、完全実装を1点、部分実装を0.5点とし、100%が完全自動化を達成しているものとして定量化すると、シンガポールや韓国が高く、日本はまだ電子申請やIFC受付を始めたばかりの位置づけといえます。

日本におけるBIM審査の進展状況に関してですが、4月からBIMの図面審査が開始され、2次元の図面に加えて3DのIFCデータも申請できるようになります。
特に整合性確認の工数削減が期待できます。
しかし、法的な根拠としてはまだIFCデータは使えず、あくまで立体的に建物を把握するという使い方からスタートします。

今後は、自動チェックの実現や、設計段階だけでなく中間・完了検査との統合、不動産データとの連携による全体的な効率化が課題となります。

日本独自のアプローチとしては、小規模物件から始めている点が特徴的です。
シンガポールや北欧では、比較的大規模な建物を対象にBIM申請の義務化が進んできましたが、日本はより小規模な案件からスタートしています。
また、最初に工数削減を狙う対象として、整合性確認に焦点を当てている点も特徴です。
最近は国の財政支援も本格化しており、その意味では先行国に少しずつ追いつきつつあると言えます。

弱みや課題としては、シンガポールや北欧のように自動化が進んでいる部分に比べ、日本はこれからである点です。
また、民間企業へのBIM提出義務化についても、イギリスや韓国のように政府が強力に推進してきた国と比べると、日本はまだこれからです。
業界の人手不足や低い労働生産性という状況のなかで、民間企業に先行投資をする体力がどれほどあるのかも課題だと思います。

最後に完全自動化に向けた技術課題についてお話しします。
まず、法規制のデジタル化と機械可読化が必要です。法律データベースの整備や、法改正への動的対応が求められます。
法文は自然言語で書かれているため、それを論理化・構造化する必要があります。
また、明確にルール化できる部分はルールベースで処理し、曖昧な部分はAIにより人間に近い判断を支援させる、といったアプローチも必要になります。

BIMモデルの高度化という点では、ソフトごとに異なる拡張子や内部構造をどう共通化するかが大きな課題です。
ファイル変換時に失われる属性情報をどう補完するか、品質チェックをどう自動化するかも重要です。

周辺環境や地理空間データとの統合も必要です。
GISや不動産データと連携し、日影規制や斜線制限など、空間条件との整合性を判定できる技術が求められます。

さらに、自動法規チェックには、法文、BIM、GISなど複数のデータを統合して、適合・不適合を判断する仕組みが必要です。
文章だけでなく、画像や数式も含めて解釈するマルチモーダルな推論機能も重要になります。
ここでは、従来のルールベース処理に加えて、大規模言語モデルの活用もブレークスルーになり得ます。

審査結果のフィードバック機能も重要です。
申請者に対して、どこを修正すべきか、どこが不適合なのかを自動的にレポートする仕組みが必要です。
また、自動判定の結果について、どの根拠に基づいてAIやシステムが判断したのかを、人間が検証できることも必要です。
そのため、説明可能性や検証可能性を備えた実装が求められます。

最後に、申請者と行政当局の間の情報交換やフローの自動化も不可欠です。
共通データ環境を通じて、コミュニケーションを効率化することが必要になります。

まとめると、国際的にはシンガポール、中国、韓国のように、政府が強く義務化を進めた国が先行しています。
日本でも4月からBIM審査が本格的に進み始めており、今後の進展が期待されます。
技術的な課題としては、複雑な法規制を機械が解釈できるようにすること、そしてBIM以外のGISや不動産データと統合することが大きなテーマです。
私からの説明は以上となります。ありがとうございました。


パネリストからの補足・コメント・質疑

對間:
続きまして、関戸さん、池田先生、野口さんから、ご意見や議論したいことなどをいただければと思っています。まず関戸さんからいかがでしょうか?CDEの現状に関するご紹介なども含め、伺えますと幸いです。

関戸:
私の方から、BIM図面審査やデータ審査がどういうふうになっているのかについて、少し補足させていただければと思って資料を作っています。

現在、BIM図面審査について先ほど對間さんからおっしゃっていただいたように、2026年の4月に開始します。
データ審査に向けてということで考えているところですが、BIMを使う第1歩だということで、これは過渡期のお話であってデータ審査に向かっていきたいということです。
そのデータが整えば、建設業界全体でデータ活用が広まるだろうということを目論んでおり、先ほどもあった人手不足などの課題を解消するためにはデータ活用が必要だということで、国交省が推進しています。

図面審査とデータ審査がどういうものかについて、左側にあるのが図面審査で、右側にあるのがデータ審査です。
図面審査という形で、初めてBIMデータを制度の中に落としていくというところにこの4月から着手します。左側にあるIFCデータは、提供してもらうことになりました。
データ審査については、それ自体で審査するということが現状で位置づけられています。

こちらはロードマップですが、2026年4月にBIM図面審査が始まり、データ審査は2029年の春を目指すということで段階的にロードマップを描いています。
国交省は、BIM図面審査については、先ほど言いましたように3次元モデルを切り出すだけなので、図面間の整合性を確認する審査を省略して効率化しましょうという形になります。

右側はデータ審査のコンセプトですが、BIMデータそのもので審査することになり、ここには情報がたくさん詰まっているので、それを適宜必要な情報として取り出してみるということを考えています。
その時にAIなどが活躍するのではないかなど、具体的なことまではまだ結論が出ていない現状です。

データ審査については、BIMモデルのオブジェクトベースということで、例えば壁一つにいろいろな情報が詰まっていますが、その形状や属性を取り出します。
審査の完全自動化という話はありますが、データ審査は今の段階ではどちらかというと審査の補助機能だという位置づけです。
これまでは目で追ってチェックしていましたが、そういったものを機械的に補助してもらうことを、日本におけるBIMデータ審査として定義しています。
完全自動化に向かうのは、まだ法的な整理も必要でハードルが高いと考えており、今の段階では時期尚早かなという気がしています。
データの定義についてですが、確認申請がPDFになった時はそれもデジタル化ですが、情報そのものを使っていくという意味でデータ審査は確認申請におけるデジタル化だと考えています。
現在はBIMデータをIFCという共通ファイルフォーマットに変換し、それ自体を見ますということで、申請図書として直接活用するようにしています。
BIM図面審査とはこのような3次元モデルをこういう図面に書き起こしますということですが、それを3次元の立体として見ていきますという形に変わります。
これは目視によるビュー審査と、プログラムによるデジタル審査と分けています。

まずは3次元を図面を作らずに3Dで立体的に見るというビュー審査と、その中にある情報を取り出して四則演算やプログラムを走らせた結果を出すデジタル審査の位置づけに分けています。
その中のデジタル審査においてはAIの可能性やプログラムの開発などもあろうということで、こんな形で今は進めていますという検討状況のご説明でした。
審査しなくてもいい未来があれば良いと思うのですが、なかなかそれは難しいところもあるということをご理解いただけたらなと思い、少しご紹介させていただきました。以上です。

對間:
ありがとうございます。
もしよろしければ、関戸さんの方から何かコメントであったりとか、あるいは池田先生や野口さんに対して、ここで聞いてみたいことなどはございますか?いかがでしょうか。

関戸:
海外と日本ではかなり大きな違いがあると感じています。
日本の「確認申請」は独自の手続きで、諸外国ではどちらかというと「許可申請」に近い仕組みです。
しかも海外では、設計者が責任を負うという考え方が強くあります。
何か瑕疵があったときには、その設計者たちが責任を取る。そういう前提があるからこそ、自動化にも向かいやすいのだと思います。
一方で日本は、民間に開かれた仕組みになっていて、「審査をしてください」という構造があります。
さらに何かあったときには民民で解決しましょう、という側面もあります。
法律上は設計者に責任がある建て付けではありますが、実際には責任分担がやや曖昧なところもあります。
そのため、そうしたやり取りを自動化していくことは簡単ではありません。
加えて、条例や法解釈といった要素もあるので、日本の中で自動化を進めるのは少し難しいのではないか、と感じています。
そうした中で、BIM図面審査や自動化によって、機械的なチェックがどこまで可能なのか。
池田先生はどのようにお感じでしょうか。

池田:
全体としては、自動化に向かっていくと思います。
ただ、そのとき大事なのは、なぜ自動化したいのか、という点です。
基本的には、BIMデータを使うことで、設計作業やデータ化作業がかなり楽になるというインセンティブがなければ意味がありません。
そこが重要だと思います。
これまでの確認申請では、法的に適合していることを証明するために、むしろ作業が増える傾向がありました。
もちろん客観的に簡単にチェックできるものもありますが、制度が性能規定化していくと、単純な確認では済まなくなります。
たとえば「何平米以内」「何秒以内」といった基準になると、シミュレーションが必要になります。
設計者側がシミュレーションを行い、その結果を示し、それを審査側がチェックする、という構造になっていきます。
そうすると、かえって手間が増えていきます。
自動化といっても、提出された数字が合っているかどうかを確認するだけなら比較的明確ですが、それだけではありません。
たとえば平均天井高のような項目です。
設計者側がチェックした値を見るより、モデルから直接計算した方が早い場合があります。
こうしたことは、日影規制など他の項目でも起こり得ます。
形状データがあれば、それをもとに直接、適用対象かどうかや適合性を審査側で計算できるかもしれません。
今後は、適合しているかどうかの計算を申請側が行い、審査側はその検算だけをするのか。
あるいは、計算そのものも審査側で行うのか。その切り分けが問題になってくると思います。
特にシミュレーション系は、やり方によって結果が微妙に変わることもあるので厄介です。
一方で、適合性を証明するための計算の負担が大きいものほど、自動化することには双方にメリットがあります。
そのあたりをどう整理するかは、今後の自動化を考えるうえで重要なポイントだと思います。
単純な文言で判断できるものは比較的わかりやすいですが、性能値のようにきちんと計算しないといけないものについては、その計算をどちらがどこまで担うのかが問題になります。
このあたり、関戸さんはどうお考えですか。

関戸:
性能規定にこうした仕組みを活用していくのは、とてもよいことだと思っています。
たとえば今注目しているのは避難安全検証法ですし、今後LCAも審査対象になってくると、こうした活用の場面は増えると思います。
審査側の業務は、確かにだんだん複雑で増えてきています。
それを担保しつつ効率化する手段が必要なので、今はかなり注意深く見ているところです。
そうした意味で、データ活用はとても有用です。
時間短縮になりますし、審査側が効率よく確認できることは、設計者にとっても審査時間の短縮につながります。
その点では、十分にインセンティブになると思います。
ただ一方で、形状データについては、どこまで詳細に、どこまで正確に入力しなければならないのかが課題です。
たとえば天井高ひとつ取っても、床仕上げから天井仕上げまで、どこまで正確に入れる必要があるのか。
そこは、どこまで手間をかけるのかも含めて、まだ議論が必要だと思っています。

對間:
この件に関して、少し私のほうから見方が変わるかもしれないのですが、マクロ経済・ミクロ経済的に言えば、これは「合成の誤謬」と呼ばれる現象と似ていると思っています。
経済的に言えば、デフレの環境下で個人の行動を最適化しようとすると、かえってマクロ的には状況が悪化するというものです。
デフレの時は皆貯金をするわけですが、貯金したほうがお金としての価値が上がるからです。
ただ、そこから脱却しよう、マクロ的に見ようとすると、皆がお金を使えば状況は改善されますが、それができない。個人としては最適化された結果として貯金をするからです。
このBIMの導入もおそらく一緒で、マクロ的に言えばBIMをちゃんとやれば良くて、ただこれを民間マーケットの動きでやろうとすると、大きく2つの点で合成の誤謬があると思っています。
時間的なものと、組織的なものですね。
時間的なもので言うと、大企業のリーダーである期限は決まっているので、3年間ぐらいでBIMを完全導入してやろうとすると、赤字を出すと思うんです。
10年間、20年間というスパンで見たらメリットは出てくると思うのですが、期間を短縮したミクロ的な視点で見ると、最適化された結果は「BIMを導入しない方がいい」という形になってしまいます。
組織的なもので言うと、自分の会社だけで完結するものであればいいのですが、これは政府も関係・協力企業も全部巻き込んでいくものです。
どこまでマクロなところでちゃんとやれば全体的に効率化されるのですが、自分の会社だけ導入しても、自社だけ非効率になるという形なので。
ですから、国際的な動向を見ると、やはり政府が圧倒的なリーダーシップを持って強制的にやったところが先行しているなと思っています。
より大きな政府であるような、シンガポールや中国は早いですし、韓国もそうです。
あとは領域が小さい国のほうが意思決定のインパクトは大きいですし、逆にかなり民主主義の国、例えばアメリカはかえって遅いなという印象です。
そういったところが、こうした国際動向にも影響があるのかなという印象です。
野口さんの方で、この辺りに関して補足とかコメントとかございますか?国交省さんの事業であったり、今後の制度みたいな観点でいかがでしょうか。

野口:
先ほど関戸さんからも紹介があったと思いますが、この4月からBIM図面審査をスタートし、その次の段階として2029年春にデータ審査をスタートしたいという目標を掲げています。
そのデータ審査の姿についてですが、先ほど自動審査の議論もありました。
田山さんのお話にあったように、結果についての検証可能性も実装する必要があるのだとすると、関戸さんが紹介されたBIMデータ審査の「デジタル審査」も、グラデーションの中では自動審査に近いものなのだろうと思いました。
BIMデータ審査の仕組みについては、関戸さんを中心に、その仕組みを構成する要素技術の検討を進めていただいています。
ただ、これを制度として落とし込む際に、現実的かつ効率的な制度の全体像をどうしていくかは、これから描いていく段階です。
その意味で、大変参考になりました。
また、先ほども話がありましたが、シンガポールや米国などは、建築確認の制度自体が日本と少し違います。
申請段階は「確認」の仕組みではなく、「許可」の仕組みになっていて、基本的には設計者に責任を負わせたうえで、申請段階ではある程度柔軟に許容し、さらに竣工段階に重きを置いて監査する仕組みになっています。
一方、日本では、建築行政に対する正確性への期待値が非常に高い。
要するに、「間違ってはいけない」という前提があります。
その中で、完全な自動審査のような仕組みを導入した場合、誰に責任を持たせるのか、それをどう保証するのかという制度設計が、最も難しい課題の一つだと感じています。
諸外国の例の中では、韓国は日本と比較的確認制度が近い印象があります。
韓国が誰に責任を持たせ、検証可能性を制度の中にどう実装しているのかは、日本の制度設計にとって非常に参考になるのではないかと思いました。
その点は、もう少し勉強したいと思いました。
以上です。

池田:
これは中長期的に見ると、現在の建築確認申請の仕組みのまま自動化するのか、それとも制度そのものの見直しまで行うのかが関係してきます。
私も、国土交通省の中長期ビジョン、つまり建築基準法そのものを少し考え直していく議論に参加しています。
今の建築基準法の考え方は、竣工時点で設計者が法適合性についてすべて責任を持つ、というベースに立っています。
ただ、これからは、利用開始後の運用の中で安全性が担保されるのであれば、そこにもう少し自由度があってもよいのではないか、という考え方もあり得ます。
そのような方向に進めやすくするためにも、BIMは活用されていくべきだと思います。
もちろん、建てるときにきちんとしていなければならない部分はあります。
後からではどうしようもないこともあります。
一方で、運用時に一定の方法を取ることで対応できることもあります。
そのバランスを考えるうえでも、BIMモデルがしっかりあれば、たとえば避難安全のようなことについて、最初の設計とは多少違っていても、目的とする性能は確保できていると後から証明できるケースが作れます。
そういうことも含めた法的な考え方が、これから求められていくのではないかと思います。

對間:
そういう意味では、既存の建築基準法と、それに基づく建築確認申請だけの問題でもないということですね。
長期的に考える必要があると思います。
責任の所在をどこに置くのかは、かなり根深い問題です。
もっと根本的に言えば、土地の所有権をどう考えるかというところにもつながっているように思います。
イギリスはわかりやすいですが、土地は国のものという考え方があり、そこに強く影響を受けています。シンガポールもそうですし、中国も同様です。
一方で日本では、土地は国民のものという考え方です。
そこから「自分の土地は自分で責任を持つ」という発想にもつながっているのだと思います。
もし設計者が法的責任を負わない方向に行くのであれば、土地に対する根本的なフィロソフィーも含めて見直さなければいけないのかもしれません。

池田:
また、製造者責任という考え方があります。
プロダクトであれば、最初に安全なものを消費者に渡したはずなので、何かあれば作った人の責任だ、という考え方が成り立ちます。
しかし建築の場合、50年、100年使うことを考えると、製造者にすべての責任を負わせるのは難しい。
使う人が適切に使うことも考慮しなければ、長期的な安全性は保てません。
そうなると、そもそも建築は全面的に製造者責任型ではありません。
長期的に安全管理を維持していく仕組みそのものを作っていく必要があります。

對間:
今の法体系は、高度経済成長期の、大量の住宅供給を急がなければいけなかった時代を背景にしています。
土地開発をどんどん進めるため、法律もかなり緩い形で開発を促進してきた面があります。
しかし今は社会が成熟し、欧州に近い形で、建物をより長く使っていかなければならない時代になっています。
そう考えると、池田先生がおっしゃったような大きな考え方の転換が必要になる時期なのだと思います。

関戸:
国交省の方もいらっしゃるので少し言いづらいのですが、今のお話の通り、建築基準法は高度経済成長期に決められたものです。
昭和25年に始まってから、その上にずっと積み重ねる形で法律がつながってきました。
つまり、根本から大きく変わったというより、何かあるたびに法的な規定を肉付けしてきた。
その結果、今は非常に分厚い体系になっています。
ただ、それが本当に自動チェックや法規チェック、ルールベースの審査に適した形になっているかというと、そうはなっていません。
そのため、もし本気でそうした自動化を進めるのであれば、法体系そのものの転換も考えなければ難しいのではないかと感じています。

對間:
野口さん、この議論についてはどうお考えですか。

野口:
まず法体系の話ですが、建築基準法と建築士法ができた当時は、住宅の質も低く、技術者の質も今ほど高くありませんでした。
そのため、建築基準法という法の枠組みと、建築士という資格制度によって、それを担保しようとしたのだと思います。
当時は建築の質も低かったので、建てた後に直すより、建てる前にチェックする方が便益が大きかった。
そういう理由で事前チェックの仕組みが導入されたのだと思います。
ただ、先ほどから議論がある通り、現在では技術者の能力もかなり上がっています。
そう考えると、欧米型の事後チェック、つまり事後的に検証し、さらに保険の仕組みなどで担保していく世界もあり得るのではないかと思います。
これは個人的な意見ですが、そういう世界も十分あり得るのではないでしょうか。


来場者の質疑・ディスカッション

對間:
ありがとうございます。
ここで、会場の皆さまからもご意見やご質問をいただければと思います。いかがでしょうか。

来場者A(大手ゼネコン):
BIMを確認申請に適用するにあたって、設計会社、建設会社の中で、案件ごとにBIMを適用するかどうか、あるいはBIMを作成するかどうかを決めている人たちが、必ずしもメリットを感じていないという現状があります。
そのため、20代、30代の若い世代がBIMをやろうとしても、組織として「やらない」という判断が下されることがあります。
弊社でもそうした経験があります。
ですから、BIMをメリットとして感じていない人たちが、きちんとメリットとして感じられるような仕組みが必要です。
やはり、先ほどの話にあったような大きな政府が必要だと思います。
現状でもBIMに関する補助制度のようなものはありますが、たとえば確認申請を出したときにポイントが加算されるとか、何らかの評価が得られるような仕組みがあるとよいのではないかと思います。
実際、弊社でも経産省のDX認定のようなものが取得できると、それまでデジタルにあまり関心のなかった役員の方々が急に興味を持ちます。
「そういうデジタル施策をやっているのか」と聞かれるようになります。
つまり、そういう人たちも巻き込める仕組みが必要だということです。
ですから、国交省には、ポイント制や企業バッジのようなものをぜひ検討してほしいと思います。
きちんとBIMを使って取り組んだ企業が、バッジのような形で評価され、それが企業の名誉になるような仕組みがあるとよいと感じています。

對間:
ありがとうございます。
この点について、野口さんから国交省の事業や今後の制度の観点でいかがでしょうか。

野口:
補助金という意味では、3年ほど前からBIM導入支援の補助金を実施していて、今も続けています。
次年度の予算にも盛り込んでいます。
ただ、単にBIMをやっていればよい、という話ではありません。
BIMを導入する意味は、業務が効率化されること、あるいは高度化によって価値を生み出すことにあります。
そうした価値があるからこそ、BIM導入のために税金を投入する政策的意義が出てきます。
一方で、利益が得られるのであれば、自社でやればよいのではないか、という議論にもなります。
実際には、自社で取り組んでいても、今の過渡期的な状況ではまだメリットが見えにくい。
あるいは、生産全体の中でコストをどう負担するかについて合意が取れていない、という問題もあります。
また、業界全体でBIMを使っている状態になっていないため、本当の意味での効率化や高度化の効果がまだ得られていないのだと思います。
そうした説明を前提に補助金は用意していますが、単にBIMを使っているだけでは難しい面もあります。
その意味では、BIMが広がっていく過程の「間」の部分にちょうど当たるような補助制度や、認証の仕組みが考えられるとよいと思います。
そこはぜひ一緒に考えていければと思います。

来場者A(大手ゼネコン):
今の補助金は、たとえば300万円かかるものを補助してゼロにする、という発想が多いと思います。
ただ、企業バッジのような形なら、それは単なる300万円分ではなく、企業全体に付加される価値になります。
補助金が後から戻ってくる仕組みだけでは、結局「やらなくても同じではないか」と考える人が多い。
だからこそ、デジタルに興味がない人や専門外の人を、どう巻き込むかが今後のポイントだと思います。

野口:
おっしゃる通りです。
目先の価値と将来の価値、その将来価値を現在価値に換算したときの評価が、まだ十分に伝わっていないのだと思います。
だからこそ、国だけでなく、みんなでそういう状況を目指すという共通認識が必要です。
また、その効果がどういうものなのかを、一つひとつ事例として積み上げて証明していくことが、価値の共有につながるのだと思います。

對間:
ありがとうございます。
他にどなたかいかがでしょうか。

参加者B(大手ITベンダー):
興味深いご指摘をありがとうございました。
私は、もともと建設畑ですが、どちらかというとDXというキーワードでいろいろな仕事をしてきました。
今日の話を聞いていて、確認申請そのものにはそれほど詳しくないのですが、民間企業でいう大企業のDXの話に非常によく似ていると感じました。
一つ質問したいことがあります。
単純な印象として、非常に手数がかかっていて、うまくいっていない作業をどう自動化するか、というキーワードが出てきました。
そのために要素分解してテクノロジーを当てはめているわけですが、少し離れて見たときに、「そもそもそれは最適なプロセスなのか」という議論が、私にはまだ見えませんでした。
一方で、野口さんや池田先生のお話を聞いていると、この業界構造の中に多くの問題があることも見えてきました。
責任分担の話も含め、突っ込みどころの多いプロセスの中で、テクノロジーの話とプロセスの話をどうつないでいくのかが、実は非常に難しいのではないかと感じました。
そこで、少し解像度を上げて質問したいのですが、田山さんのところでは、まずAIのテクノロジーをかぶせて、いろいろ試していこうとしているのだと思います。
ただ、その前に、プロセスの側で変えなければいけない部分もあるのではないか、という問題意識があります。
先ほどのシンガポール対日本という話にもつながると思いますが、このあたりは今後どう進んでいくのでしょうか。
また、池田先生にあえて絞って伺うと、日本の確認申請は、どういう形になるのが理想的なのでしょうか。

池田:
難しい問いですが、一つ大きいのは、データの公開性を高めることではないかと思っています。
今は、各建物の所有者がデータをクローズドなまま申請しているだけです。
それでは、データの再利用性という問題があります。
確認申請のデータも、集団規定のようなことを考えると、多くのデータがある程度公開されて集まった方が、より大きな価値を生みます。
そして、データの価値が高まれば、データを作るインセンティブも高まり、システム全体も効率化していきます。
そう考えると、今のようなクローズドなデータの考え方ではなく、できるだけデータのオープン性を高めた方が改善余地は大きいと思います。
ただし、その際には建物データが持つプライバシー性や私有財産としての性格と、どこで折り合いをつけるかが問題になります。
シンガポールなどは、ある程度データ活用を前提として、私有財産に関わる部分であってもオープンにしていこうという方向にあります。
つまり、私有財産と言いながらも、ある部分はオープンになることを受け入れるかどうか、という話になるのだと思います。

對間:
今の話をもう少し掘り下げると、協調領域と競争領域をどこで区切るか、という話だと思います。
競争領域が多ければ多いほど、GDPの最大化にはつながりますが、格差も生みやすい。
一方で、マーケットがないところでは技術化が進みません。
BIMがなかなか導入されなかったのも、民間マーケットがそこにメリットを感じにくかったからだと思います。
だから、全部を競争領域にしてしまうとBIMは進みません。
そのため、協調領域を徐々に広げていく必要があります。
池田先生がおっしゃったようなデータ共通化も、その一環だと思いますし、補助金もその手段の一つです。
ただ、協調領域が全部になってしまうと、新しい技術を開発するメリットがなくなります。
ですから、今は協調領域を少しずつ広げていく段階なのだと思います。

池田:
さらに確認申請の話を少し広げると、新築の建物だけをBIM化しても、日本中の建物全体から見れば毎年ほんのわずかしか更新されません。
このままでは100年たってもBIM化は進みません。
本当に鍵を握っているのは、新築案件のBIM化ではなく、既存建物のBIM化です。
既存建物のBIM化をどう進めるかが重要です。
その際には、必ずしも非常に高精度なBIMでなくてもよい。
むしろ、緩やかでも広く浅くBIM化していくことが重要だと思います。
車には車検制度があって、走っている車は一定基準を満たしていなければなりません。
建築も同じように、全建物がある程度BIM化されていて、一定基準が常に守られている状態を目指すべきではないかと思います。
そういう側から考えると、そもそも確認申請で何を確保しておかなければいけないか、という話自体が変わってくると思います。

對間:
ほかにご質問のある方はいらっしゃいますか。
では最後に一つお願いします。

参加者C(大手ゼネコン):
協調領域と競争領域の話が出てきましたが、その点について伺いたいです。
ISOなどの標準との関係も含めて、どこが協調領域なのかを教えていただきたいと思います。
その上で、どこを攻めれば突破口になるのか、という考えも伺えればと思います。

関戸:
非競争領域、つまり協調領域としては、やはりデータの標準化のような部分だと思います。
そうした枠組みは、ある程度共通に決めていく必要があります。
一方で、それを使って何をするかは競争領域です。
たとえば、どんなプログラムを作って審査を効率化するかは、情報さえ決まっていればいろいろなやり方があります。
そこは民間企業ややりたい人が、さまざまな形で進めていけばよいと思います。

参加者C(大手ゼネコン):
たとえば確認申請では、防火認定の記号のように、材料に関する細かな情報が必要になります。
しかしISOでは、そうした項目は必ずしも要求されていません。
つまり、そもそも必要とされるデータが違うわけです。
この違いをどこでまとめるかが問題だと思います。
そこがしっかり整理されれば、自動化のような競争領域で、民間企業が強みを発揮できるようになります。
そして、そこから新しい競争が生まれていくはずです。
私はスマートグリッドの立場ですが、運用時のデータ利活用は特に重要だと思っています。
まだそこまでデータ利活用のエコシステムができていないので、こうしたセッションをきっかけに広がっていけばよいと思います。

對間:
では時間になりましたので、このセッションはここで終了とさせていただきます。
皆さま、お忙しいところご清聴いただき、ありがとうございました。


おわりに

オーガナイザーとして、今回の議論を取りまとめる立場を担当させていただき、パネリストも来場者も、私よりベテランの方々ばかりで僭越ではございましたが、予定時間が越えるほど、みなさまご関心高くディスカッションをいただき、とても良かったと感じました。建設業界の今後を大きく変えていくようなBIM審査の動向に関して、今後とも私としても、この領域の進展については深く理解していきたいと思いました。